パワハラを事例で解説!3つの裁判例から問題となるポイントを紹介

2018年12月03日 19:20:00労働問題

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 自分が受けている被害がパワハラかどうかわからない人

  • どんなケースがパワハラと認定されるのか気になる人

  • パワハラ認定された際の賠償額などを知りたい人

はじめに

「パワーハラスメント」(パワハラ)と一口に言っても、人によって様々なパターンを想像することでしょう。

実は、パワハラの定義は厚生労働省が定めています。

自分が日々感じているのはパワハラなのか、指導なのか……そんな悩みの ある人に、今回はパワハラと認定されたケースを紹介していきます。

1.パワハラの特徴とは?6つの定義を解説



厚生労働省は「パワハラ」の定義について、下記の通り6つの特徴を挙げています。
必ずしも上司から 部下とは限らず、同僚間でも対象となることがあります。

パワハラ6つの特徴
①身体的な攻撃
②精神的な攻撃
③人間関係からの切り離し
④過大な要求
⑤過小な要求
⑥個の侵害


以下、それぞれのケースについて具体的に見ていきましょう。

①身体的な攻撃

具体的には「暴行・傷害」とされており、暴力によって肉体的な危害を加えたり、傷をつけたりすることがあたります。大きなけがはなくても、突き飛ばしや小突きなどもこれに含まれます。

②精神的な攻撃

具体的には「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言」とされており、被害者の尊厳を傷つけるような言葉をかけたり、精神的に追い詰めたり、圧迫したりするような行為を指します。

③人間関係からの切り離し

具体的には「隔離・仲間外し・無視」とされており、一人だけわざと別行動をさせたり、部屋や机を隔離したり、意図的に必要な連絡を与えないなど、周囲から切り離すことがこれに当たります。

④過大な要求

具体的には「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害」とされており、過剰なノルマを課したり、本人の能力に見合わず結果を出せないことがわかっていながらそれ以上の仕事を与えたり、不必要な責任を負わせるなどして、苦痛を与える行為を指します。

⑤過小な要求

具体的には「業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」とされており、例えばある業務のスペシャリストに対し、それとは全く関係のない雑務や清掃などしか仕事をさせない、本来の業務に就かせない行為になります。

⑥個の侵害

具体的には「私的なことに過度に立ち入ること」とされており、業務上何の関係もない家族や友人関係などで立ち入ったことを聞いたり、プライベートに当たる業務時間外に執拗に連絡を取るなどがこれに相当します。

さらに詳しい内容については、下記の記事も参考にしてください。



2.実際の裁判事例を解説!問題となったポイントや賠償額を解説



ここで、実際に裁判となったパワハラ関連の訴訟を見てみましょう。
必ずしも全面的にパワハラが認められるとは限らず、例えば被害者からは「暴言」とされる上司らの言動も、企業側の通常の業務指導の一環として認められる場合もあります。

しかし、被害者が命を落とすほど肉体的・精神的にも追い詰められて弱ってしまったケースもあり、その点については企業側にも一定の責任が課されているようです。

自殺は「安全配慮義務違反」、叱責はパワハラ認定ならず

  • 概要

    ゆうちょ銀行の徳島貯金事務センターで、2015年6月に従業員の 男性(当時43歳)が書類のミスなどを責められるパワハラを苦にしたとして自殺。
    母親が「自殺原因は上司らのパワハラがあったため」として約8000万円の損害賠償を求める訴
    訟に踏み切った。徳島地裁はパワハラについては「業務上相当な指導の範囲」として認めなかった。


  • 結果

    パワハラについては認定されなかったものの、一方で「男性の体重が15キロ減るなどの体調不良や自殺願望がみられていたにもかかわらず、安全配慮義務を怠った」として、徳島地裁はゆうちょ銀に約6142万円の支払いを命じた。

  • ポイント

    この訴訟では、書類のミスなどの指摘は業務上必要な指導の範囲として、パワハラへの認定はありませんでした。

    とはいえ、自殺願望を持つほどの心身の不調を抱えている従業員に対し、企業側が何のケアも行わなかったことが問題視されたために、「安全配慮義務違反」という名目での支払い命令になっています。

障害者雇用で上司が暴言、企業が環境整備約束で和解

  • 概要

    知的障害のある男性(27)が障害者雇用で採用された勤務先のスーパーの上司から、仕事ぶりについて「幼稚園児以下だ」などと暴言を受け、パワハラだとしてこの上司と勤務先を相手取り、東京地裁に約580万円の損害賠償を請求。

  • 結果

    男性側は「障害者の働きやすい環境を整えておらず、退職せざるを得ない状況に追い込まれた」と主張。東京地裁は「就労時間などは適正を考慮したもの」と訴えの一部のみを認め、企業側に22万円の損害賠償支払いを命じたが、のちに企業と男性は和解。

  • ポイント

    男性は上司の教え方が厳しすぎるなど働きやすい環境になく、そのため能力が発揮できなかった旨も吐露。しかし企業側はパワハラについては認めず、上司からの不適切発言があったことのみ認め、男性の退社には遺憾の意を示しています。その上で、今後の障害者雇用について見直しをすると約束し、再発防止を講じるとして和解しました。

適切な業務の範囲を超えた打診を苦に自殺、因果関係は不明?

  • 概要

    家電量販店に勤務していたパート女性(当時49)が、競合店への価格調査要員として配置転換を打診されたことを苦にしたとして自殺。遺族が大津地裁に「上司によるパワーハラスメント」として7000万円の損害賠償請求を起こした。

  • 結果

    「業務の適正な範囲を超え、精神的な苦痛を与えた」として損害賠償は認められたが、業務が打診の段階で女性が死亡。実際に従事することはなかった。これにより指示と自殺の因果関係は不明として、遺族の主張は全面的に認められず、企業側に110万円の支払いのみを命じた。遺族は2018年5月時点でこの因果関係をさらに争うため、控訴する方針。

  • ポイント

    女性が死亡した直接の原因について、業務内容だとしてもまだ業務についていないということから訴えが認められていません。一方で、これが女性が受け止めきれる精神的な苦痛の範囲を超えていたことは認められているため、控訴後の判決が覆る可能性もあります。


3.パワハラを訴える場合はどんなものが必要?手順とポイント



どうも自分が受けているのはパワハラのようだ……と思ったとき、その次にはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。もしもしかるべき公的機関の窓口や、弁護士を使って法的に「訴えよう」という決意が固まった場合に取れる行動を考えてみましょう。

①パワハラの証拠を集めよう

訴える前にどこかの相談窓口へ問い合わせる場合でも、具体的な証拠が必要になります。

自分だけの思い込みではなく、客観的にそれとわかるものをできるだけ多く集めましょう。訴訟を起こす際には他者にも明確にわかる物が多いほど、有利になります。

データや紙など記録媒体は様々なものがありますが、相談の際に書き込みや紛失などが発生する恐れもありますので、いずれもコピーを手元に持っておくと安心です。

  • メールやチャットメッセージなど、相手から受けた嫌がらせが文字に残っているものは、受信した日付や時間がわかるようにして、スクリーンショットやプリントアウトをしておきましょう。

  • 不当な形での異動や業務命令、減給の記録の書面は保管しておきましょう。

  • スマートフォンの録音機能や小型ICレコーダーを利用して、相手の発言を録音しておきましょう。

  • 手書きのメモなどで「いつ・誰に・どのようなことを言われた・された・それに対してどう思ったか(どの部分に嫌悪感を持ったか)」という内容を記録する習慣をつけておきましょう。手書きのメモ以外では、スマートフォンのメモ機能、SNSの鍵アカウントで自分だけに見える記録として残すという手もあります。

  • 周囲の人に協力してもらうことが可能な場合は、メモとともに証人として陳述してもらい、名前を残しておくことも有用です。周囲で様子を知り、ハラスメント被害を避けるために退職するなど、自分以外の関係者を含む集団訴訟となったときにも声をかけやすくなります。

  • 暴力や精神的苦痛を受けた際に受診した病院の診断書は取っておきましょう。

  • 社内に相談窓口があった場合や、パワハラ当事者以外の上司などに相談したにもかかわらず、事態が好転しなかったり、逆に嫌がらせが加速したりしたときは、その相談内容や日時、相談の経過も残しておきましょう。

②パワハラを相談する際の窓口

証拠が集まったら、相談窓口に行ってみましょう。

  • 社内のハラスメント相談窓口

    利用できる環境であれば、まずはここを頼ってみましょう。同僚や周囲の上司などでは客観的な解決策が出にくい場合もありますし、全くの外部機関よりは事情をわかってくれることもあります。

  • 総合労働相談コーナー(労働基準監督署)

    労働基準監督署内など、各都道府県に380ヶ所設置してある、パワハラを含めた様々な労働問題の相談コーナーで、専門員が相談に対応します。
    自宅の最寄りではなく、勤務先の最寄りの相談所を選ぶようにして下さい。

  • ユニオン(合同労組)

    社内の労働組合に相談しづらい場合、社外のユニオンを利用するという手段もあります。企業との話し合いを受け持ってくれたりするなど心強い面もありますが、加入費用や会費が発生するほか、自ら問題解決に向けて自発的に動かないとなりません。

このほか、こちらの記事も参照してみて下さい。

③パワハラで損害賠償をする場合のポイント

  • 手順

    証拠集めや内外への相談が一通り済んだら、弁護士を探してみましょう。
    労働問題を専門に扱っている、打ち合わせがしやすい(職場や自宅から近い場所に事務所がある)弁護士を選ぶと良いでしょう。
    インターネットからは、日本弁護士連合会(日弁連)のサイト、または法テラス に足を運んで探すのが良いでしょう。

  • 期間

    裁判所の資料では平均で9ヶ月が目安とされていますが、1年以上かかる場合もあります。
    (参考:【図3】 平均審理期間の推移(民事第一審訴訟(全体)及び民事第一審訴訟(過払金等以外))

    訴えることも大事ですが、その期間持ちこたえられる自分自身のエネルギーも費用も必要になります。会社を辞めれば生活費の問題も発生しますし、辞めないまま訴訟に踏み切るには社内で生き残る精神力もいります。決して楽なものではないことも心に留めておきましょう。

  • 費用

    弁護士の利用は無料ではありません。最初の相談は無料の場合でも、具体的な訴訟を見据えると着手金が必要になります。

    金銭的な不安がある場合は、法テラスに相談するのが良いでしょう。着手金の立て替えなど、費用については相談に乗ってもらうことができます。ただし、「勝訴の見込みあり」など一定の基準を満たす必要があります。

    こちらの記事でより具体的な手順を紹介してい ます。


4.まとめ

  • パワハラには定義がある。まずはそこに当てはまる?

  • 具体的な行動に出るなら、まず証拠集めを

  • 社外の相談窓口を味方にしよう

おわりに

「何となく我慢したり、やり過ごしたりしていたけれど、あれはパワハラだったのか」と思う事例があったでしょうか。

もし不要な我慢を強いられるような出来事があったら、まずは記録をつけることから始めてみてはどうでしょう。

職場は毎日過ごす場所であり、生活に密着した所。なるべく快適にいられるようにしたいものですね。


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