この記事は以下の人に向けて書いています。
- どんな商品がクーリング・オフ対象外になるかわからない人
- クーリング・オフができないと聞いて不安になっている人
- クーリング・オフができないケースについて、具体的に知りたい人
はじめに
通信販売や訪問販売などで、「クーリング・オフ」という制度を聞いたことはありませんか?
購入した商品やサービスについて返品や契約の解除ができる、消費者を保護する制度です。
しかしどのような場合にも適用されるものではなく、期限や購入した商品の内容など、一定の条件を満たした場合にはじめて行使できます。
「自分の購入した商品や契約は対象になっているのだろうか……」
今回はそんな不安のある人向けに、具体的な解説をしていきましょう。
1.クーリング・オフできない契約ってどんなもの?
一見便利で味方になってくれそうなクーリング・オフ。
しかし、どんなものでも、いつでも購入や契約の解除ができるものではありません。
次の一覧表をもとに、自分の契約がクーリング・オフの対象外でないかどうかチェックしてみましょう。
まずは以下のものを手元に準備してください。
- 購入や契約に使った書類、メール、その他記録が残っているもの
- 契約書や送られてきた商品、納品書などの文書、梱包材
- 販売業者の連絡先を調べておく(見つからない場合は、詐欺の可能性も)
また前提として、
消費者が日本国内に在住していることが条件となります。
そのうえで、クーリング・オフ対象外となる主なケースを以下の表にまとめました。
対象外となる契約 |
理由 |
①通販、ネットショッピング、店舗購入 |
自分の意思で買ったものは対象外 |
②事業者間どうしの取引 |
個人での契約以外は対象外 |
③商品を自分のミスで壊してしまった |
故意・過失による破損は対象外 |
④自動車・バイクなどの購入 |
通常、よく吟味して選ぶ商品とされるため |
⑤指定消耗品を使ってしまった場合 |
使用すると本来の価値がなくなるため |
⑥過去一年以内に同じ業者と取引した場合 |
業者間の取引関係を保護するため |
⑦エステ等のサービスで短期・少額の契約 |
ただし例外あり |
⑧クーリング・オフ期間を過ぎた契約 |
ただし例外あり |
それぞれの項目について、くわしく解説していきます。
①通販、ネットショッピング、店舗購入
クーリング・オフは「騙された」「強制的に契約をさせられた」「不意打ちの販売だった」などの理由で被害を受けた消費者を救済するための制度です。
これに照らし合わせると、
自分からサイトにアクセスしたり、カタログを参照したりして購入や契約を結んだものに関しては適用できないのです。
しかしこの場合は
「返品特約」といって、クーリング・オフ以外の返品方法の有無をサイト内に記載することが義務付けられていますので、まずはそこを探してみましょう。
とはいえ、
販売業者が「返品不可」としている場合や、開封後の商品を受け付けていない場合があったり、返品はできても送料が購入者負担だったりする場合がありますので、注意が必要です。
また同様の理由で「自ら店舗に行って契約をしたもの」「自宅へ自分から業者を呼んだもの」も、不意打ちの事例とは異なるため、救済対象とはなりません。
より詳しい内容については、以下の記事も参考にしてください。
②事業者間どうしの取引
特定商取引法では、
クーリング・オフはあくまでも個人を対象とした救済制度であるため、事業者(個人事業主を含む)間同士の契約は適用されません。ただし、購入する商品が個人や家庭で使用する目的で会った場合は、対象に含まれます。
③商品を自分のミスで壊してしまった場合
故意・過失によって商品を破損してしまった場合、クーリング・オフは適用されません。もし最初から壊れていた場合はクーリング・オフの適用がされますが、まずは取引業者に別途交換が可能かどうか交渉してみましょう。
④自動車・バイクなどの購入
車は一般的に不意打ちの訪問販売などで無理やり購入させられるケースはほとんどなく、ディーラーなど
実店舗に自ら足を運び、吟味して購入されるものとみなされます。
よって、これも①で述べたクーリング・オフの対象外のケースに当てはまるのです。
また中古車は、すでに誰かが乗っていたものであるため、納車後の不備を販売店の責任かどうかを立証することが困難なのも理由になります。
⑤指定消耗品を使ってしまった場合
「一部でも使用すると価値が著しく損なわれる商品」として、特定商取引法では下記が指定されています。
- 健康食品
- 不織布および幅が13センチメートル以上の織物
- コンドーム及び生理用品
- 防虫剤、殺虫剤、防臭剤及び脱臭剤(医薬品を除く)
- 化粧品、毛髪用剤及び石けん(医薬品を除く)、浴用剤、合成洗剤、洗浄剤、つや出し剤、ワックス、靴クリーム、歯ブラシ
- 履物
- 壁紙
- 配置薬
これらを使用してしまった場合も、クーリング・オフの適用外となります。
ただし、自分の意思ではなく、業者側の意思で使用させた場合は例外となります。
⑥過去一年以内に同じ業者と取引した場合
訪問販売でも、過去1年以内に取引実績のある業者は原則として対象外です。業者との間の信頼や取引関係を保護することが理由です。
ただし、取引額が少額の現金であれば「実績」とはみなされません。また、店舗の事業とは関連性の薄い商品の取引は、実績に含まれません。
⑦エステ等のサービスで短期・少額の契約
下記のサービスまたは
5万円以下の契約は少額・短期のものとされ、対象外です。
- エステティックサロンでは、1か月以内のコース
- 学習塾や語学教室、パソコン教室、結婚サービスは2か月以内
ただし、
キャッチセールスや電話勧誘といった方法により契約した場合は、上記のケースでもクーリング・オフが可能です。
⑧クーリング・オフ期間を過ぎた契約
クーリング・オフは
購入した商品や契約したサービス内容別に期限が決められています。
短いものから順に、語学教室やエステで8日、投資顧問契約などが10日、預託取引が14日、モニター商法やマルチ商法が20日となっており、この期限内にクーリング・オフの手続きをすることが必要になります。
手続きはメールや電話などでなく文書で郵便を使い、
記録を残すことが重要になります。簡単な手続きではない場合もありますので、もし「クーリング・オフをしたい」と考えたら、なるべく早めに手続きをすることが重要です。
すぐに行動に移りましょう。
仮に手続き中に期限が切れてしまっても、
場合によっては有効となることがあります。
詳しくは以下の記事でも解説しています。
2.こんなときはクーリング・オフできる?できない?ケース別解説
さて、そうはいってもなかなか判別が難しいケースも存在します。
また、上記の「クーリング・オフができない」として紹介したものでも、契約の状況などによって、例外的にクーリング・オフが認められることもあります。以下、いくつかの事例を具体的に見ていきましょう。
①相手の言葉に乗せられて、商品を開封してしまったら?
例1:購入後、販売員に言われるまま、化粧品を開封してしまった。もうクーリング・オフはできない?
→ 販売側の誘導的な行為によって開封に至った場合は
「消費者が自ら意図したものではない」とみなされ、クーリング・オフの対象になります。
また、開封したものが
セット販売の中の一部の中身であれば、未開封の状態のものはクーリング・オフをすることが可能です。
②「必ず儲かる」はウソだった! 解約できる?
例2:「必ず儲かる」と言われて契約したのに、そんな気配が全くない。もう解除することは不可能?
→
連鎖販売取引(マルチ商法)であれば、
契約を書面で受領してから20日以内(受領日を含む)に文書でクーリング・オフを申し込むことができます。
また
消費者契約法は、業者側が「必ず儲かる」などの断定的な判断や虚偽の情報を消費者側に提供し、事実であると誤認させることを禁じています。
③電話で契約をしてしまったけど、やっぱり解約したい……
例3:電話の口頭で契約をしてしまったけれど、まだ契約書が届く前に「やっぱり解約をしたい」と業者に連絡をしたら「クーリング・オフはできない」と言われた。解約はできる?
→電話での勧誘による契約は
「申込書や契約書などの文書が消費者の手元に届いてから8日間」が期限です。口頭による契約は書面が残っておらず、文書が届くまではクーリング・オフが可能になります。
④さまざまな脅しを受けた……解約は難しい?
例4:突然訪問を受けて商品を紹介され、「契約するまで帰らない」と脅された。仕方なく契約してしまったけれど、解約をしたい。
→
不退去による契約はクーリング・オフ解除の理由になります。また同時に、消費者が店舗などに監禁され、帰る意志を示したのに「買うまで帰さない」と脅された場合も同様です。
例5:解約したいが、「そんな理由でクーリング・オフをしたら許さない」「損害賠償を請求する」などと脅しを受けてしまった。
→
虚偽の情報や不実による脅迫もクーリング・オフの妨害とみなされ、仮にクーリング・オフ期限が過ぎていても契約解除をすることができます。また本来、クーリング・オフは相手側業者に
理由を告げる必要はなく、消費者が一方的に解除できるものです。
⑤書類が届いてからの日数を数えたけれど、期限が切れていた場合は?
例6:販売業者から書面が届いていたが、クーリング・オフ期限が切れてしまった。これってもうダメなの?
→記載事項を確認してみましょう。
特定商取引法に基づく内容が揃っていない場合は、書類不備としてクーリング・オフをすることができます。記載義務とされているのは、販売業者の住所や連絡先、クーリング・オフの条件、契約年月日、商品名、販売価格などです。
記載事項については、こちらも参照してみましょう。
⑥子供が騙された! 期限切れではもう解除は無理?
例7:子供が騙されてしまい、高価な商品を購入したが「クーリング・オフはできない」と言われて泣き寝入りし、期限も切れていることがわかった。もう手立てはない?
→未成年は保護者の同意を得ずに契約してしまった場合は、
「未成年者取り消し」が可能です。ただし、同意があった場合や、未成年者が成人などを装って身分を詐称した場合などは契約の取り消しができないので注意が必要です。
⑦どうしても自分では対処できない……そんな時は専門家へ
これまで挙げてきたケースでも解決できなかったり、どれにも当てはまらなかったりした場合はどうしたらいいのでしょう?
自分で判断してトラブルに発展することを避けたい時は、専門家の手を借りることが必要です。下記のほか、
緊急かつ身の危険があるトラブルの場合は警察への通報も考慮しましょう。
-
消費者ホットライン「188」へ相談する
また、消費者ホットライン「188」(いやや!)で、全国各地にある自分の身近な地域の消費生活相談窓口を紹介してくれます。
このほか、国民生活センターでも相談を受け付けています。
- 弁護士に相談する
法的解決を目指すなら、プロである弁護士の手を借りましょう。身近な弁護士を探すには、下記のサイトから探すのが便利です。ただし、実際に手続き代行を依頼したり、訴訟を行うには費用がかかります。資金的な不安がある場合は、法テラスでの相談も検討しましょう。
・日本弁護士連合会(日弁連)
・法テラス
また、同じ販売業者に詐欺などの手口で騙された被害者が自分以外に何人もいそうな場合には、
集団訴訟を検討してもいいでしょう。
3.諦める前にここをチェック!クーリング・オフチェックリスト
ここまで、さまざまなクーリング・オフ対象外となるケースやポイントを見てきました。
以下にそのポイントをあげていきましょう。
<その契約・商品、クーリング・オフできる? ここをチェック!>
- 手元に契約や購入時の書類、記録、届いた商品や書類はある?
- クーリング・オフの期限は切れていない?(商品や契約によって違うので注意を)
- 販売業者からの書類は、記載義務事項を守っている?
- 自分から購入や契約をした、あるいは店舗に訪れたり、販売員を呼んだものか、他人に不意打ちや強制などをされたもの?
- 販売業者に「必ず儲かる」などの言質はあった?
- 脅されたり、不利な状況で契約をしていない?
これらの項目で、少しでも引っかかるものがあれば、必ず確認をしておきましょう。専門機関に相談する際にも上記のポイントをまとめておくと、話がしやすくなります。
4.まとめ
- 間違いやすい! ネットショッピングはクーリング・オフ対象外
- もし「クーリング・オフできない」と言われても手段を探せる
- 一人で悩まず専門家に相談を。トラブル回避も十分に考慮して
おわりに
「業者から一方的にクーリング・オフはできないと言われてしまった……」
「クーリング・オフの対象外だったら、もう手立てはないの?」
となっても、諦めるのはまだ早いです。
まだやれることはないか、様々な事例からあなたの解決になる糸口を探してみて下さい。
また、今後のショッピングの際には、契約や購入をする前に「もしも返品や契約解除の時はどうすればいいのだろう?」ということもちょっと念頭においてみると、より安全で楽しいお買物になるかもしれませんね。