この記事は以下の人に向けて書いています。
- 仕事が辛いと感じている新入社員
- 会社の労働環境に疑問を感じている新入社員
- 仕事を辞めたいと思っている新入社員
はじめに
4月から働き始めたけれど、思いの外仕事が忙しかったり、上司が厳しかったりして、「仕事が辛い」と思っている新入社員もいるかもしれません。
「仕事ができない自分のせい」と悩みを抱えてしまっていても、そもそも会社側の体制に問題があるケースもあります。辛いと思う原因と対策を紹介します。
1.仕事が辛い…その原因は?考えられるパターン3つ
①とにかく残業が多い
新入社員は、「これやっておいて」と、先輩から雑務を任されることも多くあります。一つひとつの仕事がたいした量ではなくても、積もれば先輩よりもたくさんの仕事を抱えてしまうことになります。
「慣れるまでは仕方がない」「できない自分がいけないんだ」と、残業をする新入社員もいるはずです。しかし、
能力を超えた過重な残業を課せられている場合もあります。
- そもそも残業とは?
残業とは定められた労働時間外に会社の指示によって働くことです。課せられた仕事を、締め切りまでに処理することが難しく、自らの判断で残業する場合も、労働時間に当たります。下記の場合も残業に当たります。
・早朝出勤など定時前の業務開始
・仕事の持ち帰り
・タイムカードを強制的に押させた後に仕事をする
一方で、自主的な調べ物や、業務命令ではなく個人的なデスクの掃除などで残っている場合は、労働時間には当たりません。
- 残業代は支払われているか?
毎日毎日残業をしているけれど、「新入社員は会社に貢献していないから残業代は支払われない」と言って、会社側が残業代を支払わないケースもあります。
しかし、本来、新入社員、つまり試用期間中であっても、会社側は残業代を支払う必要があります。労働者と会社側で労働契約が結ばれている以上、労働基準法は適用されるからです。
給料が出たら、明細を見て、残業代がきちんと支払われているかチェックしてください。
残業代は、残業時間×1時間あたりの基礎賃金(時給)×割増率です。
詳しい算出方法は、残業時間代の計算の仕方で紹介しているので、参考にしてください。
- その「残業」は合法?
労働基準法では1日8時間、1週40時間時間以上働かせることはできません。しかし、
時間外、休日労働に関する協定届「36協定」(労働基準法36条に基づく労使協定のこと)を結んだ場合、その合意の時間数の範囲内で残業させることができます。36協定が締結されていなければ、残業をさせることはできません。
また、36協定では、一般労働者の場合、残業時間は、1週間で15時間、1ヶ月で45時間、1年で360時間が上限となっています。しかし「特別条項」が設けられている場合は、この上限を超えて時間外労働をしてもらうことが可能になります。
就業規則や雇用契約書などで、36協定が締結されているか確認し、結ばれていれば、自分の会社における残業時間の上限を調べましょう。
個人の裁量で労働時間を決められる「裁量労働制」の場合、基本的に残業代は支払われません。このほかにも、「変則労働時間制」がとられているかなど特殊な労働条件かどうか確認する必要もあります。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
②休日出勤が多い
休日に研修が入ってしまったり、仕事が終わらなくて休日出勤したりすることも、なかなか疲れが取れず、「辛い」と思う原因になります。
休日出勤に関する注意点を説明します。
- そもそも休日出勤とは?
休日とは、労働者の労働義務がない日を言います。その日に業務命令によって働くことは「休日出勤」となり、手当が支払われます。「新人研修」の名のもとに、休日に出勤しなければならない場合も、「休日出勤」に当たります。
休日には2種類あり、それに伴い、支払われる手当は異なります。
法定休日 |
労働基準法で定められた休日。「週に1日以上、もしくは4週に4日以上」 |
所定休日 |
法定休日以外に、会社側が自由に決める休日 |
- 休日出勤したら、いくらもらえる?
では、休日手当をした場合の賃金をみていきましょう。
・法定休日に労働した場合…35%以上の割増賃金
・所定休日に労働した場合…25%の割増賃金。ただし、割増賃金が発生するのは、「1日8時間、1週間40時間」という法定時間を超えた労働に対してのみです。
多くの会社が週休2日制を導入していますが、その場合は、1日が法定休日、1日が所定休日となります。しかし法定休日を「どの日」と定めていない会社もお送ります。もし、休日出勤した場合、最初の休日労働は「時間外労働」(所定休日に労働)扱いで、2日目の休日出勤が「法定休日労働」となります。
- 「代休」と「振替休日」の違いは?
休日出勤した場合、「代休」をとることができます。注意したいのが、「代休」と「振替休日」は別物であるということです。
代休 |
休日出勤の代わりに、その日以降の本来の労働日を事後に休日にすること。
代休は、「休日に出勤させた」という事実に変わりはないので、休日出勤の手当てが支払われます。 |
振替休日
|
本来休日であった日を事前に出勤日として、その代わりに出勤予定の日を事前に休日にすること。休日手当は発生しません。 |
休日出勤に関する手当などは、こちらの記事で詳しく書いているので、参考にしてください。
③上司の指導が厳しい
仕事において、「人間関係」も重要な要素の一つです。もし、指導に当たった上司が厳しい場合、心が折れてしまうこともあるでしょう。
ただし、その厳しさが、理不尽なものであったり、自分にだけ向けられていたりする場合、
「パワハラ」に当たる可能性もあります。どんな行為がパワハラになるのか解説します。
- パワハラの定義
厚生労働省ではパワハラを下記のように定義しています。
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
具体的には下記の6パターンがあります。
① |
身体的な攻撃 |
暴行・傷害 |
② |
精神的な攻撃 |
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言 |
③ |
人間関係からの切り離し |
隔離・仲間外し・無視 |
④ |
過大な要求 |
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 |
⑤ |
過小な要求 |
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと |
⑥ |
個の侵害 |
私的なことに過度に立ち入ること |
(出典:厚生労働省『職場のパワーハラスメントの6類型』)
厚生労働省の「あかるい職場応援団」のウェブサイトでは、パワハラに悩んでいる人がどんなパワハラに当たるか診断することもできます。
2.もし本気で辞めたいと思った時、注意すべき3点
①金銭面での心配事は?
「仕事を辞める」となると、心配事の一つとして、
「収入がなくなること」があげられます。
安易に辞めてしまい、経済的に困ることがないように、以下の点を注意してください。
- 退職金
入社1年目で退職すると、退職金は出ない、または出てもごくわずかですので、期待はできません。また、そもそも「退職金」という制度がない場合もあります。勤務先の制度はどうなっているか、確認をしてみましょう。
- 失業保険
失業保険給付の基本的な条件は「雇用保険に加入していて、1年以上雇用保険料を支払っていること」です。自己都合で退職した場合、働いていた期間が1年未満だと失業保険給付が受けられません。
②住民税の支払いはどうなる?
会社員においては、
住民税は給料から天引きされて納めている人がほとんどです。転職先が決まっていない状態で退職した場合は、
自分で納める必要のある
「普通徴収」となります。
6月に自治体から住民税納税の通知が届きます。普通徴収では、
1年分を一括して納付する方法と、4分割して徴収する方法のどちらかを選ぶことができます。
住民税は、
前年の1月から12月の給与収入から控除(給与職控除、生命保険料、医療費控除など)を差し引いた課税所得の10%が目安です。
注意したいのが、
前年の給与収入をもとにする、という点です。無職となり、収入がない場合も、多額の住民税を支払はなければないないことに注意してください。
③健康保険はどうなる?
日本は「国民皆保険制度」をとっているので、なんらかの
医療保険にはいらなければなりません。会社勤めをしていた場合は、社会保険への加入が会社によって行われ、給与から差し引かれています。会社を辞めて無職になった場合、健康保険の支払いに関しては、以下の3つの手段をとることができます。
- 国民健康保険に加入
自営業者や無職の人などが対象。前年の収入や加入する世帯数に応じて、各自治体の独自の計算式で決まります。
独身で、1年以内の就業が難しく、退職前の給与が低い場合にメリットが多くなります。退職の翌日から14日以内に手続きが必要です。
- 任意継続被保険者制度
退職した会社で継続して健康保険に加入できる制度のこと。
退職前の会社で2か月以上、継続して勤務していれば加入が可能です。最大2年間、加入することができますが、保険料の支払額は2年間変わりません。
滞納に厳しく、保険料を滞納すると即時に資格が失われます。また、一度選択すると、国民健康保険や家族の扶養に入るなどの理由で変更することができません。
扶養する家族がいる場合や退職時の給与が高い場合メリットになります。退職の翌日から20日以内に手続きが可能です。
- 配偶者または親の被扶養者になる
年収130万円未満の場合、加入が可能です。本来支払わなければならない保険料を支払わないですむメリットがあります。
3.つらいと思ったら相談すべき窓口4つ
仕事がつらいと感じたり、会社の労働環境に疑問を持ったりした場合、一人で悩まずに、誰かに相談することをおすすめします。相談すべき窓口4つを紹介します。
①厚生労働省 総合労働相談コーナー
全国に設置されており、
賃金に関することやパワハラなどあらゆる分野の労働問題を対象に、助言をします。
希望する場合には、都道府県労働委員会や法テラスなどの紛争解決機関の情報提供もしてくれます。
予約は不要で無料。総合労働相談コーナーの所在地は、
厚生労働省のウェブサイト
から調べられます。
②労働基準監督署
労働基準監督署は
労働基準法に基づいて会社を監督する行政機関です。賃金の未払いや、違法な長時間労働など「労働基準法違反」の可能性があるトラブルの相談に向いています。労
働基準法に基づいたアドバイスをするほか、悪質な場合は、会社に立ち入り調査などを行います。
最寄りの労働基準監督署に
直接相談するか、電話での相談が可能です。全国の労働基準監督署の所在地は
厚生労働省のウェブサイトから調べられます。
メール相談は、「
労働基準関係情報メール窓口」からできます。
③日本労働組合総連合会
日本最大の労働組合の全国中央組織。パワハラや就業規則に関すること、退職手続きなど労働に関する相談を受け付けています。
0120-154-052にかけると、近くの地方連合会につながります。
インターネットでの相談も受け付けています。
④働く人の「こころの耳電話相談」(厚生労働省)
仕事の悩みや人間関係の悩みなどの相談ができます。
電話番号:0120-565-455
受付時間:月・火曜17時~22時まで、土・日曜10時~16時まで。
働く人の「
こころの耳メール相談」(厚労省)は、メールで相談ができます。
4.まとめ
- 長時間労働やパワハラなど、つらいと思う原因は何かしっかり考える
- 辞める際は、退職後のデメリットも考慮に入れる
- 労働環境や悩みなどは専門機関に相談する
おわりに
学生生活を終えて企業に就職し、慣れない業務や人間関係にクタクタ…。長時間労働やパワハラなど仕事におけるストレスは、長期的に心身の健康を害してしまうことがあります。
もしもこれから仕事をしてもしなくても、人生はまだまだ続いていきます。
不安や心身の違和感を覚えたら、同僚や上司、もしくは専門の機関に相談して、早めに問題解決へ。ひとりで我慢する環境から抜け出すようにしてください。