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残業規定はどう変わるの?残業時間上限など改正労基法のポイント4つ

投稿日時 2019年04月19日 13時53分
更新日時 2019年04月19日 13時53分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 残業時間の新たなきまりについて詳しく知りたい人

  • 勤務先が対応をしていないため、違法ではないかと疑っている人

  • 労働基準法改正により、どういったことが起きるのか気になる人

はじめに

2019年4月1日、改正労働法が施行されましたが、具体的に何がどのように変わったのかを認識できている人は少ないのではないでしょうか。

今回の労働基準法改正は、働き方改革に関するもので、長時間労働の是正などが主軸となっています。この記事では、最も大きな変化の一つである残業時間の上限規定について詳しく解説するとともに、残業以外にも何が変わるのかについて見ていきます。



1.2019年4月から改正労働基準法が開始!残業時間上限のポイントを徹底解説



改正のポイントは以下の4点。これまでは厚生大臣からの告示にとどまっていた時間外労働の上限が、罰則付きで法律に規定されました。

  概要
①時間外労働の上限 月45時間・年360時間
②特別条項を設けたときの上限 ・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計が2~6ヶ月平均で月80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度
③違反した場合の罰則 6ヶ月以下の懲役または、30万円以下の罰金
④適用猶予・除外の対象 ・中小企業への上限規制の適用は1年間猶予
・建設事業、自動車運転の業務、医師などは、上限規制の適用が5年間猶予
・新技術・新商品等の研究開発業務は、上限規制が除外
⑤補足:中小企業の定義って? 資本金の額または出資の総額と、常時使用する労働者の数で判断

①時間外労働の上限

時間外労働の上限は、月45時間・年360時間です。臨時的な事情があって労使が合意する特別条項がない場合は、これを超えて残業させることができません。

また、特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内にしなければなりません。

つまり、時間外労働が月44時間の場合でも、休日労働で56時間働かせると、月の労働時間の合計が100時間を越えてしまいます。さらに、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平 均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て80時間以内に収める必要があるため、例えば2ヶ月連続で90時間労働することもできません。

なお、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えて労働させる場合は、必ず従業員の過半数の代表と企業の間で36協定を結ぶ必要があります。月45時間・年360時間という上限は、36協定を結んだ上で残業させることができる上限時間です。

②特別条項を設けたときの上限

特定の季節に業務量が増えるなど、臨時的な特別の事情がある場合は、36協定に特別条項を設けることで、年6ヶ月を限度に、月45時間を超えて労働させることができます。

ただし、その場合も「時間外労働が年720時間以内」「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「時間外労働と休日労働の合計が2~6ヶ月平均で月80時間以内」の全てを満たす範囲内でしか残業させられないのです。

従来は、特別条項を設けた際の残業時間の上限は規定されていなかったので、これが今回の改正で大きく変わったポイントのひとつです。

③違反した場合の罰則

上限を超えて残業させた場合、雇用主には罰則があります。

改正以前は、残業時間の上限に法的な拘束力がありませんでしたが、今回の改正によって上限を超えて働かせることはできなくなりました。各企業は、残業時間削減に本腰を入れて取り組まなければならなくなったと言えるでしょう。

④適用猶予・除外の対象

ただし、すぐに対応が難しいであろう一部の事業・業務については適用猶予・除外があり、以下の事業・業務については、上限規制の適用が5年間猶予されます。

事業・業務 猶予期間中の取り扱い
(2024年3月31日まで)
猶予後の取り扱い
(2024年4月1日以降)
建設業 上限規制は適用されません
  • 災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がす べて適用されます。
  • 災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、
    ・月100時間未満
    ・2~6か月平均80時間以内
    とする規制は適用されません。
自動車運転の業務
  • 特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。
  • 時間外労働と休日労働の合計について、
    ・月100時間未満
    ・2~6か月平均80時間以内
    とする規制は適用されません。
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制は適用されません。
医師 具体的な上限時間は今後、省令で定めることとされています。
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業 時間外労働と休日労働の合計について、
月100時間未満
2~6か月平均80時間以内
とする規制は適用されません。
上限規制がすべて適用されます。
出典:2019年3月・厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』

また、新技術・新商品の研究開発業務に関しては、上限規定の適用が除外されます。

さらに、中小企業については上限規制の施行が1年間猶予され、2020年4月1日からの適用に。それまでの期間は、改正前の内容が継続されます。つまり、1年間は特別条項を結んだ場合の上限規定がなく、違反の場合にも罰則は科せられないということになります。

なお、上限規定は2019年4月以降(中小企業は2020年4月以降)の期間についての36協定にのみ適用され、2019年3月31日(中小企業は2020年3月31日)を含む協定については、その内容が1年間継続されます。

⑤補足:中小企業の定義って?


中小企業であるかどうかは、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」によって判断されます。

業種 資本金の額または
出資の総額
  常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他
(製造業、建設業、運輸業、その他)
3億円以下 300人以下
出典:2019年3月・厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』



2.自分の場合はどう変わる?働き方別のQ&A



ここまで、改正労働法のポイントを紹介してきましたが、働き方が多様化している中で、固定残業制・裁量労働制などの働き方である人も多いのではないでしょうか。

ここでは、パターン別に、今回の改正で働き方がどのように変わるのかを見ていきます。

①固定残業制の場合はどうなの?

「固定残業制」とは、一定の残業が発生することを想定して、基本給の中にあらかじめ残業代が含まれている労働契約のことです。

固定残業制で想定可能な残業時間の上限は、36協定の上限と同様。また、給与に含まれている残業代の想定時間を超えて残業した場合、企業はその分の残業代を支払わなくてはいけません。

固定残業制だからと言って無制限に残業させられる訳ではなく、当然のことながら残業時間の上限規制は適用されます。

②裁量労働制の場合はどうなの?

「裁量労働制」とは、1日の労働時間を一定時間と「みなす」労働契約のことです。

例えば、1日の労働時間を8時間とみなす契約をしている場合、ある日は5時間働き、翌日11時間働いたとしても、両日とも8時間働いたものと「みなされる」のです。

裁量労働制の場合、月ごとに変動する残業代は基本的には発生しません。ただし、みなし時間が法定労働時間の8時間を超えている場合は、超過分は残業として上限規制の適用対象となります。

また、今回の改正で、裁量労働制で働いている人についても、企業で勤怠管理が義務化されます。つまり、1日の始業時間と終業時間を把握することが義務化され、正確な労働時間を把握することで、適度な休息・休暇の取得を推奨することが求められるようになるのです。

③残業時間って定時を過ぎれば全部対象なの?

労働時間には、「所定労働時間」「法定労働時間」があります。今回の改正で問題になっているのは、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超える労働です。

つまり、企業が定める「所定労働時間」が1日7時間である場合、労働者が8時間働くと「残業」は1時間となりますが、上限規制の対象となる「法定労働時間を超えた残業」は0時間です。

また、休日労働についても、「所定休日」「法定休日」を理解する必要があります。

法定休日とは、毎週少なくとも1日は与えなければならないと定められている休日です。

所定休日と法定休日については、下記の記事も参照ください。


④もしも会社が対応しなかったら……

残業時間の上限について、自分の会社が対応していないと感じた場合は、社内外の窓口に相談してみましょう。

  • 会社の相談窓口

    社内のコンプライアンス窓口などに相談すると、抜本的な解決がはかれる可能性があります。「おかしいな」と感じたら声をあげる勇気を持てるといいかもしれません。


  • 労働相談ホットライン

    厚生労働省が運営する、労働条件について、平日夜間・土日に無料で電話相談できる窓口です。専門知識を持った相談員が、法令・裁判例などの説明も含めて対応してくれます。

    上限規制が適切に反映されているのか不安に思ったら、まずは相談してみることをお勧めします。

    電話番号:0120-811-610
    受付時間:平日17時〜22時、土日祝9時〜21時


  • 労働基準関係情報メール窓口

    自分の会社が明らかに、改正労働法に対応していないと思われる場合、厚生労働省が設置するメールでの通報窓口、労働基準関係情報メール窓口に情報提供することも考えましょう。

    ここに寄せられた情報は、関係する労働基準監督署・都道府県労働局が立ち入り調査の選定などに役立てられます。ただし、受け付けた情報に関する照会や相談は行なっていないので、早急に対応してほしい場合は、同時に他の手段も考える必要がありそうです。


  • 労働基準監督署の相談コーナー

    各都道府県労働局、全国の労働基準監督署の中にある相談コーナーへの相談も有効です。無料で相談でき、予約不要、秘密は厳守されます。必要に応じて、会社に対する指導・助言やあっせんを行なってくれるほか、裁判所での解決を希望すれば法テラスなども紹介してもらえます。


  • 集団訴訟で戦う

    残業時間の上限規制に会社が対応しないときは、声をあげて裁判で戦うという手段もあり得ます。

    裁判費用の負担が大きいと感じる場合は、集団訴訟という手も考えられます。裁判費用を割り勘できるほか、集団で声をあげることでより説得力を持って戦うことができます。集団訴訟プラットフォームenjinでは、「同じ被害にあった方」および 「担当弁護士」とのマッチングの場を提供しています。


3.残業以外にこんな変更も……働き方改革4つのポイント



残業時間の上限規制が大きな話題となっている改正労働法ですが、実は残業以外にも改正されたポイントがあります。

①年5日の有給休暇取得が義務化

従来は、有給休暇は労働者が希望した場合にとれるものであり、仮に労働者が休みを希望しない場合であっても、会社側に責任はありませんでした。

しかし、今回の改正により、10日以上の有給休暇が与えられている労働者については、年間で少なくとも5日の有給休暇を取得させる義務が企業に科せられました。有給休暇を取得させるにあたっては、労働者と話し合った上で、取得日を指定するものとされています。

有給休暇の取得については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。


②専門的な知識を持つ人は特殊な働き方が可能に

労働時間と成果が比例しない、短時間で高い能力を発揮できる人に、より柔軟な働き方を認める「高度プロフェッショナル制度」も同時に開始しました。

一部の職種と一定以上の年収の両方を満たす人のみが適用可能で、この制度の適用者は、法律で定められている残業上限がなくなり、かつ残業代や夜勤手当、休日出勤手当などの支払対象外となります。

高度プロフェッショナル制度については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。


③正社員・パート関係なく給与形態が均一に

仕事内容が同じであれば、雇用形態(正規雇用労働者であるか、非正規雇用労働者であるか)にかかわらず同一の賃金を支給しなければならないという、「同一労働同一賃金」も合わせて適用が始まります。大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月の予定です。

これは、様々な事情で非正規雇用を選択する人が不合理な差別を受けないよう、仕事内容や勤務時間などの前提が同じであれば、同じだけの賃金を支給し、前提が違うのであればバランスのとれた対応をとるよう企業に求めるものです。

④睡眠時間をしっかりと確保できるようになる

就業時間が不規則であったり、残業が長引いたりした際に、労働者が睡眠時間を確保できるよう、終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を取る「勤務間インターバル制度」の導入が、努力義務化されました。

突発的な残業により勤務時間が大きく長引いた際は、翌日の始業時刻を後ろ倒しにしたり、ある時刻以降と始業時刻以前の勤務を禁止したりなど、各企業にあった形での制度導入が求められています。


4.まとめ

  • 残業時間の上限規制が罰則付きで強化され、企業には対応する義務がある

  • みなし残業制や裁量労働制も上限規制適用の対象。会社が対応していないと感じたら然るべきところに相談を。

  • 残業時間以外にも、ワークライフバランスを重視した制度改正が多数

おわりに

残業時間の上限規定は、労働者を長時間労働から守るために生まれた規定です。改定の内容について理解し、適切に対応されていないと感じたら、各種窓口への相談を検討しましょう。

働きすぎで体を壊さないよう、法律を盾に自分の身は自分で守る意識も大切です。


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