休日出勤の手当の仕組みはどうなってる?計算方法とよくある疑問3つ

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投稿日時 2019年03月08日 16時24分
更新日時 2019年03月08日 19時03分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 休日出勤をしているのに、手当が出ていない人

  • 休日出勤手当の計算方法や相場が知りたい人

  • 休日出勤手当の仕組みが知りたい人

はじめに

「休日出勤をしているのになぜか手当が付かない」という疑問を感じたことはありませんか?

あるいは、勤務先から「うちには休日出勤手当はないから」と言われている人もいるかもしれません。

一般的に休日出勤した場合は、給与の「基礎賃金」以外に、通常とは異なる時間帯に出勤した際に支払われる「割増賃金」の支給がなければいけません。

もし基礎賃金しか支払われておらず、頻繁に休日出勤がある場合は、多額の未払いが発生していることになります。

この記事では、休日出勤手当の仕組みや計算方法のほか、もし未払いだった際の勤務先への請求方法を解説していきます。


1.休日出勤の手当はいくら?基本的な仕組みと計算ルール



まずは、休日出勤とみなされる「休日」がどんなものなのか、手当が実際にどんな基準で計算されるのか、詳しく解説していきましょう。

①「休日出勤」の「休日」ってなんのこと?

実は、「休日」には「法定休日」「法定外休日」の二種類が存在し、出勤したのがどちらかによって、休日出勤の扱いが変わります。

  • 法定休日

    法律で定められている最低限の休日のことで、企業は労働者に対し、週1回、月4回以上の休日を与えなければなりません。「休日出勤」の「休日」は、こちらを指します

  • 法定外休日

    上記以外で会社から与えられる休日のことで、休日出勤には含まれません。

    例えば「月~金勤務・土日休」の場合、片方が法定休日、もう片方が法定外休日として扱われることになります。

    もし土日どちらも出勤したとしても、休日出勤手当はどちらか一日ぶんしか支給されません。何曜日を法定休日とするかは、会社の就業規則で定められているため、確認してみましょう。

    また法定外休日であっても、本来出勤する日ではない場合は残業代が発生する可能性があります。

    残業代の仕組みや計算方法については、下記の記事も参考にしてみてください。



②「代休」と「振替休日」は別物! その違いは?

もうひとつ、意識しておかなければならないポイントとして、「代休」「振替休日」の違いがあります。

簡単に説明をすると後から休みをもらうのが「代休」、先に休みが決まっているのが「振替休日」。わずかな違いに思えますが、実はこのどちらかなのかによって、休日出勤手当の支払いの有無が決まります。

  • 代休

    休日出勤した代わりに、その日以降の本来の労働日を後から休日にすることを指します。休日出勤が決まってから代わりの休日を決めるため、休日出勤手当が発生します。

  • 振替休日

    本来休日であった日を事前に出勤日とし、その代わりに、出勤予定の日を休日にすることを指します。

    代休と違い、出勤日と休日を入れ替えた形になるため、振替休日によって本来の休日に労働しても休日出勤扱いになりません。したがって、休日出勤手当は出ないので注意しましょう。

    振り替え休日と代休について、詳しくはこちらの記事も参照下さい。



③自分の休日出勤手当はいくら?実際に計算をしてみよう!

休日出勤手当は、時給に割増率をかけて算出します。給与が月額の場合には、まず自分の給与を時給換算する必要があります。

まず、給与から家族手当や通勤手当、単身赴任手当など各種手当を差し引いたものが基本給で、ここから時給を計算します。

  • 例:月給35万円で各種手当が10万円、20日出勤の場合
    (月給35万円ー各種手当10万円)÷(8時間×20日)=1562円

    休日出勤の割増率は35%のため、休日出勤の際の1時間あたりの賃金は次のとおりです。

    1562円×1.35=2108円

  • 例:休日出勤の際に8時間働いた場合
    2108円×8時間=16864円

また、休日出勤であると同時に22時~翌日5時の間にも働いている場合には、休日出勤手当と深夜手当の両方が加算されます。深夜手当の割増率は25%のため、休日出勤の割増率35%と合わせ、60%となります。

  • 例:20時~0時まで働いた場合
    20時~22時:2108円×2時間=4216円
    22時~0時:1562円×1.6(休日出勤+深夜勤務の割増率)×2時間=4998円
    上記2つの金額を足して、9214円がその日の賃金です。

勤務時間帯によって割増率が異なるので、注意しましょう。

2.こんな場合の休日出勤手当はどうなる?よくある疑問3つ



「自分には休日出勤手当が出ないのだろうか?」と思ったことはありませんか。雇用形態や職種、職位を理由に断られた経験がある人もいるかもしれません。

パートやアルバイト、管理職などには支給されるのか、仕事が終わらなかったために休日出勤が必要な場合はどうなるのかなど、よくある疑問を解決します。

①パート・アルバイトに休日出勤手当はつくのか

雇用形態を問わず、「労働者」であれば労働基準法が適用されます。

そのため、パート・アルバイトにも休日出勤手当は支給されます。割増率は35%です。

なお22時~翌5時の深夜時間帯は18歳以上でなければ働けませんので、この年齢よりも下であれば深夜手当の支給は対象外です。

②管理職に休日出勤手当はつくのか

残業代と同じ扱いで、管理職には休日出勤手当がつきません。ただし、どれだけ立場が上でも、名ばかり管理職は管理職とみなされないため、休日出勤手当がつきます

この違いはどこにあるのでしょうか。

そもそも管理職は、現場の管理監督者として経営者とほぼ同等とみなされる立場を指します。だからこそ労働時間の制限を受けないのであり、管理職とみなされるためには、次の3つの条件を満たさなければなりません。

  • 経営者と同様の立場や権限で業務を進められる
  • 出退勤や日々の勤務時間が決められていない
  • 与えられている地位と待遇が一般社員とは異なっている

経営者とほぼ同様の立場や権限を持ち、自分の裁量でこれを行使できるのが管理職。

「重役出勤」という言葉があるように、出退勤時間や遅刻によるペナルティーとも無縁であり、業務内容・待遇ともに一般社員と一線を画すものである必要があるのです。

つまり、肩書上はどれだけ上の地位を与えられていたとしても、経営に参画できるほどの権限を持っていなかったりするならば、それは一般社員。休日出勤手当は支給されるとみていいでしょう。

「管理職だから休日出勤手当がつかない」と言われた場合は、上記の条件を満たしているか確認してみて下さい。

③仕事が終わらず、休日に出勤せざるを得ない場合は?

平日に仕事が終わらなかったため、休日出勤せざるを得なかった場合には、条件により休日出勤手当がつきます。下記に当てはまることがあるか、確認してみましょう。

  • 上司が休日出勤による残業を把握している
  • 業務上、やむを得ない行事などで休日出勤している
  • 上司や会社からの命令での休日出勤
  • 勤務時間内に終わらない量の業務を割り振られた

業務上は不要であるのに、「休み明けの仕事量を減らしたい」などの理由で自主的に休日出勤した場合は、手当がつきません。

本来は不要であるのに休日出勤をすることになったとしたら、請求時にその証拠を用意しましょう。また、出勤時にどのような業務を行っていたか、記録を残す必要もあります。



3.休日出勤手当が支払われない、代休がもらえない…そんなときの相談先2つ



休日出勤手当が支払われなかったり、休日出勤したのに代休がなかったりした場合は、勤務先に請求することができます。

しかし、前章のように勤務先が素直に応じないケースもあります。悪質であれば、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

それぞれの利用方法や特徴について、詳しくみていきましょう。

①労働基準監督署を利用する

勤務先が労基法のほか、賃金の支払いに関する法律などに抵触している疑いがあった場合はまずこちらに相談するのがいいでしょう。

問題があるとされた場合は、立ち入り調査が行われる可能性があります。個人の賃金未払いなどに対応するわけではなく、企業全体の労働環境や待遇そのものを是正するためのものです。

このほか、個人向けの相談窓口では、問題解決に向けたアドバイスを受けられると同時に、必要があれば別の公的機関の紹介も受けられます。ただし、基本的に自分の力で解決することになります。

労働基準監督署の相談方法は、次の3つです。

  • 労働基準監督署に行く

    対面で労働問題を相談できます。直接訪問できる窓口なので証拠の提示が可能なため、動いてもらいやすい方法と言えます。

    各地の労働基準監督署の住所や連絡先、営業時間は、こちら から確認しましょう。

    注意すべきは、勤務先の地域を管轄している労基署に行くこと。自宅最寄りなど別の場所では対応できないので、気を付けましょう。

  • 「労働条件相談ほっとライン」に連絡する

    電話で労働問題を相談できます。証拠などを提示できないため、情報提供にとどまる可能性があります。

    電話番号:0120-811-610
    受付時間:月~金曜日17:00~22:00、土日10:00~17:00
    休業日:12月29日~1月3日

  • メールを送る

    労働基準関係情報メール窓口 に、勤務先の情報や問題とみられる行為などを入力して送信しましょう。ただし、参考情報として扱われる場合もあり、必ずしも解決に動いてもらえるわけではありません。

②弁護士に相談する

弁護士に相談することで、法的手段を使った解決方法を探ることができるようになります。弁護士を探す際は、 日本弁護士連合会(日弁連) のサイトから探せます。

  • 労働審判手続を使う

    労働審判手続は、裁判とは異なり、裁判官や専門家の同席のもとに、原則3回以内の期日で、双方が納得できる形で解決できるような話し合いを重ねて解決を目指す形式です。

    双方とも弁護士を代理人として依頼することが可能です。的確な主張と立証をしやすくなるため、個人と企業で話し合うよりは、交渉がスムーズに進行できる可能性があります。

    ただし、3回以内で話し合いが解決しなかった場合は訴訟へと移行しますが、引き続き弁護士のサポートを受けることが大切です。

4.まとめ

  • 休日出勤手当は、法定休日に出勤した場合に支給されるものであり、法定外休日の出勤には適用されないため注意

  • 振替休日は事前に休日と労働日を交換しているため、休日に出勤した扱いにはならないが、代休は事後に労働日を休日としているため、休日出勤手当が支給される

  • 休日出勤手当が支払われない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談し、場合によっては労働審判手続きを行う

おわりに

パートやアルバイトであっても、条件を満たせば休日出勤手当が支給されます。

もし「ウチは休日出勤手当は出していないから」などと会社から言われた場合、労働基準法違反の可能性があります。労働基準監督署や弁護士への相談を検討しましょう。
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