休日出勤した際の「代休」「賃金」ルールを解説!未払い時の対処法も紹介

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投稿日時 2019年03月06日 19時29分
更新日時 2019年09月17日 17時05分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 「代休」がどんなルールでもらえたり使えたりするのか知りたい人

  • もらった代休を使うヒマがなく、結局損している気がする人

  • 休日出勤しているのに給料が変わらないのはおかしいと感じている人

はじめに

休日出勤をしたときにもらえる「代休」。本来は休みだったはずの日に出勤するかわりとして、好きな平日を休みにできるという制度です。

働いたぶん休みをもらっているので、特に損はしていないように思えるかもしれません。

しかし本来、従業員に休日出勤させた会社は、通常より高い賃金(割増賃金)を支払う必要があります。この義務はたとえ従業員に代休をとらせたとしても消えません。

もしあなたが代休を口実に会社から休日に働いた分の賃金や手当を支給してもらえていない場合、それは違法である可能性があります。

この記事では、休日出勤と代休のルールや、休日出勤した際の賃金の計算方法などについて詳しくご紹介していきます。

よく代休を取るという人は、参考にしてみてください。


1.その代休、ほんとうに適切?休日出勤の基本的な仕組み



代休の制度をなんとなく理解していても、それがどのようなルールに基づいて定められているのかまでは知らない人が多いのではないでしょうか。

実は、代休という制度はあくまで会社内の独自ルールにすぎず、特に法律で決められているわけではありません。

この章ではまず「代休」という制度がなぜ必要なのか、というところからかんたんに説明をしていきましょう。

①休日に働かせるのは違法!ただし…

会社が従業員を雇う際のルールを決めた労働基準法という法律では、最低でも週1日、または4週間で合計4日は休みとしなければならない、と決められています。

つまり、休日出勤によってこの数を下回るような場合は、本来であれば違法なのです。

しかし一方で労働基準法はこの法律の例外ケースも定めており、事前に従業員の代表者と協定を結んだ場合であれば、休日出勤をさせることができるとしています。

こうした協定は通称、36協定と呼ばれます。会社が従業員に残業をさせる場合にも交わされますので、名前を聞いたことがあるという人もいるかもしれません。

ただし、たとえ協定を結んでいても、会社が好き放題に休日出勤させるのはNG。

本来は休みである日にあえて出勤してもらうのですから、会社はそのぶんだけ、出勤した従業者に対して特別扱いをしなければなりません。

そのための制度が「代休」と「休日手当(割増賃金)」の2つなのです。

②休日出勤でもらえる「休み」と「お金」

紹介した「休み」「お金」の2つのうち、法律で義務化されているのは「お金」のほうです。

休日に従業員を働かせた場合、会社は休日出勤させた時間ぶん、通常より高い賃金を支払わなければなりません。これを割増賃金と呼びます。

いっぽうで代休は、あくまで会社が定める社内ルール(就業規則)のひとつ。そのため法律で義務付けられているわけではありません。

ポイントとなるのは、休日出勤をしたら必ず割増賃金を支払う必要がある、という点。

つまり、よく言われがちな「代休があるから休日手当はない」「休日手当を払うかわりに代休はナシ」といった企業側の理屈は、原則として違法ということになるのです。

まとめると、休日出勤をした場合

「お金(割増賃金)」は必ずもらえる
「休み(代休)」は会社ルールによる

と覚えておくとよいでしょう。

③代休と間違えやすい「振替休日」に注意!

代休とよく似た制度として「振替休日」というものがあります。

これは休日出勤後に休みをもらう代休に対し、休日出勤の前にかわりの休日を決めておくというもの。

事後に休みをもらうのが代休、事前に休みが決まっているのが振替休日、と覚えておくとよいでしょう。

この振替休日は休日と勤務日を入れ替えるという形になりますので、休日に出勤した場合でも、休日出勤あつかいとはなりません。

そのため休日出勤の割増賃金がもらえない点に注意してください。

<代休と振替休日の違いまとめ>
休み 割増賃金
代休 会社ルールによる もらえる
振替休日 もらえる もらえない


2.条件次第で大きく違う!休日出勤でもらえるお金と代休のルール



休日出勤をした場合、必ず通常よりも高い時給(割増賃金)がもらえるのはこれまで説明してきた通り。

しかしその具体的な金額は、代休を使ったどうか等の条件によって、大きく変わってきます。

①割増賃金のベースとなる2種類の「休日」

働く際に意識することは少ないですが、実は休日には2種類あります。

それが

・法定休日
・所定休日


の2つ。

法定休日は、法律上必ず設定しなければならない休日のことです。前の章でも説明したとおり、会社は週1日または4週で4日は休みとしなければなりません。

いっぽうで所定休日とは、会社が法定休日にさらに追加で定めた休みのことで、法定外休日などとも呼ばれます。

多くの企業は週休2日制をとっていますが、その場合は片方の休日は法定休日、もう片方の休日は所定休日という形になるわけです。

そして法律上、「休日出勤」とみなされるのは法定休日のみ。そのため、自分が働いた日がどちらの休日なのかによって、もらえる割増賃金に違いが出てきます。

それぞれのケースについて解説していきましょう。

②法定休日に働いた場合は「時給×1.35」

  • 基本の考え方

    法定休日に働いた場合、法律上は「休日労働」の扱いとなり、時給換算した賃金×1.35の金額が働いた時間ぶんだけ支払われます。

    時給1000円の人が法定休日に働いた場合、時給は1350円となるわけです。


  • 代休を取得した場合はどうなる?

    仮に代休をもらって平日に休んだ場合であっても、休日出勤をしたという事実は消えません。休む休まないにかかわらず、会社は割増の賃金を支払う必要があります。

    ただその一方、代休をとった日の賃金を会社が支払う必要はありません。

    つまり、

    (休日出勤の時給)ー(代休をとった日の時給)という考え方から、代休をとった場合は時給×0.35の賃金を支払うという形が一般的です。

    ただし、代休に関するルールは会社によって異なるため、事前に就業規則などを確認しておくとよいでしょう。


  • まとめ

    法定休日に働いた場合にもらえるお金

    代休を使わなかった場合→時給×1.35×出勤時間
    代休を使って休んだ場合→時給×0.35×出勤時間


③所定休日に働いた場合は「時給×1.25」

  • 基本の考え方

    先ほど解説した通り、所定休日は休日出勤という扱いにはなりません。

    しかし、その場合でも賃金の割増は発生する場合があります。

    法律上、会社は原則として従業員を週40時間以上働かせてはならないとされており、一定の基準を満たした場合に限り、割増賃金を払って時間外労働(いわゆる残業)をさせてもよいことになっています。

    月~金まで一日8時間働くと週40時間。つまり、所定休日の出勤は残業となる可能性が高く、その場合は割増賃金が発生します。

    その割合は、時給×1.25

    仮に時給1000円であった場合、時給は1250円となります。

    ただし、もともと一日7時間勤務としている会社の場合は休日出勤しても残業の対象とはならなかったり、フレックスタイム制裁量労働制といった労働形態の場合は残業時間のカウント方法が異なったりと、ルールが複雑になります。

    より詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。



  • 代休を取得した場合はどうなる?

    法定休日に休んだ場合と同じく、代休をとった場合は割増分である時給×0.25の賃金を追加で支払うという考え方となりますが、残業の計算はルールが複雑です。

    あくまで数字は目安とするにとどめ、詳しくは自分の雇用条件や就業規則などを事前によく確認したほうがよいでしょう。


  • まとめ

    所定休日に働いた場合にもらえるお金

    代休を使わなかった場合→時給×1.25×出勤時間
    代休を使って休んだ場合→時給×0.25×出勤時間

④代休の取得日と給与の締め日に注意!

代休を使った日給与の締め日によって、給与の調整が翌月以降となるケースがあります。

たとえば、月末締めの会社で1月に休日出勤し、翌2月に代休をとった場合を考えてみましょう。

この場合は1月の締め日までに代休をとっていないため、休日出勤したぶんの割増賃金が支払われます。

その後、翌2月の給与から代休をとったぶんの給与が天引きされ、差し引きで休日出勤手当だけが残るような形となります。

天引きされた事実だけを見て「変だ!」と思う前に、前月の明細も確認してみてください。


コラム:「週休2日」の場合の法定休日はどう決まる?

休日制度として広くみられる「週休2日制」。しかし、これまで説明してきたとおり、法定休日は週1日だけとされています。この場合、土日のどちらが法定休日で、どちらが所定休日になるのでしょうか?

会社が就業規則で特別に定めていない場合、基本的には2日のうち最初の休日が所定日、次の休日が法定休日とみなされます。

では、土日休みの場合は、土曜が法定休日で日曜が所定休日になるのか…というと、そうではありません。

日本の法律上、1週間は原則として日曜日からはじまるとされています。

つまり、

日(休み)・月・火・水・木・金・土(休み)

となり、法定休日は土曜日、ということになるのです。

「残業の延長」といったイメージを抱きがちな土曜出勤ですが、法律上はこちらのほうが厳密な意味での「休日」という扱いなのです。


3.こんな時は未払いかも…典型ケース3つと請求方法



これまで、休日出勤・代休・休日出勤手当のルールについて解説してきました。

もしこのルールに沿った支払いが行われていない場合、それは給与の未払いであるとして請求できる可能性があります。

その際の請求方法について解説していきましょう。

①どんな場合に請求可能?未払いとなる3つのケース

では、具体的にどんな場合に未払いの給与を支払ってもらうことができるのでしょうか。

  • 代休を理由に休日出勤手当が支払われていない場合

    これまで説明してきたとおり、会社は法律上、休日出勤や残業をした従業員には割増賃金を払う義務があります。その義務は、たとえ代休制度があった場合でも消えません。

    もしあなたが「代休あるから休日出勤の手当はナシね」などと言われている場合は、未払いぶんを請求できる可能性があります。


  • 代休をとっていないにも関わらず、手当がない場合

    代休をとった場合、とっていない場合で、休日出勤時の割増賃金はかわります。

    しかし、実際に代休をとっていないにも関わらず、代休をとった場合の割増賃金しか支払われていない場合は、やはり違法の可能性はあります。

    「代休はもらえているけど、使うヒマがない…」という人も多いはず。そんな場合は一度給与明細を確認してみましょう。


  • 実質は代休なのに、振替休日とされている場合

    事前に休日を決めていないにも関わらず、休日出勤のあとから振替休日だったことにして休日出勤の賃金支払いを避けようとする行為も違法です。

    もしこうした実態が横行していた場合、振替休日が無効であるとして、未払いだったいままでの手当を請求できる可能性があるでしょう。


②おかしいな?と思ったら…まずは証拠を集めよう

もし自分が違法なケースに当てはまっていると感じたら、まずは証拠を集めてください。

原本やコピーを準備するのが難しい場合は、写真などで撮影する形でもOKです。

必要なもの 理由
給与明細 支払いの実態を確認するため
労働条件通知書 自分の雇用形態や給与形態を確認するため
会社の就業規則(コピー) 代休や休日出勤のルールを確認するため
タイムカード 休日出勤の事実を確認するため
パソコンのログイン履歴など 休日出勤の事実や期間を確認するため
休日出勤や代休の申請書類など 休日出勤や代休取得の事実を証明するため
上司とのメールや録音音声 不適切な指示・発言の確認のため

少しでも関連がありそうなものは、なるべく多めに集めておくようにしてください。

そのほか、おかしいと思った理由や経緯を自分なりにまとめておくと相談時に便利でしょう。

③請求から訴訟まで…。請求方法と窓口

証拠が集まったら、まずは専門機関に相談しましょう。

未払いとなっている賃金を請求するプロセスにはさまざまなものがありますが、もし会社側が弁護士を雇っている場合、個人での請求は難しくなります。

専門機関に事情を説明し、適切な窓口を紹介してもらったほうが、お金がもらえる可能性は高くなるでしょう。

以下に各種相談窓口や解決手段を紹介していきましょう。

  • 総合労働相談センターに相談する

    労働問題のトラブル相談を受け付けている総合労働相談コーナーでは、相談内容に応じて、さまざまなアドバイスをしてくれたり、弁護士などの専門家の紹介を行ってくれたりします。

    また、ここを通じて利用できる「あっせん」という制度も役立つかもしれません。

    あっせんとは、専門機関を通じて行う会社との話し合いです。

    紛争調整委員会と呼ばれる専門家が会社と従業員それぞれ言い分を聞き、希望すれば、お互いが納得できる案(あっせん案)の提示もしてくれます。

    話し合いといっても職場の人間と直接顔を合わせるわけではありませんので安心してください。

    ただし、相手が話し合いに応じてくれるとは限りません。拒否された場合に強制的に呼び出すことはできませんので、その際は別の手段をとることになります。またあっせんの利用には申請と審査が必要になるため注意してください。


  • 法テラスに相談する

    法テラスは、一般人が法律サービスを利用しやすくなるように設置された国の機関で、電話を通じた弁護士の紹介などを行っています。

    また、弁護士に依頼するお金がないという人に対し、無料での法律相談や、依頼費用の分割払いといった制度も用意されています。

    収入などを基準とした利用条件はありますが、気になる場合は利用してみましょう。

    詳しくは下記も参考にしてみてください。



  • 個人で訴訟

    もし、未払い額が60万円以下であるなど少額の場合は、自分で少額訴訟を起こすという方法もあります。

    少額訴訟は、規模の小さいトラブルを簡易的に扱う裁判制度で、低コスト・低期間で行えることが特徴。あっせんと同じく、相手に拒否されると通常の訴訟をするしかないといった問題点はありますが、検討してみてもよいでしょう。

    詳しい方法は下記も参考にしてみてください。



  • 仲間がいる場合は協力してみよう

    もし、会社にほかにも休日出勤の賃金を正しく支払われていない人がいる場合は、協力して訴訟を起こす集団訴訟という方法も考えられます。

    多くの人で協力することで、会社の違法性も証明しやすくなるほか、大勢の被害者が集まれば、ひとりあたりの弁護士費用を抑えらえる可能性もあります。


4.まとめ

  • 休日出勤をした場合、会社はそのぶんの割増賃金を支払う必要がある。いっぽう、代休は社内ルール。適用ルールは会社によって異なるので、まずは就業規則を確認しよう。

  • もらった代休をとるかどうか、また働いた日が法定休日か所定休日かによって、受け取れる賃金に違いが出る。それぞれのルールをよく確認しよう。

  • 賃金が支払われていない場合は、まずは証拠を集めて専門機関に相談しよう。金額が少ない場合は個人で訴訟を起こすのもひとつの手。

おわりに

かんたんなようで意外と複雑な代休のルール。それゆえに勘違いからくる賃金支払いのズレが起きやすくもあります。

おかしいと思ったら、まずは会社に相談を。それでも支払われない場合は専門機関に相談してみてください。


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