この記事は以下の人に向けて書いています。
- SNSなどインターネット上で相手から誹謗中傷を受けている人
- 職場や学校などで誹謗中傷を受けており、阻止したい人
- 誹謗中傷をしてくる人を訴えるにはどうするかを知りたい人
はじめに
「職場や学校で、いわれのない暴言や悪口に傷つけられた」……そんな
誹謗中傷の被害は、残念ながらなくなりません。さらに近年ではSNSや匿名掲示板など、インターネット上での誹謗中傷も増加しています。
得てして、被害者側が反応すると言葉尻をとらえて増長するのが誹謗中傷の加害者の特徴です。匿名となれば攻撃性はより強くなります。
一方で、ネット上の誹謗中傷を放置するのも禁物です。身元を特定されてしまうと、物理的ないやがらせ・身内や所属企業への波及・仕事への悪影響など、被害が悪化の一途をたどるケースも。拡散されて取り返しがつかなる前に、火元の投稿を削除してもらうように対処する必要があります。
誹謗中傷は立派な犯罪です。対面だけでなく、ネット上の誹謗中傷に対しても訴えることができます。どんな誹謗中傷に対しても泣き寝入りせず、法的な対応を取って自分の身を守りましょう。
本記事では、誹謗中傷に対して訴えることを検討する場合に注意すべき点を解説します。
1.誹謗中傷を受けてしまったら?すぐにやっておきたい防御3選
①証拠を集めておこう
誹謗中傷は、法的には以下のような犯罪行為に該当します。
これらに相当すると感じたときは、
すぐに証拠を残すようにしましょう。次のアクションを起こす際に必要になります。
ネット上での誹謗中傷に対して、証拠になるのは次のようなものです。
- スクリーンショット
- サイト(または投稿そのもの)のURL
- ウェブ魚拓
- 相手のプロフィールページ
- 管理者ページ
- 上記ページを印刷したもの、またはPDFファイル化したもの
ネット上での発言は多くの場合、管理者や投稿者の手で自由に削除できます。そのため、相手が発言を削除してしまうと、証拠を失ってしまい、誹謗中傷があった事実を立証しづらくなってしまいます。すぐに証拠を残すようにしましょう。
スクリーンショットの撮影は最も手軽な記録ですが、スクリーンショットは画像ファイルのため、加工を疑われる場合も。そこで、Webサイト自体をキャッシュとして保存できる「ウェブ魚拓」サービスを利用することをおすすめします。
証拠を手元に残す前に、サイト管理者に削除依頼をしてしまわないようにしましょう。
また、ネットだけでなく現実でも横行する誹謗中傷(パワハラやセクハラ、モラハラなどを含む)に対処する際にも、証拠が大切です。
対面で行われる誹謗中傷に対しては、可能な限り音声や動画を残すようにしましょう。打ち合わせや相談時などの被害が予測できる場合には、録音・録画機材を事前に用意しておくとよいでしょう。突然で難しい場合には、友人や同僚の協力を仰ぐのも手です。
どうしても録音・録画が困難であれば、手書きで日時と相手の発言内容を押さえておくだけでも構いません。
②弁護士に相談する
弁護士に相談することで、民法上の不法行為に対する
損害賠償を請求できるようになります。上記の証拠を持って弁護士に相談し、損害賠償請求をするかどうか、するならばどの程度の金額を請求できるのかなどを打ち合わせましょう。
また、特にネットでの誹謗中傷に対しては迅速な対処が不可欠です。この際も弁護士に相談することでスムーズに事を運べます。
「相談したいけれど、弁護士の探し方がわからない」とお悩みの方には、まずは
日本弁護士連合会(日弁連)のウェブサイトから
最寄りの法律相談センターを予約することをおすすめします。電話またはインターネットから予約できます。
損害賠償請求の方法や相場については、以下の記事で詳しく説明しています。
損害賠償以外にも、ネット上での誹謗中傷に対する措置を弁護士に依頼できます。代表的な措置としては、
- 削除依頼
- 仮処分の申し立て
- 発信者情報開示
- 集団訴訟
の4つがあります。
- 削除依頼
ネット上の誹謗中傷にあたる書き込みに対する削除依頼を、弁護士が代行してくれます。
書き込みの削除には、正しい削除依頼先の特定や確実に動いてもらえる削除理由・削除依頼文の書き方などの知識が必要です。ネット上の誹謗中傷案件に詳しい弁護士に相談することで、迅速な削除依頼が可能になります。
- 仮処分の申し立て
仮処分とは、非常に時間のかかる裁判の結果を待てないような緊急性の高い場合に対し、裁判をする前に裁判所に申請できる暫定的な措置をいいます。
ネットでの誹謗中傷は裁判の最中にも次々に拡散されて権利が侵害されかねないため、裁判の判決を待つ余裕はありません。また、仮処分にも強制執行力が認められているため、至急の削除要請を認めさせる場合にはこの仮処分で対応する場合がほとんどです。
- 発信者情報開示
発信者情報開示とは、誹謗中傷にあたる書き込みを行った匿名の人物についての個人情報(住所・氏名・登録電話番号など)を、インターネットプロバイダに対して開示を求める制度です。
損害賠償を請求しようとしても、匿名では訴える先がわかりません。そのような場合でも、発信者情報開示を請求し、法的措置を取ることを可能にできます。
総務省が紹介する「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」より、(関連書類がダウンロードできます。
- 集団訴訟もできる
特定の属性を貶めるような内容をまとめたサイトや、多くの人の名誉を毀損する内容を掲載して衆目を集めようとする情報サイトなど、悪質なメディアも数多く存在しています。そのようなメディアの被害者は複数にわたることも珍しくありません。
このようなケースでは、集団訴訟がおすすめです。集団訴訟であれば訴訟費用を頭割りにでき、訴訟のコストを下げられます。また、複数の被害者で証拠を持ち寄ることで訴えをより強固にすることが可能です。
集団訴訟を検討する際は、被害者と弁護士をつなぐプラットフォーム『enjin』を利用するとスムーズです。
③警察に相談する
誹謗中傷は、刑法上の犯罪にあたる場合もあります。主に対象になるのは次の2つです。
これらの罪で立件し、加害者に刑事罰を望む場合は、証拠を用意のうえで警察に被害届を提出しましょう。
ただし、刑事告訴では金銭的な補償があるわけではないことに注意が必要です。不法行為に対する損害賠償請求については民事の範囲になるため、警察は関与しません(
民事不介入の原則)。
また、プライバシーの侵害は刑法上の規定がなく、民事訴訟の対象になります。警察に届け出られるのは、名誉毀損か侮辱での立件が可能な場合に限られます。
なおネット上での誹謗中傷に対しては、町の警察署ではなく、各都道府県のサイバー犯罪相談窓口に連絡する必要があります。ネット上の犯罪は立証が難しく、専門家を抱えるサイバー犯罪課でなければ対応できないためです。
各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口の連絡先は、下記リンクを参考にしてください。
都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧
警察に被害届を提出する際の注意点は以下の記事で詳説しています。相談前に一読しておくとよいでしょう。
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2.誹謗中傷に当たるのはどんなこと?法律から見る4つの条件
以下では、これまで触れてきた誹謗中傷の法的な問題点を詳しく解説します。
①他人の名誉を毀損(きそん)する
誹謗中傷行為のほとんどが当てはまるのが
名誉毀損です。
名誉毀損とは、「事実が本当か嘘かに関わらず、『この人はこういう人だ』と他人に言いふらし、その人の社会的地位や信用を傷つけること」を指します。
侮辱との違いは、「真偽を客観的に確かめられるような事実」を持ち出していることです。過去の発言や行為を持ち出してくる場合は名誉毀損にあたります。
「本当のことを言っているのになぜ罰せられるのだ」と開き直る加害者も少なくありません。しかし、
本当であれ嘘であれ、人の社会的な評価を下げようとする発言は犯罪にあたり、厳しく罰せられることがあるということです。
名誉毀損は民法上の不法行為に該当するため損害賠償請求ができますが、加えて刑法上の名誉毀損罪もあります。
ただし刑事告訴の場合は時効があり、
告訴の時効が「犯人の特定ができてから6ヶ月以内」と定められています。
②他人を侮辱する
刑法上の
侮辱の定義は、「事実を持ち出さなくとも、人の社会的地位や信用を傷つけるような内容を他人にいいふらすこと」です。これは具体的な内容を含んでいなくても成立します。
名誉毀損が「真偽を客観的に確かめられる内容(過去の言動など)を持ち出す」行為なのに対して、侮辱に当たるのは
性格や人格のような真偽を確かめにくい部分を攻撃すると言えます。
名誉毀損と同じく、民法上の不法行為として損害賠償を請求できるほか、刑法上では侮辱罪として刑事告訴が可能です。
③他人のプライバシーを侵害する
プライバシーの侵害は、現状では刑法上の規定はなく、行えるのは民事訴(損害賠償請求)のみになります。
プライバシーの権利は憲法13条を根拠とする、いわゆる「新しい人権」のひとつです。人に知られるべきでない個人情報をコントロールする権利は、国民誰しもが持つ、冒されてはならない権利と認められています。
インターネット上の誹謗中傷に対する人権意識は高まりを見せています。
2017年度世論調査内の「インターネットによる人権侵害」lに対する問題点として、「他人を誹謗中傷する情報が掲載されること」を挙げた人の割合が62.9%と最も高く、次いで「プライバシーに関する情報が掲載されること」を挙げた割合が53.4%にのぼりました。回答者年齢層は18~29歳から50歳代でもっとも高くなっており、幅広い世代の関心を集めています。
④他人の権利を侵害したら、損害賠償を負う
これまでもたびたび「損害賠償を請求できる」という旨を紹介してきました。これは、民法に規定のある
「不法行為に対する損害賠償」によるものです。
この法律で定められているのは、「他人の権利を侵害した者は、それによって被害者の受けた不利益を賠償する責任がある」ということです。これは、これまでに紹介した
刑事罰上の名誉毀損罪や侮辱罪が確定しているかとはまったく別に判断されます。したがって、「名誉毀損で民事訴訟を起こして損害賠償は請求するが、刑事告訴までは起こさない」という判断も可能です。
また、損害賠償請求にも時効があるため、留意が必要です。
- 損害と加害者の存在を知ってから3年
- 不法行為から20年間
この2点のうち、どちらか早い方が訪れた時点で時効が成立します。
4.まとめ
- ウェブ上での誹謗中傷に対しては、相手が削除する前に証拠を残しておこう。該当の発言やプロフィールページのURL、スクリーンショット、ウェブ魚拓などが有効
- 弁護士に相談すれば、誹謗中傷にあたる発言や記事の削除を求めたり、損害賠償を請求したりするのがスムーズに。法的拘束力のある形での削除要求や、発言者の情報開示も可能になる
- 名誉毀損・侮辱は民事の損害賠償請求だけでなく、刑事罰の対象にもなる。刑事告訴を検討する場合は、警察のサイバー犯罪相談窓口へ
おわりに
いわれのない誹謗中傷は誰であっても許せないものです。ネットの拡散力や匿名性に怖気づく必要はありません。立派な犯罪・人権侵害であり、訴えることも可能になっています。弁護士や警察に相談し、迅速な対処を心がけましょう。
さまざまな人に対して誹謗中傷を行う悪質な相手に対しては、集団訴訟も検討してみてはいかがでしょうか。
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