ネズミ講をやったらどうなるの?マルチ商法との違いと罰則を解説

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投稿日時 2018年09月13日 12時43分
更新日時 2018年09月13日 12時43分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • ネズミ講とマルチ商法の違いを知りたい人

  • 「いいビジネスがある」と誘われ入会したが、ネズミ講かもしれないと不安な人

  • うっかりネズミ講に入会してしまい、どのように対処すればいいのかわからない人

はじめに

「一緒に儲かるビジネスやらない?」

「誰でも簡単にできるよ」

「割のいいバイトがあるよ」


こんな言葉で、マルチ商法の勧誘を、誰しもが一度は受けたことがあるのではないでしょうか。

ところで、マルチ商法と類似したものに、「ネズミ講」があります。

両方とも、「会員になり、ほかの会員を勧誘することでお金がもらえる」という大まかな構造は同じ。しかしマルチ商法は適法であるのに対し、ネズミ講は違法。はじめるだけで逮捕されるおそれもあります。

両者の違いはどこにあるのでしょうか?

この記事では、混同されがちな「ネズミ講」と「マルチ商法」の違い、そしてネズミ講に関わったときの法律的な責任について解説していきます。

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1.ネズミ講とマルチ商法はどう違うの?それぞれの違いを解説



「マルチ商法?要はネズミ講のことでしょ?」

そのように考える人もいるかもしれません。

同じものだと思われがちですが、ネズミ講とマルチ商法は法律上、まったく異なるビジネスです。

では、このふたつの違いはどこにあるのでしょうか? 表にまとめてみました。

相違点 ネズミ講 マルチ商法
商品 実際には取り扱っていない 実際に取り扱っている
稼ぎ方 会員費などの金配当のみ 商品の販売利益
勧誘によるキャッシュバック
適法性 違法 合法

以下、ネズミ講、マルチ商法それぞれの仕組みの違いや、成立の背景について解説していきます。

①「ネズミ講」は違法。無限連鎖防止法で禁止されている

ネズミ講は、高額な会員費を支払わせ、他人を勧誘するとその会員費の半分が自分に、もう半分が上位メンバーに分配されていく仕組みのビジネスで、1960~70年代には多くの会員が生まれ、社会問題にもなりました。

これを受けて、1978年に無限連鎖禁止法が成立。ネズミ講という形態のビジネスそのものが禁止されたのです。

ネズミ講の特徴は、実際には販売する商品となるものがなく、下位メンバーの会員費を吸い上げることで組織を運営しているという点です。
しかし人口には限りがあり、入会できる人数にはいつか必ず限界がきます。ネズミ講は最初から破綻が確定しているシステムなのです。

例えば会員1人が必ず2人を勧誘し、入会させたとしても、初代1人に対し、2代目は2人、3代目は4人、4代目は8人、5代目は16人と増えていき、28代目には約1億3400万人と、日本の総人口を超えてしまいます。勧誘した人全員が入会するわけでもないため、限界はもっと前に来ます。



これらのことから、ネズミ講は将来性のない詐欺システムといえます。

②「マルチ商法」は合法。ただし、多くの規制が定められている

いっぽうで、マルチ商法はどうでしょうか。

マルチ商法は、会員が会社の扱う商品を販売して得られる利益と、会員が新たな会員を勧誘することでもらえるキャッシュバックの2つを収入として得られる仕組みのビジネス形態です。

ネズミ講とは異なり、健康食品や日用品などの実際の商品を販売していることが特徴。問屋や販売店のかわりを個人の会員が行っているという見方もできます



しかし、マルチ商法には多くの規制もなされています

たとえば、

  • 勧誘のときにしっかりとマルチの勧誘だと伝えなくてはならない
  • 一度勧誘を断られたら再度勧誘してはいけない
  • 契約書にクーリング・オフなどのことを記載し、説明しなければならない

といったものです。

ただし、勧誘時にこうしたきまりを無視した勧誘が行われることも多く、一般的にマイナスな印象のビジネスとなっています。

マルチ商法について、詳しくはこちらの記事で紹介しているので、参考にしてみてください。


③「マルチまがい商法」

マルチ商法と似たような言葉として「マルチまがい商法」という言葉もあります。

「マルチまがい商法」は、2001年6月に特定商取引法が改正される前によく使われていた言葉で、主に、特定商取引法のマルチ商法の規定から逃れられるように作られていた悪質なビジネスのことを意味しています。

マルチまがい商法は、取り扱う商品が非常に高額で、販売員が在庫として購入しても、ほかの人に買ってもらえない状況に陥ります。ネズミ講とはちがい、実際の商品を扱っているのでマルチと似ていますが、高額すぎて商品を他の人に購入してもらえないのです。そのため、「マルチまがい商法」と呼ばれていました。

法改正により「マルチ商法」の定義が明確化されたため、「マルチまがい」という言葉は使われなくなってきています。


2.ネズミ講と知らずにやるとどうなるの?実際の事例から解説



先ほどお伝えした通り、ネズミ講は違法です。ネズミ講を行った人に対し、様々な罰則も設けられています

しかし、ネズミ講と知らずに入会し、勧誘を行っていた場合はどうなのでしょうか

この章では、

①ネズミ講をはじめた場合
②ネズミ講と知らずに参加・勧誘をした場合

のふたつの観点から、罰則の有無について解説していきます。

①ネズミ講を行った人への罰則

ネズミ講を立ち上げたり、勧誘した人には、罰則が設けられています。

無限連鎖講を開設または運営した
(ネズミ講を事業として立ち上げた)
3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくは両方
業として無限連鎖講に加入することを勧誘した
(繰り返し勧誘をした)
1年以下の懲役または30万円以下の罰金
無限連鎖講に加入することを勧誘した
(1回でも勧誘した)
20万円以下の罰金

2011年11月には健康食品販売会社「ライフ・アップ」の元社長がネズミ講の疑いで逮捕されています。この事件は「年金たまご事件」と呼ばれ、3万8000人の会員から総額約71億円を騙し取っていました。

裁判の結果、元社長には懲役2年6か月、罰金300万円が科せられています。

このように、ネズミ講は懲役刑を科されることもあるのです。

②ネズミ講だと知らずに入会・勧誘した人の責任

ご紹介した通り、ネズミ講は悪質な犯罪とされていますが、ネズミ講だとは知らずに入会・勧誘してしまう人もいるでしょう。

その場合、法律の観点ではどのように判断されるのでしょうか。


こうした、入会後に入会者を勧誘・獲得した人は被害者なのか加害者として責任追及の対象とすべきなのかという問題にひとつの答えを出した裁判の事例があるのでご紹介します。

<国民生活センター:「連鎖販売取引とねずみ講の勧誘員の責任」>
ネズミ講と知らずに入会し、勧誘していた大学生たちが会社経営者らに対して起こした集団訴訟の事例です。

裁判では、大学生たちが入会金の賠償を求めたのに対し、会社経営者らは、「大学生も自分で勧誘を行い、入会者を得て利益を得たのだから、損害賠償請求は認められない。もしこちらに責任があったとしても、減額すべきだ」と主張しました。

ネズミ講の勧誘員の責任については、以下のように指摘されています。

職業的な勧誘者と言ってもよい立場にある者と、入会した後に知人などを勧誘して、たまたま入会者を獲得していたという者とでは、法的な評価は違うことを明確に指摘し、不法行為による損害賠償を命じ、過失相殺による減額も認めなかった。
(引用元:国民生活センター「連鎖販売取引とねずみ講の勧誘員の責任」)

このことから、ネズミ講にビジネスとして関わっている経営者や一部上位会員以外の、一般の勧誘員は被害者とみなされ、罪に問われる可能性は低いと思われます。

ただし、途中でネズミ講だと気づいたのにも関わらず、何も対応を取らずに放置しておくことは危険です。

すぐに、以下の対応を取っておきましょう。

  • 会員費振り込み用として使っている銀行口座を閉じる
  • 勧誘した人に「ネズミ講だから入会しないように」と注意喚起する

また、ネズミ講に関わっていたと発覚すると、警察の事情聴取を受ける可能性はあります。任意同行を求められたら素直に受け入れ、ネズミ講だと知らずに入会したことを話しましょう。


3.ネズミ講は返金可能?困ったときの相談先3つ



ネズミ講は違法行為なので、被害に気が付いたら、入会金などの被害金額の全額を返還するよう請求できます。

しかし、請求のやり方がよくわからない、被害がわかったときにはすでにお金を使われていた、会社に返金を求めても素直に応じてくれなかった、会社が倒産しているとさらに返金してもらうことが困難だった、ということがあるかもしれません。

そんなときに役立つ相談先を紹介します。

①消費生活センター・国民生活センター

各都道府県、市町村にある消費生活センターや国民生活センターでは、消費者問題についての相談を受け付けています。消費者ホットライン(188)に電話をすれば、最寄りの消費生活センターや国民生活センターにつながります。
消費生活センターでは、相談内容に応じて、相手会社へ働き掛けてくれたり、弁護士の紹介をしてくれたりします。

消費者ホットライン
電話番号 局番なしの188
受付時間 平日:9:00~17:00
土日・祝日:10:00~16:00
※窓口によって違うこともあります

②警察相談専用電話(#9110)

悪質商法などの普段の生活の安全や平穏に関する悩み事は、警察相談専用電話(#9110)に連絡・相談しましょう。
事件・事故を通報する110番とは異なり、#9110は相談専用の電話番号です。適切なアドバイスをもらうことができます。

警察相談専用電話
電話番号 #9110
受付時間 平日:8:30~17:15
(各都道府県警察本部で異なる)
※土日・祝日や時間外は、24時間受付体制の一部の県警を除き、当直または音声案内で対応

③弁護士

お金を取り戻したいときは、法的な権限を持つ弁護士へ依頼することが効果的です。もしも裁判をすることになったとしても、弁護士が必要となります。

弁護士に相談する費用がなかった場合は、法テラスに依頼しましょう。法テラスでは、弁護士が無料で相談を受けてくれます。

ただし、収入や資産が一定額以下でないと利用できない、などの条件があるので、あらかじめ法テラスのウェブサイト(リンク)で確認しておきましょう。

法テラス 犯罪被害者支援ダイヤル
電話番号 0570-079714
IP電話からは03-6745-5601
受付時間 平日:9:00~21:00
土曜:9:00~17:00

また、ネズミ講は被害者も多いことが考えられるので、集団訴訟も選択肢に入れましょう。

集団訴訟とは、同じ相手から被害を受けた被害者2人以上が集まって共同で裁判を起こす訴訟方法です。

弁護士費用の分担や証拠の共有など、様々なメリットがあります。

詳しくは、以下の記事を参考にしてみてください。



4.まとめ

  • ネズミ講は、商品を販売せず高額な会員費だけを支払わせる違法行為。ネズミ講に関わると、懲役刑を含む罰則が科せられる。

  • ネズミ講と知らずに入会・勧誘していた場合は、被害者とみなされる可能性が高い。ネズミ講だと気が付いたら、会員費入手のために設けていた口座の凍結や勧誘していた人への注意喚起を行っておく。

  • ネズミ講は返金請求ができる。請求がうまくいかなかったり、やり方がわからなかったら、①消費生活センター・国民生活センター②警察被害相談窓口③弁護士に相談する。

おわりに

いかがでしたか。

「いいビジネスがある」と言われると、すぐに食いついてしまうかもしれませんが、もしかしたら犯罪行為に加担することになるかもしれません。冷静に対応しておきましょう。

入会後にネズミ講だと気が付いたら、すぐに組織を離れることが大切です。

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