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【特集 ”名ばかり事業主” の私たち #2】 配達員の事故、労災は?

投稿日時 2019年04月22日 12時00分
更新日時 2019年04月22日 14時34分
さまざまなジャンルの飲食店の料理を、近くにいる配達員が指定の場所まで持ってきてくれる「ウーバーイーツ」の宅配サービス。都市部では、緑色の大きなケースを背負って自転車やバイクなどで配達する配達員をよく見かけます。実際に利用したことのある方もいるのでは?

自転車などの配達手段とスマホさえあれば誰でもなれるウーバーイーツの配達パートナー(配達員)。好きな時間で自由に働けるなどのメリットがある一方で、「交通事故に遭った場合に労災がおりない」など、いざという時に頼る場所がない配達パートナーの不安の声も聞かれます。

配達パートナーに労災がおりないのはなぜなのでしょう。自由な働き方が増えてきた一方で、従来と異なる働き方をしている人のいざというときの保障について、どのように考えていけば良いのでしょうか。(牧野 佐千子))

UberEats (ウーバーイーツ) とは?

ウーバーイーツは、配車サービス「Uber」を展開する、アメリカのウーバーテクノロジーズが運営する料理宅配サービスです。日本では、2016年9月にサービスを開始し、配達可能エリアや提携する飲食店は年々拡大。提携飲食店にとっては、新規の顧客獲得で収益を上げる方法として注目を集めています。

配達パートナーは、自家用車やバイク、スクーター、自転車などで配達をすることができます。スマホの専用アプリで依頼を受け、飲食店に配達物を取りに行き、直接配達先に届けます。1回の配達で数百円の報酬が発生するしくみです。効率よく配達し、1日に2万円稼ぐ人もいるといいます。(参考:Twitter @UberEats配達員

配達中に事故に遭ったら、治療費は自己負担?

配達パートナーは、ウーバー社と業務委託の契約を結んだ「個人事業主」ですので、「労働者」のための労災保険加入が認められていません。例えば、配達中にほかの車とぶつかって配達員自身がけがをした場合、労災保険に入っていれば治療費を全額負担してもらえますが、個人事業主が加入している国民健康保険での治療となるため、3割は自己負担ということになってしまいます。

配達パートナーは、ウーバー社の独自の保険に自動的に加入となりますが、補償内容が対人賠償と対物賠償のみとなっており、相手方にけがをさせてしまった場合などには適用。配達員自身のけがなどには適用されません。

ウーバー社は、長時間労働にならないよう、配達パートナーが合計12時間の配達を行ったあと、6時間はオフラインとなる新しい機能を導入(出典: Eats Japan 2019 年 1 月 28 日 Uber Eats 配達パートナーの安全機能強化について)。緊急時に110番に直接つながる緊急通報ボタンの機能をつけるなど、配達パートナーの安全を確保する対策も行っている、としています。

しかし、先にあげた配達中の事故で配達パートナー自身がけがを負った場合など、通常の雇用契約では保障されていることが、個人事業主の自己責任とされてしまっている状況です。

海外では「労働者性」が認められている

アメリカやイギリスをはじめ、海外では日本に先行して、ウーバー社と業務提携したタクシー運転手の「労働者性」をめぐる争いが提起されてきました。2016年10月にはロンドンの雇用審判所が、ウーバーの運転手を「労働者」と認め、最低賃金適用や有給休暇の権利を認める判決を下すなど、労働者性を肯定する判断が相次いで下されています。

また、フランスでは2016年にウーバー社のようなプラットフォーム(PF)企業の社会的責任に関する法律ができました。一つのPFを通じて、年間一定額(2017年は5100ユーロ=約65万円)を稼いでいる人には、労働者性に関係なく、PFが
(1)労災保険料を払う、
(2)職業訓練の費用を払う、
(3)労働三権を認める(特に団体交渉に応じる)
というものです。

労働問題を扱う川上資人弁護士は「様々な働き方が増えてきた日本でも、海外のこうした動きに注目し、対策を整えていくことが必要です」と話します。
この流れを受けて、さまざまな働き方の人たちが増加している国内での今後の動きが注目されます。

(文 牧野佐千子)



【特集】”名ばかり事業主” の私たち
enjinでは、実態は「労働者」であるのに業務提携を結んだ「個人事業主」として扱われ、
労働時間や最低賃金などを取り決めた労働基準法、
厚生年金や健康保険などを取り決めた社会保険法、
育児休業について規定した育児休業法など、
労働者を保護するための法律が適用されない
「名ばかり事業主」のさまざまなケースを取り上げ、問題提起を行っていきます。

#名ばかり事業主 #enjin #集団訴訟


<過去のコラム>
#1 コンビニオーナーは「労働者」か?
コンビニ各店舗のオーナーは、本部との加盟店(フランチャイズ、FC)契約を結んでおり、人手不足や傷病などでやむを得ず営業時間を短縮するオーナーに対し、莫大な違約金を請求するケースも。

#2 配達員の事故、労災は?
Uber Eats配達パートナーが配達中に事故に遭った場合、労災がおりません。自由な働き方が増えてきた一方で、これまでと異なる働き方をしている人のいざというときの保障は、どうすればよいでしょう?

#3 長時間・過密労働の美容師なのに…
東京・神奈川で美容室10店舗以上を展開し、「地域最安値」を掲げ、次々と新規出店を行っている美容室E社(仮名)。所属する美容師は店長も含めてほぼ全員が業務委託契約の「個人事業主」といいます


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