この記事は以下の人に向けて書いています。
- ネットワークビジネスの実態が知りたい人
- 友人にネットワークビジネスの勧誘をされた・されている人
- 勧誘の断り方や手口、商品の返品・解除の方法を知りたい人
はじめに
「すごくいいお仕事の話があるんだけど……興味ない?」
旧友や、大学の友人などから、そんな言葉で勧誘されたこと、一度はあるのではないでしょうか。
マルチ商法、ネットワークビジネスなどの名称で知られる、いわゆる連鎖販売取引。強引な勧誘などでトラブルになるケースが多いため、名前は聞いたことがあるという人は多いでしょう。
ただ、話としては知っていても、どんな人がネットワークビジネスをやっているのか、やっている人はどんな経験をしているのか、その実態はあまり知られていないのではないでしょうか。
この記事では、書籍やブログなどのネットワークビジネスのさまざまな体験談を紹介していくと同時に、よくある勧誘パターンや対処法についても解説していきます。
1.悲喜こもごも?ネットワークビジネス体験談
ネットワークビジネスを行っている人たちは、ピラミッドのように上位から下位までのランク付けがされ、上位に行くほど、
つまり自分の下にいる会員を増やすほど、キャッシュバックされるポイントが多くなる仕組みとなっています。
(参考:
マルチ勧誘の断り方って?いざというときの返品・返金方法4つを解説)
お金を稼ぐためには、自分が勧誘して会員を増やさなければならない……。そんなネットワークビジネスの世界で生きる人たちの世界は、どんなものなのでしょうか?
愛されるアムウェイ 嫌われるアムウェイ(書籍)
(出版社:サイゾー 著:アムウェイルール研究所 発行日:2014年9月)
アムウェイに元々入会していた夫をサポートする形でアムウェイ・ビジネスをスタートさせ、成功に導いたという女性が書いたエッセイ。知られざる「アムウェイあるある」のエッセンスを凝縮して紹介しています。
たとえば、アムウェイのディストリビューター(勧誘したり商品を紹介する会員)を勧誘する際、
向いていそうな人のことを「ナイス」「ピカ」「キラ」「ダイヤの原石」などと呼ぶのだそうです。勧誘中に口が滑り「
あなたってナイスな人だね」と言ってしまうこともあるとか。
また本書では、こうした「ダイヤの原石」の特徴を、こんな形で紹介しています。
・とにかく明るい。
・経営者感覚がある。
・フットワークが軽い。
・適度に純粋である。育ちがいいのは大歓迎!
・品質の良さを直感的に感じとれるセンスがある。
・カリスマ性があればなお素晴らしい。
(同書『明るくて才気煥発な人に会うと、思わず「ナイス!」と口に出してしまう。』より)
「
わたし、あてはまってる!」と思う人は、アムウェイ会員からすればぜひ勧誘したいタイプ……なのかもしれません。
また本書で紹介されているとある会員は、仲の良い友人を誘って断られたときに、
「自分は選ばれた人間だ! この逆境を乗り越えチャンスをつかみ成功するんだ!」
とでも思わないとやっていられない。
(同書『「自分は選ばれた人間なんだ」と声に出す。』より)
として、実際に
「自分はえらばれた人間である」と声に出して言うのだそうです。
「ネットワークビジネスの会員って宗教みたい」という声はよく聞かれますが、その印象はこうした会員の葛藤や、ある種の悲壮感さえ漂う自己洗脳から生まれている……のかもしれません。
作者がアムウェイ・ビジネスの成功者であることもあり、基本的には肯定的な表現が多いものの、要所要所に利いた皮肉とともに、きれいごとだけではないネットワークビジネスの構造や会員の様子がつづられます。
ネットワークビジネス未体験者でも、内部の雰囲気を感じられるのではないでしょうか。
このような体験談を読んでいくと、ネットワークビジネスには人によって向き不向きがあることがわかってきます。
向いていない人は、必死に勧誘しても多くの収入を得る可能性は低いでしょう。また、向いている人でも、築いたネットワークがふとしたことで崩れてしまったり、周囲に興味を持つ人がいないことがあったりと、確実に上位会員になれるというわけではありません。
さらに、ビジネスによっては高額な初期投資で借金を負うというリスクもあります。
そうした事実をふまえて、
本当にそのビジネスが自分に必要なことなのか、ほかに方法はないのか、「自分の判断基準で」考えてみることが大切だと言えるかもしれません。
2.体験談から見えてくるネットワークビジネスのあるある6つ
このような様々な体験談を読んでいくと、いくつもの共通点を見つけることができます。
こうしたネットワークビジネスにありがちな勧誘ワードやパターン、手口を知っておけば、いざ勧誘されたときに
「これって、ネットワークビジネスの勧誘かもしれない」と気づき、場合によっては断る役に立つこともあるでしょう。
①疎遠になっている知人から連絡が来る
前の章で紹介した体験談のように、ネットワークビジネスはまず自分の知り合いや友人を勧誘することが一般的。少しでもつながりがある人には声をかけてきます。
特に、
しばらく疎遠になっていた友人や、そこまで仲良くなかった人から突然声をかけられた場合は、ちょっと疑ってみたほうがよいかもしれません。
しかし、せっかく「久しぶりに遊ぼう」と誘ってくれている知人に「それって、何かの勧誘?」なんて、なかなか聞きづらいもの。
そのため、まずは
共通の友人・知人に「今度会うことになってるんだけど、あいつ、最近の様子どう?」と聞いてみたりするのもよいでしょう。
相手がネットワークビジネスへの勧誘を目的にしているのなら、すでに多くの人に同様の話をしているはずです。
「実はこの間、あいつに勧誘されて……」という忠告をもらえるかもしれません。
知人から「どうしてそんなことを聞くの?」と返された場合は、「久しぶりに会うから、気になって」「彼氏・彼女と別れた、とかなにかタブーな話題をうっかり話すと気まずいから」とはぐらかしてもよいでしょう。
②友人・知人から「すごい先輩」を紹介される。
心を許している友人・知人からそんな言葉をかけられると、
「ちょっと会ってみようかな?」と思うかもしれません。
しかし、実際に会ってみると「すごい先輩」はネットワークビジネスでの上位会員ということも……。そのまま、上位会員にネットワークビジネスの良さを力説されます。
実際に会う前に言われたら、
「興味ない」「堅実に会社勤めをしていきたい。自分でビジネスはやらない」などと断るようにしましょう。
法律では、ネットワークビジネスの勧誘をする場合、
会員は最初に「これはネットワークビジネスの勧誘です」とあらかじめ伝えなければなりません。さらに相手に勧誘を断られた場合は再び勧誘をしてはいけないと法律で決められています。
「話だけでも聞いてほしい」としつこく引き留められる場合には「
特定商取引法違反だよ」と伝え、強く断るようにしましょう。
③唐突に将来の夢を詳しく聞かれる
夢を聞かれること自体は、べつに珍しくないことかもしれません。
しかし、自分のビジョンについて詳しく語っていくうちに、
「そのための資金はどうするの?」
「今の収入で満足してる?」
「会社に勤めているだけだと、そのうちリストラされるかもしれないよ」
など、
お金に関する不安をあおるような問いかけをされはじめたら、すこし注意が必要かもしれません。こうした勧誘方法も、ネットワークビジネスにありがちだからです。
もちろん、単なる話題の一つかもしれませんが、「ちょっと不安がある」と、愚痴をこぼすのを待ってから、「将来への投資になる。簡単な副業をはじめてみない?」とビジネスに勧誘されることがあります。
そんなときは「勤めているところが副業禁止で」「そういうビジネスは絶対にやらないと家族と決めている」など、
できない理由を明確に伝え、断るようにしましょう。
④ママ友などから、子供のための副業をしないかと持ちかけられる。
先ほどの夢や将来の切り口のように、「未来」を軸に勧誘されるパターンです。自分のためだとハードルが高くても、「子供のための投資だ」と言われれば、つい、ビジネスをはじめたくなるかもしれません。
ただし、
さまざまなリスクをきちんと伝えず、利点ばかりを強調する勧誘である場合、やはり断ったほうがよいでしょう。
⑤「セミナー」「イベント」「勉強会」などに唐突に誘われる。
先程の体験談にもあったように、
「面白いセミナーがあるから参加してみない?」と言われて会場に行くと、
セミナーそのものがマルチの勧誘だったというパターンです。
会場では勧誘された人と会員が隣同士に座り、講師役の上位会員の話を聞くことになります。これも同様に、「ネットワークビジネスであることを隠した勧誘」となり違法です。
「こういう話には興味がない」と言ってその場を去りましょう。
⑥出会ったばかりの異性から、唐突に「会いたい」と言われる。
「この人いいかも」と思った相手(異性)から後日、「会いたい」といわれて待ち合わせ場所に行ってみると、
実はネットワークビジネスの勧誘だったというパターンです。
先ほどお伝えした体験談の中にも、ダーツ大会で知り合った人に勧誘されたケースがあります。
不特定多数の人が集まるような会場では、こうした勧誘が起きやすくなります。
出会ってすぐにビジネスに勧誘されることもあれば、何回か会って彼氏彼女の一歩手前まで関係性が進んでから勧誘されることもあります。
「せっかくいい雰囲気だったのに……」「いい人だし、私もビジネスをやれば、関係が進むかな」と思うかもしれませんが、
相手はその感情を利用して自分の勧誘に利用しようとしているのです。間違いなく、あなたを幸せにはしてくれるタイプの人ではありません。
ビジネスそのものに興味がないかぎり、
すっぱりと関係を断ちましょう。
いかがでしたでしょうか?
いずれの場合でも、
その気がないのなら強く拒絶することが大切です。
悪質な勧誘員の場合、
大人数で勧誘してくるなどプレッシャーを与えてくる場合もありますが、そうした勧誘も違法です。
「相手のことを気にせず」「即座に帰る」くらいのつもりで、悪質な場合は警察に通報することも視野に入れましょう。
3.もし商品を買ってしまったら……解約・返金方法
気を付けていてもうまく断れず、つい、ネットワークビジネスに入会することもあるでしょう。
ネットワークビジネスに入会し「辞めたい」と思ったり、購入した商品を「返品したい」
と思った場合、退会手続きや返品・返金手続きをとることになります。
ネットワークビジネスの場合、契約解除や返品をするときに使える3つの制度があるので、ご紹介します。
①クーリング・オフ制度を利用する
クーリング・オフ制度は、どのような理由であっても、規
定の期間内(ネットワークビジネスの場合は20日間)であれば、解約・返品をすることができる制度です。
このとき注意しないといけないことは、期間の数え方です。
クーリング・オフは契約書類を受け取った日から発生します。
例えば、7月10日に書類を受け取った場合、その日を1日目と数えるため、20日目は7月29日となるのです。
もしも、クーリング・オフの期限を過ぎてしまっていても、「クーリング・オフはできない」と嘘をつかれたり、契約のときに渡された書類に不備があったりした場合は、制度を利用することができます。
クーリング・オフについて詳しく解説した記事があるので、参考にしてみてください。
②中途解約制度
クーリング・オフの期間を過ぎてしまっている、クーリング・オフをしようとしたけど嘘をつかれて妨害をされた、脅迫されてクーリング・オフができなかった、などのことがなかった場合、クーリング・オフを利用することができません。そんなときは、
中途解約制度を利用して商品の販売契約を解除しましょう。
ただし、入会してから1年経過していない、商品をほかの人に転売していないなどの様々な条件があります。
また、クーリング・オフのように無料ではなく、多少の費用がかかります。
③消費者契約法による取消権
クーリング・オフと中途解約の両方が使えない場合でも、
不適切な勧誘で勘違い・困惑したまま契約をしてしまったときは、消費者契約法の取消権で契約を解除することができます。
ただし、
消費者が誤認に気が付いてから1年、契約してから5年経過すると時効になってしまうので、注意しましょう。
また、
消費者側に立証責任があるので、不適切な勧誘だったことを証明する証拠を集めなくてはいけません。
自分ひとりでの解決が難しいときは、弁護士や最寄りの消費生活センターに相談しましょう。
ネットワークビジネスの返品・返金方法については、下記の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
4.まとめ
- ネットワークビジネスでは、成功できる人とできない人がおり、うまくいったとしても周囲の人間関係が崩れると、築き上げたネットワークが崩壊してしまうことがある。
- 勧誘には、疎遠になっていた友人からの声掛けだけでなく、新歓・合コンでの声掛けやスパでの勧誘など様々なパターンがある。いずれの場合も強く断り、その場を立ち去る。
- 返品・解約には、①クーリング・オフ制度②中途解約制度③消費者契約法の取消権の3つを使うことができる。ネットワークビジネスの会社との交渉が一人でうまくいかないときは、弁護士や消費生活センターに相談する。
おわりに
ネットワークビジネスの体験談とよくある勧誘パターンについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
ネットワークビジネスは一握りの成功者と大多数の一般会員で成り立っています。
ビジネスに成功できるのか少しでも不安があれば、まずは断り、よく考えてから決めるようにしてくださいね。
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