パワーハラスメントはどんなもの?定義と解決手段を3つに分けて紹介

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投稿日時 2019年01月24日 17時02分
更新日時 2019年01月24日 18時35分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • パワハラについて大まかな知識を得たい人

  • 「自分が受けているのはパワハラでは?」と思っている人

  • パワハラを解決するためのヒントを知りたい人

はじめに

「自分が受けているのはパワハラなのだろうか」。

このような悩みをお持ちではないでしょうか? パワーハラスメント(パワハラ)は職場の人間関係上、対処するのは難しいですよね。 でも、そんなパワハラも適切な対処をすることで事態を打開することができるんです。

そこでこの記事では、パワハラについてまとめ、パワハラを解決する方法をご説明します。パワハラに困っている方は、ぜひこちらの記事を活用してください。

1.パワハラの定義はこれ!まず押さえたい6つの基本



厚生労働省の定義によると、パワハラ行為の要素は以下の3つに分類することができます。

  • 精神的・身体的な苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為

    暴力をふるう、暴言を繰り返す、あからさまに無視をするといった、特定の個人にストレスを与える行為のことです。


  • 職場内の地位や人間関係を利用した行為であること

    先輩・後輩、上司・部下といった力関係を背景に、相手に何かを強要することです。明らかに多い仕事を押し付けたり、逆に仕事を取り上げたりといった行為があたります。


  • 仕事で必要な範囲を超えた行為であること

    業務に不必要なプライベートな用事を命じたり、逆に仕事と関係のないプライバシーを執拗に詮索する行為もこれにあたります。

この3つすべてを満たした行為が、パワハラとして認められる形となります。

①どんな言動がパワハラ?具体的な6つの言動

では、具体的にはどんな行動がパワハラになるのでしょうか。

厚生労働省は、パワハラの種類を6つの類型に分けています。それぞれの特徴を下記のようにまとめました。

これ以外にも職場のパワハラは存在しますので、ここに挙げているものが全てではありません。

  • 身体的な攻撃

    直接的な暴力行為で、立場が下の相手の身体に傷害を与える嫌がらせを指します。殴る、蹴る、その他身体を攻撃するものを全て含みます。


  • 精神的な攻撃

    言葉や態度・行動によって相手を侮辱したり、それによって名誉を棄損したり、精神的に追い詰めていったりする行為を指します。「辞めてしまえ」「お前の存在が迷惑だ」などと、職場での立場をなくすような言葉や行為が含まれます。


  • 人間関係からの切り離し

    職場でわざと人間関係から孤立するように仕向ける行為で、業務上必要がないのにひとりだけ違う場所にデスクを与えたり、社内行事に参加させずに仲間外れにするなどが当たります。


  • 過大な要求

    本人の能力に対し、過剰な負担がかかるような業務をひとりでやらせるように仕向けたり、不要な業務をやらせたりすることを指します。このほか、業務への妨害もここに入ります。


  • 過小な要求

    本人の能力や経験、業務上の理由を考慮せず、明らかに軽すぎる仕事しか与えなかったり仕事そのものを全くやらせなかったりする嫌がらせです。


  • 個の侵害

    業務に関係のないプライベートをしつこく聞いたり休日や勤務時間外にも強制的に連絡求めたりするなど、個人の領域へ過度に踏み込んでいく行為です。


より詳しい特徴は以下の記事で解説していますのでこちらの記事を参考にしてください。


②パワハラ以外に問題となる主なハラスメントとは?

職場で問題になるのは、パワハラだけではありません。

近年問題になりつつあるセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)や、立場を問わない嫌がらせ全般にかかわるモラル・ハラスメント(モラハラ)の2つが大きなポイントと言えるでしょう。

ここでは、

  • モラハラ
  • セクハラ
  • その他のハラスメント

について、それぞれ解説をしていきます。

  • モラハラ(モラル・ハラスメント)

    「いじめ」に近い概念と言われるもので、家庭や男女間で聞かれることがありますが、職場でも起こり得る問題です。

    厚生労働省が管轄する独立行政法人労働政策研究・研修機構は、「言葉や態度によって、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力」と定義しています。パワハラとの違いは、上下関係によって起こるものではないことで、部下から上司、同僚どうしの嫌がらせなどがこれに当たります。

    見えない部分の陰湿ないじめも含まれ、わかりやすい暴力や暴言といった形で表に現れるものではないことがあり、発覚しにくく証拠が集めづらい、加害者の自覚も薄いなどというケースが見られます。


  • セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)

    性的な嫌がらせ全般を指します。身体への接触、言葉によるもの、環境によって引き起こされるものを含みます。

    就業時間の内外を問わず、身体の関係を求めることはもちろん、「女(男)はこれだから」「若い子はいいね」「綺麗(イケメン)な人がいるといい」などといった、年齢や性別、容姿を理由に叱責したりする行為で、上記にあるようにたとえ称賛のつもりでも該当します。

    また、直接的な被害者がいない場合でも、卑猥なうわさや話題が絶えない職場環境などもハラスメント対象です。

    モラハラと同様に加害者意識が薄いことも長く指摘されてきており、問題が明るみになっても「そんなつもりはなかった」「合意の上だと思っていた」といった発言はよく聞かれるものです。

    近年では、たとえ当初に「合意があった」とされた場合でも、裁判で被害者の「職場の人間関係を保つためにやむを得なかった」という立場が認められ、「合意があってもセクハラは成立する」となったケースがあります。


  • その他のハラスメント

    他にも、職場に関連するものでは、次のようなハラスメントがあります。

     ・リスハラ(リストラハラスメント)

    人員削減などによる整理解雇(リストラ)の対象者に、自主的に退職するよう圧力をかけ、追い詰める嫌がらせで、合理性のない不当解雇につながる恐れがあります。


     ・ブラハラ(ブラッドタイプハラスメント)

    科学的根拠のない血液型による性格や行動の決めつけによって、業務の注意やいじめの対象としたりするものです。

    このような原因を作ってきたひとつであるテレビ番組では、近年、血液型による行動の分析などは非科学的であるとして、このテーマの内容を規制対象としています。


     ・ソーハラ(ソーシャルネットワークハラスメント)

    TwitterやFaceBookなどのソーシャルネットワーク(SNS)上で、プライベートな環境に踏み込んでフォローや友達申請を強要したり、投稿内容に「いいね」やコメントをつけさせたり、同僚や部下の投稿内容を職場でばらしたりする行為です。

2.パワハラにあってしまったら?身を守るためにできること3つ



では、もし自分がパワハラの被害者だった場合はどうすればいいでしょうか。ここで、自分でもできる対処法を考えていきましょう。

①被害者になってしまったら?

  • 本人と直接対話する

    職場で上司・部下という関係では、上司からのきつい言動が必要以上にこたえてしまうものです。

    ただし、上司も全員がベテランではなく、指導が上手いわけでもありません。経験の有無や本人の性格、被害者との相性により、言葉選びや態度が不適切になるケースもあるもの。未熟であれば、殊更に高圧的な態度を取るのが「上司たるもの」と思ってしまう人もいるでしょう。

    とはいえ、被害者としては日常的にそのような事情も全て考慮してはいられません。

    抑圧的な態度を求められる相手には言いづらいことかもしれませんが、「そういう言い方は傷つくので」「こういう教え方の方が助かります」などと直接伝えてみるのも手です。

    ここで注意したいのは、被害者側も相手の人格などを責めたりしないこと。あくまでも「業務に無用な暴言・行為をやめてほしい」「伝え方に問題がある」という点について言及することです。

    パワハラの自覚がなく、指導方法がわからなかった上司の場合は、こうしたコミュニケーションで緊張が解け、状況が改善する場合もあります。

    それでも理不尽な暴言や悪意ある態度が繰り返されたり、さらに苛烈な嫌がらせに発展したりした場合は、別の手段を選びましょう。


  • 別の上司や会社の相談窓口に相談する

    会社の規模や被害者の立場にもよりますが、加害者の上司のさらに上役に相談するという手段があります。

    一般的にはいきなり上の立場の管理者に相談することは奨励されませんが、やむを得ない場合には声をかけてみましょう。上層部が現場のパワハラの実態を把握していないことは十分にあり得ることだからです。

    ただし、話をする場合は、客観的な証拠を集めて「ただの愚痴ではなくきちんとした問題」であることを告げられるように準備をしておきましょう。証拠についてはこの後の章で説明しています。

    これ以外に、勤務先にハラスメント問題を扱う窓口やメンタルヘルスの産業医などがいる場合は、そちらを利用した方が無難でしょう。

パワハラの加害者・被害者それぞれの立場からの解決法は、下記の記事も参照してください。



②困ったときはここに駆け込もう!相談窓口3つ

  • 労働基準監督署の総合労働相談センター

    社内での解決が難しい場合は、労働基準監督署内の総合労働相談センターに相談してみましょう。

    ここでは労働問題の情報提供と相談を請け負っており、労働問題の専門家からなる紛争調整委員会の話し合いによるあっせん、労働基準法違反が疑われる場合には、勤務先に対し都道府県労働局長による助言や指導が入ることもあります。相談者のプライバシーは保護されますので、勤務先に知られることはありません。

    センターは都道府県内に複数個所あり、受付時間や電話番号は各労働局ごとに異なります。相談の際は、自宅最寄りではなく勤務先を管轄する地域のセンターに問い合わせるようにしましょう。

  • 職場のトラブル相談ダイヤル

    全国社労保険労務士連合会が運営している労働問題の相談窓口です。電話相談後に、対面で対面で詳細な相談となり、相談者と勤務先との話し合い(あっせん)による和解をサポートします。利用には料金が必要で、案件により1080~1万8000円が目安となります。

    電話番号:0570-07-4864
    受付時間:月~金曜 11~14時


  • みんなの人権110番

    パワハラ以外にも対応する、様々な人権侵害があったときの相談先です。先に紹介したセクハラやモラハラについても相談できます。共通の電話番号から最寄りの法務局につながり、専門の職員が受け付けます。法務局の窓口およびインターネットでも相談できます。

    電話番号:0570-003-110
    受付時間:月~金曜 8時30分~17時15分


パワハラの相談窓口に関しては、下記の記事も参考にしてください。



③退職する!その前に、気を付けたいこと4つ

パワハラから逃れる方法のひとつとして退職も挙げることができます。

勤務先にパワハラ被害を訴えたり、外部の相談窓口で解決を試みたりしても事態が改善せず、隠蔽を画策するケースも存在します。

もしかすると、今はあなたの活躍すべきフィールドがたまたま合っていないだけかもしれません。

これ以上時間や人生を浪費したり、心身の苦痛が長引いたりするのを避けるためにも、退職を視野に入れましょう。

退職する際、気をつけておくポイントは次の4つです。

  • パワハラの証拠を残しておく

    あなたが退職しても、パワハラはなかったことになはりません。苦痛を伴う作業ではありますが、その事実を裏付ける証拠を手元に残しておきましょう。

    音声データ、メールやチャットの履歴、ハラスメントによる傷病の診断書、同僚からの証言など、考えられる有用なものは、退職でデータを消去されたり、端末を返却したりする前に保管することが大切です。

    これらの証拠があれば、失業手当の申請時に「パワハラによる会社都合退職」とすることが可能です。たとえ会社側が自己都合退職という形にしても、あとから変更することができるようになります。そうなれば、自己都合による失業手当の給付時期(約3ヶ月後)から大幅に早い約1週間後となります。

    このほか、会社や加害者に対する損害賠償請求を起こすときにも使うことができます。 弁護士への相談方法は、後の章で説明します。


  • 3ヶ月程度の生活費を貯金しておく

    転職先が決まって退職できるケースばかりではないでしょう。仮に転職先が決まっていても、入社後すぐに給料日が来るとも限りません。

    失業してから受け取る失業手当は、退職後に次の勤務先が決まっていない場合、元の給与の5~8割分を給付する制度です。

    上記で紹介した会社都合退職にする失業手当の手続きが必ずしも受理されない場合に備え、当座を生き延びるだけの資金を手元に残すことは大事です。

    また、自治体の生活・福祉担当窓口で「住宅確保給付金」という家賃補助を受けることができます。期間は3ヶ月から最長9ヶ月までですので、必要な人は申請するといいでしょう。


  • 次の転職先に目星をつけておく

    少しでもいいので、在職中から次の転職先のリサーチはしておきましょう。前職の退職から入社時期について考慮してくれる企業もあります。すぐに動けなくても、求人市場の動向を知るだけで退職後に取るべき行動が違ってきます。

    世の中に会社はいくらでもあります。しかし、焦って会社を決めたらまたブラック企業だった……ということにもなりかねませんので、求人広告や業界の評判なども吟味して考えてください。大切なのは、今の職場とその上司や評価が世の中の全てではないということです。

    ブラック企業の見分け方については、こちらの記事も参照してください。


  • 健康保険証の手続きをしておく

    退職は必要な手続きも多く、気力や体力も伴うものです。

    ハラスメントによってそうせざるを得ない場合は、心身が疲弊した結果であることも多いでしょう。経済的な問題を抱えていることもあるでしょうが、傷病を抱えているなら、休養を優先してください。

    この場合は、健康保険証の手続きをしておくことが大事です。元の健康保険の任意継続をするか、家族の被保険者となるか、国民健康保険に新たに加入するかのケースがあります。

    会社の退職については次の記事も参考にしてみてください。

3.パワハラを訴えるための3つの手順



パワハラに対して「泣き寝入りしたくない」という人には、訴訟を検討した人もいるでしょう。ここでは、そのための手順について説明します。

①弁護士に相談

前の章で紹介した、退職の際に集めた証拠を持って弁護士に依頼しましょう。

弁護士を選ぶポイントとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 自宅から近く、打ち合わせがしやすい弁護士事務所を選ぶ
  • パワハラなどの労働問題専門、もしくは多く扱う弁護士にする
  • 自分と性格的に合う弁護士を選ぶ

また、弁護士の探し方は日本弁護士連合会(日弁連)のサイトをみる、ネット上で探すなどがあります。注意点としては訴訟費用や着手金、そして時間がかかるという問題です。

③集団訴訟

また、同じ加害者からの被害者が自分以外にもいたら、手を組んで集団訴訟を起こすこともできます。詳細はこちらのサイト を参照にしてみてください。

集団訴訟のメリットとしては訴訟費用などが割安になるという点、複数人いることで自分たちが訴えている内容に信憑性が持たせられる点が挙げられます。

訴訟の方法はこちらの記事でも説明していますので参考にしてみてください。

4.まとめ

  • パワハラは精神的攻撃、肉体的な攻撃など6つの類型がある

  • パワハラへの対処法は本人と直接話し合ったり、会社や公的窓口に相談する手がある

  • 解決できない場合は退職や弁護士に相談して相手側を訴えることを検討してみる

おわりに

パワハラは受けている側にとっては精神的にも肉体的にも辛いですよね。パワハラとしっかり向き合うことで解決への糸口を探ってみてください。この記事があなたのお役に立てれば幸いです。

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