この記事は以下の人に向けて書いています。
- 元号を理由にした詐欺にはどんなものがあるのか知りたい人
- 手口と対策を把握し、詐欺だと見抜けるようになりたい人
- 引っかかってしまったときも冷静に対処できるようにしたい人
はじめに
2019年5月1日の
元号変更を理由にした詐欺が相次いでいます。
今年1月には全国銀行協会を名乗る相手から、9人の自宅に一斉に届くという事件が発生(朝日新聞「
改元に便乗、詐欺に注意 ウソの手紙「カードの変更を」」)。
2月にはキャッシュカードを直接渡してしまい、90万円をだまし取られた事件も起きました(毎日新聞「
「元号が変わるので…」改元かたる詐欺に、ご注意」)。
この記事では、改元を利用した詐欺から身を守れるようにさまざまな手口と対策をご紹介。「これは詐欺だ」と見抜ける手立てとしてください。
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1.最も多い手口は封書!4つの特徴とその対策
元号を理由にした詐欺で、よくあるのが
封書を使った手口。
「元号変更に伴い、キャッシュカードの変更が必要だ」といった主旨の封書を送りつけ、カードをだまし取ろうとしたり暗証番号を聞き出そうとしてきます。
金融庁で呼びかけているように、
全国銀行協会をはじめとする公共機関はそのような封書を一切送っていないので、届いてきたら詐欺の可能性が大。
突然の封書に戸惑わないように、手口の特徴と対策を紹介します。
①封書を使った手口の特徴
封書を使った手口には、4つの特徴があります。
- 公共機関の名前で届いてくる
ターゲットを信用させるための常套手段です。
特に使われているのが全国銀行協会。ただ大手主要銀行やネット銀行、クレジットカード会社、実在していそうな公共機関を名乗る可能性もあります。
- キャッシュカードの変更が必要だと言ってくる
元号の変更に伴って銀行法が改正されると前置きし、「個人情報記入書類の変更や新規作成のため」「紛失や盗難に伴う不正操作を防げるカードと交換するため」
といったことを理由にして、キャッシュカードの返送を求める方法です。
このほか、「今のクレジットカードが使えなくなるので新しいクレジットカードと交換する」「新元号が記載された小切手を送るので、持っていたら送ってほしい」といった文言にも注意が必要です。
- 銀行名や暗証番号を記入させる
「キャッシュカード変更申込書」と称して、銀行名や暗証番号を記載する別紙を用意しているのもありがちな手口。
切手を貼った返送用の封筒を用意し、すぐ返送できるように仕向けているのも特徴です。
- すぐに返送させようとしてくる
封書には、ターゲットが冷静に判断しないよう「2日以内に投函してほしい」などと急かす文言が書かれています。
「到着が確認できれば3日以内に新しいカードを送る」といったように送付後の対応を記載し、安心させようとする場合もあります。
②もし封書が届いたときの対処法
元号を理由にした詐欺の封書は、
いつどのようなタイミングで届いてくるかわかりません。送られてきた場合は、慌てず次の行動を取ってください。
- 無視をする
一番は無視をすることです。全国銀行協会をはじめとする公共機関が、封書で暗証番号などを聞き出すことはないので問題ありません。
- 自分で問い合わせてみる
どうしても心配な場合は、銀行やクレジットカード会社などに問い合わせてみましょう。
その際はウェブサイトなどから正しい番号を調べて連絡してください。封書に記載されている電話番号は犯人グループのものであり、かけてしまうと個人情報を盗まれたり架空請求の被害にあう可能性があるためです。
銀行の場合は個々の問い合わせ先に連絡する以外に、次の機関に相談することも可能です。
全国銀行協会相談室 |
概要 |
全国銀行協会が運営する窓口です。大手の都市銀行や地方銀行など、あらゆる銀行に関する相談を受け付けています。 |
電話番号 |
0570-017-109 または 03-5252-3772 |
受付時間 |
平日9時~17時 |
銀行とりひき相談所 |
概要 |
全国50か所に設置された相談窓口で、こちらも全国にある銀行に関する相談に対してアドバイスをしてくれます。 |
電話番号 |
各相談所による電話番号一覧 |
受付時間 |
平日9時~17時 |
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2.ほかにこんな手口も…把握しておきたい3つの詐欺
元号を理由にお金をだまし取ろうとする詐欺は、封書だけではありません。
他にもさまざまな手口が存在するので、この章で対策とあわせてご紹介します。犯人の巧妙な手口に引っかからないように把握しておきましょう。
①直接訪問型
キャッシュカードやクレジットカードを返送させるのではなく、
直接自宅まで犯人が取りに来るパターンです。
- 手口
まず銀行職員や公共機関を名乗る人物が「元号が変わってカードが使えなくなる」と連絡をしてきます。
「変更手続きのハガキを送ったが、連絡がなかったので今から直接取りに行く」などと言ってくるかもしれません。
直接訪問してカードを預かる際に、手続きに必要など言葉巧みに暗証番号を聞き出すのも特徴。「後日別のカードを郵送する」などと言ってターゲットに気付かれないようにし、口座が止められる前に預金を引き出します。
- 対策
この手口では確実にカードを受け取るために、事前に電話連絡をしてくる場合が大半。知らない番号に出なければ、被害にあわないようにできます。
電話を取ってしまっても、「カードを預かりに訪問したい」などと言ってきたら詐欺と判断してください。銀行職員などがカードを直接取りに来ることはありません。
電話を切れない場合や不安な場合は「このあと予定があるので、折り返し連絡します」と理由をつけて、相手の名前や電話番号を控えつつ切れるようにしましょう。
相手が実在する機関を言ってきたら、自分で電話番号を調べて問い合わせをします。聞いたことがない機関であれば電話番号案内(104)で氏名や企業名を伝え、電話番号がデタラメでないか確認するのも有効です。
最近では電話で訪問の約束を取り付けたあと、強引に家に押し入って金品を奪うアポ電強盗も発生しています。公共機関を名乗った人が来ても、安易にドアを開けないようにしてください。
②ワンクリック詐欺
元号を理由にした詐欺は多様化しており、スマホやパソコンを利用した手口もあります。ユーザーがアプリやURLを開いた瞬間に
高額な請求画面を見せ、お金をだまし取ろうとするのがワンクリック詐欺です。
- 手口
「元号が変わってアプリが使えなくなるので、この別のアプリを使うように」といった主旨のメールを送りつけ、記載されているURLへのアクセスや、不正なアプリのダウンロードをさせます。
タップすると「登録完了。料金は○○円となります。」という法外な請求画面を表示。指定の口座に振り込ませたり、不安になって電話してきたユーザーに解約料と称してお金を要求します。
- 対策
メールの指示には従わず、使えなくなると言われたアプリの開発者に自分から問い合わせましょう。
もしタップしてすぐに請求画面が表示されても、基本的には無視でOK。「申し込みが有料だとわかりにくい」「契約を取り消す画面が最後に表示されていない」などの理由で無効だと主張できるからです。
ワンクリック詐欺を無視していい具体的な理由は、下記で詳しく紹介しているので参考にしてください。
③フィッシング詐欺
本物そっくりな偽サイトを使い、アカウント名やパスワードを盗み取る悪質な詐欺です。
- 手口
楽天市場やAmazonなどのショッピングサイトを装い、「元号が変わるのでアカウントの更新が必要」といった内容のメールを送信。本物によく似たログイン画面に誘導して、個人情報を不正に入手します。
この手の詐欺で多いのが、SNSの乗っ取りです。本人になりすまして友達にプリペイドカードの購入や偽サイトへのアクセスを要求し、さらにお金をだまし取ろうとしてきます。
- 対策
指示されたURLは使わず、GoogleやYahoo!などの検索エンジン経由で公式サイトにアクセスしてください。
改元を理由にしたアカウント更新などはすべてのユーザーに関わることなので、サイトを見て何らかのお知らせが出ていなければ詐欺とみていいでしょう。不安なら公式サイト経由で問い合わせ窓口に連絡するのも手です。
SNSのアカウントが乗っ取られてしまった場合は、ログインできるならパスワード変更、できないなら問い合わせ窓口に連絡する必要があります。詳しくは下記で紹介しています。
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3.詐欺だった!とわかったらすぐに取りたい対処法
各銀行や公共機関が呼びかけると、すぐに違う手口が使われるのが詐欺の厄介なところ。
「自分は大丈夫」と思っている人でも、引っかからない可能性はゼロではありません。
この章では、詐欺とわかったときに取りたい行動をケース別にご紹介します。
①キャッシュカードを送ってしまった
犯人に預金を引き出されないように、金融機関に連絡して口座を止めてもらいましょう。
口座にお金が入っていなくとも、
別の詐欺に使われる可能性があるので速やかに連絡してください。
一部の銀行では、
被害を補償してくれる制度を設けているところもあります。口座を止めた上で警察に被害届を出し、金融機関の指示に従って手続きをしてみてください。
以下は、主な金融機関の問い合わせ先です。
問い合わせ先 |
連絡先・受付時間 |
三菱UFJ銀行
(振り込め詐欺救済法照会ダイヤル) |
0120-860-413
平日9:00~17:00 |
三井住友銀行
(不正出金ホットライン) |
0120-322-775
平日9:00~17:00 |
みずほ銀行
(セキュリティサポートセンター) |
0120-868-715
平日9:00~17:00 |
ゆうちょ銀行
(ゆうちょコールセンター) |
0120-108-420
平日8:30~21:00
土日祝9:00~17:00 |
- 取り戻し請求をする
取り戻し請求は、ポストに投函してしまった郵便物や窓口から出した郵便物を差出人に返還する制度です。最寄りの郵便局で利用できます。
手続きには免許証やマイナンバーカードなどの本人確認資料と、手数料(配達郵便局に請求する場合は410円、その他の郵便局は570円)が必要です。
ただ行き先がわからないと使えないので注意してください。また、配達が完了してしまい取り戻しができない場合でも手数料は返ってきません。
②お金を振り込んでしまった
振り込め詐欺救済法が利用できます。
この制度は金融機関が犯人の口座を完全に使えなくなる手続きをし、残高を被害者に分配するというものです。
利用する際は相手先の金融機関に被害があったことを報告します。
銀行の場合は
全国銀行協会のウェブサイトに記載されている各銀行の
詐欺被害者専用ホットライン、そのほかの金融機関の場合は各ウェブサイトの
相談窓口に連絡しましょう。
その後、警察にも
被害届を提出してください。
金融機関から分配するための手続きが終わったという連絡が来たら、分配金を受け取る申請をします。
ただ口座が止められる前に犯人がお金を引き出してしまった場合、
全額が戻ってくることはありません。そのほかいくつか注意点があるので、下記も合わせてチェックしてください。
③ひとりでは対処が難しい…そんなときの相談先
ひとりで対処するのが不安なときは、次の相談先を利用しましょう。
- 消費者ホットライン
生活に関わる困り事に、専門の相談員が適切なアドバイスをしてくれる窓口です。
もしつながらなかったときのために、「平日バックアップ相談」という窓口もあります。
電話番号 |
03-3446-1623 |
受付時間 |
平日10時~12時 13時~16時 |
- 警察相談専用電話
生活の安全に関わる相談を幅広く受け付けている警察の窓口です。「詐欺なのかまだわからない……」というときでも気軽に連絡ができます。
電話番号 |
#9110 |
受付時間 |
平日8時30分~17時15分 |
- サイバー犯罪相談窓口
各都道府県の警察が設けている窓口で、インターネット上で起きたさまざまなトラブルに対応しています。電話のほか、メールでアドバイスをもらうことも可能です。
④もしお金が戻ってこない場合は
「急いで口座を止めてもらったけどお金が取り戻せなくなっていた……」
こうした場合は、犯人に
損害賠償請求するのもひとつの手段。
ただ、元号を利用した詐欺は相手の素性がわからないことがほとんどのため、ひとりで訴えるのは難しいのが現実です。
そのときは、同じ加害者から被害を受けている人と一緒に
集団訴訟することを検討してみましょう。多くの人が集まることで証拠を共有すれば、犯人の身許の特定や刑事告訴などができる可能性があります。
集団訴訟については、こちらの記事で詳しくご紹介しているので、参考にしてください。
4.まとめ
- 元号変更を理由にキャッシュカードの返送を要求されたら詐欺と見よう。
- 封書以外にもいろんな手口があるので要注意。迷ったら公式ウェブサイトや本物の機関に連絡して確認を。
- もしだまされたとわかったら銀行や警察にすぐに連絡する。
おわりに
改元を理由にした詐欺は、よくある詐欺の手口と組み合わせたものがほとんど。
これまでと同様に自分ひとりで判断せず、インターネットで調べたり周りの人に相談することが、被害を防ぐ上で何よりも重要です。