この記事は以下の人に向けて書いています。
- パワハラ・セクハラ・サービス残業の被害を取り戻したい人
- 会社を訴えるためにはどんな証拠が必要なのか知りたい人
- 訴訟にはどのくらいの期間や費用がかかるのかを知りたい人
はじめに
悪質なサービス残業にセクハラ・パワハラ……。そんなブラック企業に対して「訴訟したい」と思ったとき、どうすればよいのでしょうか。
相手の非を証明し被害を取り戻すには、きちんと証拠を集めることが大切です。
この記事では、すでに退職した人がブラック企業を訴えるためにはどんな証拠を集めればいいのか、弁護士費用や期間はどのくらいかかるのかを解説します。
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1.ブラック企業を訴えるには何が必要?被害ケース別の訴訟手順
ブラック企業を訴える理由としては、主に以下の3つのケースがあります。
①残業代の未払い
②パワハラ・セクハラ
③退職強要
それぞれのケースでどのような証拠が必要なのか、表にまとめました。
ケース |
必要な証拠 |
①残業代の未払い |
・労働契約書
・就業規則
・給与明細
・タイムカードなど |
②パワハラ・セクハラ |
・被害の録音データ
・被害内容がわかるメール
・目撃者の証言
・医療機関の診断書
・周囲の人に相談した記録 |
③退職強要 |
・被害の録音データ
・被害内容がわかるメール
・詳細な状況を記録したメモ
・解雇通知書 |
各ケースでどのようなものが証拠となるのか、詳しく解説していきます。
①残業代の未払い
- どのような残業代が未払いの扱いになる?
会社で決められている労働時間を超えて働いているのに、その分の残業代が支払われていない場合は、未払いということになります。また労働基準法では1日の労働時間は8時間、1週間で40時間までと定められていますので、それを超えて労働したのに残業代が支払われていない場合も、未払い残業にあたります。
未払い残業代の請求権の時効は2年。退職後でも未払い残業代を請求することは可能ですが、時効にかからないよう、なるべく早めに動くようにしましょう。
また、実際の勤務時間に関わらずあらかじめ決めた分の時間だけ働いたとみなす「裁量労働制」や、一定時間の残業代をあらかじめ固定給にふくめる「みなし残業制」で働いているケースなどは、もともと残業代が出ない、あるいは少なくなる場合もあります。
しかし、裁量労働制は一部の職種にしか本来適用できない制度のため、会社が裁量労働制を導入しているといっても、残業代を請求できる可能性があります。みなし残業制に関しても、違法に運用されていた場合は残業時間全ての残業代を請求することが可能です。
裁量労働制やみなし残業制については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
- 証拠となるもの
未払い残業代を請求するときには、大まかに分けて以下の3つの証拠を集める必要があります。
雇用契約書・労働条件通知書・就業規則など、時間外労働をしたときの賃金について書かれている書類 |
給与明細 |
実際の労働時間を証明できる記録(タイムカードのコピー等) |
雇用契約書または労働条件通知書は、基本的には入社する前に会社から渡されるものです。就業規則は退職後には入手しにくいことも多いため、できれば事前に用意しておきましょう。
給与明細には残業時間や支払われた残業代が記載されているため、未払い分の残業代を計算する際に必要となります。ただし会社から支払われた給与の総額は銀行の振り込み履歴でわかるので、給与明細が全てそろっていなければいけないというわけではありません。
実際の労働時間を証明するための記録としては、会社で出退勤時刻を記録したタイムカード以外にも、以下のようなものがあります。
業務用パソコンのログイン・ログオフの記録 |
会社のパソコンから送信したメールの時刻 |
携帯電話から送信した業務メール |
オフィスの入退室記録 |
上司から残業を指示されたメールやメモ |
働いていた事業所や店舗の営業時間 |
残業時間を記録するアプリのデータ |
毎日の出退勤時間と業務内容を自分で記録したメモや日記 |
通勤に使っていた交通系ICカードの使用履歴 |
これらの証拠の中には、労働者が偽造しようと思えばできるものもあります。そのためできるだけたくさんの証拠を集めることで、信ぴょう性を高めることが重要です。
労働時間に関する証拠は、できれば3ヶ月分以上は集めたいところです。実際に働いていた時間の手がかりになりそうなものは何でも集める、という気持ちで証拠を集めましょう。
②パワハラ・セクハラ
- パワハラ・セクハラで損害賠償を請求できる?
パワハラやセクハラが原因で退職せざるをえなくなった場合や、うつ病になってしまった場合は、加害者や会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、ちょっとした言葉によるセクハラなど、被害の程度が小さいと考えられる場合は、たとえ被害者がいやな気持ちになったとしても多額の損害賠償を請求することは難しいです。
また相手がパワハラ・セクハラを素直に認める可能性は低いため、できるだけ多くの証拠を集めることが重要になります。
- 証拠となるもの
パワハラやセクハラをされたときに、小型カメラやICレコーダーで映像・音声を記録できていれば、証拠としてはベストです。しかし実際には録画・録音は難しいというケースが多いため、その他の証拠を集めることでもパワハラ・セクハラの存在を証明することができます。
パワハラ・セクハラの証拠としては、以下のようなものがあります。
被害を受けたときの映像や音声のデータ |
パワハラ・セクハラの内容が含まれるメールやメッセージ |
パワハラ・セクハラの内容に関する具体的なメモや日記 |
会社の相談窓口や同僚に相談した記録 |
第三者の証言 |
医療機関の診断書(うつ病などになった場合) |
実際にパワハラ・セクハラがあったということを証明するためには、できるだけ早く動くことが重要です。パワハラ・セクハラを受けても長期間何もしないでいると、「会社を辞めた理由や、うつ病になった原因は他にあるのではないか」と反論されてしまう可能性が高まります。
残業代の場合と同じく、できるだけたくさんの証拠を集めて、賠償請求を有利に進めましょう。
③退職強要
- 退職を強要されたときに損害賠償を請求できる?
会社が労働者に対して退職を勧めること自体は、違法ではありません。しかし以下のような方法で労働者を無理やり退職させようとした場合は、違法な退職強要であり、損害賠償や復職の請求が可能となります。
退職に応じないと不利益な異動や解雇・減給の対象になると言われた |
何時間にもわたってしつこく退職を迫られた |
複数の上司に囲まれた状態で退職勧奨された |
退職に応じないとはっきり言ったのに何度も説得された |
退職強要に関しても、会社を訴えるためには証拠集めがポイントとなります。
- 証拠となるもの
退職強要の証拠になるのは、以下のようなものです。
退職を強要されたときの音声データ |
退職勧奨の内容や退職条件が含まれるメール |
退職強要の詳細な状況を記録したメモ |
退職に応じなかったことによる配置転換や減給の辞令 |
解雇通知書 |
音声データがあればベストですが、ない場合はその他の証拠をできるだけたくさん用意しましょう。
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2.弁護士に依頼しよう!訴訟にかかる費用や期間
ブラック企業を訴えるために弁護士に依頼する場合、どのくらいの費用や期間がかかるのかを解説します。
①タイプ別・期間の目安
会社に対して残業代や損害賠償を請求する方法としては、会社との交渉・労働審判・訴訟の3つがあります。
- 交渉
弁護士をたてて会社と直接交渉する場合、会社側がどのような方針でくるかによってかかる期間も変わってきます。基本的には訴訟よりもスピーディーに交渉が進むため、短ければ1ヶ月以内に結論が出る可能性もあります。
逆に1ヶ月経ってもお互いが合意できそうにない場合、訴訟に移行することも視野に入れる必要があるでしょう。
- 労働審判
労働審判とは、裁判所で裁判官と労働審判員が労働者と会社の間に入って話し合い、和解案を提示する紛争解決方法です。訴訟よりも迅速に結論を出すことを目的としているため、だいたい3ヶ月以内に終了します。
ただし当事者のどちらかが和解案に納得できなければ訴訟に移行するしかないため、労働審判で必ず解決できるとは限りません。
また労働審判は労働者と会社の間の紛争を解決するための制度なので、パワハラやセクハラの場合でも、会社の責任を追及する形になります。
- 訴訟
会社との交渉や労働審判で解決できない場合は、訴訟を起こすことになります。訴訟ではお互いの主張や証拠を確認したうえで強制力のある判決を出すため、勝訴すればかなりの期間がかかってしまうのがデメリットです。短くても3ヶ月、長ければ1年以上の期間がかかってしまうこともあります。
②弁護士費用の目安
弁護士に依頼した場合にかかる費用は、主に以下の4つです。
相談料:依頼する前に弁護士に相談する際にかかる料金
着手金:正式に弁護士と契約する際にかかる料金
実費:書類の郵送代や通信費など、手続きの中でかかった費用
成功報酬:残業代や賠償金を勝ち取った場合に支払う料金
以下では残業代未払い、パワハラ・セクハラ、退職強要に関して弁護士に依頼した場合の費用をそれぞれ説明します。
- 残業代未払い
未払い残業代の請求を弁護士に依頼した場合にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
相談料:0~1万円
着手金:0~20万円
実費:1~2万円
成功報酬:10~25万円+回収した残業代の約20~35%
未払い残業代の請求に関しては、着手金無料で引き受けている弁護士も増えています。ただし着手金が安いほど成功報酬は高くなる傾向にあるため、弁護士に依頼する際は全体の費用を考慮しましょう。
- パワハラ・セクハラ
パワハラ・セクハラの損害賠償請求を弁護士に依頼した場合にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
相談料:0~1万円
着手金:0~30万円
実費:1~3万円
成功報酬:損害賠償金額の約20~30%
パワハラ・セクハラでは、被害の程度によって賠償金額がかなり変わってきます。賠償金額が低すぎて着手金で赤字になってしまった、といったことにならないように注意しましょう。
- 退職強要
退職強要の損害賠償請求を弁護士に依頼した場合にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
相談料:0~1万円
着手金:0~30万円
実費:1~3万円
成功報酬:損害賠償金額の約20~30%(損害賠償ではなく復職を請求して認められた場合は、月給の1~3ヶ月分)
復職する場合は得た利益の金額がわからないため、月給をベースに成功報酬を決定するケースが多いです。
③弁護士探しのコツ
ブラック企業を訴えるときにはどのような弁護士に依頼すればいいのか、弁護士探しのコツを紹介します。
弁護士にはそれぞれ得意分野があり、労働系に強い弁護士、離婚など家族関係に強い弁護士、企業同士の紛争解決に強い弁護士などさまざまです。残業代請求やパワハラ・セクハラの問題解決を依頼するのであれば、労働問題の実績が豊富な弁護士を探しましょう。
地域名や「残業代請求」などのキーワードで検索して弁護士のホームページをみつけたら、以下の点をチェックしてみてください。
- 労働問題の解決事例を載せているか
- 着手金と報酬金の額が相場からかけ離れていないか
- 自宅から通いやすい立地にあるか。
できれば複数の弁護士のホームページを比較して、実績が豊富そうな弁護士に依頼すると良いでしょう。ただし依頼人と弁護士の相性もあるので、相談してみて話が合わないと思ったら、別の弁護士に相談してみるのもひとつの手です。
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3.仲間を集めて請求できる?集団訴訟でブラック企業を訴える
「集団訴訟」とは、同じ相手から同じような手口で被害を受けた人が集まって訴訟を起こすことです。ブラック企業では、同じ会社で多くの人が被害にあっていることが多いため、集団訴訟を利用できる可能性があります。
ここでは集団訴訟のメリットや、集団訴訟を起こす方法について解説します。
①集団訴訟によるメリット
集団訴訟のメリットとしては、以下の3つがあげられます。
集団訴訟では他の参加者と情報を共有し、全員で集めた証拠を利用できるため、
ひとりで訴訟を起こすよりも多くの証拠を用意できる可能性が高くなります。
未払い残業代請求やパワハラ・セクハラ、退職強要に関する訴訟では証拠の量が重要なので、証拠を集めやすいのは大きなメリット。
また弁護士費用を参加者全員で折半することができるため、
大勢が集まれば、ひとりあたりの負担が軽くなる可能性もあります。大勢で訴えることで会社へのプレッシャーが増し、より確実に対応を迫ることができるというのもポイントでしょう。
②集団訴訟を起こす方法
労働問題に関する集団訴訟を起こすためには、同じ会社で働いていた人たちに声をかけて、仲間を集める必要があります。自分と同じような被害を受けていた人を知っているのであれば、メールやSNSで連絡をとってみると良いでしょう。
集団訴訟について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
4.まとめ
- 未払い残業代を請求するときは、実際の労働時間の手がかりとなる証拠を集めることが重要
- パワハラ・セクハラは、音声データ以外にも具体的な状況メモや日記、相談した記録などが証拠となる
- 意に反して退職を強要されたときも、損害賠償を請求できる可能性がある
- 弁護士費用は主に着手金+成功報酬だが、着手金無料の弁護士も増えている
- 集団訴訟にすると、弁護士費用や証拠集めの面で利点がある
おわりに
ブラック企業を訴える際に必要となる証拠の種類や、弁護士費用、交渉・訴訟にかかる期間について解説しました。
退職してしまった後でも、未払い残業代やパワハラ・セクハラ・退職強要の損害賠償を請求することは可能です。
証拠をできるだけ多く集めて、ブラック企業からの被害を回復しましょう。