未払い残業代を取り戻せ!今すぐ使えるカンタン計算式&請求法3選

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投稿日時 2018年07月30日 18時50分
更新日時 2018年07月30日 18時50分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 会社を退職後、残業代の請求をしたいと思っている人

  • 長時間のサービス残業に悩んでいる人

  • どういう仕組で残業代が計算されているのか気になる人

はじめに

あなたは、残業代が未払いだったりしませんか?
 
近年になって、残業代を会社に請求するケースが増加しています。

100万円以上の金額を請求できる可能性もあり、また証拠さえしっかりと残っていれば、比較的高い確率でお金が返ってくる残業代請求。

実際にどの程度お金がもらえるのでしょうか? また、請求するためにはどんな方法があるのでしょうか? この記事で紹介していきたいと思います。


1.残業代いくらもらえる? 今すぐ使えるカンタン計算式



残業代請求をする前に、自分が本来どれだけ残業代をもらえるのか?というのを知りたいところ。細かな説明はともかく、まずは簡単に概算ができる式を用意してみました。

残業代 = ①時給 × ②残業時間 × ③1.25(割増率)

たとえば、①時給2,000円で②月の残業時間が40時間であるとき、残業代は、

①2,000円 × ②40時間 × ③1.25 =100,000円

と計算できることになり、一年間になおすと120万円の残業代をもらうことができる計算となります。

しかし、月給ベースでお給料をもらっている場合、①の時給は、どうやって計算すればよいのでしょう。また、②の残業時間や、③の割増率についても、あなたがどういう形で働いているかによって細かく変わってゆきます。

それぞれの求め方について詳しく解説していきましょう。

①時給の計算方法

月給ベースでお給料をもらっている場合、時給は以下の計算式で求めることができます。

(月給-各種手当) ÷ (8時間×1ヶ月の勤務日数

各種手当とは、

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 単身赴任手当
  • 子女教育手当
  • ボーナス、臨時の給与など

です。これらの額を月給から引いた数字が、時給計算のベースとなります。

たとえば、月給が25万円(うち住宅手当1万円、通勤手当2万円、家族手当2万円)の給与をもらい、月20日出勤していた場合を考えてみましょう。

このとき1ヶ月あたりの時給は、

(25万-1万-2万-2万) ÷ (8時間×20日) = 1,250円

と計算することができます。
ただし、交通費が距離に関係なく月1万円支給される場合など、定額で社員全員に支給される手当は、月給とみなすことができます。この場合は給与から引く必要がありません。

また、会社によっては年俸ベースでお給料をもらっている人もいるかもしれません。
その場合は下記のような計算式で時給の計算ができます。

(年俸-各種手当) ÷ (8時間×1年間の勤務日数)

誤解している人も多いのですが、年棒制であっても、企業は従業員に残業代を支払う必要があります。法律で規定されている時間以上に働いている場合は、超過したぶんの残業代を請求することができるのです。

年俸1,000万円で年間交通手当が12万円、住宅手当が28万円、勤務日数が年間240日の場合を考えてみましょう。

(1,000万-12万-28万) ÷ (8時間×240日) = 5,000円

となり、時給は5,000円となります。

②残業時間の計算方法

残業時間とみなされる時間は、基本的に「1日8時間以上、または週40時間以上」が基本となります。たとえば9時から17時までの8時間労働で週5日勤務している人である場合、17時を過ぎて以降の仕事時間はすべて残業時間として扱われます。

ただし、いくつかの特殊な勤務形態の場合、残業時間を数える方法が変わってきますので注意が必要です。

  • みなし残業制(固定残業制)をとっている場合

みなし残業制(固定残業制)とは、たとえば「月40時間分の残業代を給与に含める」というように、事前に残業代を給与に含める制度のことです。40時間ぶんの残業代がすでに支払われているため、請求できるのは月40時間を超えた分の残業代のみということになります。

ただし、みなし残業代が時給に換算した額よりも明らかに低いという場合や、あらかじめ月に何時間ぶんの残業を支払う、ということを雇用契約書にきちんと記載していない場合などは、みなし残業であっても残業代を請求できることがあります。

  • 変形労働時間制をとっている場合

先程も言った通り、通常は「1日8時間以上、または週40時間以上」の勤務が残業としてカウントされますが、変形労働時間制の場合、週ごとではなく、一ヶ月や一年といった長期間で労働時間が決められます。

一ヶ月の労働時間は月の日数によって変わり、下記のように上限を定められています。

一ヶ月の日数 労働時間の上限
28日 160時間
29日 165.7時間
30日 171.4時間
31日 177.1時間

たとえば、ある月に下記のような労働時間があったと仮定しましょう。
(月の日数を30日と仮定します)

一週目:45時間
二週目:42時間
三週目:38時間
四週目:35時間
五週目:16時間

合計 :176時間

通常の労働形態の場合、仮に三週目と四週目の勤務時間が少ない場合でも、一週目と二週目の7時間は残業とみなされます。しかし、変形労働時間制を採用した場合は、一週間の労働時間が上限の177.1時間よりも少ないため、残業代が発生しないことがあります。

変形労働時間制は、主に忙しい時期とそうでない時期で仕事量が大幅に変わるような仕事に設定されることが多いようです。

ただし、この場合も企業は変形労働時間制を採用することをあらかじめ働く人に伝える義務がありますし、いつ、どれだけの時間働くかを事前に決めておく必要があります。

その上限を超えた場合は当然残業代が発生しますので、これも請求することが可能です。雇用契約などを確認し、どのような形で労働時間が設定されているのかを確認したほうがよいでしょう。

  • フレックスタイム制の場合

変形労働時間制と同じような仕組みとして、フレックスタイム制があります。

これは一日のうち、必ず出社が必要な時間(コアタイム)を決め、それ以外の出社時間や退社時間を働く人が自由に決めることができるという仕組みです。コアタイムは絶対に必要というわけでもないため、会社によっては、いつ出社していつ退社してもOKとなっている場合もあります。

フレックスタイム制の場合の残業時間も、基本的には変形労働時間制と同じような形で判断されます。つまり、会社が定めた期間(多くの企業では1ヶ月)での労働時間が一定以上となったとき、残業代が発生することになります。

フレックスタイムの場合でも、一ヶ月の労働時間の上限は変形労働時間制の場合と同じく下記の通りとなっています。

一ヶ月の日数 労働時間の上限
28日 160時間
29日 165.7時間
30日 171.4時間
31日 177.1時間

たとえば、フレックスタイム制により「一ヶ月の勤務時間を160時間とする」と定めた場合、一ヶ月で160時間以上働いた時間が残業時間として加算される形となります。

ただし一方で、事前に企業が決めた労働時間よりも実働時間が少ないとき、余った労働時間が翌月へ繰り越しになったり、賃金がカットされるケースもあるため注意が必要です。

たとえば一ヶ月の労働時間を160時間と定めていたにもかかわらず、ある月は150時間しか働かなかったとします。その場合、残った10時間の労働時間は翌月の労働時間に加算され、160時間+10時間=170時間以上働かないと残業代が発生しません。
※ただし、この合計額は先程の表の上限を超えてはいけないとされています。

また、会社によっては、足りなかった10時間分の給与を月給から引く規定を定めていることもあります。

その他にも、商業(卸売業、小売業など)、映画・演劇業(映画・演劇などの興行)、保健衛生業(病院、保育園など)、接客娯楽業(飲食業、ホテルなど)といった特殊な職業の場合は、一週間あたりの労働時間を40時間から最大で44時間まで増やせる特例措置があります。

雇用契約や就労規則を確認し、どのような形で労働時間が定められているのかを把握しておきましょう。

  • 裁量労働制の場合

裁量労働制とは、「あらかじめ日に○時間働いたとみなす」という制度で、フレックスタイムよりもさらに出勤や退勤時間を自由に決めることができます。一方で、実際に働いた時間に関係なく勤務時間が判断されるため、たとえば「一日8時間働いたとみなす」という規定があった場合、たとえ実際は10時間働いていたとしても、勤務時間は8時間とみなされ、残業時間としてはカウントされません。

ただし、裁量労働制であっても深夜労働休日出勤は残業代支払いの対象となるため、残業代としてカウントすることができます。

また、たとえば「一日9時間働いたとみなす」というように、「一日8時間、週40時間」という上限を超える勤務時間を設定していた場合は、超えたぶんの時間は残業代に含まれます。上記のように「一日9時間」と決められていた場合だと、毎日一時間は残業時間として数える形となります。

裁量労働制は、主に会社の経営に関わる企画、分析、調査といった仕事を行うものや、コピーライター、編集者、研究職、弁護士、建築士といった特定の専門職にのみ適用されます。一般的に残業代が出にくい制度ではありますが、場合によっては請求が可能なこともありますので、勤務の状況を確認してみましょう。

③割増率の計算方法

残業代の賃金は、通常の時給よりも多く支払わなければなりません。この「残業代をどのくらい多く支払うか」を表す数字のことを割増率といいます。

この割増率は、通常は25%として計算します。賃金の時給が2,000円だとすると、一時間残業した場合の残業代は、

2,000円 × (1+0.25) = 2,500円

として計算されることになります。
ただし、この割増率は、長時間の残業や深夜労働、休日出勤をした場合によって様々に変わります。

下記の表の通りまとめましたので、参考にしてください。

種類 割増率 時給1,000円とした場合の
1時間あたりの残業代
通常の残業(法定時間外労働) 25% 1,250円
1ヶ月60時間を超える残業 50% ※注1 1,500円
深夜労働(22時~5時) 25% 1,250円
休日労働 ※注2 35% 1,350円
残業+深夜労働 25%+25% 1,500円
深夜労働+1ヶ月60時間を超える残業 25%+50%
※注3
1,750円
休日労働+深夜労働 35%+25% 1,600円

※注1 中小企業の場合は適用されません。
※注2 各会社の決めた休日(法定休日)に働くことを指し、土・日曜以外の場合もあります。
※注3 中小企業の場合は適用されません。


では、こうして算出された残業代が実際に支払われた額よりも少ない場合、どうすればよいでしょうか? 次の章では、請求の方法を紹介していきます。


2.実際に残業代を請求するまでの3つのステップ



未払いの残業代は、会社と話し合って支払ってもらうのが最も基本的な方法です。

ただ、会社側が認めない場合もありますし、そもそも退職しているなどで話し合いの機会が持てないこともあるでしょう。

そんな場合の請求方法として、①内容証明郵便による請求、②労働審判による請求、③労働訴訟による請求、の3つのステップがあります。

それぞれの方法について、詳しく説明していきます。

①内容証明郵便による請求

内容証明郵便とは、郵便局が「○月○日に、誰が誰にたいしてこのような内容の文章を送りましたよ」と証明してくれる郵便のことです。この方法で送った文章は、国がその内容を証明した公文書として扱うことができます。

内容証明を利用して請求書を会社に送ることで、「この日に私は会社に残業代を請求しました」という法的な証拠を作ることができます。この内容証明を無視した場合は後の訴訟で不利となるため、会社にプレッシャーを与えることができるのです。

さらに、内容証明郵便の請求書には未払い残業代の時効を遅らせる効果もあります。

未払いの残業代は2年間を過ぎると時効となり、請求することができなくなります。しかし、内容証明で請求書を送っておくことで、文書を作った日から2年間までさかのぼって残業代の請求をすることが可能となるのです。

訴訟を起こすには証拠集めなどの時間がかかるため、退職してから請求までの期間が空いている場合、時効となった残業代の請求ができなくなるおそれがあります。そんなときに内容証明郵便を出しておくことで、安心して準備を進めることができます。

ただし、時効を中断できるのは内容証明郵便を送ってから6ヶ月以内。それをすぎると、通常通りの時効となりますので注意しましょう。

②労働審判を行うことによる請求

労働審判とは、賃金トラブルや不当解雇といった労働に関する問題について、企業側と労働者で話し合いでの解決を目指しつつ、それでも難しい場合は裁判所が解決策を提示するという手続きのことです。

証拠や主張の検討(審理)は3回までと決まっているため、徹底的にどちらが正しいかを争う訴訟よりも労力や期間も少なくてすみ、通常の訴訟ではおよそ一年かかるところを、3ヶ月から半年で解決できるというメリットがあります。

ただし、話し合いの争点が複雑になりすぎて3回ではとても終わらない場合や、審判の結果に不服がある場合などは通常の裁判に移行することになりますので、注意が必要です。

労働審判は、通常の訴訟よりも手続きが簡略になっているものの、証拠書類の準備のほか、話し合いにおいては法的な知識も必要になってきます。

審判がうまくいかなかった場合は通常の訴訟になってしまいますので、あらかじめ弁護士に依頼しておいたほうが無難といえるでしょう。

ただその場合、弁護士費用が必要となってきます。

労働審判にかかる弁護士費用は請求する残業代の額によっても変わってきますが、 おおよその相場は下記となります。

着手金(依頼時に支払うお金) 10~30万円
報酬金(残業代が戻った後に支払うお金) 得られたお金のおよそ20%

③労働訴訟による請求

労働審判でも解決が難しい場合は、通常の訴訟へと移行することになります。

費用も期日も長くなるため、こうなってくるとかなり負担が大きくなります。

個人で訴訟を起こす少額訴訟という手段もありますが、労働審判での解決がうまくいかなかった場合は拒否される可能性が高く、結局は通常の訴訟となってしまうでしょう。

このような場合、集団訴訟という方法が利用できるかもしれません。

集団訴訟は、おなじ被害をおなじ相手から受けたものどうしで、一緒に訴訟を起こすことを指します。

会社の人の入れ替わりが激しく、多くの退職者がいるような場合、団結して集団訴訟を起こすことで、ひとりあたりの費用を減らすことが可能となるかもしれません。


この章では、残業代を支払ってもらうための方法について説明してきました。では実際に請求をする場合、どんな証拠を用意しておいたほうがよいのでしょうか?

次の章で解説していきます。


3.どんなものがあれば確実?準備しておいたほうがよい証拠リスト



残業代を請求するためには大まかに、①どのように労働時間が定められていたのかを示す証拠(就業規則や雇用契約書)と、②実際はどのように働いていたのかを示す証拠(タイムカードなど)のふたつが必要になってきます。

①雇用契約書や就業規則のコピー

これらの資料は、「どういう条件で雇用されていたのか」を知るための証拠となります。

  • 残業代や給与はどのように計算されているか?
  • 始業時間と終業時間はいつか?
  • 休日はどのように設定されているか?
  • 残業の有無についてはどのように定められているか?

これらの内容は、雇用前にかならず労働者に通知していなければなりません。
雇用契約書や就業規則が存在しない場合や、こうした内容がそもそも記載されていない場合は違法ですので、かならず記載されたものをもらうようにしましょう。

②タイムカード、日報など、実際の勤務時間がわかる資料

雇用契約書や就業規則を確認したあとは、「実際にどのくらい働いていたのか?」を示す費用が必要となります。

一番確実な証拠となるのはタイムカードでしょう。ただし、企業によっては定時にタイムカードを無理やり押させ、そのあとでサービス残業を行わせるといった実態もあります。

その場合は、仕事内容と勤務時間を書いた業務日報や、仕事で送信したメールの日時・内容なども証拠とすることができます。

それさえ無い、あるいは会社に改ざんを強要されたという場合でも、帰社するときに使ったタクシーの領収書や、Suica・PASMOといったICカードの使用記録なども証拠とすることができます。

また最近では、勤務時間を記録するアプリなども登場しているので、そうしたツールを活用してもよいかもしれません。

③それでも証拠がない場合は……?

すでに退職してしまってから残業代の請求を思い立った場合など、証拠がほとんど手元にないというケースももちろん考えられます。

ただ、こうした場合でも残業代を請求することは可能です。

労働基準法では、「賃金その他労働関係に関する重要な書類」を労働者が辞めたあとも3年間は保存しておく義務があり、労働時間の記録もこの中に含まれます。

つまり、退職したあとでもこれらの書類を裁判で請求することは可能なのです。

ただし先述のように、日報やタイムカードがそもそも偽装されている場合などもありますし、そもそも残業の証拠がまったくない状態で訴えるというのもハードルが高いため、在職中から労働時間の記録はとっておいたほうがより確実でしょう。


4.まとめ

  • 残業代の計算方法の基本は①時給×②残業時間×③1.25。ただし、時給や残業時間にはさまざまな計算方法がある。

  • 未払い残業代の請求には、おおまかに①内容証明による請求、②労働審判を行うことによる請求う、③労働訴訟による請求、の3つがある。

  • 未払い残業代請求の際には①雇用契約書や就業規則のコピー、②タイムカード、日報など、実際の勤務時間がわかる資料のふたつの証拠が必要。ただしこれらの証拠がなくても、残業代を請求することは不可能ではない。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

もしあなたがサービス残業に従事している場合、あなたが思っているよりずっと多くの残業代が請求できる可能性があります。

労働に対する正当な対価を得るためにも、勇気をもって請求してみましょう。

この記事がその助けになれば幸いです。
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