みなし残業とは?メリット・デメリットと違法かどうかの判断基準3つ

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投稿日時 2018年11月22日 19時07分
更新日時 2018年11月22日 19時07分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • みなし残業について「これ違法じゃないの?」と感じている人

  • 転職・就活のため、みなし残業について知っておきたい人

  • みなし残業について、よいか悪いかの判断基準を持ちたい人

はじめに

一定額の残業代を給与に含める「みなし残業」。額面給与は多くなる一方で、一定時間の残業が無給となるデメリットもあります。

もともとそういう条件で同意したとはいえ、これって本当に違法じゃないの……? そんな疑問を持つ社会人の方も多いのではないでしょうか。

また、これから就職活動をしようとしている人にとっては、残業と給与は志望企業を決める重要なポイントのひとつ。求人項目の中にある「みなし残業」とは、そもそもどういうもので、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

この記事では、そんな疑問を解消していきます。


1.実はハッキリ法律で定められてない?みなし残業の仕組み



まずは「みなし残業」とはどんなものなのか、解説していきましょう。

①みなし残業の仕組み

「みなし残業」とは月に一定の残業をする前提で、その分の残業代をあらかじめ給与に上乗せしておくというもの。

「残業をしたとみなして」給与を払うので「みなし残業」と呼ばれてるほか、「固定残業制」と言われる場合もあります。

求人内容や雇用契約書の給与欄に「月●時間の残業代を含む」などといった記載されているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

通常の残業代のように「毎月異なる残業時間分を請求する」といった計算は発生せず、残業代を含めた毎月一定額の給与が出ることになります。そのため、労働者にとっては、残業が少なくても手当を多めにもらえるというメリットがあります。

ただし一方で、悪質な企業ではみなし残業時間以上に働かせたうえで給与を上乗せしないといった利用をするケースもあり、「定額働かせ放題」と揶揄されるなど問題視されています。

②みなし残業は法的な制度ではなく、あくまで社内ルール

「みなし残業」は、実は法律ではっきり定められている制度ではなく、あくまでも企業と労働者との間に定めるルールでしかありません。

ただ、過去の裁判の結果などから、「労働基準法の範囲を逸脱するような場合でない限り違法ではない」とみなされており、実質的に適法となっているのが現状です。

ただし、それはあくまでも企業側と労働者の双方が合意していることが大前提。求人や雇用契約、就業規則などにはみなし残業の時間や金額などを明記する必要があるのはそのためです。

③会社がみなし残業を設定する理由は?

企業にとって、みなし残業を導入することで、

  • 残業代を個別に時間単位で計算する必要がない
  • ある程度の労務管理の手間を省ける
  • みなし残業代を含めた給与額は高くなるため、求人の魅力が増す

といったメリットがあります。

ただし中にはこのルールを悪用し、過剰なサービス残業を正当化するためのルールとして使っている悪質な企業もあります。

違法なみなし残業の見分け方は、次の章で解説していきます。

④間違いに注意!「みなし労働」と「みなし残業」の違い

「みなし残業」とよく似た言葉に、「みなし労働」があります。混同しやすい言葉ではありますが、その意味は明確に異なりますので注意してください。

みなし労働とは、直行直帰が多い外回りの営業職など、事業所外で働く労働者は労働時間のきっちりした算出が難しい場合に、「所定の労働時間(例:8時間など)働いたと”みなす”」制度。

いわゆる「裁量労働制」と呼ばれるもので、こちらは法律ではっきりとルールが定められています。

運用には労使協定が必要なほか、みなし労働時間が法定労働時間を超え、時間外労働が発生した場合は、その分の給与をあらかじめ給与に組み込んでおかなければなりません。

このほか、デザイナーや編集者などメディア関係、ソフトウエアなどのシステムエンジニア、研究職、弁護士などの士業ほか19の専門職については、「専門業務型裁量労働制」という制度が定められており、監督者が具体的な業務遂行手段や時間配分を指示しないなどの条件付きで裁量労働制を認めるものもあります。

  • みなし残業との違い

    「みなし残業」は法律で定められた働き方ではありませんが、違法でもありません。みなし残業は「あらかじめ一定の時間を残業する」と見込んで、その残業分を給与に反映しておく給与体系のことです。みなし労働は残業を前提とするか否かは関係がありません。

    みなし労働は「一定時間働いたとみなす制度」

    みなし残業は「一定時間残業したとみなす制度」

    と考えると、違いがわかりやすいでしょう。


2.グレーなみなし残業を見極めるためのポイント3つ



みなし残業制度を導入している企業は少なくありませんが、良心的な企業ばかりでもないのが困ったところ。

「うちの会社はグレーゾーンなのでは?」

と疑問を持った人のために、トラブルになりがちなポイントを以下の3点にまとめました。

①みなし時間以上に働いているのにその残業代が出ない
②みなし残業代を除いた給与が低すぎる
③みなし残業ではなく「営業手当」などを名目にしている

以下、くわしく解説していきます。

①みなし時間以上に働いているのに残業代が出ない

残業代に含まれるのはあくまでも「みなした分」に対してのみです。それ以上に働いた場合は、当然その分を請求しなければなりません。もちろん、企業側にもその規定が必要です。

残業をすることが前提となっているものの、「どのくらい残業しているか」までは企業が各従業員の状況を把握していないことがあり、これによって超過残業分が見えにくくなったりすることがあります。

また、企業は賃金を表示する際、基本給と固定残業代(●時間分XX円)といった形で、「残業時間が何時間分」「それに対して何円」と、どちらも明記していなければなりません。このどれかが欠けていては不当表示になります。

②みなし残業代を除いた給与が低すぎる

みなし残業代を含めた給与の総額に対し、みなし残業代の割合が高すぎるときは、いったん基本給を見直してみましょう。基本給が各都道府県の最低賃金を下回っている可能性はありませんか? 合計した給与額が高いから大丈夫とは限りません。

基本給と残業代の計算方法は下記の記事を参照してみて下さい。



各都道府県の最低賃金は厚生労働省のサイトにある「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できます。上記から時給換算した金額がこれを下回れば違法となりますので、注意して下さい。

③みなし残業ではなく「営業手当」などを名目にしている

気づかないうちに違う名前で何となく支払われたことになっているケースです。これに当てはまる企業は少なくないのではないでしょうか。「営業手当」「成果手当」などの名目などがあります。自分の給与明細を見直してみましょう。

会社によっては「この手当が実質的な残業手当だから」と言い、本来支払うべき残業代よりも低い金額に設定している場合があります。

就業規則や雇用契約にみなし残業の規定がなく、また実質的にも本来の残業代とは明らかに異なる金額であった場合、そもそも残業代を支払っていないとみなされる場合もあります。


3.みなし残業制度で働くメリット・デメリットは?



労使ともに上手く利用すれば利点もあるみなし残業制度。賢く使って、労働者側も損をしないように、避けられるトラブルは回避していきましょう。

これまで見てきたメリットとデメリットをまとめてみます。

①メリット

  • 一定の残業代があらかじめ盛り込まれた給与額なので、仕事さえ早く終わらせられれば、実質的に高い給与をもらえることになる

  • ダラダラと長時間残業をしても給与額が変わらないので、「仕事が遅いのに給与を多くもらっている」という従業員同士の不公平感がなくなる

②デメリット

  • 企業側は「残業代を払った分だけは働いてもらう」という心理になりやすく、労働者側からはもし労使協定の超過分があったとしても残業代を請求しにくいため、就業状態がブラック化しやすい

  • みなし残業代で給与を水増ししているため、基本給が低いことを見落としてしまいがち。

  • そもそも残業が前提の働き方なので、みなし残業が多い場合は激務が予想される


みなし残業が合うかどうかは、あなたがどう働きたいのかによっても変わってきます。違法な運用がされている場合は論外ですが、見た目の給与額だけを見るのではなく、そうした残業を前提とした仕事が合うかどうかもよくチェックするようにしましょう。


4.まとめ

  • みなし残業とは、事前に一定の残業代を給与に組み込んでおく仕組みのこと

  • 悪質は企業は、みなし残業を理由に長時間のサービス残業を強いてくる場合もある。違法な運用をされていないかどうかを事前によくチェックしよう

  • みなし残業は残業を前提した働き方。給与総額だけで判断せず、本当にその働き方が自分にあっているのかも事前に確認しよう

おわりに

みなし残業はとかく企業に悪用されやすい雇用形態であるため、労働者が過剰な働き方をしているケースも少なくないと言われています。

たとえみなし残業であっても、事前に設定した時間以上の残業をした場合は、超過分の残業代を請求することができます。

請求方法については、下記の記事も参考にしてみてください。




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