「集団訴訟」時事ニュース7選!集団訴訟のメリット・デメリットとは

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投稿日時 2019年04月01日 16時32分
更新日時 2019年09月17日 18時32分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 最近あった注目の集団訴訟のニュースを知りたい人

  • 集団訴訟をするとなにがいいのかを知りたい人

  • どんなケースが集団訴訟になるのか知りたい人

はじめに

詐欺などの被害にあっても、ひとりでは知識不足や経済的負担が大きかったりした場合、なにもできず泣き寝入りしてしまうことが少なくありません。

このとき、集団訴訟という手段は問題解決への道筋のひとつ。しかしそもそも、自分以外に被害者がいるかどうかはどこで探せばいいのでしょうか。

多くの人の人生を一度に狂わせるような事案として時事問題となり注目された「破産者マップ」は、問題発生直後から集団訴訟をする動きが起き、被害者100人以上が参加を表明しました。

インターネットを利用して多くの人に不利益を与える行為がはびこる一方、ネットで仲間を探した人も存在するのです。

この記事では、ネットを通じて訴訟の仲間を探したケースと、最近注目された集団訴訟のニュースについてみていきます。

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1.ネットを通じて訴訟の仲間を探した集団訴訟、注目の3案件とは?



集団訴訟を起こすには、自分以外の被害者がいるかどうかを知ることから始まります。

「きっと自分以外にも被害者がいるはずなのに、呼びかけ方がわからない」という人向けに、2018年5月から 集団訴訟プラットフォームサービス「enjin」/ が登場しました。

この章では、同プラットフォームを通じて同じ被害者が交流し、立ち上げたプロジェクトを紹介していきます。

「破産者マップ」訴訟

自己破産した人の氏名や住所をGoogleマップ上に表示して公開した「破産者マップ」。2019年3月に突然、不特定多数に向け簡単にネガティブな個人情報が閲覧できる状態として、まとめて公開され、不当にプライバシーを明かされた人たちが、損害賠償などを求めて集団訴訟を起こすことを決定したものです。

もともとの情報源は政府が発行する「官報」に掲載されたもので、インターネット上では30日しか公開されず、本来の目的も限定されたものですが、誰でも手軽に閲覧できるようにされたことで、被害が広がっています。

「破産者マップ」については、こちらで弁護士が解説をしています。

「みんなのクレジット」訴訟

enjin全体では、「詐欺・消費者被害」に関する集団訴訟プロジェクトが最も多く立ち上がっています。

その中のひとつが「みんなのクレジット」(現スカイキャピタル)の集団訴訟。

不特定多数の投資家から高配当をうたってインターネット上で資金を調達し、集めた資金を自社の親会社へ融資。融資された企業は、その資金を別のファンドへの償還金にしていたことがわかりました。

これにより投資家には配当をほとんど行わなかったとして、出資者が「みんなのクレジット」(現スカイキャピタル)の関係者らを訴えたものです。被害額は1憶円以上に上る見込みです。

こちらは 2018年10月31日に訴訟に向けた手続きを開始しています

「マネオマーケット」訴訟

インターネット上で金銭の借り手と投資家をマッチングさせる「ソーシャルレンディング」サービス大手のmaneoマーケット

このサービスを通じ、投資家から集めた資金を調達目的とは別の使途に利用し、利益分配に遅延も生じているとして、投資家54人と法人3社が2019年3月に東京地方裁判所へ集団訴訟を起こしました。被害総額は約11憶円に上ります。

もともとは再生可能エネルギーに投資する目的で出資金を募っていたもので、高い配当も売りにしていましたが「虚偽の説明がなければ出資しなかった」とする投資家が続出しました。

マネオマーケットは一連の不祥事により、金融庁から行政処分を受けています。

出典: 「ソーシャルレンディング最大手を提訴へ「11億円損害」(2019年3月7日・朝日新聞)

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2.社会を動かした案件も…近年注目された集団訴訟など4選



これまでに紹介してきたもの以外で、近年に世間の注目を集めた集団訴訟や、多数の被害者を出し、集団訴訟化が見込まれた問題はどのようなものがあるのでしょうか。

①医科大学入試問題

東京医科大学(東京都新宿区)が2018年2月に実施した入学試験で、女子受験生の点数を減点していた疑惑が浮上。後に、減点対象は全受験者で、男子受験生の一部や三浪以内の受験者に加点していたことがわかりました。

不当な選考基準で公平に能力を評価されないことで女子受験生に不利な体勢になっていたことを受け、東京医大等入試差別問題当事者と支援者の会が立ち上がり、被害者の連絡などを取りまとめているほか、弁護団のクラウドファンディングも実施されました。

その後、適格消費者団体「消費者機構日本」が不正について同校に是正申し入れ等を実施。 2019年2月には、東京地裁で受験生に受験料を返還する義務があることを確認する訴訟を起こしました。

この問題について、男女間の不合理な差別を争ったケースや、損害賠償請求の可否などをこちらの記事で弁護士が解説しています。

②オリエンタルランド労働問題

東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランド(千葉県浦安市)で、「キャスト」と呼ばれる園内の従業員のうち、着ぐるみの中のキャラクター出演者として勤務する2人が、パワー・ハラスメント(パワハラ)労災の拒絶などの安全配慮義務違反があったとして、2018年11月に集団訴訟を起こしました。

2019年3月には、この従業員のうち1人が労働災害に認定された報道後、先輩社員からのパワハラがあったことも明かし、新たに訴えを起こすことを表明しています。

出典: 「どのツラ下げて来てんのか」「(会社に)謝るんだよ」 ディズニーランドの“キャラクター出演者”訴訟 原告側が職場復帰時のパワハラ問題を追加提訴(2019年3月26日・ねとらぼ)

②レオパレスオーナー問題

施工不良のアパートを放置し続けた問題で批判が集まるレオパレス21。2019年3月には、入居者7千人以上が転居を余儀なくされる事態が発生しました。

もともとレオパレスは、2015~2017年にオーナーらが複数の集団訴訟を起こしていた経緯があります。このうち17年の訴訟は同社とサブリース契約を結ぶ際「30年は家賃減額がない」とされたにも関わらず、10年未満で減額されたというもの。約50人が訴えを起こしています。

2019年3月には不動産ADRが 「レオパレスオーナー被害者の会」設立準備委員会を立ち上げており、施工不良やサブリースにまつわるトラブルの救済に動くとしています。

出典:(2018年1月13日・Business Journal) 解約強要疑惑のレオパレス21、所有者が集団訴訟…1億超返還要求、一括借り上げの罠

(2016年11月27日・MONEY VOICE)突撃取材「家主の私がレオパレスを訴えた理由」集団訴訟はなぜ起きたか?=姫野秀喜

④同性婚集団訴訟

憲法の「法の下の平等」に照らした場合、同性カップルが婚姻を認められないのは違憲ではないのか。

このような疑問から平等を求めて、2019年2月に全国各地のカップル13組が国に対し損害賠償を求めた集団訴訟が発生しました。場所は札幌、東京、名古屋、大阪の地方裁判所4ヶ所です。

現在同性カップルに認められている権利は、各自治体が制定している「パートナーシップ制度」のみ。法的な婚姻の権利は認められていないため、婚姻により発生する税制や相続の枠組みには入れないことから、この部分の平等を求めているものです。

出典: 同性婚求め13組が一斉提訴「自由侵害し違憲」(2019年2月19日・共同通信)



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3.どうして集団訴訟をするの?そのメリットとデメリットまとめ



なにかの被害にあって心細いとき、どうしたらいいのかわからないとき、周囲の理解を得られないとき……ひとりではなく集団で訴訟を起こすことで、勇気をもらえる人もいるかもしれません。

しかし、人数が集まるゆえに発生する問題もあり、良いことばかりというわけにもいきません。ここでは集団訴訟のメリット・デメリットについて考えていきましょう。

①こんなところが心強い、集団訴訟のメリット

「集団訴訟」と聞くと、メディアで報道されるような大きな被害者集団に弁護団がつき……というイメージがあるかもしれません。

集団訴訟は、被害者(原告)2人からでも可能です。それぞれが被害の証拠を持ち寄ることになるので、場合によっては立証が比較的容易になったり、ひとりでは不明だった部分が判明したりすることもあります

また、弁護士への依頼や実際の裁判になる際の費用も、被害者の人数分で頭割りにできるので、個人の訴訟よりも負担が減る場合もあるでしょう

実は裁判所にとっても、同じ被告に対する同一内容の訴訟を何人も、何度も行うよりは、複数の被害者分をまとめて扱えるため、負担軽減につながる場合があります。

このほか、社会的に意義がある訴訟などは、複数の被害者と弁護士が弁護団を組むケースがあります。人数が集まることで心強さが増す効果はあるでしょう。

例えばひとりで大企業を相手方にとして戦うのは精神的にもプレッシャーが大きくなりますが、弁護団という形であれば立ち向かえる場合があります。もし注目が集まれば、メディアや世論の応援を得られることもあります。

弁護団などについては、こちらの記事も参照下さい。

  • 集団訴訟プラットフォームの利用

    自分と同じ被害を受けた仲間が見つかり、不安や怒りを共有し、一緒に解決に向かって力を合わせられるのは集団訴訟のメリットです。

②ここに気を付けたい、集団訴訟のデメリット

それでは人数を集めることさえできれば、集団訴訟をした方が上手くいくのかというと、そんなことはありません。

集団訴訟に限らず裁判全般に言えることですが、裁判を起こしてから最終的な判決が出るまでは、少なくとも数ヶ月以上の時間がかかります。地方裁判所からさらに高等裁判所へ判決を持ち越す「控訴」、そこから最高裁判所への「上訴」など、裁判が何度も行われると、ときには年単位にわたりその問題に関わり続けなければなりません。

その間も訴えを起こした人には生活がありますし、集団訴訟なら費用が多少抑えられるといえど、経済的な負担も継続します。大きな問題であれば被害者本人が高齢になったり、死亡したりしてしまうケースも発生します。

また、解決したい被害に対し、被害者同士の利害が一致せず足並みがそろわないことも。それにより、集団からの途中離脱を余儀なくされたりするかもしれません

社会的な意義があり注目が集まることも、場合によっては悪い意味になりかねません。裁判は誰にでも開かれた場であるため、被害者本人が望むと望まないにかかわらず、制度として公開されてしまうため、傍聴以外に報道をされてしまう可能性はあります。

報道によって多くの人に知られてしまうと、様々な人が推測も含めた感想を口にすることになります。

インターネット上やその他の場所における、名誉毀損や侮辱のリスクはゼロではありません。報道は判決文そのものを全て伝えるわけではありませんので、結果に至るまでのプロセスを知らない人に不当な批判をされることもあるわけです。

このほか、仮に勝訴したとしても訴えた相手に資金がなければ損害賠償を回収するのが難しいことは、個人の訴訟と同じです。

下記の記事でも集団訴訟と個人訴訟、メリットやデメリットについて解説をしています。



4.まとめ

  • 被害者がネットで仲間を募るプラットフォームサービスが好調

  • 詐欺や労働問題、消費者問題など、様々な分野の手段訴訟が立ち上がり、世の中の注目を集めています。

  • 仲間がいることで心強い反面、集団訴訟をするリスクも存在します。被害回復の手段はよく考慮をしましょう。

おわりに

様々な被害者がこれまで諦めてきた被害の回復手段が、インターネットサービスの普及により変化してきました。

個人のSNSや掲示板ではなかなかままならなかった、「被害の共有」と「同じ被害者への呼びかけ」が可能になる時代がやってきています。

泣き寝入りしている人が少しでも救われる社会になることが望まれます。

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