この記事は以下の人に向けて書いています。
- ブラック企業を退職する方法を知りたい人
- 会社に退職したいと伝えたが拒否された人
- 退職することで何か自分に不利益がでるのか知りたい人
はじめに
会社を辞めたいけど、怖くて行動に移せない……。
ブラック企業に勤めていると、心身ともに疲弊してしまい、退職するための行動に出ることすら難しい状態になってしまうことがあります。
また、いざ行動を起こしても「賠償金を支払え」「退職は認めない」といった妨害にあうことも。
この記事では、圧力に屈せず会社を辞めるための方法についてご紹介します。
心身を病む前に、一刻も早く脱出してください。
1.まずは事前準備!これだけやっておけばすぐに辞められる
スムーズに退職するためには、まずは事前準備が必要です。
準備をせずに退職する意思だけを伝えた場合、妨害されるおそれもあります。あらかじめこれらの準備・対策を整えておくことで、会社を辞められる可能性は高まるでしょう。
①引継ぎ資料を作成する
退職するとなった際に要求されることの多いのが、仕事の引継ぎ資料。法的には作成の義務はないものの、不要な対立を避けるためのツールとして、あらかじめ作っておくと便利です。
引継ぎ資料の内容は業種によっても異なりますが、
- 担当企業一覧
- 担当会社の担当者連絡先や補足情報
- 自身が行っている業務の説明資料
- そのほか、業務に関わるもの
などを用意・作成しておけばおおむね問題ありません。
ただ、繰り返しになりますが、
引継ぎ資料はあくまで任意で作るもの。
自主的になるべく親切なマニュアルを作るのはOKですが、何度も書き直しを要求されるなど、
他人から強要された場合、応じる必要はないということを心に留めておきましょう。
②有給休暇の残りを確認する
ブラック企業に勤めている場合、今まで与えられた有給休暇を取得できていない人が多いと考えられます。有給休暇の取得は労働者の権利なので、退職前に有給休暇を消化して有給休暇の残りの日数を確認し、退職日の予定を組んでおきましょう。
引き継ぎと同じく、
「最後まで責任を果たすのが常識」と言われて有給取得を拒絶されるケースもありますが、最後まで働くかどうかも、あなたの自由です。
他人に強制されたからといって、必ずしも応じる必要はありません。
③できれば3ヶ月程度の生活費を貯金しておく
もし可能であれば、ある程度は無収入で生活できるだけの貯金をしておくと、退職後の生活に余裕が生まれます。転職先がたとえもう決まっていたとしても、給与支払いが入社日の翌月末であったり、途中入社のため初月の給料が通常より少ないケースも考えられからです。
目安として、
3ヶ月は無収入で生活できる額が貯金できているとベスト。
自己都合で退職し、さらに次の会社が決まっていない場合、
ハローワークに申請してからおよそ3か月後に、失業手当を得ることができます。
失業手当とは、次の就職先が決まっていない人に、元の給料の5~8割のお金を給付するというもの。この受給ができるまでの生活費を確保するようにしましょう。
さらに、失業手当とあわせて
「住居確保給付金」の申請をすることで、家賃の一部を政府から補助してもらうことも可能です。こちらも活用してください。
住居確保給付金をもらう詳しい条件については、
厚生労働省のサイトで詳しく解説されています。
これらの制度を活用しても生活が苦しい、貯金がまったくない! という方は、
自己都合ではなく、会社都合の退職にしてもらうよう会社に交渉するのもひとつの方法です。
「自分の意思で退職した場合は自己都合なのでは……?」
と思いがちですが、
実は違います。
- 事前に聞いていた雇用条件(賃金・労働時間など)と、実際の条件が異なる場合
- 賃金の未払いや、大幅な賃金カットがあった場合
- 長期間の残業があった場合
- 会社側から退職の勧告があった場合
などの、多くのありがちな退職理由はすべて
「会社都合」にすることができるのです。
会社都合で退職した場合は、自己都合と異なり、
申請してから7日後と非常に短期間で失業手当を受け取ることができるため、貯金がなくても再就職までの生活を安定させることができます。
④次の転職先に目星をつけておく
ブラック企業に勤めている場合、次の転職先の面接に行く余裕すらない場合が大半でしょう。
しかしその場合でも、気休めでもいいから「ここなら内定が出そう」と思えるような転職先を見つけておくようにすることで、退職への意思を保つことできます。
転職サイトを活用するだけでなく、同業で関わりのある会社にお願いしてみるのもひとつの手でしょう。とにかく、
会社外に意識を向けることを忘れないようにしてください。
ただし、焦って転職した会社が再びブラック企業だった……ということになれば本末転倒です。下記記事などを参考にし、じっくりと吟味することも忘れないようにしましょう。
⑤退職届を書く
退職届は「会社を辞める」という意思を会社へ通知するための書類です。
月給制の正社員は、基本的に
退職届を提出してから最短2週間後には退職することができると法律で定められています。
退職届と似ているものとして
退職願がありますが、こちらは
「退職したい」という意思を会社に伝え、労働契約の解除をお願いするものです。そのため、会社側が退職を認めない場合もありえます。
一般的には、退職願で退職の意思を伝え、了解を得て引継ぎスケジュールなどを調整し日程を決めてから退職届を提出する形になりますが、
ブラック企業の場合は退職願だと却下されるリスクがあります。そのため、あらかじめ退職届を書いておきましょう。
退職届に書く内容と順番は、おおむね以下の通りとなります。
①退職届
②〇〇の理由により、平成〇年〇月〇日をもちまして退職いたします。
③平成〇年〇月〇日
④〇部〇課
⑤自分の名前+押印
⑥株式会社〇
⑦代表取締役社長 〇〇殿
注意が必要となるのは、
②の退職理由です。
よく
「一身上の理由と書くのがルール」とされていますが、そうすると
自己都合退職として扱われてしまい、前職で説明した雇用手当の受け取りが3か月後になるなどの不都合が生じます。
すでに転職先が決まっているなどの場合は問題ありませんが、お金がないなど退職後の不安要素が多い場合は、会社側の規則が原因である旨を記載するようにしてください。
2.ブラック企業を脱出しよう!ありがちな退職妨害4つの対処法
①退職の引き止めにあう
退職理由が自己都合でない場合などは、会社側が受理しないことがあります。その際は
退職届を「内容証明郵便」と呼ばれるサービスを利用して送付することにより、退職の意思を伝えることができます。
内容証明郵便とは、送った書類の内容を郵便局が公的に証明してくれるもので、退職届の内容を法的に保証してくれます。相手に確実に届けたことを証明する
「配達証明」を同時に利用することで、確実に相手に届けたという証拠を残すことができます。
なお、
送付先は部署の上司などではなく、人事部などの人事権を持っている部署とするようにしましょう。
相手が退職届を受け取った場合、退職届に書いた日にちから、最短で二週間後に退職することができますが、送付するタイミングや年俸制などの給与形態によっては、こうした期間が変わってきます。
詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
②損害賠償を請求される
そもそも、会社から労働者への損害賠償請求は基本的に認められません。法律上のルールを守っている限り、労働者が起こした不利益は会社がフォローするべきものだからです。
損害賠償の口実として
などを挙げてくることもありますが、
これらを支払う必要はありません。
ただし、
- わざと会社に損害を与えた
- 期間限定の雇用途中で退職し、会社が取引先から違約金をとられるなど、直接の被害が発生した
といった場合は、ごく稀ではありますが、会社側の損害賠償請求が認められることもあります。
③有給休暇の消化を拒否される
本来、有給休暇の取得は労働者に与えられた権利であり、会社は拒否することはできません。もしも有給休暇の消化を拒否されたら、
労働基準監督署に相談しましょう。
労働基準監督署が個人のトラブルの解決のサポートはしていませんが、労働基準法に違反した会社の捜査権限や逮捕権限を持っています。
そのため、会社へ「労働基準監督署へ相談しアドバイスを受けている」と伝えプレッシャーをかけることで、
公的機関の介入を恐れる会社側が有給消化を認める可能性があります。
それでも認めてもらえない場合は、先ほど①でお伝えした内容証明郵便を送る方法で、退職日まで有給休暇を使用すると書いて退職届と一緒に送りましょう。
そうすることで、強制的に有給消化をすることができます。
④悪評を流すなどの嫌がらせをされる
「転職先にお前の悪評を流す」「業界内に噂をばらまくから、再就職はできない」などと会社側に脅されることがあります。
しかし、これらの行為は
個人情報保護法で禁止されているため、実際に行うと会社側が罰を受けることになります。
とはいえ、噂話程度で話を広められる……ということもあるかもしれません。
相手の行動が悪質な場合は、
「名誉棄損で訴える」と伝えてみましょう。
事実でも嘘でも関係なく、社会的な評価を下げるような風評被害を受けた場合、噂を広めた相手を名誉棄損で訴えることができます。
実際に訴える場合は、警察に告訴状を提出し、事件として捜査してもらうか、民事訴訟を起こして名誉棄損に対する慰謝料を請求することになります。
民事にしろ刑事にしろ、弁護士に依頼すると弁護士費用が必要となります。自身の被害と費用を鑑みて、実際に訴えるかどうか決めるようにしましょう。
番外:自分で交渉しづらかったら退職代行サービスを利用する
「会社には直接言いづらい……」
「引き止められたら、断れる自信がない……」
そんなときは、退職代行サービスを利用するのもひとつの方法です。
退職代行サービスは、会社と労働者の間に立ち、会話を仲介するサービスです。たとえ、あなたには高圧的な態度の会社だったとしても、第三者である退職代行が間に入ることで、法に則った対応をしてもらえる可能性が高くなります。
3.無事に退職した後にできること2つ
無事に退職できて一安心! ……と考えるのは、まだ早計です。
退職した後にも、やるべき手続きはたくさんあります。
この章では、退職後に必要な手続きなどについて紹介します。
①失業手当・国民健康保険・国民年金などの手続きを行う
退職後、すぐに就職しない場合は、失業手当の給付と国民健康保険・国民年金の加入といった手続きが必要となります。
- 失業手当
退職後に届く離職票(1週間~10日後)をもってハローワークで手続きを行いましょう。受給説明会に参加したのち、失業手当が支給されます。
ただし、先ほどお伝えした通り、自己都合退職の場合は3ヶ月間給付されないので、実際には4ヶ月目から受け取ることになります。
詳しい手続きや受給できる金額などは、ハローワークのサイトを参考にしてください。
- 国民健康保険・国民年金
退職後、再就職までに時間が空く場合は国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。加入期限は、国民健康保険・国民年金の両方とも、退職日の翌日から14日以内です。
国民健康保険は、住所管轄の市区町村役場で手続きが可能です。手続きの数日後に納付通知書が送付されますので、書かれた期限までに保険料を納付しましょう。
また国民年金については、住所管轄の市区町村の国民年金担当窓口手続きを行う形となります。
詳しくは、日本年金機構のウェブサイトで解説しているので、参考にしてください。
- 任意継続保険
国民健康保険に入らず、会社に勤めていたときに加入していた保険に任意で継続加入する方法もあります。
加入条件としては、以下の2つです。
・2ヶ月以上その保険に加入していること。
・退職後20日以内に任意継続被保険者資格取得申請書を提出すること。
ただし、保険料は従来の2倍になります。詳しくは、こちらのサイトを参考にしてください。
全国健康保険協会協会けんぽ「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について」
②会社に未払い残業代や損害賠償などを請求する
ブラック企業の場合、残業代が未払いだったり、パワハラ・セクハラなどの問題が起きていることがほとんどです。
もう、元の会社に縛られることのない退職後だからこそ、必要に応じて、これまで受けていた被害に対する賠償を請求するのもよいでしょう。
ただし、実際に会社を訴えるには、証拠を集めておく必要があります。
詳しくは下記の記事を参考にしてください。
残業代請求の手順を解説!請求可能かどうかを見極める4つのポイント
4.まとめ
- 退職する意思を会社に伝える前に、①引継ぎ資料の作成②有給休暇の残りの確認、③3ヶ月分の生活費の貯金、④転職先の検討、⑤退職届を書くといった準備を行っておく。
- ①退職の引き止め②会社からの損害賠償請求③有給休暇の消化拒否④悪評を立てられるなどの退職妨害にあった場合は、それぞれ労働基準監督署や弁護士への相談など、適切な対処をとろう
- 退職後は、失業手当の申請や国民健康保険・国民年金への加入手続きなどが必要。さらに、もし必要であれば、未払い残業代の請求やパワハラ・セクハラへの損害賠償請求も検討しよう。
おわりに
いかがでしたか。
ブラック企業を辞めるときは、法的なルールを守り、公的機関にも相談することで、確実な退職をはかりましょう。
この記事が皆様のお役にたてば幸いです。