書き手:enjin編集部
関連キーワード:投資詐欺,返金,弁護士
この記事でわかること
- 投資詐欺の被害にあったときの対処法
- 返金を求めるときのポイント
- 投資詐欺の返金事例
はじめに
仮想通貨、途上国開発、不動産、iPS細胞関連事業、未公開株……。
手を変え品を変え、あらゆる形でお金をだましとろうとする
投資詐欺。
言葉たくみに、あるいはしつこく勧誘されて、ついお金を払ってしまった……という人もいるかもしれません。
「投資は自己責任」という言葉があるように、投資して儲からなかったといって必ずしも返金されるわけではありません。
しかし、2019年4月26日には、クレジットカードを使った投資ビジネスを展開していた西山ファームに対して集団訴訟が立ち上がるなど、返金に向けた行動も各地で起きています。
(参照:
2019年6月11日・朝日新聞デジタル『西山ファームを集団で提訴 計7千万円超返還求める』)
そこでこの記事では、投資詐欺にあった場合にとるべき手順や返金方法などの重要なポイントとともに、実際に返金された事例なども合わせてご紹介していきます。
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1.返金してもらうためにやるべきされる可能性を高めるための4つの手順
「
相手に返金を求めても応じてくれない……」
そんなとき、返金を勝ち取る可能性を少しでも高めるためには、事前に多くの情報・証拠を集め、かつ相手にプレッシャーをかけてゆくことが肝心。
その内容は大まかに、
①被害を受けた経緯を整理する
②ほかの被害者と連絡をとり、協力する
③相手側業者の情報を集める
④警察に相談し、被害届を出す
の4つにわけられます。
以下、順を追って説明していきましょう。
①被害を受けた経緯を整理する
投資詐欺が疑われる場合、真っ先に以下の証拠を保存・保管しましょう。
- 投資をはじめるまでの流れを時系列順にまとめたもの
- 相手業者とのやり取り(メールの印刷やSNS画面のスクリーンショット。もしあればやりとりを録音した音声など)
- 業者の所在地、電話番号、相手の氏名
- お金を振り込んだ振込先口座
- 投資をする際に交わした契約書
これら以外でも、関係ありそうなものはすべて保管しておきましょう。
また、もしあなたがまだ相手業者と連絡がとれる状況で、自分で返金交渉を続けている場合も、その会話を録音し、データを保存しておいてください。
②ほかの被害者の情報を集める
投資詐欺の場合、あなたのほかにも複数の被害者がいる可能性があります。
複数の被害者と連携することで、情報共有ができたり、警察に被害届けを出す場合にも受理されやすくなったりするなどのメリットがあるので、被害者仲間を探してみましょう。
仲間を探す方法としては、被害にあった業者名などで検索し、ほかの被害者を探すほか、SNSや掲示板サイトなどで自ら情報を発信し、被害者からのコンタクトを待つという方法などがあります。
集団訴訟プラットフォームenjinにも「
仮想通貨などの投資詐欺に関する訴訟プロジェクト」があります。
ただし、SNSや掲示板サイトなどには被害者を狙った詐欺グループもあるので、注意が必要です。
- これまでの活動経緯が書かれていない
- 会員費などの名目で高額のお金を請求してくる
- 「100%返金」をうたう探偵事務所や行政書士事務所
などには注意しましょう。
被害者のかわりに返金交渉や訴訟をできるのは、弁護士だけ(140万円以下であれば認定司法書士も対応可能)です。
それ以外の業者を安易に頼ることは危険なので、控えるようにしてください。
③友人・知り合い・家族などの相手の関係者に連絡を取る
相手との連絡がとれなくなった状況で、もしも相手とつながりのある人が特定できた場合は、「お金のトラブルがあり、本人と連絡をとりたい」などといって連絡をとってみましょう。
もし返金請求訴訟を起こす場合、当事者の現住所が必要になります。友人・知人に協力を求めることで、相手の連絡先や現住所がわかるかもしれません。
ただし、相手の実家や現住所がわかったからといって、直接交渉に行くのは止めましょう。
たとえ被害者であっても、相手の家におしかけ強引に居座った場合、「
不退去罪」という犯罪に問われる可能性があります。
警察を呼ばれると逮捕されるリスクもありますので、控えてください。
④警察署に被害届を提出する
警察に被害届を出しても、直接返金にはつながりません。しかし、
返金のための制度「振り込め詐欺救済法」を利用するときは、先に警察に被害届を出しておいた方がスムーズです。
警察署に行くときは①の証拠を持参すれば問題ないのですが、念のため警察署に連絡し、必要なものを聞いておきましょう。
振り込め詐欺救済法の利用については、次の章で詳しく解説していきます。
2.投資詐欺の返金手段は「振り込め詐欺救済法」と「弁護士」
上記の準備と並行して、実際に投資詐欺の返金に動いていきましょう。
主な返金の手段は、
①振り込め詐欺救済法を利用する
②弁護士に依頼して訴訟を起こす
という2つのパターン。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
①振り込め詐欺救済法を利用する
振り込め詐欺救済法とは、オレオレ詐欺、架空請求、オークション詐欺などの被害者を救済するために作られた法律で、詐欺的な業者の口座を一時的に凍結し、残ったお金を被害者に分配するというものです。
メリットとして、
というものがあります。
一方で、
- 凍結の判断は警察や各金融期間次第
- お金を手渡しした場合は対象にならない
- 口座に残っているお金が1000円未満の場合、返金されない
- 複数人の被害者がいた場合、お金は被害額に応じて分配される
というデメリットもあります。
申請するには、まず相手業者の振込口座がある金融機関の窓口に経緯を説明し、口座停止の申し出をしてもらってください。その際、すでに警察に被害届けを出していることを伝えるとスムーズです。
金融機関が、口座が犯罪に使われている可能性が高いと判断すると口座が凍結され、そのおよそ数ヶ月後には、返金の手続きがはじまります。
手続き申請期間中に、
- 被害回復分配金支払申請書
- 運転免許証などの本人確認書類のコピー
- 振り込んだ事実を確認できる資料
の3つの書類を、窓口か郵送で金融機関に渡しましょう。
救済法の手続きの進捗状況や口座残高などを知りたい場合は、
振り込め詐欺救済法に基づく公告で調べることが可能です。
②弁護士に依頼し、訴訟を起こす
お金を手渡ししてしまい、かつ相手が返金に応じない場合は、法的手段にうってでるしかありません。
しかし投資詐欺は、返金してもらうことが非常に難しい犯罪です。少しでも返金の可能性を上げるためには、
投資詐欺に強い弁護士を探すことが大切。
弁護士選びのポイントを、以下の通りまとめました。
インターネット検索などでめぼしい弁護士を見つけたとしても、まずは日本弁護士連合会に登録している弁護士かどうか確認しましょう。
なかには、詐欺被害者からさらにお金を騙し取ろうとしている悪質業者が、弁護士や法律の専門家のふりをしているケースがあります。
そのため、本当に弁護士かどうか、必ず確認を取ってください。
また、実在する弁護士の名前を悪用してなりすましている可能性もあります。
弁護士に電話で連絡する際は、日弁連のウェブサイトに登録されている電話番号へ連絡してください。
弁護士事務所が、自宅や職場から通いやすい場所にあるか
相談や打ち合わせを迅速に行うために、通いやすい場所にある弁護士事務所を選んだほうが便利です。
なるべく、自宅・職場の近くの弁護士事務所に依頼しましょう。
投資詐欺事件を扱った経験があるか
弁護士には「離婚問題」「遺産相続」「損害賠償」「詐欺返金」など、
それぞれ得意とする分野があります。
投資詐欺などの詐欺事件の返金訴訟を豊富に経験している弁護士であれば、今後の流れを把握していますし、ノウハウを蓄積しているはずです。
事務所のウェブサイトや弁護士依頼サイトを見て、投資詐欺や消費者問題の訴訟実績がある人に相談するようにしましょう。
自分に合う弁護士か
投資詐欺の返金訴訟に強い弁護士でも、あなたとの相性の問題があります。性格的に合わない弁護士に依頼した場合、打ち合わせの段階からうまくいかないかもしれません。
そのため、複数の事務所に行き、様々な弁護士に相談してから、どの人に依頼するか決めましょう。
また、多くの被害者がいる場合、すでに弁護士が弁護団を結成している可能性があります。新聞やネットで弁護団が結成されていないか調べてみましょう。
③どうしたらいいかわからないときの相談先一覧
最後に、投資詐欺に関する相談窓口を紹介します。
ひとりで手続きを進めるのが不安なときや、わからないことがある場合などに利用してみましょう。
金融サービス利用者相談室(金融庁)
金融庁が開設している、金融・保険・投資・証券・仮想通貨サービスなどに関する質問や相談を受け付けている窓口です。
ただし、あくまで相談の受付であり、トラブルの仲介や調停、弁護士などのあっせんは行っていませんので、注意してください。
※回答が必要な場合は、相談者の電話番号が必要です。
金融サービス利用者相談室 |
電話(事前予防) |
0570-016-812(IP電話は03-5251-6812)
平日10時~17時 |
電話(被害後) |
0570-016-811(IP電話は03-5251-6811)
平日10時~17時 |
FAX |
03-3506-6699 |
ウェブサイト |
ウェブサイト受付窓口 |
郵便 |
〒100-8967 東京都千代田区霞が関3-2-1 中央合同庁舎第7号館
金融庁 金融サービス利用者相談室 |
「株や社債をかたった投資詐欺」被害防止コールセンター
日本証券業協会が設置しているコールセンターです。
相談のみ受け付けています。
消費者ホットライン(国民生活センター/消費生活センター)
消費者庁が設置している相談窓口です。
国の公的機関である「国民生活センター」が運営しており、各都道府県に設けられている「消費生活センター」が相談を受け付けています。
消費者ホットラインに連絡すると、最寄りの消費生活センターにつないでくれるので、「困ったときには
188(いやや)に連絡する」と覚えておきましょう。
なお、直接各地の消費生活センターに相談することも可能です。
もしも188等に電話がつながらない場合は、国民生活センターの「平日バックアップ相談」も利用してみてください。
国民生活センターの業務や利用方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
また、投資詐欺の場合、「投資のノウハウを教えます」などといって中身のない情報商材を売りつけられるケースもあります。
enjinでは、情報商材詐欺の被害について、皆様からのお声をお待ちしております。
ご希望いただければ、弁護士や認定司法書士に情報を共有することも可能です。個人情報は厳守しておりますので、ぜひご利用ください。
>>
情報商材詐欺の被害情報提供フォーム
3.実際にお金が返ってくることはあるの? 事例を紹介
これまで投資詐欺の返金方法をご紹介してきましたが、実際に返金に成功したケースはあるのでしょうか?
国民生活センターの事例をもとに、実際の事例を紹介していきます。
概要 |
結果 |
70歳の女性が劇場型の勧誘を受けて100万円分の仮想通貨を代理購入したものの、不安になり返金を求めた。 |
高齢の購入者に対し、契約内容や仮想通貨のリスクをしっかりと説明せずに契約させたことを理由に国民生活センターが交渉にあたり、全額返金された。 |
劇場型の勧誘とは、複数の人物がそれぞれの役を演じてターゲットに「これは儲け話だ」と信じ込ませ、契約させるという手口です。
この事例では、以下のような流れで勧誘が行われていました。
- 「仮想通貨の購入権」がもらえるという内容の案内状が届く。
↓
- 複数の会社から「この地区に与えられている仮想通貨の購入権利を譲ってほしい」との電話がくる
↓
- A社に権利を売ろうとすると、「案内状を送ってきた会社に電話し、あとどのくらい仮想通貨が残っているか確認してほしい」と言われる。
↓
- 仮想通貨会社B社に確認したところ「残りわずかなので急いだほうがよい」と言われる。
↓
- A社にそのことを伝えると、「高額で買い取るので代理購入してほしい」と依頼され、了承。
↓
- B社に購入する旨連絡し、100万円分の仮想通貨を購入する契約書にサインした。
このケースの問題は、以下の3点です。
- インターネットを利用していない購入者が仮想通貨の購入を行ったため、実際に購入したとされる仮想通貨を確認できていなかったこと
- 劇場型の勧誘に問題があったこと
- 業者が仮想通貨のリスクを十分に説明していなかったこと
このケースでは、交渉を続けた結果、全額が返金されました。しかし、相手方も弁護士をたてていたため、交渉は非常に難航したとのこと。
また、「
仮想通貨」は近年こうした詐欺によく使われている言葉です。
電話などで購入勧誘が来た場合は十分に注意しましょう。
概要 |
結果 |
70歳代の男性が「毎月高額の配当がある」という売電事業に100万円を出資したが、後日渡された書面には事前に聞いていた元本保証が記載されていなかったため、返金を求めた。 |
元本割れの可能性について説明がなかったなどの勧誘時の問題を理由に、80万円が返金された。 |
このケースでは、高額配当があると言われて契約したものの、実際の契約内容はまったく違うものであったことが問題となりました。
相手の事業者は、消費者から集めた出資を運用し、得た利益を分配するとしていました。しかし実際の契約は、合同会社の社員権の自己募集となっており、まったく別のもの。
消費者からひろく出資を募り、運用した利益を分配する方法は「
集団投資スキーム」と呼ばれ、本来は金融庁への登録が必要となります。その規制を逃れるために「
社員権」という形で契約を行ったようです。
このケースでは、相手側業者が勧誘方法が不適切であったと認め、一部の金額を返金することで和解にいたりました。
概要 |
結果 |
好きな時に購買できる株取引として200万円分の未公開株を契約したが、売却を依頼しても実行してもらえない。返金を求めても応じてもらえなかった。 |
ADR(裁判外紛争解決手続)において30万円を3か月、残りは毎月10万円ずつ(14か月)で返金することで和解したが、和解金は支払われなかった。 |
このケースでは、ADRでの調停で事業者側は200万円の返金を月5万円の40回払いで行うと提示したものの、購入者が期間短縮を要求した形となります。
ADRとは、消費者と事業者の間で起きた問題について、各地の消費生活センターや国民生活センターの助言などによる解決が見込めなかったときに、国民生活センターが代理となって和解の仲介や仲裁を行うというものです。
その結果和解が成立しましたが、返金されることはありませんでした。
実は、ADRでの解決結果には、法的効果がありません。
解決結果を確実に履行してもらうためには、公正証書を作成しておく必要があります。
公正証書を作るときは、両当事者(代理人も可)が一緒に公証役場へ行って解決結果を基に、公証人に書面を作成してもらいい、両当事者に交付してもらいましょう。
原本は公証役場に保管されるので、たとえ事業者側が書面を紛失しても効力は失われません。
事業者が素直に返金に応じたからといって油断することなく、確実に返金してもらえるよう手続きをとりましょう。
4.まとめ
- 投資詐欺で返金してもらうためには、詐欺目的で勧誘してきたと立証できる証拠や情報を集める必要がある。
- ①振り込め詐欺救済法を使ったり、②弁護士に依頼して訴訟を起こすことで、返金を求めることができる
- 投資詐欺の返金請求では、全額返金してもらえることもあるが、返金を了承しても支払わない事業者もいるので、法的効果がある手続きをとった方がいい。
おわりに
投資詐欺をはじめとする詐欺行為は、犯罪の立証が難しい犯罪です。
返金してもらえる可能性を少しでも上げるため、証拠はすべて保管し、情報を収集しましょう。また、同じ相手から被害を受けた人が複数いた場合は、証拠を共有したり弁護士費用を分散できる集団訴訟も手段のひとつです。
詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
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