この記事は以下の人に向けて書いています。
- 「クーリング・オフ制度」を聞いたことがあるけれど、具体的には知らない人
- 何がクーリング・オフ対象かわからない人
- クーリング・オフをしようと思って初めて調べてみた人
はじめに
「訪問販売に突然売り込まれ、断れなくて購入してしまった……」
「電話勧誘で契約をしてしまったけれど、やっぱりやめたい。今からでも大丈夫?」
そんな消費トラブルを救済するために、「クーリング・オフ」という制度があります。
エステティックサロンや語学教室、または訪問販売などで意に沿わない形で購入や契約をしてしまった時に、一定の基準を満たした手続きをすれば、その商品を消費者側からキャンセルすることができるのです。
「契約をキャンセルしたいけれど、クーリング・オフのやり方がわからない」
今回は、そんな悩みを解決するためにはどうすれば良いかのノウハウを集めました。
まずは一歩を踏み出してみませんか。
1.クーリング・オフってなに?その役割と意味
クーリング・オフは、強制や不意打ちなど消費者が不利な状態で、販売業者側から購入や契約を迫られたり、騙されたりした場合に、
消費者側から一方的に、理由を問わず購入や契約を解除できる、消費者保護の制度です。
一度購入や契約をしてしまったものに対し「
冷静になって考え直す(クーリング)」する期間を置き、必要な手続きを経ればキャンセルをすることができるものです。
これらは一般的に「
特定商取引法」で定められた契約やサービスの提供が対象になりますが、そのほかにも、クレジット契約の「
割賦販売法」、宅地建物(賃貸を除く)を対象とした「
宅地建物取引業法」や「
不動産特定共同事業法」で定められたサービスや契約なども、クーリング・オフをすることができます。
ただし、あくまでも強制や不意打ちなど消費者に不利益がある状況で契約があったことが前提で、
消費者自らが店舗を訪れたり、業者を自宅に呼んだり、インターネット通販にアクセスして商品を購入するなどの場合は保護の対象にはなりません。
では、実際にどんな商品が対象になるのでしょうか?
次の章で紹介していきます。
2.クーリング・オフの対象はどんなもの?ひと目でわかる対象契約一覧
主なものとして、特定商取引法では、下記のものがクーリング・オフの対象として定められています。
このほか、下記の契約やサービスもクーリング・オフに相当する制度があり、それぞれ8〜20日間の期限内に手続きをすれば解除が可能です。
また、2016年には
携帯電話やインターネットプロバイダーの契約にも「初期契約解除制度」が適用されるようになりました。
一定の範囲の電気通信サービスの契約で、契約書面を受領した日を起算日として8日以内なら、電気通信事業者の合意なしに、利用者の都合で契約を解除できる制度です。
ただし、書面契約の日付よりサービスの提供開始が遅い場合は、起算日を提供開始日として8日間が期限になります。
3.クーリング・オフには期限がある!その日数はいつまで?
「
ずっと前に買ったものをクーリング・オフすることはできるの?」
こんな疑問を持つ人もいるかもしれません。
しかし、実はクーリング・オフには期限が決まっており、項目別に8日(語学教室、エステ、学習塾など)、10日(投資顧問契約)、14日(預託取引)、20日(モニター商法など)となっています。
基本的には何年も前の契約や購入を取り消すことはできません。
また、日数の計算では、
期限を間違いやすいので注意が必要です。
具体的には、
契約書を交わした日や申し込みをした日、商品を購入した当日を1日目として数えることです。
申し込み日や購入日の翌日からではありませんので、手続きを始める際にはチェックをしておきましょう。
実際の手続きには郵便局での手続きや、証明に必要な文書作成などで時間がかかることも予想されます。
期限にかかわらず、クーリング・オフをするなら早めの行動を起こした方がよいでしょう。
ただし、
もし万が一期限が切れていたとしても、販売者側の書面の不備などが見つかれば手続きが可能になる場合があります。諦める前にもう一度手段を探してみましょう。
詳しくは、下記の記事も参照してみて下さい。
4.クーリング・オフってどうやればいいの?申し込みのステップ
それでは、実際にクーリング・オフを申し込む時はまず何から手をつければ良いのでしょうか?
①手元にある記録や商品を確認
手続きを始める前に、まず下記のことを確認しましょう。
- 購入や契約時に使用した文書、メール、カタログ、契約書、その他の記録
- 商品や契約書などが手元に届いたのはいつか(ここから期限を起算します)
- 送付された商品とその箱、封書などの梱包材、納品書(商品は開封しないようにしましょう)
- 販売業者の連絡先(これが見つからない場合は詐欺などの可能性があります)
②期限の起算
上の章でも説明したように、クーリング・オフには期限があり、購入や契約からいつでも解消できるものではありません。まずは自分のケースがどれに当てはまるかを確認し、早めに手続きをするようにしましょう。
③内容証明や簡易書留で郵便を送る
公的な記録が残る形で販売業者にクーリング・オフを申し込んだことが証明できるようにすることが必要です。また、クーリング・オフの期限内に消印が押されていることなどもポイントになります。郵便の到着は期限を過ぎても、消印が期限内であれば問題はありません。
電話など口頭でのやり取りは十分な証拠が残らないため、トラブルの元になりかねませんので、必ず
内容証明か簡易書留を利用するようにしましょう。手続きができる郵便局が限られている場合がありますので、事前に調べておくとスムーズに進みます。
④クレジットカード会社へも連絡を
クレジットカードで代金を支払っていた場合は、信販会社(クレジットカード事業者)へも上記の内容証明などを使ってクーリング・オフの通知を同時に発送します。
これは、販売業者と消費者との間でクーリング・オフが成立しても、信販会社と販売業者の間ではその情報が共有されない可能性があるため、消費者へ支払い請求が来てしまうのを防ぐものです。
⑤妨害にあったら?
クーリング・オフ対象であるにもかかわらず、販売業者側が
「クーリング・オフをしたら許さない」
「不利益を与えたので損害賠償を請求する」
などと
脅したり、妨害をしたりすることは違法です。このような行為にあったら、身近な消費生活センターや弁護士、また身の危険を感じる場合は警察へ相談しましょう。
こちらの記事でさらに詳しい方法を紹介しています。
5.こんな場合は対象外!?クーリング・オフNGの契約
では、所定の手続きを踏めばどんなものでもクーリング・オフは可能なのでしょうか?
実は残念ながらそうではありません。
クーリング・オフはそもそも、
不意打ちなどで騙されたり、強制的に意に沿わない購入や契約を迫られて承諾してしまったりした個人消費者を救済するための制度です。
よって、
自分の意思で店舗やインターネットショッピングサイトを訪れ、吟味して商品を購入したり契約したりした場合のケースは、保護の対象外となるのです。
間違いやすい主な対象外の例をみてみましょう。
①インターネットショッピング、カタログ通販など
「
自らアクセスして商品を購入したり、契約したりするもの」とみなされるため、対象外になります。クーリング・オフは使えませんが、サイトには特定商取引法で義務付けられた「返品特約」と呼ばれる規定が表示されているはずですので、返品の際にはまずその内容を参照しましょう。
詳しい解説は以下の記事に掲載しています。
②自動車やバイクの購入(中古車を含む)
一般的に購入の際は
消費者が店舗へ赴き、吟味をしてから決めるものとされています。よって「訪問販売などの不意打ちや騙し討ちで購入する」というケースには当たらないとされています。
③事業者間の契約
クーリング・オフはあくまでも「個人消費者」を保護するための制度なので、
事業者(個人事業主を含む)同士の契約は対象外です。
④消費者の故意や過失で商品を破損してしまった場合
消費者側のミスで商品を壊してしまった際はクーリング・オフの対象にはなりません。商品が届いていた際に破損が認められたら、販売業者の不備としてクーリング・オフを適用できます。この場合は先に交換を申し出るのがいいでしょう。
上記で紹介したもの以外にも様々な対象外になるケースがあります。
こちらの記事でさらに詳しい説明をしています。
6.まとめ
- クーリングオフとは、特定の契約を一定期限であれば無条件で解除できる制度のこと。
- どんなものでもクーリング・オフができるわけではなく、クーリングオフ不可のものもある。
- またクーリング・オフには期限が定められており、商品や契約ごとにそれぞれ異なることにも注意。
- ネットショッピングはクーリング・オフ対象外。ただし、返品特約などにより返品可能な場合もあるため、まずは販売しているウェブサイトをチェック
おわりに
クーリング・オフ制度は消費者保護を目的としているため、正しい手順で味方につければとても頼もしいものです。この記事や、記事中で紹介しているリンクなども参考にしてみて下さい。
とはいえ、次のショッピングからは返品やクーリング・オフについて、販売業者のサイトや契約書などを確認するようにしましょう。不要なものはきっぱりと断るのも、トラブルを避けてお買い物を楽しくする手段の一つです。