この記事は以下の人に向けて書いています。
- 高齢の両親と離れて暮らしている人
- 「アポ電強盗」のニュースを見て不安を感じた人
- 詐欺・強盗の対策や窓口を知りたいという人
はじめに
電話でお金の有無や個人情報を聞き出して、後日金銭やキャッシュカードの引き渡しを要求する
「アポ電詐欺(強盗)」のニュースを耳にすることが増えました。
2019年2月にはアポ電を受けていた80代の女性が強盗に入られ、両手足を縛られた状態で見つかるという痛ましい事件もおきています。
固定電話を使用している高齢者をターゲットに行われるアポ電詐欺・強盗。高齢の家族と離れて暮らす人にとっては、とても他人事とは思えず心配ですよね。この記事では、離れて暮らす両親(あるいは祖父母)を持つ人のために、アポ電の手口と対策方法、いざという時の相談窓口を紹介します。
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1.詐欺から強盗へ…悪質化する「アポ電」の手口とは
犯行の前に警戒心を緩ませつつお金の有無や個人情報を聞き出す「アポ電」。
これまでは、親族のふりをして「電話番号が変わった」「風邪で声がおかしい」などと警戒心を緩ませる電話をした後、時間を置いた「本電話」で金銭の要求をするパターンが一般的でした。
ところが最近、この「アポ電」の手口が悪質化。金銭の有無や1人でいる時間帯を確認したり、金銭の準備を要求した後、強盗に入る「アポ電強盗」が急増しています。
①他人になりすまして個人情報を聞き出す「アポ電」
アポ電は、ターゲットが信頼しそうな相手になりすまし、犯行を行う前に家の状況を聞き出しておく電話のことで、正確には
「アポイントメント電話」と呼ばれています。
加害者はターゲットから、高齢者の独居世帯なのかを含めた家族構成、資産状況、自宅にどれだけの現金があるのかなどの情報を聞き出し、後日、オレオレ詐欺や振り込め詐欺などの方法で金銭を要求。
1回目の電話で金銭の要求が行われることはなく、
複数回に渡って徐々に警戒心を解いていき、最終的に現金やキャッシュカードの受け渡しが要求されるのが特徴です。
なりすます相手は、主に
「親族」「警察」「NHKや調査員」の3つ。それぞれの特徴をご紹介していきましょう。
- 親族のふりをするケース
「電話番号が変わった」「風邪で声がおかしい」などと警戒心を解くための電話がかかってきた後、「会社のお金を使い込んでしまった」「急遽、入院することになりお金が必要」などと金銭を要求されます。
1回目の電話で本人だと思い込んでしまっているため、金銭を要求されても詐欺を疑うことなく用意してしまうことが多いようです。
- 警察のふりをするケース
「オレオレ詐欺の被害が増えているので注意してください」などと警察官を装って電話をかけてくるパターンです。
「被害状況を確認しているのですが、現金は自宅に保管していますか?」「日中はお1人で過ごされていますか?」など、言葉巧みに情報を聞き出そうとします。
被害者は警察を名乗られることで警戒心を解いてしまい、聞かれたことに素直に答えてしまったケースが続出しているようです。
その後犯人は、聞き出した情報をもとに、改めて金銭を要求する詐欺電話をかけてきます。
- NHK職員など、調査員のふりをするケース
調査員を装い、「番組制作のために、高齢者の方の預金額について調べている」「家族構成は?」などの電話がかかってくるケースもあります。
このような電話の後に、警察職員を名乗る人物から「不審な電話がなかったか」「あなたの個人情報が悪用されている可能性がある」など別の電話がある二段構成の場合も。
1回目の電話で「怪しい」と思っていた気持ちを肯定されることで警戒心を解き、言われるままに「解決金」としてお金を用意したり、「悪用を防止するため」とキャッシュカードを手渡したりする被害が報告されています。
②詐欺から強盗へ…過激化する手口が問題に
これまでは、詐欺の前フリとして利用されていたアポ電ですが、
近年ではアポ電で自宅に保管している金銭の額を聞き出したり、親戚を騙って「後で受け取りいくから」と金銭の準備を要求した後に、強盗に入るケースが問題視されています。
2019年2月1日には、高齢夫婦が両手を拘束バンドで縛られ、約400万円を奪われる事件が怒りました。この事件では、犯行前に息子を語る人物から「病気になったのでお金が必要。いくら用意できる?」というアポ電があり、夫婦は詐欺を疑って息子本人に確認して振り込み詐欺の被害は回避していたといいます。
ところが、
この電話で自宅に金銭があることを話してしまっていたため、その情報をもとに夫婦宅が強盗の標的になりました。
(参考:東京新聞「
『アポ電』強盗に注意 高齢者夫婦縛り400万円奪う」)。
また、同じく2019年2月末には、アポ電強盗の末、東京・江頭区の70歳女性が命を奪われる痛ましい事件も。これまでは
お金を「騙し取る」詐欺に利用されていたアポ電が、
お金を「奪い取る」強盗に利用されるようになってきています。
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2.「アポ電」からの被害を防ぐために…心がけたい3つの対策
従来の詐欺には引っかからないという人でも、高齢であれば力づくの強盗に抵抗することは至難の技。詐欺が防げたとしても、電話口で与えてしまった情報をもとに強盗の対象にされてしまう可能性があるため、これまでよりもさらに厳重な警戒が必要です。
①「断る」だけでは不十分!不審な電話で注意するポイント
- 日中一人の時は電話に出ない
電話にでなければ、アポ電詐欺・強盗の被害に合うことはありません。留守電にしておけば、アポ電詐欺・強盗の犯人は声を残すことを嫌うため、まず間違いなく被害を防ぐことができるでしょう。
一方、本当に必要な電話の相手は、留守電になっていれば氏名と電話番号を伝えてくるはず。知らない人からの電話であれば、他の家族に相談したり、自分で番号を調べたりしてからかけなおすようにすると安心です。
- 一度切ってかけなおす
電話にでないというのが難しくても、一度切って自分からかけなおす習慣をつけるのは有効です。この時、相手が伝えてきた電話番号を信じないのがポイント。
警察や公共機関からの電話であれば、所属を聞いて電話帳やインターネットで調べた番号にかけるようにしましょう。家族から「電話番号が変わった」という電話があった時も、まずは自分が知っている番号にかけて確認を。それで繋がらない場合は他の家族に確かめるようにしましょう。
- 個人情報を教えない
名前、住所、電話番号、家族構成(日中に1人でいるか、高齢者の独居世帯か)などの個人情報は電話口で教えないようにしてください。
犯人は、警察や役所職員、また学校のPTA役員などを騙って個人情報を聞き出そうとします。相手がわからない、相手を知らない電話からの個人情報の問い合わせには決して応じないようにしましょう。
また、日中に高齢者が1人でいると知られるのは大変危険です。不審な電話には出ない、応じないのが一番ですが、万が一でてしまった場合は、嘘でも息子夫婦と同居していることにするなど、強盗の標的にならないように注意しましょう。
- 不審な電話はすぐ通報
怪しいと思ったら、すぐに警察に相談しましょう。#9110は、事件性や緊急性があるか判断がつかない場合でもかけてOKな警察の相談窓口です。
受付時間:平日の8:30~17:15
※各都道府県警察本部で異なります。
かかってきた電話番号と通話内容をまとめてすぐに相談するようにしてください。
- アポ電詐欺・強盗の被害に合わないために
アポ電の被害が詐欺から強盗に発展している今、「話を聞いた上で断る」というのは非常に危険な行為です。犯人は些細な会話の中から強盗に繋がる情報を聞き出そうとしています。どんな電話がかかってきても、個人情報に繋がるものは一切教えないようにするとともに、一度切って自分からかけなおすことを習慣にしてください。
ナンバーディスプレイのある電話を使って、知っている番号以外にはでないようにするのも有効です。
また、自動録音通話機の利用も積極的に検討した方がいいでしょう。
録音機は、会話が記録されて何かあった時の証拠になるほか、通話前に「防犯のため会話が録音されます」というメッセージが流れるため、詐欺被害を未然に防ぐ効果も期待されています。
市販のものに加え、無料貸し出しを行なっている自治体も多いので、問い合わせてみてください。
②絶対に扉を開けてはダメ!訪問時の注意点
電話だけでなく、自宅への訪問にも注意が必要です。
アポ電強盗の被害の中には、警察を名乗る人物から「玄関の前に猫の死骸があるから確認してほしい」と言われてドアを開け、強盗に入られたケースもあります。不意の訪問には、絶対に応じないようにしてください。
- 日中は居留守を使う
日中、1人でいる時には居留守を使うくらいの警戒してもやりすぎということはありません。本当に必要な相手であれば、夜に改めて訪ねてきたり、アポイントの電話をかけてくるはず。
電話でアポイントがあった場合は、自分の知っている番号にかけなおすなど確実に信頼できる相手であることを確認した上で、他の家族がいる時間帯を指定してきてもらうようにしましょう。
- 所属などを聞き、自分で電話する
警察などを名乗る人物が訪ねてきた時は、扉を開ける前に相手の所属を確認してください。警察手帳や身分証明書を示されるとつい信用しそうになりますが、一目見ただけでそれが本物であるかを見分けられる人は少ないはずです。
相手の所属と氏名を聞いて所属する警察署の電話番号を調べ、その人物が実在するのか、その人物は今自分の家に来ることになっているのか確認の電話をしてください。本物の警察官であれば、そのような確認のために待たされて、警戒する姿勢を褒めることはあっても怒ることはありません。
- 不審な場合はすぐに通報を
不意の訪問には応じないことが大原則ですが、少しでも怪しいと思えば迷わず警察に通報してください。身の危険を感じた時は、ためらわずに110番に連絡するようにしましょう。
- 玄関先にカメラなどを設置する
玄関先に防犯カメラを設置することも有効です。詐欺犯、強盗犯は捕まるリスクの高い犯行には及び腰になるものです。
防犯をしっかり行なっていることを印象付けることが、一番の防犯になります。警戒しすぎかもしれないと思うくらいでちょうどいいので、防犯カメラを設置する他、インターホンをカメラ付きのものにするなど、十分な対策を行いましょう。
③防犯に役立つサービス&グッズまとめ
アポ電詐欺・強盗に合わないためには、各種サービスやグッズの活用も大切です。警察・民間を問わず、様々なサービスやグッズが開発されているので、ぜひチェックしてみてください。
- 警視庁犯罪抑止対策本部
警察庁の公式twitterアカウント「警視庁犯罪抑止対策本部」では、都内のアポ電状況のほか、犯人が言いがちな言葉を随時解説しています。
高齢者はTwitterを使っていないことも多いので、家族がチェックしてこまめに注意を促してあげられるといいですね。
- 「わたなべ教授のサギ抵抗力しんだ~ん」
秋田県立大などの研究チームが開発した、「詐欺に弱いかどうか」を診断するアプリ「わたなべ教授のサギ抵抗力しんだ~ん」。約80の質問に答えると、どのような詐欺に合いやすいかや、どのような点に注意したらいいかなどのアドバイスをくれるというものです。
自己診断することで詐欺に対する意識が高まれば、それだけ被害にあう危険性も下がります。家族で一緒に診断してみるなど、普段から詐欺を警戒する雰囲気を作ることも重要です。
- あんしんみーちゃん
警察と民間が共同で開発したおしゃべり人形「あんしんみーちゃん」。
電話がなると、「すぐに信用しちゃダメ。警察に相談してね」など、9種類の言葉で毎回注意を促します。直前に警戒を促されるため、詐欺に対する心構えができた状態で電話に出ることができるという仕組み。
2018年12月発表された東京杉並区の高井戸警察署での取り組み事例では、半年間「あんしんみーちゃん」を導入した実証実験が行われ、約50件の詐欺電話がかかってきたにも関わらず、被害実績は0件だったと言います(参考:ASCⅡ「おしゃべり人形の導入で50件の詐欺電話でも被害ゼロに!」)。
3.まとめ
- アポ電被害は、詐欺から強盗に悪質化している。
- 知らない番号からの電話には応じないのが大原則。番号を調べてかけなおす、個人情報は話さないなど徹底した対策を。
- 被害を防ぐためには詐欺に対する意識を高めることが最重要。アプリやグッズを利用して家族ぐるみで防犯意識を高めよう。
おわりに
「自分だけは絶対に大丈夫」となぜか皆が思ってしまう詐欺。自分が騙されるはずがないという過信が、逆に隙になってしまうこともあります。
また、年々巧妙化してきた詐欺の手口が、ついに凶暴化しているのが近年の傾向。強盗に入られてしまっては、高齢者に抵抗のしようはありません。家族や親しい人が悲しい事件に巻き込まれないためにも、普段から防犯について話し合う場を設けて、詐欺に対抗する意識を高めるようにしてください。