この記事は以下の人に向けて書いています。
- 日常生活でトラブルが起き、どこに相談したらいいかわからない人
- 国民生活センターはどんなサポートをしてくれるのか知りたい人
- 国民生活センターに相談する際、前にどんな準備が必要か知りたい人
はじめに
日常生活に関するトラブルが起きたら「国民生活センター」に電話するよう、家庭科の教科書に載っていたのを、頭の端で覚えている人も多いのではないでしょうか。
フリマサイトでブランド物を購入したら偽物だった……。
アダルトサイトの広告を間違えてクリックしたら登録完了という文字が表示され、高額の請求をされてしまった……。
健康食品を買ったが体に合わず、クーリング・オフをしようとしたところ、最低4回の定期購入が必要と言われた…。
身近にひそむ様々なトラブルを「しかたがない」であきらめる前に、国民生活センターを利用してみませんか。
この記事では、
国民生活センターがサポートしてくれることや、相談する際の注意点などについて、紹介していきます。
1.自分のかわりに訴訟もしてくれる? 国民生活センターができること3つ
国民生活センターは国が設置する独立行政法人で、
消費者トラブルの情報を全国から集めているほか、消費者と事業者間の
トラブル相談、生活(衣食住)に関する情報提供などを行っている組織です。
同じような役割を持つ機関として、「消費者センター」がありますが、こちらは地方公共団体が設置している行政機関である点に違いがあります。
では、
国民生活センターは具体的にどんなサポートをしてくれるのでしょうか?
この章でくわしく解説していきます。
① 土日祝日もOK!トラブル内容ごとに分かれた相談窓口
まずあげられるのは、
全国の相談窓口の紹介です。
国民生活センターのウェブサイトには全国の消費者センターの一覧、相談窓口のまとめが記載され、相談内容に応じた連絡先を調べることができます。
特に覚えておきたいのは、
総合窓口である消費者ホットライン。
局番なしの
「188」に電話をかけると、自宅最寄りの消費者センターに電話をつないでくれるサービスで、
消費者センターの電話番号を調べる必要がないのが特徴。
さらに、土日、祝日など、
多くの消費生活センターが閉まっているときでも、国民生活センターの専門窓口が相談にのってくれます。
・消費者ホットライン
電話番号 |
188または03-3446-1623(平日のみ) |
受付時間 |
平日 :10時~12時 13時~16時
土日祝日:10時~16時 |
(※受付時間は各地域の窓口によって変わることがあります)
その他にも、いくつかの分野専用の窓口がありますので、あわせてご紹介します。
・多重債務の相談窓口
多重債務とは、借金の編成のために、ほかの金融機関からさらにお金をかりること。
「リストラや失業」「収入の減少」「病気、出産等で働けなくなった」……などの理由により、
気付けば多重債務をしてしまっている人は少なくありません。
多重債務に陥ると、合計でいくら借りているか把握しづらくなり、自分だけで解決することが困難になります。
そんなときの相談窓口を、国民生活センターのウェブサイト内で紹介しています。
こちらから最寄りの窓口を探し、相談してみましょう。
・個人情報に関する苦情相談窓口
「ウィルスなどにより、自分のPCにある個人情報が流出したかもしれない」
「身に覚えのないところから宗教の勧誘電話がかかってきた」
など、
個人情報に関するトラブルに関する窓口です。
自分のトラブルに対する対策や、解決方法を相談するときは、ここから最寄りの窓口を探してみましょう。
個人情報保護委員会がまとめる地方公共団体の苦情相談窓口は
こちら。
上記で紹介した窓口は、電話料金を除けば無料で相談を受け付けてもらえます。
ひとりで悩む前に、まずは気軽に相談してみましょう。
・相談事例の検索
さらに、国民生活センターでは全国で起こった相談事例や判例をカテゴリーごとにまとめており、相談内容から解決までの流れ、
結果やアドバイスなど事細かく調べることができます。
国民生活センター_相談事例と解決結果
ウェブサイト内では検索フォームが設置されている為、キーワードを入力することで該当するページの一覧を見ることができます。
自分が悩んでいる事に近い事例を探し、相談の際の参考にするのもよいでしょう。
②相手業者との交渉をお任せ!ADR(裁判外紛争解決手段)
国民生活センターは、相談に応じるだけでなく、被害者と協力して相手業者と交渉をしてくれる
ADR(裁判外紛争解決手段)というサポートも利用することができます。
ADRは内閣府が認める機関が当事者間に入り、
裁判を行わない形で仲介・仲裁などの解決に導くという手段。
「訴訟を起こすとお金も時間もかかる、けどこのまま泣き寝入りしたくない」
「トラブルの相手や事業者と直接やり取りしていたが、自分では解決できなさそう」
「専門知識のある中立的な立場の人に仲介してもらいたい」
そんなときに利用することができます。
国民生活センターが設置する紛争解決委員会は、弁護士のほか医療・建築・自動車など、各分野の専門家を任命してADRを実施できる体制を整えています。
ADRのメリットは、裁判を行うよりも
費用が少なくて済むこと。
そして
期日もより短い期間で済むことなどが挙げられます。
ただし、
ADRは誰でも利用できるというわけではありません。
利用には申請が必要となり、申請の結果、国民生活センターが
「重要消費者問題である」と判断した場合のみ、解決に動く形となります。
この
「重要消費者問題」の基準として、国民生活センターは2018年8月現在、以下のように定めています。
- 1年で2以上の都道府県で起きている、または起きるおそれがある問題
- 被害者の体や財産に重大な危害をおよぼす、またはおよぼすおそれがある問題
- 事情が複雑、または商品・サービスが新しいため、解決に専門的な手段が必要な問題
これらに当てはまらないと判断された場合、
ADRを利用することはできません。
まずは窓口との相談を通じて、利用できるかどうかの検討からはじめましょう。
③相手を訴えて損害賠償請求!消費者団体訴訟制度
ADRはあくまで「交渉」であるため、相手がそもそもこれに応じないケースや、連絡がとれないというケースもあります。
そんな場合に利用できるのが、
消費者団体訴訟制度です。
消費者団体訴訟制度とは、不当な事業者に対して、当事者である消費者本人ではなく、法律で定められた
「消費者団体」が代わりに訴訟を起こし、損害賠償の請求をしてくれる制度です。
消費者団体に依頼することで、情報量や交渉力で大きな差がある企業と、対等な立場で法的に争うことができるようになります。
国民生活センターでは全国の消費者団体を
一覧にして連絡先をまとめています。
消費者団体訴訟制度のメリットとしては、前述したとおり
国に定められた消費者団体が自身の変わりに加害業者と交渉・法廷に立ってくれることです。
デメリットとしては、平成18年の法改正により導入された新しい制度であるため、実際に訴訟となった事例はまだなく、国に認定された団体も、全国的にみれば少ない状況です。
また、「慰謝料や不良品による怪我の治療費などは請求できない」といった制限もありますので、こちらも注意が必要です。ADRと同じく、まずは自分のトラブルがどのような手助けをしてもらえるのか、消費者ホットラインなどで確認するようにしましょう。
2.相談前に必要な資料・注意すべきポイントは?
前章では、国民生活センターができることについて紹介してきました。
では、実際に国民生活センターに相談する際には、どんなことに気をつければよいのでしょうか? 準備するものや注意点についてまとめました。
①原則として相談者本人が電話する
基本的に、相談者は
実際にトラブルにあっている本人である必要があります。
ただし、認知症や病気を患っている場合は、代理で本人の介護者や見守りをしている人が相談することも認められています。
②氏名や住所、電話番号から性別、年齢、職業などの個人情報を準備しておく。
国民生活センターは、
- 相談者の身元を信用するため
- 追加の情報を伝えるため
- 情報を今後の相談や行政施策に活かすため
といった理由から、相談者の個人情報を聞いています。
もちろん、これらの情報が個人を特定するような形で利用されることはありません。
事前にこうした情報をスムーズに伝えられるようにしておきましょう。
③あらかじめ相談事項の概要をまとめておく
トラブルの内容を時系列で整理し、約款・契約書やパンフレットなど関係書類を手元に集めておいてから各種窓口へ連絡することで、相談がスムーズに進みます。
特にネットに関するトラブルで相談する場合、
問題となったページのURLをプリントアウトしておくのをおすすめします。
フリマサイトやオークションサイトでのブランド偽装の際には、
出品者との会話なども証拠になる可能性があるので、交渉の際にできれば録音しておきましょう。
④トラブルの種類を確認する
注意しておきたいのが、国民生活センターでは
個人間のトラブルや、人間関係のトラブル、労働基準違反や相続トラブルなどの相談にはのってもらえません。
あくまで消費生活に関わるトラブルの相談窓口となっています。
とはいえ、友人・知人からの勧誘で加入することが多いマルチ商法など、消費生活の問題か、私的な人間関係の問題か、線引きが曖昧なケースもありますので、扱ってもらえるかどうか迷ったときは、まず相談してみるとよいでしょう。
3.国民生活センターで解決しなかった場合どうすればいいの?
多くの生活に関する問題の解決策を導いてくれる国民生活センター。
ではその国民生活センターでも
解決できない問題が起きてしまった場合、どうすればいいのでしょうか?
- ADRでは、相手が交渉に応じていないと申請することができない
- 消費者団体訴訟の場合、訴訟までに時間がかかる
- 国民生活センターの管轄外の問題だった
その他にも何かトラブルが起きたときの解決方法を紹介します。
①弁護士へ相談
法律の専門家である弁護士に相談することで、相手との交渉、うまくいかなかった場合の訴訟の準備など、全面的に協力してもらえます。
ただし、弁護士に依頼する際は、どうしても
弁護士費用を払う必要が出てきます。
場合によっては、訴訟費用の先送りができる
訴訟救助という制度や、収入が一定以下の場合、弁護士費用の立替えをしてくれる
法テラスといった団体がありますので、必要であれば利用するのもいいかもしれません。
②少額訴訟
少額訴訟とは、民事訴訟の方式のひとつで、
60万円以下の金銭支払いを求める場合、原則として一回の審判で解決を図ることが出来る制度です。
弁護士に依頼せず訴訟を起こせるため費用が安くすみ、また短期間で判決がでる点も特徴です。
こうした少額で訴訟をする場合の記事については、下記も参考にしてみてください。
③集団訴訟
詐欺などの被害にあった場合、被害者はあなたひとりではない場合がほとんどです。
その場合、おなじトラブルを抱えるひと同士で訴訟を起こす、
集団訴訟という手段も選択肢のひとつになります。
集団訴訟には、
- 証拠や情報を共有できる
- 相手へのプレッシャーになる、
といったさまざまなメリットがあります。
下記の記事で詳しく解説していますので、気になる人は読んでみてください。
4.まとめ
- 国民生活センターは国が消費者のために作った消費トラブル相談機関で、各種相談窓口の紹介や、ADR(裁判外紛争解決手段) といったサポートをしてくれる。
- 消費者ホットライン(局番なしの188)に電話することで、適切な機関を案内してくれる。
- 相談前には、一部の例外を除き必ず本人が連絡する、相談前に必要な情報はまとめて整理しておく、といった準備をしておくとスムーズ。
- 国民生活センターでの相談がうまくいかない場合は、通常の訴訟や少額訴訟などをつかった対応もとることができる。
5.おわりに
いかがでしょうか?
国民生活センターでは、トラブルが起きる前に私たち自身が注意できる情報をたくさん提供してくれています。一人で悩み続けず、まずは気軽に相談してみましょう。
この記事が、悩んでいるひとが一歩踏み出すきっかけとなれば幸いです。