マルチ商法をやめさせるには?3つの心理状態から対話方法を解説

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投稿日時 2018年09月07日 15時15分
更新日時 2018年09月07日 15時15分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 家族や恋人がマルチ商法にのめりこみ、困っている人

  • マルチ商法の返品・返金方法について知りたい人

はじめに

「マルチ商法はじめたんだ。一緒にやらない?」

家族や親しい友人、恋人……身近な人がマルチ商法にのめりこんでしまった場合、その考えを変えさせるのは非常に困難です。

マルチ商法の多くは、メンバーとの交流やセミナーなどで一種の宗教のようなコミュニティを作り上げていることが多く、家族や友人の説得が届きづらくなってしまいがち。

「なんでわかってくれないの?」
「この商品の素晴らしさがわからないなんてかわいそう」
「世間の常識にとらわれている人にはどうせわからない」


どれだけ必死に説得しても、こうした言葉で心を閉ざされてしまう……。

そんなときに役立つアドバイスを、この記事では説明していきます。

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1.マルチ商法の解約ができるのは「本人」だけ……だからこそ説得が必要



では、マルチ商法をやめさせるためには、どういう方法があるのでしょうか?
マルチ商法は法律上は連鎖販売取引と呼ばれ、契約解除や購入した商品の返品には、下記の3つの手段を利用することができます。

①クーリング・オフ制度
②中途解約
③消費者契約法による取消権の行使


くわしくは後で説明しますが、いずれの場合にも重要な点があります。
それは契約した本人が解約をしなければならない、ということです。
たとえ家族であっても、本人以外が無理やりマルチ商法をやめさせることはできません

例外として、契約者が未成年の場合は親などの法定代理人がかわりに解約することができますが、契約時に「親の許可は得た」などと嘘をついていると解約が認められないなど、こちらも大きなハードルがあります。

そのため、マルチ商法の解約には、多くの場合本人がまず「やめる」と決断することが必要になってきます。
では具体的に、どう説得していけばよいのでしょうか。
次の章で解説していきます。


2.まずは「相手の考えを聞く」のがコツ!心理状態から考える対話方法3選



そもそもなぜ、相手はマルチ商法をはじめようと思ったのでしょう?

お金のため?
成功のため?
仲のよい友人に誘われたから?
それとも、強引な勧誘で断りきれなかったからでしょうか?

はじめにお伝えしたとおり、マルチ商法にのめり込む人たちは、会員どうしで宗教のようなコミュニティを作っています。

そのため、外部にいるあなたがよかれと思って「説得」を試みても、相手からしてみれば押し付けに感じられてしまうのです。

頭ごなしに否定するのは逆効果。まずは相手がどうしてマルチ商法をはじめようと思ったのか、一緒に考えるところから始めてみましょう。

マルチ商法を契約した相手の心理を知るガイドとして、2018年8月に消費者庁が発表した「徹底解剖!若者が消費者被害に遭う心理的な要因」 が参考となります。
(参考元:徹底解剖!若者が消費者被害に遭う心理的な要因

この「誤信」「混乱」「浅慮」の3つの心理状態を軸に、対話をすすめるためのポイントについて紹介していきたいと思います。

①「誤信」――商品が魅力的で特別なものだと信じている

「これは世界でも素晴らしい商品だ」
「いままでにない斬新なビジネスだ」

セミナーなどでそう信じて、始めているパターンです。
確かにマルチ商法そのものは違法なビジネスではなく、人によっては成功する場合もあります。


こうした人に対しては、まずはその商品やビジネスがどういうものなのか、一般に流通するものとはどう違うのか、を聞いてみましょう。

たとえば、ネットにはいくつものマルチ商法の情報がアップされています。
それらひとつひとつの仕組みと比較し、また実際に本人にも見てもらって、「これとはどう違うの?」とひとつひとつ説明してもらいましょう。

「誤信」の核になっているのは、「いま自分がやっているビジネス・商品が、いままでにない唯一のものだ」という思い込み。実際、セミナーなどでそのように説明され、信じ込んでしまっているケースもあります。

類似のビジネスをひとつひとつ検証していくうち、本人の中でこうした「誤信」が消えていく可能性があります。

そうなれば、いままでよりも冷静に話ができるようになるかもしれません。

ただし「そんなに興味があるなら一緒にセミナーに行こうよ!」などと誘われた場合、行かないほうが賢明です。あなたまで大勢での勧誘に巻き込まれるおそれがあるからです。

②「混乱」――勧誘時に会員からのプレッシャー圧迫感を感じて契約してしまった

「なんども勧誘されて、つい」
「相手の家に呼ばれて、断りきれず」
「多くの人に囲まれて怖かったから…」

「契約しなければ帰れない」
などのプレッシャーから逃れるために、つい契約してしまったというパターンです。

本人の意欲が低いため、解約の意思を最初から持っている可能性は高いと言えます。

ただし、嫌々参加しているうちにコミュニティの雰囲気に流され、やがて①の「誤信」を持つようになることもあるため、なるべく早めの対応をしたほうがよいかもしれません。

こうしたケースでは、まずは勧誘、契約時の状況をくわしく聞いてみることが大切です。

なぜ、マルチ商法をはじめたのか。
どういう人からどういう経緯で、どんなところで、どんな状況で勧誘を受けたのか。 問い詰めるのではなく、相手の心を理解しようとする姿勢で聞いてみてください。

「断りきれずにはじめてしまった」
という場合、契約までの間に、違法な勧誘が行われている可能性があります。


マルチ商法の勧誘には、
  • 最初に「これはマルチ商法の勧誘である」と伝えなければならない
  • 「100%儲かる」などの誇張表現を使ってはいけない
  • 勧誘を断られた場合、しつこく何度も迫ってはいけない
  • 大人数で囲むなど、逃げられない状況で契約させてはいけない
  • 事前にクーリング・オフについての説明をしなければならない

などといったいくつもの決まりがあり、これらを守らないで行った契約は取り消すことができます

(参考:マルチ勧誘の断り方って?いざというときの返品・返金方法4つを解説

こうした強引な勧誘を受けた人の心の奥にあるのは恐怖です。

「解約するなんて言ったら、また脅されてしまうのでは……」

そんな不安から、やめたくてもやめられないと思っている可能性があります。
しかし、クーリング・オフや契約解除を妨害する行為もまた違法です。

そのことを伝えて安心させると同時に、場合によっては警察を頼るといった方法も検討してみてください。

③「浅慮」――視野が狭くなった状態で契約している

「お世話になった先輩にすすめられたから……」
「ホームパーティでいろいろごちそうになったから、いまさら断りづらい……」
「3時間以上も話を聞いて疲れたので、とりあえず契約しよう」

こういった、商品や契約の内容そのものとは無関係な理由で契約することを、「浅慮」といいます。決して契約者本人の考え方が浅いというわけではなく、さまざまな理由で本来の思考力が低下している状態を指します。

こうしたケースの場合、必要となるのは「なんのためにマルチ商法をやるのか?」ということの再認識です。

マルチ商法をやることで、なにが得られるのか?
そのかわりに、どんなリスクを負うのか?

ということを、ひとつひとつ一緒に検証していきましょう。

たとえば、お世話になった先輩からすすめられて断れなかった場合、マルチ商法によって得られるものは先輩との関係であり、そのかわりに負うリスクは、入会金の支払いや先輩からの商品購入代金などでしょう

  • そのリスクとリターンは本当に見合っているのか?
  • 先輩との関係を維持するために、他の方法はないのか?

ということを、改めてよく考えることが大事です。
なお、このときもまた、相手を説得しよう、やめさせようという気持ちではなく、あくまで相手のことを理解しようとする姿勢を意識するようにしてください。


3.商品の返品・返金方法は?使える制度と相談先



先ほどもお伝えしたとおり、クーリング・オフの期限は決まっています。 本人がマルチ商法を退会すると決断した場合は、すぐ行動にうつしましょう。

まずは、これまでのやりとりの記録や渡されている概要書面・契約書面、返品したい商品を保管します。概要書面・契約書面とは、マルチ商法の契約の際に必ず渡さないといけない書面であり、記載するべき内容も決められています。マルチ商法に入会していれば受け取っているはずです。

もしも解約・返品手続きに不安がある場合は、消費生活センター(188)や警察相談専用窓口(#9110)に相談して適切なアドバイスをもらうようにしましょう。

冒頭でも触れたマルチ商法の契約解除や返品に使える3つの制度についてご紹介します。

①クーリング・オフ

クーリング・オフ制度は、規定の期間内(マルチ商法の場合は20日間)であれば、契約解除・商品の返品ができる制度です

クーリング・オフの期限を過ぎてしまっていても、「クーリング・オフはできない」と嘘をつかれた、高圧的に脅され期間内に申請できなかった、契約のときに渡された概要書面・契約書面の内容や受け渡しに不備があった、といった場合は、制度を利用することができます。

くわしいやり方については、下記の記事を参考にしてください。


②中途解約制度

クーリング・オフを利用することができなかったときは、中途解約制度で商品の販売契約を解除しましょう。

ただし、中途解約制度を利用するためには条件があります。

  • 入会して1年経過していない
  • 渡されてから90日経っていない商品である
  • 商品を転売していない
  • 商品を使用、消費していない(購入時に「試してみて」と言われて使った分はのぞく)
  • 商品をなくしたり壊したりしていない

これら5つすべてにあてはまっていなければなりません。

また、クーリング・オフのように無料ではなく、一定額の費用が発生するので注意してください。

③消費者契約法の取消権

クーリング・オフと中途解約の両方が使えない場合でも、不適切な勧誘で勘違いしたまま契約をしていたときは、消費者契約法の取消権で契約を解除できます

ただし、取消権には時効があり、誤認に気づいてから1年、契約してから5年となっているので、注意しましょう。

また、消費者側が「不適切な勧誘だった」と証明する責任があるため、勧誘が不適切だったことを証明する証拠を集める必要があります。

立証が難しければ、先ほどご紹介した消費生活センター(188)や警察相談専用窓口(#9110)に相談しましょう。


これらの解約・返品方法については、こちらの記事で詳しく説明しているので、参考にしてください。



4.まとめ

  • マルチ商法の契約は、契約者が未成年者である場合を除き、契約した本人しか解約できない。

  • マルチ商法を契約してしまう心理状態には、「誤信」「混乱」「浅慮」の3つがあり、それを解消することが必要。高圧的に「ダメだ」と言うのではなく、まずは契約者本人の考えを聞く姿勢をもつことが大切。

  • 解約・返品の方法は①クーリング・オフ②中途解約制度③消費者契約法の取消権の3つが利用できる。

おわりに

マルチ商法の契約は未成年をのぞき、本人しか解除できません。

頭ごなしに説得するのではなく、本人の気持ちや将来のビジョンを聞き、親身になってアドバイスをしていくことが大切です。

この記事が皆様のお役にたてば幸いです。

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