この記事は以下の人に向けて書いています。
- 訪問業者に家の点検をさせた結果、高額の契約をさせられた人
- 工事の契約をしたが不審だと感じており、詐欺の事例を探している人
- 点検目的の訪問業者が頻繁に来るため、うまい対処法を知りたい人
はじめに
「点検商法」とは、住宅を訪問して「無料で点検しますよ」などと言い、
実際には必要のない高額な工事や商品を強引に押しつけてくる悪徳商法です。
特に点検商法のターゲットにされやすいのは、高齢者が住んでいる住宅です。もし被害にあってしまったら、
クーリング・オフや専門機関への相談といった適切な手続きをとらない限り、お金は戻ってきません。
この記事では、点検商法の事例や、悪徳業者と工事の契約をしてしまったときの対応策、訪問してきた業者への対処法をまとめていきます。
1.「点検です」を信用してはダメ!ありがちな手口と事例3選
まずは点検商法でありがちな手口や、実際の事例を紹介します。点検商法自体は昔からよくある詐欺ですが、
最近では手口が多様化。どんな事例があるかをあらかじめ知っておくことで、だまされる確率を下げることができます。
①台風や地震などの自然災害に便乗する手口
最近特に増えているのが、
「住宅の損害保険を利用して無料で修理できますよ」という誘い文句で、屋根の修理や耐震工事、外壁塗装をすすめてくるケースです。
国民生活センターの発表
によると、保険金を利用するタイプの点検商法の相談は、2017年度で1100件あまりが寄せられており、
10年前と比べて30倍以上の件数となっています。
特に地震や台風の被害があった地域では、点検商法が増加するため注意が必要です。「保険金の範囲内で工事してもらえるなら問題ないのでは?」と思うかも知れませんが、実際には以下のようなトラブルが起こる可能性が考えられるからです。
- 点検業者が保険会社への保険金請求を代行することで、高額な手数料を請求してくる
- 相場よりもはるかに高額な工事代金をとられる
- 保険金が払われたのに、なかなか修理が始まらない
- 保険金がおりず工事しないことになったのに、高額な解約料を請求される
また、住宅の損害保険では地震や台風などの自然災害による損害を保証してくれますが、
経年劣化によって壊れてしまった部分の修理は保険の対象外です。ウソの理由で保険金を請求してしまうと、もし本当に支払われたとしても後から返さないといけなくなったり、
最悪の場合、詐欺罪で訴えられたりするおそれもあります。
- 実際の事例(参考:国民生活センター)
訪問してきた業者に「壊れている屋根を保険金で修理しましょう」と言われ、お金を払わなくていいなら修理したいと思い契約。その後、保険金がおりたが見積りよりも低い金額だった。修理工事をやめたいと申し出たところ、「工事ができなくなった場合でも業者に30%の手数料を支払う」という契約になっていた。
保険金で支払えるという言葉につられて、保険金が下りる前に住宅修理の契約をしてはいけません。
損害保険をもらえそうな破損があったとしても、まず保険会社や保険代理店に相談しましょう。
②水道局職員などを装って点検をさせる手口
水道局職員や消防署職員、NPO法人職員などを装って住宅を訪問し、高額な浄水器や火災警報器を売りつける手口があります。このような手口は
「かたり商法」とも呼ばれており、高齢者がひとりで住んでいる住宅は特に狙われやすい傾向にあります。
代表的なものとしては、
- 「水道の水は汚染されているので、きちんとした浄水器をつけないとガンになる」などと脅して高額な浄水器を売りつける
- 「法律で火災警報器の設置が義務付けられた」と言って勝手に各部屋に装置を取り付けて、高額な料金を請求してくる
というものがあります。
そのほかにも、
浄化槽、消火器、ソーラーパネルなど、不安をあおってさまざまな商品を売りつけてくる悪質なかたり商法が確認されています。
- 実際の事例(参考:国民生活センター)
NPO法人の職員を名乗る人から、水道に関するアンケートの電話がかかってきた。後日、「アンケートのお礼として無料の浄水器をプレゼントする」と言って訪問を受けたが、家の中に入れると「水道水をそのまま使うと危険だ」と脅してきて、70万円の浄水器を売りつけられた。
本物の水道局やNPOの職員が、とつぜん住宅を訪問して商品を売りつけることはありません。たとえ無料だと言ってきても、不審な訪問者は家に入れないようにしましょう。
③その他の事例
点検商法は他にも、シロアリ駆除、布団の販売など、さまざまなパターンがあります。
- 床下の無料点検をおこなった後、実際にはシロアリはいないのにニセモノのシロアリ画像を見せて有料の駆除サービスをすすめてくる
- 布団の無料チェックといって布団を見た後、この布団では病気になると言って高額な布団を買わせようとする
上記のような手口もよくおこなわれています。
いきなり家を訪問してきて、無料でなにかサービスすると言ってきた相手には注意しましょう。
- 実際の事例(参考:国民生活センター)
女性がいきなり訪問してきて「布団を見せてほしい」と言って家に上がりこみ、「この布団では体に悪いから変えるべき」と40万円の布団をしつこくすすめられた。
布団の訪問販売ではかなり強引に契約させられているケースが多く、一度購入するとなにかと理由をつけて新しいものを次々に買わされる
次々商法(過量販売)にも発展しやすい傾向にあります。毅然とした態度で断るようにしましょう。
2.工事や商品を購入しないために…状況別・撃退方法一覧
点検商法の疑いのある業者がきたときや、つい契約してしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは状況別に、点検商法の撃退法や対応策を説明します。
①訪問時に怪しいと気づいた場合
訪問してきた時点で、この人は怪しいなと気づいた場合は、相手をうまく追い返せば大丈夫です。どのような方法があるか見ていきましょう。
- きっぱりと断る
相手を玄関に入れてしまった場合、なにか言われてもきっぱりと断ることが重要です。すぐに「出ていってください(帰ってください)」と退去をお願いしましょう。
訪問販売では、特定商取引法という法律によって、一度断った相手をしつこく勧誘してはならないとさだめられています。また、退去をお願いしているのにそのまま居座られた場合も「不退去罪」という罪になり、警察が逮捕する理由にもなります。
なんど断っても相手が居座り、帰らないようなら「警察を呼びます」と言いましょう。それでも帰らなければ、本当に警察に通報してもかまいません。
- 営業ですか?と聞く
訪問販売で商品やサービスを売る場合、業者は特定商取引法により以下の3点を告げなければならないことになっています。
1.事業者の氏名または名称
2.商品やサービスの契約を勧誘する目的で来ていること
3.売ろうとしている商品やサービスの種類
無料点検という説明をしてきて、営業かどうかはっきりしない場合は、こちらから「営業ですか?」と聞いてみましょう。もし営業ですと答えたら、お断りすれば問題ありません。
営業ではないと答えて、その後商品や契約をすすめてきた場合も、法律違反となります。もし契約してしまったとしても、ウソをついて契約させたということで、後から契約を解除しやすくなります。
また、訪問販売がきたときは相手の言ったことの証拠を残すために、「念のため録音させていただきます」と言って堂々と録音しましょう。ボイスレコーダーがない場合は、スマートホンのアプリでも録音できます。録画・録音機能つきのインターフォンを設置しておくのもよいでしょう。
- 居留守を使うのがもっとも確実
点検業者は言葉巧みにこちらをだまそうとしてくるため、もっとも確実な対処法は、居留守を使って相手と話さないことです。カメラ機能つきのインターフォンを設置しておき、知らない人がたずねてきた場合は出ないようにしましょう。
そのほか、訪問販売の対策に関する詳しい内容については、下記の記事も参考にしてみてください。
- こんな訪問販売は断れる!違法な手口7つと、いざというときの対処法
②契約をしたあとに怪しいと気づいた場合
もし点検業者と契約してしまっても、条件次第では後から契約を解除することで金銭的な被害を食い止めることができる場合があります。
- 契約から8日以内:クーリング・オフを利用する
訪問販売など、消費者が深く考えずに契約してしまう恐れのある状況で購入した商品やサービスは、クーリング・オフという制度を利用することで契約解除できる可能性があります。
点検商法のような訪問販売の場合、契約書を交わしてから8日以内であれば、解除することが可能です。
消費者保護の法律であるため、たとえ契約書内に「クーリング・オフは禁止する」と書かれていても、問題なくクーリング・オフをおこなうことができます。違約金などを支払う必要もありません。
購入した商品をクーリング・オフで返す場合は、その旨を通知し、着払いで返品しましょう。修理工事などの契約ですでに工事が終わっていても、代金を支払わずに元に戻してもらうことが可能です。
また、もし業者から「クーリング・オフはできない」などとウソをつかれたり、脅されたりした場合は、契約から8日間が過ぎてしまっていても、クーリング・オフできます。
クーリング・オフする場合は、内容証明や簡易書留など、証拠が残るかたちで通知を送る必要があります。クーリング・オフのやり方や詳細については下記の記事で解説していますので参考にしてください。
クーリング・オフとは?詳しい内容や期間、手続きの方法を徹底解説!
- 契約の取り消しを申し出る
訪問販売では、業者から事実とは異なる説明をされて契約した場合や、重要なことを説明されないまま契約した場合は、消費者の側から契約を取り消しできる制度があります。
取り消しを申請できる期限は、気づいてから1年以内、または契約から5年以内となります。
クーリング・オフよりも期間が長いので、クーリング・オフの期限を過ぎてしまっている場合は、取り消し制度の利用を検討しましょう。訪問販売を受けたときの会話を録音しておくと、業者からの説明が間違っていた、不十分であったことを証明するために役立ちます。
③すでにお金を支払ってしまい、返金してもらいたい場合
点検商法にだまされてすでにお金を支払ってしまった場合、契約の取り消しやクーリング・オフができたとしても、
素直に返金してもらえる可能性は低いです。第三者の力を借りることを考えましょう。
- 弁護士などを通じて返金を請求する
返金請求は弁護士などの専門家を通じておこなうのが最も確実です。特に被害が高額の場合は、業者が行方をくらます可能性もあるので、早めに弁護士に相談しましょう。
被害額が小さく、弁護士費用のほうが高くなりそうなときは、集団訴訟をおこなうという手もあります。同じ業者の被害者が他にも何人か存在することが前提となりますが、弁護士費用を被害者同士で折半することで、弁護士費用をおさえることが可能です。
- 訪問販売消費者救済基金制度を利用する
クーリング・オフや契約解除の通知をしたのに訪問販売の業者が返金に応じてくれない場合は、「訪問販売消費者救済基金制度」という制度を利用するとお金を補償してもらえる可能性があります。
この制度を利用したい場合は、所定の申請書に必要事項を記入して、契約書などとともに提出してください。申請書や詳しい申請手順は、日本訪問販売協会のウェブサイトに書かれています。
日本訪問販売協会:訪問販売消費者救済基について
なお、業者が日本訪問販売協会の会員ではない場合や、契約から1年以上たっている場合は補償の対象外となりますので注意してください。
3.点検業者の被害にあったら……相談先窓口3選
①消費者ホットライン
消費者ホットライン(188)は、全国にある消費生活センター・国民生活センターの窓口につながる電話番号です。これらの機関では、点検業者への対処法のアドバイスをしてくれるだけでなく、悪質な業者に対しては被害者のかわりに返金の交渉をおこなってくれることもあります。
- 電話番号:188
- 受付時間:平日9:00~17:00、土日・祝日10:00~16:00(地域によって異なります)
②日本訪問販売協会
訪問販売をおこなっている業者が加盟している公益社団法人です。消費者からの訪問販売に関する相談を受けつけて、トラブル解決のためのアドバイスをしたり、ADR(裁判外紛争解決手続)での解決を図ったりしています。
- 電話番号(訪問販売ホットライン):0120-513-506
- 受付時間:平日10:00~12:00/13:00~16:30
③法テラス
点検商法だけでなく法的トラブル全般に関する相談を受けつけて、情報提供や適切な相談窓口の案内をおこなっている公的機関です。収入や資産のすくない人に対しては、無料法律相談や弁護士費用の立て替えサービスもおこなっています。
電話相談のほか、法テラスのウェブサイトではメールでの相談も受けつけています。
- 電話番号(法テラス・サポートダイヤル):0570-078374
- 受付時間:平日9:00~21:00、土曜日9:00~17:00(祝日・年末年始を除く)
4.まとめ
- 自然災害に便乗して、保険金で家を修理できるとすすめてくる手口が増加
- 無料で点検すると言って家に上がりこもうとしてくる業者には要注意
- お金を払う前なら、クーリング・オフや契約の取り消し制度を利用して契約解除できることがある/li>
- お金を払ってしまった場合は弁護士に依頼して返金請求するか、訪問販売消費者救済基金制度を利用する
おわりに
点検商法は昔からある詐欺の手口ですが、「保険金を使って実質無料で工事する」と勧誘するなど、より巧妙なやり方で契約をせまるケースが増えています。無料という言葉につられて、あやしい訪問者を家に上げないように注意しましょう。
もし契約してしまっても、クーリング・オフなどの対処法があります。記事の中で紹介した方法やリンク先の情報を参考にしてみてください。