高齢者の資産が狙われている?はびこる金融詐欺から身を守る方法5つ

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投稿日時 2019年04月11日 11時28分
更新日時 2019年04月11日 11時28分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 実家に資産があり、家族に高齢者がいる人

  • 家族の高齢者が過去に投資の経験があったり、興味を持ったりしている人

  • 「老後の資金が不安」という高齢家族の話を聞いている人

はじめに

多くの資産を抱える高齢者は、金融詐欺に狙われています。

フィデリティ退職・投資教育研究所の高齢者の金融リテラシー調査(2018年12月実施)によると、全体の4.6%の人が金融詐欺にあったことがあるという結果が出ました。

また、金融リテラシーに対する自信が過剰な人ほど「金融詐欺の被害にあわない」と楽観しているとのデータも出ています。身内の高齢者が多くの資産を持っていたり、過去に投資の経験があったりする場合は、この傾向に注目しておいた方がよさそうです。

金融詐欺の被害にあわないように、金融詐欺の手口や身を守る方法を確認しておきましょう。この記事では、高齢者の資産が狙われる理由や金融詐欺の手口、被害にあったときの対応方法などを解説していますので、参考にしてみてください。

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1.なぜ狙われる?高齢者の資産…その理由はこの5つ



フィデリティ退職・投資教育研究所が2019年2月に発表したデータによると、高齢者の4.6%が金詐欺の被害にあっており、そのうち金融知識に対して過剰な自信を持つ人の被害は9.0%と高くなっています。このほか、退職金を受け取った人の25%が投資に使っており、多くの高齢者が金融に対して積極的な姿勢を見せているという傾向が明らかになりました。

このデータを踏まえ、高齢者の資産が狙われている理由と、家族ができる詐欺被害防止策をご紹介します。

①高齢者の投資リテラシーが、金融詐欺を呼んでいる?

高齢者の資産が狙われる理由について、次のような理由が考えられます。

  • 景気がいい時代に働いていたため資産が多い

    同データによると、資産が7000万円を超えたあたりから、詐欺の被害者が増えています。現在の高齢者の多くは現在より景気がいい時代に働いていたため、若い世代に比べて多くの資産を保有している傾向があります。


  • 老後資金などへの不安により投資経験のある人が多い

    同データによると、退職金を受け取った人のうち25%の人は、投資に使っているとのことです。また、退職金によって資産が増え、2,000万~3,000万円になると、資産運用が使い道のトップとなります。これは、老後資金などへの不安があるためと考えられています。


  • 「金融知識に自信がある」と思っている人ほど、実は知識に乏しい

    金融知識に自信がある人ほど、実際には知識に乏しいとの結果が出ています。様々な要因はありそうですが、過去の知識で通用しなかったり、自身の思い込みなどが関係している可能性があります。


  • 詐欺の情報に詳しくない

    詐欺の手口について十分な情報を得ておらず、詐欺と気づけないケースがあります。スマートフォンやパソコンでの操作で騙す手口などは高齢者でなくても騙されますし、警察や金融機関などによる身近な場所での周知がなかなか追いついていないこともあります。


  • 認知機能が低下している人もいる

    認知機能が低下すると、金融商品のような複雑なものを理解することが難しくなります。詐欺師としては、金融商品の疑うべきところを疑われないため、騙しやすくなるのです。

上記を踏まえ、家族に高齢者がいる場合は、詐欺被害にあわないように行動したいところです。金融詐欺の中でも注意したいのが投資詐欺です。投資詐欺について、こちらの記事をご参考ください。


②高齢者の家族が金融詐欺被害の防止にできること

それでは、高齢者の家族が金融詐欺被害を防ぐためにできることは、どのようなものがあるのでしょうか。

  • 家族に相談してから決めることをルールづける

    同データによると、お金に関しては87.2%の人が専門家や金融機関に相談しておらず、なかでも自分だけで考える人が約4割、相談先は家族のみが約5割弱となっています。そのため、金融関係の契約や投資をするときに、自分だけではなく、必ず家族に相談することをルールづけるといいでしょう。


  • 家族が日ごろから資産を気にしておく

    あくまでも所有者は高齢の家族自身ということを尊重しつつ、それとなく資産の移動や増減には気を配っておきましょう。多額の現金を降ろしたり振り込んだりするときは、家族が一緒に行うなどの対策をしてください。


  • 電話にオレオレ詐欺防止機能をつける

    オレオレ詐欺など、迷惑電話のリストに基づき、特定の電話からの着信を拒否するサービスがありますので、利用を検討してみましょう。また、相手の電話番号や登録した相手を表示するナンバーディスプレイ機能も効果的です。


  • 高齢の家族の暮らしぶりに注意しておく

    金融詐欺にあうことで、急に浪費が増えたり、逆にお金を使わなくなったりと、暮らしぶりが大きく変化することがあります。また、詐欺にあったことで動揺すると、普段と違う様子で他の家族と接したりすることがあるかもしれません。不安や怒りを抱えているようであれば、言い出せずにいる可能性もあります。


  • 認知症の傾向が出てきたら「成年後見人制度」も

    軽度でも認知症の傾向がみられたら、早めに医師の診断を受け、資産の管理については「成年後見人制度」を利用することも検討しましょう。

    成年後見人制度は、裁判所が選出した後見人(家族または弁護士などの専門家)が本人に代わって資産管理などを行うものですが、必ずしも使いやすい制度にはなっていないことも。自身の家族の状態などを踏まえ、様々な角度から考慮した方がいいでしょう。

    成年後見人制度について、詳しくはこちらの記事で解説しています。

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2.高齢者を狙う金融詐欺、主な手口4選と被害者の「あの時」



金融詐欺の手口は巧妙化しており、日々情報収集をしている人でも見抜くことが難しいケースがあります。世の中の情勢などで新たな手口が登場していることもあり、最新の情報は収集しておきましょう。

①新元号「令和」、東京五輪…「世紀のイベント」を利用した詐欺

いわゆる「世紀のイベント」を利用した詐欺に注意しましょう。

2019年5月1日より、元号が平成から「令和」へ改号されます。

それに伴い「キャッシュカードなどの情報を変更しなければならない」などと偽の通知書を送り、口座情報や暗証番号を聞き出す、いわゆる「改元詐欺」が横行しています。

全国銀行協会など実在する団体名を記載し、まるで本当に口座情報や暗証番号を伝える必要があるように見せかけることも。封書が届く被害が報告されていますが、念のため電話や、それ以外の団体名や公的機関を名乗るものにも注意しておきましょう。

令和への改元を利用した詐欺については、こちらの記事で詳しく解説しています。


  • 「東京五輪」をうたうものにも注意

    他にイベントを利用したものでは、2020年開催の東京オリンピックを利用した詐欺も出現しています。

    五輪関係者を名乗り、「東京オリンピックのチケット購入に絡む犯罪集団の一員として、あなたの名前が記載されている」などと言い、銀行情報を聞き出す詐欺のほか、開催に関わる建設や土地の取得などの儲け話を持ちかけ、金銭を騙し取る詐欺にも注意が必要です。

    このほか、五輪会場周辺に住む人に対して「債券が発行されており、それを買い取りたい」という電話勧誘もあります。具体的に、どのような形で被害にあうのかは不明ですが、最終的に現金を振り込ませたり、カード番号や暗証番号を聞き出したりすることが予想されます。

    東京オリンピックに関する詐欺については、こちらの記事で詳しく解説しています。

②これから注意すべき手口!アポ電強盗

最近注目されている手口として、アポ電強盗があります。

事前に狙った高齢者にセールスなどを装い電話をして、いつ自宅にいるか、資産はどれぐらいあるかなど情報を聞き出し、それを元に強盗として押し入り、金銭を奪う手口です。
また、電話で親族を名乗り、「後でお金を取りに行く」などと言い、強盗に入ったケースも。

この手口は財産が奪われるだけではなく、生命に危険が及ぶ可能性もあるため、自宅にかかってきた見知らぬ電話や訪問者には、安易に個人情報や資産状況、在宅時間を明かさないよう特に注意すべきです。

アポ電強盗について、詳しくはこちらの記事でも解説しています。


③「貸します」に気を付けたい、融資保証詐欺

お金を貸す意思がないのに融資を持ちかけ、実際に貸すためには手数料や保証金が必要と言い、お金を騙し取る手口です。

「すぐに貸せる」、「担保不要」、「金利○○%」――など魅力的な言葉を並べ、融資させるように仕向けます。一度、手数料や保証金を振り込んでしまうと、様々な名目で次々とお金を騙し取ろうとします。実在する企業、もしくは関連企業を思わせる企業名を名乗るケースもあるため注意が必要です。

また、「当社をかたる悪質な業者にご注意ください」などと言い、本物の企業からの融資の誘いだと思わせるケースもあります。

④保険金を使ったリフォーム詐欺

嘘の理由で火災保険や損害保険を利用することで、無料で自宅の屋根などを修理できると持ちかける詐欺です。

保険金を支払ったところ、業者と連絡がとれなくなったり、保険金が少なかったから工事を始められないなどと言われます。

このようなケースでは、消費者側から契約を解除できる「クーリング・オフ制度」を利用できますが、本来は必要のない手数料を要求されたりする場合があります。

嘘の理由で保険金を請求したり、実際に屋根も修理されないという不利益しかないため、不要な業者の話には乗らないようにしましょう。

⑤被害者が「引っかかってしまった」と思ったポイントはここ!

「怪しい」、「詐欺かもしれない」と思っていても、結果的に被害にあってしまったり、電話口の相手から言われるままに行動し、周りの忠告を無視してしまったり……。

政府広報が発表したもので、詐欺にあった高齢者が「あそこで引っかかってしまったのか……」と振り返ったポイントがいくつかあります。そちらを紹介していきましょう。

  • 銀行や郵便局の人に何度も確認をされたが、強引に振り込んだ

    窓口で「詐欺ではないか」などと忠告されたものの、「自分が詐欺にあうはずがない」と思い、強引に振り込んでしまった。


  • 振り込みの理由を担当員に伝えないでほしいと言われ、言うとおりにしてしまった

    振込の理由や現金の使い道を窓口で聞かれても伝えないでほしいと言われ、言うとおりにしてしまった。


  • 詐欺ではないと言われ信じてしまった

    「オレオレ詐欺ではないよ」など、あえて詐欺ではないことを伝え、信じさせる手口があります。詐欺を疑っていても、相手の一言で信じてしまったケース。

いずれも「振り込むことを疑っていない」ことがまずあり、他に「周囲の忠告を聞けなかった」という点があります。

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3.もしも騙されたら?本人や家族だけで悩まず行きたい専門機関3つ



もし、高齢の家族が詐欺被害にあったら、家族だけで悩まず、専門機関を頼りましょう。詐欺被害にあったときに相談できる専門機関を3つご紹介します。

①警察の相談専門ダイヤル

詐欺被害にあったときは、まず「#9110」に連絡しましょう。管轄の警察署などの相談窓口に繋がります。

ただし、緊急の場合は110番に連絡してください。詐欺師から再び連絡があり、今から自宅に来ると言っているケースなどは、110番した方がいいでしょう。また、詐欺被害にあったときは、警察に被害届を提出してください。「振り込め詐欺救済法」を利用する際は、警察への通報も必要になります。

電話番号:#9110<br> 受付時間:月曜~金曜日8:30~17:15(都道府県で異なる)
休業日:土日祝(一部を除き当直または音声案内での対応)

被害届の出し方については、こちらの記事をご参照ください。


②金融機関へ連絡

振り込め詐欺被害にあったときは、 警察以外に金融機関にも連絡しましょう。

振り込んだ先の口座の金融機関に連絡し、「詐欺に使われた可能性があるため凍結してほしい」と伝えてください。このとき、警察にも被害届を提出しなければなりません。

口座の凍結後、名義人の権利を消滅させ、預金を引き出せなくする消滅手続きが行われます。振り込め詐欺にあったときの連絡先はこちらを参照下さい。

  • 振り込め詐欺救済法

    「振り込め詐欺救済法」は、詐欺など犯罪に利用された加害者の口座を凍結し、被害者へ資金を分配できる制度です。被害額を取り戻せる可能性はありますが、口座に残高がなければ取り戻せないため、被害にあったことに気づいたら、すぐに行動しましょう。

    振り込め詐欺救済法については、こちらの記事をご覧ください。

③弁護士に相談する

詐欺業者の身元がわかっている場合、弁護士に相談することで、訴訟を起こすべきかどうかなどのアドバイスを得られます。弁護士を探すときは、日本弁護士連合会のウェブサイトから検索しましょう。

相談のタイミングは、警察や金融機関に相談するのと同時でも問題ありません。弁護士に相談する際には、具体的な被害額、手口、被害にあった日時、被害にあった証拠となる振込証明書などを持参しましょう。

高齢者だけでは、被害にあったときの状況を適切に伝えられない場合もあるため、できれば家族も付き添うと良いでしょう。

なお、相談には料金が発生する場合があります。

料金については、こちらの記事も参考にしてみて下さい。


④被害にあったら家族のケアも

万が一、高齢の家族が被害にあってしまったときも、厳しく責め立てるようなことはなるべく避けましょう。

そもそも犯罪のターゲットとして狙われたり、実際に被害にあったりした人は、大きなショックを受けてしまうもの。例えば、未遂であってもオレオレ詐欺にあったとわかった人が、その後に恐怖心から家族の電話に出られなくなったりしたケースもあります。

また、家族に迷惑をかけてしまったことを悔やんで落ち込んでしまう人もいるでしょう。金銭的被害が発生することもありますが、「アポ電強盗」のように凶悪犯罪に発展していた可能性もあり、まずは家族が無事であることは大事なことです。

次からどうすれば詐欺被害にあわずに済むのかを一緒に考え、対策を立てるようにしましょう。


4.まとめ

  • 資産があり、投資経験や興味がある高齢者は金融詐欺にあう可能性も。家族が一緒に注意をしましょう。

  • 世紀のイベントに関連した詐欺が増えているため、改元や東京五輪関連の投資や金融の話には要注意。

  • 振り込め詐欺にあったら、まずは金融機関と警察に連絡して口座を凍結してもらいましょう。

おわりに

高齢者は金融詐欺にあいやすいため、詐欺の手口などを共有し、家族全体で防犯意識を持ちましょう。離れて暮らす場合も、こまめに連絡をするなどのケアを。

改元や五輪など、「世紀のイベント」に関連する儲け話や、融資を持ちかける話は基本的に疑ってかかりましょう。怪しいと思ったら、すぐに警察に相談を。なんらかの似た手口や情報があるかもしれません。


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