45時間以上の残業はブラック企業?判断の基準となる3つの指標を紹介

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投稿日時 2018年11月09日 19時46分
更新日時 2018年11月09日 19時46分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 長時間残業を毎日行っている人

  • 残業時間の一般的な目安や平均を知りたい人

  • 会社がブラックではないかと疑っている人

はじめに

「これぐらいの残業、社会人なら普通だ」

長時間労働について先輩社員に相談したら、こんな返答がきた……なんてことはありませんか?

社会人として初めて勤めた会社の場合、ほかの会社の実態や社会的な傾向がわからず、言われるがままに働かされることがあります。

しかし、感覚がマヒしているだけで、その実態はブラックなのかもしれません。

この記事では、残業時間の上限のきまりや過労死ライン、さらに業種別の平均残業時間などの基準について解説していきます。

自分の会社がブラックかどうかの判断基準に役立ててください。


1.この基準に注目!2つの数字からブラック企業かどうかを見極めよう



ブラック企業かどうかを判断するためには、

「45時間」
「80時間」

の2つの数字が重要な基準となります。

以下、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

①「45時間」=月の残業時間の上限

残業時間には、36協定(サブロク協定)という協定により上限が定められています。基本的に、1ヶ月45時間(3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者は42時間)の残業が上限です。会社はこの時間を超えて、残業させることはできません。

そのため、いつも一か月に45時間以上の残業をさせている企業は、ブラックの可能性があると判断できます。

しかし一方で、決算間近の繁忙期など、1ヶ月45時間以上の残業をしないと仕事が終わらないケースもあります。そうしたケースに対応するため、36協定には「特別条項」という残業時間の例外を設けることができる仕組みがあります。

この特別条項を定めている場合、年6回(6ヶ月)までなら、この残業時間を超えてもよいとされています。さらに2018年11月現在、延長時間には上限が定められていません。

また、以下の4つの職種は、36協定の対象にならないとされています。

  • 工作物の建設等の事業
  • 自動車の運転の業務
  • 新技術、新商品等の研究開発の業務
  • その他厚生労働省労働基準局長が指定するもの(造船事業における船舶の改造又は修繕に関する業務、郵政事業の年末・年始における業務等)
(引用元:厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引」)

いずれにせよ、こうした上限を悪用し、ほぼ毎月のように45時間以上の残業を強いているような場合は、ブラック企業である可能性が高いとみてよいでしょう。

  • 36協定を締結していないケースもある

    本来、従業員に残業をさせるときは、企業は必ず労働者の代表と36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。しかし、平成25年労働時間等総合実態調査によると、36協定を締結している事業場割合は55.2%にとどまり、中小企業では43.4%の企業しか締結していません。

    締結していない理由(複数回答)としては

    「時間外労働・休日労働がない」( 43.0%)
    「時間外労働・休日に関する労使協定の存在を知らなかった」(35.2%)
    「時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結・届け出を失念した」(14.0%)

    としています。

    協定を締結していない場合、そもそも残業をさせていること自体が違法行為となるものの、「36協定を締結していないから、上限規制を破っても関係ない」と考えている企業も存在している……かもしれません。

    36協定についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。


  • ②「80時間」=「過労死」の危機!

    2~6ヶ月の平均残業時間が80時間以上、もしくは死亡する1ヶ月前に100時間を超える残業は、厚生労働省によって「過労死ライン」と定められており、この時間を超えて働くと、脳や心臓などの疾患リスクが高まるとされています。

    この基準を超えて働いたことによる死亡が、いわゆる過労死です。

    つまり「80時間」の残業は、人を死亡させるレベルの激務であるということ。このラインを超えた残業を常に強いる会社は、間違いなくブラック企業といえるでしょう。

    厚生労働省も過労死0をめざしており、

    • 週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下に(2020年まで)
    • 年次有給休暇取得率を70%に(2020年まで)
    • メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上に(2022年まで)

    とする目標を掲げています。
    (参考:厚生労働省「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ STOP!過労死」)

    また、月80時間以上の残業が常態化していた場合、普通の会社なら業務改善を行い、残業時間を減らそうとします。そうしないと、社員の健康が損なわれるだけでなく、会社の経営から見ても、社員に支払う残業代が高額になってしまうからです。

    給与がそこまで高くないのにも関わらず残業時間が長すぎる場合は、適正な残業代が支払われていない可能性があります。

    補足:2019年4月1日の法改正により、上限を超えた残業に罰則

    ①でお伝えした通り、これまでは何時間残業をさせても、会社に法的な罰則を与えることができませんでした。しかし、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)の労働基準法改正により、長時間残業に罰則が設けられることになりました。

    改めて定められるルールは、以下の通りです。

    ◎残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
    (月45時間は、1日当たり2時間程度の残業に相当します。)
    ◎臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
    • 年720時間以内
    • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
    • 月100時間未満(休日労働を含む)
    を超えることはできません。
    (月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当します。)
    また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
    (引用元:厚生労働省「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」)

    現状、この基準を超えている場合、各企業は基準に合うように労働状態を整備していくと考えられます。しかし、法施行前に社内改革の動きがなかったり、そもそも対応しようとしていない場合は、会社体制に問題があります。ブラック企業といっていいでしょう。

    また、このルールを守っている場合でも、月100時間、複数月平均80時間の残業は過労死ラインであることに変わりありません。

    「45時間」、「80時間」の基準を頻繁に超える会社には、注意をしましょう。

    2.残業時間の平均は?業種別にチェック!



    もうひとつの指標として、業種別の残業時間平均との差を見る、という方法あります。下記に業種別の平均残業時間をまとめましたので、比較してみてください。

    ただし、これらは自己申告なので、サービス残業をさせている可能性もあります。また、職種ごとに残業時間も変動するため、あくまで参考程度にとどめましょう。

    一般労働者
    産業 所定外労働時間
    調査産業計 14.6
    鉱業,採石業等 11.6
    建設業 15
    製造業 17.9
    電気・ガス業 14.4
    情報通信業 16
    運輸業,郵便業 27.8
    卸売業,小売業 11.6
    金融業,保険業 12.7
    不動産・物品賃貸業 14.8
    学術研究等 15.2
    飲食サービス業等 16.5
    生活関連サービス等 11.1
    教育,学習支援業 12.1
    医療,福祉 6.9
    複合サービス事業 7.5
    その他のサービス業 14.5
    (引用元:毎月勤労統計調査 平成29年分結果確報第2表 月間実労働時間及び出勤日数(事業所規模5人以上、平成29年確報))

    いかがでしょうか。

    この数値とあまりにもかけ離れていたら、過酷な労働環境だといえるかもしれません。


    3.残業は長いが給料は低い……。残業代未払いへの対処法



    これまで見てきた中で、明らかに自分の残業時間が長いとわかった人もいたと思います。そんなときは、自分の身体や心が限界に達する前に、会社を退職する勇気を持つことも大切。

    また、長時間の残業にともなって問題となりがちなのが、残業代の未払い、つまりサービス残業です。長時間の残業があるにも関わらず、給料が低すぎる……という場合は、そもそも本来もらえるはずの残業代が支払われていない可能性があります。

    下記の内容を参考に、自身の残業代をチェックしてみてください。

    あなたの残業代、本当はいくら?

    (ここに残業代未払いのタグをいれる)
    いますぐ診断


    ①本来の残業代を確認する

    まずは本来、支払われるべき残業代を計算してみましょう。詳しい計算方法はこちらの記事でご紹介しています。



    ②雇用形態を確認する

    残業代が明らかに支払われていない!請求しよう!……とすぐに行動するのは禁物。

    もしかしたら、あなたの雇用や給与形態が問題かもしれません。

    たとえば、一定の残業時間を給与にあらかじめ含めておく固定残業代制度(みなし残業)を導入していた場合、会社側があらかじめ残業代を基本給に含んでいる形になります。みなし残業が20時間で、実際の残業時間が21時間だった場合、会社側が改めて支払うのは1時間分の残業代だけということになるのです。

    自分の雇用契約を確認し、残業時間がどのように扱われているのか調べておきましょう。

    詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。



    ③証拠を集めて残業代を請求する

    もし、本当に残業代の未払いがあった場合は、それを請求するための証拠をを集めましょう。

    例として、

    • 分刻みで退社時間を書いたスケジュール帳
    • 退社直前に会社の時計を撮影した写真
    • メールの送受信記録

    などが有効です。

    そのほか、雇用契約がわかる書類や実際に支払われた金額がわかる給与明細なども用意しておくとよいでしょう。

    こうした証拠を集めてから、未払い残業代の請求を行います。ただし、未払い残業代の請求には2年の時効があるため、手間取っているとどんどん時効を迎えてしまいます。一度決めたら、早めに行動に移したほうが請求額も多くなります。

    残業代の請求方法や時効については、下記記事を参考にしてください。





    4.まとめ

    • 残業時間が多すぎるかどうかは、①45時間=1ヶ月の残業時間の上限(例外あり)、②80時間=政府の定める過労死ライン、を基準に判断しよう。

    • またもうひとつの基準として、業界の平均残業時間との差をはかるのもひとつの方法。

    • 長時間残業なのにも関わらず賃金が低ければ、残業代を支払われていない可能性がある。自身の雇用形態などを確認し、未払い残業代を請求することもできるので、証拠を集めておこう。

    おわりに

    いかがでしたか。

    長時間の残業は、いずれ心身をむしばんでいきます。

    「慣れているから平気」と思っている方も、いまいちど、自分の雇用環境を見直してみてください。


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