パワハラを訴える方法は?訴訟までの6ステップと注目ポイントQ&A

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投稿日時 2018年11月30日 19時19分
更新日時 2019年09月04日 18時19分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • パワハラ被害で退職・休職を余儀なくされ、訴訟を考えている人

  • 会社や加害者を訴える具体的な手順を知りたい人

  • 訴訟費用や判決までの期間が知りたい人

はじめに

職場でパワハラにあい、退職せざるをえなくなってしまった。あるいは、体調を崩して休職してしまった……。

そんなとき「被害を回復したい。損害を賠償してほしい」と思うのは自然なことです。

一方で、実際に訴訟を起こすには様々な手順が必要。訴訟のやり方がわからなかったり、費用面で不安になったりした結果、「そこまでできない」と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、パワハラ訴訟の手順や必要なもの、費用や期間といった様々なポイントを解説します。

泣き寝入りを選ぶ前に、一度参考にしてみてください。

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1.準備から裁判を起こすまで……パワハラ訴訟6ステップ



では実際に訴訟を起こすには、どうすればよいのでしょうか。

必要な手順について時系列順に紹介していきましょう。

①証拠を集める

まずはパワハラ被害を受けているとわかる証拠を集めましょう。

具体的には、以下のものとなります。

・録音データ
・被害がわかる写真
・継続的にパワハラされていたとわかるもの
・病院の診断書
・不当な降格や減給だったとわかるもの
・時系列表

そのほかにも、パワハラに関係ありそうなものはすべて保管しておきましょう。証拠が多ければ多いほど、訴訟の際に有利となります。

②会社や上司に相談する

証拠が集まった段階で、一度会社に相談してみましょう。

場合によっては改善される可能性がありますし、仮にそれでも解決しない場合でも、指摘して改善されなかったという事実があることで、訴訟の際に有利となります。相談内容も録音しておくようにしましょう。

法律上、企業は労働者が働きやすいよう、きちんと職場の環境を整える義務があると定められています。

そのため、「会社に相談したけど、対応してもらえなかった」という事実があれば、パワハラと認定される可能性が高まるのです。

③弁護士を探す

証拠が集まったら、訴訟に向けて、弁護士に依頼をします。弁護士を選ぶポイントとしては、以下の3つが挙げられます。

・自宅から近く、打ち合わせがしやすい弁護士事務所を選ぶ
・パワハラなどの労働問題専門、もしくは多く扱う弁護士にする
・自分と性格的に合う弁護士を選ぶ

これらのポイントを押さえておくようにしましょう。

  • 弁護士費用について

    弁護士に依頼する際は、主に下記3つ費用が必要となります。

    着手金 弁護士に依頼するときにかかる費用です。裁判結果に関わらず、必ず支払う必要があります。事務所によっては、着手金を0円としている場合もあります。
    報酬金 訴訟で慰謝料や和解金などが得られた場合に支払う費用です。「慰謝料の〇〇%」というように、事前に契約で定めた割合の金額を支払います。
    その他 書類作成費用や交通費など、訴訟に関連した諸経費が発生する場合もあります。

    弁護士事務所のなかには、着手金0円で受けてくれるという場合もあります。金額は事務所により変わりますので、事前にどれぐらいの費用がかかるのか、事前に確認しておきましょう。

  • 法テラス

    弁護士費用を確認した結果、「着手金が支払えない」「今の手持ちでは厳しい」といった金銭面での不安がある人もいると思います。

    そのようなときは、法テラスを利用してみましょう。

    法テラスでは、以下の3つの基準すべてを満たしている人に限り、弁護士費用を立て替えてもらうことができます。

    ・収入が一定金額以下
    ・勝訴の見込みがある
    ・報復感情を満たしたい、宣伝をしたいなどの目的ではない

    詳しい申請方法については、法テラスのウェブサイトを確認してください。

④弁護士を通じた交渉

弁護士と契約をしたあとは、訴訟を起こす前に会社側と交渉を行います。

この時点で和解となり、和解金などが支払われることもあります。

相手が交渉に応じなかったり、あるいは相手が提示した和解条件にあなたが納得いかなかった場合などは、次のステップへと進みます。

⑤労働審判を申し立てる

労働審判とは、地方裁判所の制度のひとつ。残業代請求やセクハラ・パワハラといった労働問題について、専門委員会を通じた話し合いを行い、解決を目指すものです。

通常の裁判よりも簡易的であり、さらに労働審判員や労働審判官といった専門員が間に入るため、短い時間で結論が出るのが利点となっています。

一方、訴訟と違って結果に強制力はないため、相手側や自分が不服がある場合などは、通常の訴訟を行う必要があります。

⑥裁判所に訴状を提出する

これまでの手段で問題が解決しなければ、民事訴訟を起こすことになります。

民事訴訟は、訴える相手の現住所を管轄する裁判所に訴状を提出することでスタートします。

内容によっては1年以上審理が続くこともあるので、注意してください。

さらに、第一審の判決が不服だった場合、上告して裁判をやり直すことができます。裁判では、第一審の判決が第二審で覆ることもありますので、どうしても納得できない内容だった場合は、上告を行いましょう。

ただし、その場合はさらに時間がかかり、弁護士費用も増えていくことになります。

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2.パワハラ訴訟で気になるポイントQ&A


前の章では、パワハラ訴訟を起こす際の手順について紹介してきました。この章では、より細かい疑問について、Q&A方式で解説していきます。

Qどんな行動がパワハラだと認定されるの?

厚生労働省は、パワハラを6つの類型にわけています。

これらのいずれかにあてはまっている場合、パワハラだと認定される可能性が高いでしょう。

身体的な攻撃 頭をはたくなどの軽い行為も含まれる
精神的な攻撃 言葉によるプレッシャーだけでなく、精神的に追い詰めていくような行為も含む
人間関係からの切り離し ほかの人との会話を禁じる、デスクをひとりだけ別の場所に置くなど、孤立させる行為
過大な要求 新卒に何も教えずに仕事に就かせる、複数人でやるべき仕事をひとりでやらせるなど、明らかにできない仕事を割り振ること。
過小な要求 エンジニアに職場の掃除だけをやらせるなど、本来の仕事とはかけはなれた雑務に従事させること。
個の侵害 プライベート時間に頻繁に電話をかけられるなど、私生活を妨害されること。

詳しくは、下記の記事でご紹介しています。参考にしてみてください。



Q訴えることができる相手は誰?

基本的には、会社と加害者本人を訴えることができます。
ただし、先ほど紹介した「労働審判」は、社員同士のトラブル解決には利用できないため、会社のみを対象にする形となります。

その場合、「相談したが、適切な対応をしてもらえなかった」「会社ぐるみでパワハラを受けた」など、会社側に非があることが前提となりますので注意してください。


Q民事訴訟になにかデメリットはあるの?

パワハラ関係の損害賠償裁判の場合、勝ち取る慰謝料の相場は50万~100万円ほどで、あまり高くはありません。高額な慰謝料が認められたケースもありますが、平均的には、そう多くはないことを頭に入れておいてください。

また、証拠が少ないと、パワハラ被害を受けていたと認められないこともあります。

その場合、裁判のために費やしてきた時間とお金が無駄になってしまうのです。そうならないよう、しっかりと証拠を集め、時系列をまとめておきましょう。

特に、状況説明のときに矛盾が生じてしまうのは大問題。あなたの証言そのものの信ぴょう性が疑われてしまいます。

どういった状況でいつ、誰に、どのようなことをされたのか明確にしておくようにしましょう。

本当にパワハラを受けていても、後から正確な日時や被害を思い出すことは非常に困難です。何かしらミスをしてしまうことが考えられるため、訴訟を起こす前から、証拠となる記録を毎日詳細を記録していく方法がベストです。

Q訴訟以外の解決方法はないの?

まずは、社外の相談窓口を利用してみましょう。窓口への相談で、労働基準監督署による会社への指導や「あっせん」による話し合い、会社への改善指導などが行われるケースもあります。

詳しくは、こちらの記事でご紹介しているので、参考にしてみてください。




3.被害者が団結!パワハラでも集団訴訟が可能



被害者ふたり以上で協力し、訴訟を起こす「集団訴訟」。

集団訴訟は、弁護士費用を被害者仲間で分担したり、ほかの被害者が集めた証拠を自分のパワハラ被害を立証する証拠として使うことができるなど、様々なメリットがあります。

そこでこの章では、パワハラ訴訟での集団訴訟にまつわることをご紹介します。

なお、集団訴訟のメリットについては下記の記事で解説しているので、参考にしてください。



①集団訴訟ができるケース

集団訴訟は、ただ仲間が増えただけでは成立しません。「同じ加害者から被害を受けた人がふたり以上」が集まる必要があります。

つまり、パワハラの場合は、

・同じ上司からパワハラを受けた
・同じ会社に所属し会社の職場環境が悪い

など、一定の条件がありますが、先ほどご紹介した通り、弁護士費用がかかる一方、慰謝料の相場は高くないので、被害者仲間を集めて費用分担した方が起こしやすくなるでしょう。

②被害者の集め方

同じ上司からパワハラ被害を受けている同僚の場合、声をかければ連携できる可能性が高いでしょう。

しかし、パワハラが陰湿で、ほかに被害者がいるのかわからない、などの場合は、その場での連携が難しいことがあります。

また、費用分担の面からすると、人数を集めたほうが自分の負担が減るため、できるかぎり仲間を集めたいところです。

代表取締役からのパワハラを受けた女性4人による集団訴訟

実際に、パワハラに関する集団訴訟を起こした例をご紹介します。

  • 概要

    フクダ電子長野販売で働いていた女性4人が代表取締役の男性からパワハラを受けたとして損害賠償を求めた裁判。係長の女性ふたりに対し経理上の不正を理由に賞与を減額。さらに、社員の前で執拗に罵倒した。被害を受けていなかった女性ふたりも「自分たちも同じことをされるのではないか」と不安に陥り、4人全員がパワハラを理由に退職した。

  • 結果

    一審は当時係長だった女性にだけ「退職強要」を認め、350万円の支払いを命じていた。しかし、二審では4人全員が退職を強要されたと認め、会社と加害者男性に660万円の支払いを命じた。

  • ポイント

    この事例では、直接被害を受けてはいない女性の訴えも認められています。

    近しい立場の仲間がパワハラを受けている姿を見せつづけられたら、「自分たちも同じような対応をされるのではないか」と思うことは至極当然なことだとし、退職を強要されたと判断されたのです。


4.まとめ

  • パワハラで訴訟を起こすためには、多くの証拠を集めておく必要がある。被害を受けている証拠だけでなく、相手や会社に直接被害を訴え出た時の音声も録音しておくこと。

  • ちょっと頭をはたかれたなどの軽い接触でもパワハラと認定される。また、パワハラを直接受けている人だけでなく、パワハラを見て恐怖を感じ、業務に支障をきたした人も被害を受けたと認められることがある。

  • 訴訟を起こすときは、被害者どうしで連携する集団訴訟を行うと、費用分担や証拠共有などのメリットがある。

おわりに

いかがでしたか。

「訴訟までは、ちょっと……」と思った方も、具体的なステップを知ることで、ある程度訴訟までの道筋が見えたのではないでしょうか。

この記事が、あなたが訴訟を起こすための後押しとなれば幸いです。
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