この記事は以下の人に向けて書いています。
- 自分が受けているのは「ハラスメント」なのかどうかを知りたい人
- どんな「ハラスメント」があるのか知りたい人
- 「ハラスメント」を受けたらどうしたらいいのか、対処法を知りたい人
はじめに
いまや多くの人が知っている
「ハラスメント」という言葉。社会人であれば、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントという単語を一度は耳にしたことがあるはずです。
しかし、肝心のその定義がどんなものなのか、細かく知っている人は少ないのではないのでしょうか。
この記事では、職場などで起こりがちなさまざまな「ハラスメント」の定義を解説したうえで、その対処法や相談先を紹介していきます。
「自分がされていることは、ハラスメントなのだろうか……」
そう思い悩んでしまっている人こそ、ぜひ最後まで目を通してみてください。
1.ハラスメントとはどんなもの?代表的な3つを紹介
①ハラスメントとは
「
ハラスメント(Harassment)」とは、直訳では「悩まされること、嫌がらせ」を指し、日本で使う場合には、様々な場面での
いじめに近いものとして考えられています。
具体的なハラスメントの種類はたくさんありますが、
相手の尊厳を傷つける、不利益を与える、または相手を不快にさせたり、脅威を与える行為であることが共通点。
またもうひとつの特徴として、
たとえ悪意がなかったとしても、された本人が嫌な行為はハラスメントとみなされる点があります。
いじめ加害者が「ふざけていただけ」「イジっていただけ」と言い逃れることはできない……と考えれば、イメージがつきやすいかもしれません。
では、具体的にどんなハラスメントがあるのか、代表的なものをご紹介していきましょう。
②代表的なハラスメントとその定義
さまざまなハラスメント行為のうち、以下の3つについては、厚生労働省などによってその条件などが定義づけられています。それぞれみていきましょう。
- パワーハラスメント(パワハラ)
職場の人間関係や職務上の地位などの優位性を利用して、同じ職場で働く人に対し、業務の適正な範囲を超えて、肉体的または精神的な苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為。(参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」)
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
発言者や行為者本人の意図とは関係なしに、それを受けた相手が自身の尊厳を傷つけられたと感じ、不快に思うような性的発言・行動、またはその環境。(参考:厚生労働省「職場でのハラスメントでお悩みの方へ」)
- モラルハラスメント(モラハラ)
身振りや文書、言葉や態度などによって、相手の人格や尊厳を繰り返し傷つけ、精神的な苦痛を与えること。(参考:公益財団法人日本女性学習財団「モラル・ハラスメント」)
- その他
他にも大学などの学術研究分野に存在する「アカデミックハラスメント」、男女の「らしさ」を押し付ける「ジェンダーハラスメント」、飲酒にまつわる強要や迷惑行為などを指す「アルコールハラスメント」など多種多様なハラスメントが存在します。
こちらの記事でさまざまなハラスメントを紹介していますので、あわせて確認してみてください。
2.ハラスメントを受けたらどうする?自分でできる対策4選
もし、これまで紹介してきたハラスメント行為に該当した場合は、どうすればよいのでしょうか? この章で、いくつかの方法を紹介していきます。
①自分でできる対策
まずは、自分でできる対策を紹介していきます。
- 避ける、言い返すなど自分で戦う
ハラスメントに対して自ら「それはハラスメントだ」と相手に直接言ったり、それができなければハラスメントをしてくる相手を避けるという手段です。
加害者に悪気がなく、ハラスメントであると自覚していない場合などは、まずはそれを伝えることで改善される可能性があります。
- 会社を辞める
どうしてもハラスメント被害に我慢ができないということでしたら思い切って会社をやめることも視野に入れるのもひとつの手です。ハラスメントで退職をするのは逃げるようで嫌だ、という人もいるかも知れません。ですが、ハラスメントで精神的な病や傷害を負ってしまってからだと、新しい職場を見つけるのも困難になってきます。
退職をする際は会社都合で辞められるかどうか、会社に交渉するのがいいでしょう。多くのハラスメントでの退職理由は、会社都合にできるからです。
会社都合で辞めることができた場合の失業手当給付、ハローワークに申請してから7日間と、自己都合の場合の3ヶ月に比べて短期間で受け取れます。スムーズに退職するための方法は下記の記事で紹介しているので、参考にしてください。
②相談窓口を利用する
自分の力ではどうにもならなかったり、個人で動くのは不安だ…という方は、外部の相談機関を頼ってみましょう。
ここでは主にセクハラ、モラハラ、パワハラの公的な相談窓口を紹介します。
- 労働基準監督署
労働基準監督署は個人間で起きたハラスメントそのものを解決するわけではありません。しかし会社の捜査権限や逮捕権限を有しています。ですので会社に対して、体制の見直しやモラハラを行う人の処分を検討させることができます。
下記URLからそれぞれの窓口を探すことができます。相談の際は、会社所在地を管轄しているところに連絡をするようにしてください。
厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- 女性の人権ホットライン(法務省)
女性の人権侵害に関する相談を受け付けている窓口です。セクハラや出産に関わる労使関係のトラブルなどを相談することができます。
電話番号:0570-070-810
受付時間:月~金の8時30分~17時15分、土日祝を除く
インターネットからも相談できます
- 職場のトラブル相談ダイヤル
全国社労保険労務士連合会が運営している相談ダイヤルです。
電話による相談後、社労士が当事者の言い分を聞く「あっせん(ADR、裁判外紛争解決手続)」によるサポートを受けることができます。申し立て費用は1080円~1万800円で、裁判を起こすよりも費用を安く済ませることが可能です。
電話番号:0570−07−4864(有料)
受付時間:月~金の11時〜14時
-
みんなの人権110番(法務省)
セクハラやパワハラ、プライバシー侵害など、人権問題全般を扱っている相談窓口です。悪質な場合は刑事事件として告発してくれることもあります。
電話番号:0570-003-110
受付時間:月~金の8時30分〜17時15分
などです。
社内にハラスメント相談窓口や産業医、労働組合があれば頼ってみるのもひとつの手段ですが、いくら別の上司にかけあっても相談に乗ってくれない、むしろ状況が悪化している、という場合には会社の体制そのものに問題があると言わざるを得ません。その際は労働基準監督署へ通報するようにしてください。
こちらの記事も参考にしてください。
3.ハラスメントの相手を訴えるための手順3つ
ハラスメントが悪質であったり、精神的または肉体的、あるいは経済的に損害があった場合は相手を訴えることを検討しても良いでしょう。この章では相手を訴えるためにすべきことをまとめて紹介します。
①訴えるために準備するもの
相手を訴えるためにはまずは証拠集めをしなければなりません。
具体的に言うと
- メールの記録(ハラスメントに関わるもの)
- 自分のメモ
- タイムカード
- 被害がわかる録音
- 被害がわかる写真
- 周囲の証言
- 医療機関からの診断書
- 会社へ被害を訴え出た時の対応がわかるもの(音声データや回答文書など)
などを指します。
裁判所は証拠に基づき、事実があったかどうかの判断を下します。本当に被害を受けていても、第三者(裁判官など)にそれがわからなければ、訴訟に負けてしまうこともありえます。証拠はどんな些細なものでも、できる限り集めておくようにしましょう。
②弁護士に相談する
慰謝料など「相手にお金を請求したい」場合は、弁護士に依頼しましょう。
弁護士にできることは、訴訟だけではありません。話し合いや労働審判といった別の方法もあり、訴訟を起こすよりも早く解決ができる場合があります。
一方で、相談料・着手金・報酬金・実費といった費用が発生するため、自身の懐事情も考えて依頼を検討しましょう。
弁護士を探すときは、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 自宅または職場の最寄りに事務所がある
- 性格的に合う
- ハラスメント問題を扱った経験がある、もしくはハラスメント問題を専門にしている
③相談後の流れ
弁護士への相談後にできることは、以下の通りです。
- 相手や会社側との示談交渉
法律の専門家である弁護士が入ることで、すぐに問題が解決できることもあります。
しかし、相手や会社側が自分の主張を受けいれなかったり、事実を否定したりして、交渉が決裂した場合は、訴訟へと発展することもあります。
- 訴訟
もし会社との交渉がうまくいかず、パワハラ・セクハラなどに対応してくれなかった場合は、賠償金請求訴訟や相手に対して、損害賠償や慰謝料などを求める訴訟を起こす形となります。
そのさい、同じ加害者からの被害者が自分以外にもいた場合は、協力して集団訴訟を起こすこともできます。証拠や費用などをシェアできるメリットがあるため、もし共通して相手を訴える意思がある場合は、検討してみてもよいでしょう。
訴訟の方法はこちらの記事でも説明していますので、あわせて参考にしてみてください。
4.まとめ
- ハラスメントの定義は「発言者意図に関係なく、相手が精神的または肉体的な損害や権利の侵害を受ける行為」
- 対処法は直接相手に言ったり、公的機関に相談したりすること
- それでもどうにもならなければ、会社を辞めたり訴訟を起こしたりすることも視野に
おわりに
ハラスメントを受けるのは辛いものです。しかし、そこで我慢して泣き寝入りをするのではなく相手にハラスメントをやめるよう働きかけたり、公的な窓口で相談することからはじめてみましょう。
解決しない場合は弁護士に相談するなどして、状況の打開を図るようにしてみてください。