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労災認定の種類と条件は?受けられる5つの補償とその申請方法を解説

投稿日時 2018年12月20日 17時30分
更新日時 2018年12月20日 17時30分

この記事は以下の人に向けて書いています。


  • 自分の抱えている問題が労災認定されるのかどうか知りたい人

  • 労災認定にはなにが必要なのか知りたい人

  • どうやって労災申請するかを知りたい人

はじめに

「労災」(労働災害)とは、仕事が原因で起こるけがや病気などの災害のこと。

労災が原因で働けなくなった場合、医療の補助などの名目で、厚生労働省から保険料の給付が受けられることになっています。

しかし、労災が認められるには一定の基準を満たす必要があり、様々な手続きが必要。また、基準を満たしているにも関わらず企業がこれを認めない、いわゆる「労災隠し」が問題になることもあります。

この記事では、労災による補償を受けるための基準や、会社が労災を認めない場合に取るべき対応などについて解説します。

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1.まずはここをチェック。労災認定の基準と補償の種類5つ



まずは、どんなケースが労災に当たるのかを見ていきましょう。あなたの被害と照らし合わせて、当てはまるかどうかをチェックしてみてください。

①労災認定に必要な2つの基準

労災かどうかを判断する大きな目安は、下記のふたつです。

・業務遂行性――被害の原因が仕事中に発生したものか
・業務起因性――被害の原因と仕事内容に関係があるか


以下、それぞれについて詳しく解説をしていきます。

  • 被害の原因が仕事中に発生したものか

    けが・病気・障害・死亡の原因が仕事中に発生したものかどうかを「業務遂行性」といいます。

    工場などで機械に巻き込まれけがをした、というケースが例としてあげられるでしょう。

    しかしそれ以外にも、通勤途中(出社・帰宅時)に発生した負傷だったり、勤務中のストレスによる心身の症状なども、「仕事中に起きたこと」とみなされます。

    いっぽうで、たとえば「休憩時間内に職場内でキャッチボールをしていて負傷した」「退社後に友人と飲みに行き、転んでけがをした」といったケースは私的な行為にあたるため、労災とはなりません。

    ただし休憩中であっても、社員食堂での集団食中毒などのようなケースは労災と認定される可能性はあります。

  • 被害の原因と仕事内容に関係があるか

    業務と傷病や障害・死亡の間に因果関係があるもの、つまり、けがや病気といった被害と仕事内容が業務の結果起こったものかどうかを「業務起因性」といいます。

    ポイントとなるのは、受けた被害が「仕事中に起こる可能性があると予想できるものか」ということです。

    例えば「通勤途中に自動車と接触した」「職場のパワハラによるストレスで摂食障害になった」といったケースは「仕事をしていれば起こり得ること」として、労災と適用される可能性が高いでしょう。

    しかし、たとえば「個人的なトラブルが原因で、通勤途中に知人から刺された」といった場合は、被害と仕事内容との関係性を立証することが困難なため、労災が認定される可能性は低くなります。


②認定されるとどうなる?受けられる保障の種類

労災認定が下りたあと、受けられる補償の種類には下記のようなものがあります。

項目 説明
療養補償 医療機関を受診する際、無料になる
休業補償 勤務できなくなったとき、給与の8割が貰える(4日目以降から)
障害補償 障害が残った場合、年金か一時金を支給
介護補償 介護を受けている場合、その費用を支給
遺族補償 遺族に年金または一時金が支払われる




2.どこに何を申請すればよい?ケース別・労災認定までのステップ




これまで労災が認められる基準や労災の種類について解説してきました。しかし、どの補償を受けるかによって、それぞれ申請する機関や必要な書類、タイミングが変わってきます。

この章では、先ほど紹介した補償の種類ごとに、申請の具体的なステップについて解説をしていきます。

①療養(治療費の補償)を受ける場合

労災が認定されると、病院での治療費が無料となります。

しかし、その費用の請求方法には

  • 治療そのものの給付
  • 治療にかかった費用の支給

の2通りがあり、それぞれ利用すべきケースと請求先に違いがあります。

それぞれについて、手順を紹介していきます。

  • 治療そのものの給付

    厚生労働省が治療費用を代わりに支払うという形での補償となります。

    この補償を受けるためには、まず労災指定病院という特定の医療機関を受診する必要があります。

    職場に怪我を報告した際に指示されるケースもありますが、そうでない場合は、厚生労働省の「労災保険指定医療機関検索」から、最寄りの病院を探すようにしましょう。

    窓口で「労災での治療である」ということを伝えて治療を受けた後は、病院からもらえる請求書に記入し、会社から証明をもらいます。

    あとは請求書を病院に提出すればOK。労働基準監督署の審査を経て労災が認定されれば、治療費が返還されます。

    注意点として、労災が認定されるまでの間、治療費を立て替える必要があります

    ただし労災指定病院の場合、全額の支払いではなく「保証金」として治療費の一部を支払う形となっていることが多いため、その点は安心してください。

  • 治療にかかった費用の支給

    緊急に治療が必要な怪我をした場合や自己判断で病院に行ってしまった場合など、労災指定病院以外の病院で治療を受けた場合は、支払った費用を後から請求するという形になります。

    このケースの場合、請求する相手は病院ではなく労働基準監督署。また請求書への証明も、職場と治療を受けた病院からの両方が必要となります。

    また、治療中に健康保険を利用していた場合は、労災認定後に、健康保険から労災保険に切り替える手続きが別途必要となります。

    以前までは健康保険で負担していた治療費を全額支払ってからでないと切り替えができませんでしたが、2017年からその必要がなくなりました。

    詳しい手続きは、保険証の「保険者名称」に書かれた団体へ連絡をしてみてください。


②休業補償

休業補償は、怪我や病気で仕事ができない間の生活費を支給してくれる制度で、休業補償給付傷病補償年金の2つがあります。

  • 休業補償給付

    休業中に、本来の給与の一部を国から支給するというもので、利用する際はせいきゅうしょに医療機関と会社の証明を得て、請求書を労働基準監督署に送る形となります。

    補償の金額は、おおよそ労災発生時にもらっていた月給の8割ですが、たとえば通勤中に信号無視をした結果事故を起こした場合など、本人に重大な過失があった場合は減額される場合があります。

  • 傷病補償年金

    治療の開始から1年6ヶ月が経ったあとも通院・入院を続けており、かつ生活上の介護が必要になる、仕事に復帰することが難しいといった、国が定める一定の基準を満たしている場合には、傷病補償年金が支払われます。休業補償給付と同時にもらうことはできないため、どちらか片方が支給されることになります。

    もし1年6ヶ月後も治療を続けているが、国の定める基準を満たしていない……という場合は、引き続き休業補償給付を申請する形となります。


    休業補償給付傷病補償年金は、いずれも「怪我や病気が治った時点」で給付が終了します。

    注意が必要なのは、この「治った」という言葉。これは完治して元通りになったという意味ではなく、「治療を続けてもこれ以上の回復が難しい状態」と定義されています。

    労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時(負傷前)の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなった状態をいい、この状態を労災保険では「治癒」(症状固定)といいます。
    引用元:厚生労働省ウェブサイト「傷病(補償)年金について」

    もし治療後も何らかの障害が残り、仕事や生活に支障をきたす場合は、次に紹介する傷害補償や介護保障を利用する形となります。

③障害補償

業務による怪我・病気が原因で、治療後も身体に障害が残った場合に行われる補償です。

国の定める障害の等級に応じて、障害補償年金、障害特別支給金、障害特別年金、障害補償一時金、障害特別一時金などが支払われます。

手続きをする際は、指定の請求書に会社と医療機関の証明をもらい、労働基準監督署に提出しましょう。

給付額は働いていた際の月給やボーナスを基準として計算され、2か月ごとに年6回にわけて支払われます。

またそのほかの制度として、一定期間分の給付金を前払いしてもらえる障害補償年金前払一時金、支給を受けていた人が亡くなった場合に遺族へ支払われる障害補償年金差額一時金をはじめ、義肢などの購入費や後遺症のアフターケア、子供の学費支援などといった様々な制度がありますので、状況に応じて利用の検討をしてみてください。


④介護保障

親族や民間企業から介護を受けている場合に、その費用を一定額支払うもので、下記の条件をすべて満たす場合に支給されます。

  • 一定の障害があり、常に、または時々介護が必要な状態であること
  • 現在、実際に介護を受けている状態であること
  • 病院や診療院に入院していないこと
  • 介護老人保険施設などの介護施設に入所していないこと

大雑把にいえば「病院を退院し、自宅で介護を行っている」という状態がおおむね該当するといえるでしょう。

請求の際は、指定の請求書に記入し、介護人の署名と病院の診断書をあわせて、労働基準監督署に提出します。

請求は1ヶ月、または3ヶ月ごとに必要となりますが、二回目以降は病院の診断書は必要ありません。

また、費用の支払いには上限があり、介護の状況によって変わってきます。

詳しくは厚生労働省のリーフレットを参考にしてみてください。

⑤遺族補償

仕事での怪我や病気で亡くなった場合、遺族に対して行われる補償です。

おおまかに遺族補償年金、遺族補償一時金、葬祭料、の3つがあります。

  • 遺族補償年金

    死亡者の夫または妻、および親族に支払われる年金で、支給額は亡くなった方の月給やボーナスに従って計算されます。

    受給するためには一定の資格が必要。資格者が複数いる場合は、それぞれで分配する形となります。

    資格者となる優先順位が最も高いのは、死亡者の妻・または夫。

    ただし妻が亡くなった場合は事情が異なり、夫が年金を受け取るためには追加でいくつかの資格を満たす必要があるため、注意してください。

    まず夫の場合、60歳以上であるか一定の障害が認められなければ、遺族補償年金の受給を優先して受けることができません。さらに、夫が55歳未満である場合は、受給対象そのものから外れます。

    申請の際には指定の請求書のほか、基本的に下記の資料が必要となります。

    死亡診断書など、被災者の死亡を証明する書類
    戸籍謄本など、被災者との関係を証明する書類
    所得証明書など、収入を証明する書類

    くわえて、受給資格を満たすために障害を証明する診断書が必要となったり、すでに遺族厚生年金などの支給を別途受けている場合はその支給額の証明書を提出しなければなりません。

    また別途申請することで、受給後1回に限り、一定期間分の前払いを受けることも可能です。

  • 遺族補償一時金

    先ほど説明した遺族補償年金について、受給資格を持つ遺族が一人もいない場合などに支給されるものです。

    資格者には配偶者や親族が含まれ、遺族年金と同じく、複数の資格者がいる場合は一定額を分配する形となります。

    申請には遺族年金と同じく、死亡診断書や戸籍謄本、所得証明書などが必要となります。

  • 葬祭料

    亡くなった方の葬儀の費用を負担するものとなります。請求書に企業からの証明を得て、労働基準監督署に提出する形となります。

    あわせて死亡診断書などが必要となる場合もありますが、すでに遺族補償年金や遺族補償一時金の請求を行っている場合は必要ありません。

    また社葬など、企業が葬儀を行った場合は、企業側に支給される場合もあります。


    このほか子供が学校や保育所に通っていた場合は、これらの費用を支給してもらうこともできます。


⑥その他の注意点

これまで紹介してきた請求をするためには、所定の請求書への記入が必要。

病院などでもらう以外に、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードすることもできます。何を請求するかで記入内容が細かく変わりますので、事前に請求の内容をよくチェックするようにしてください。

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3.会社が認めてくれない…労災認定がされなかった場合の対処法



職場で労働者に傷病が発生した場合、企業がスムーズな手続きを取らなかったり、手続きそのものを拒否したりすることがあります。違法ではありますが、労働者側もそれを知らないと言いくるめられてしまいます。

労災の相談や申請をした際、言われがちなケースについて説明します。


①会社の労災隠しは労基に相談を

企業は労災が発生した際、労働基準監督署(労基署)に報告する義務があるため、これを怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合には労働安全衛生法違反となり、罰則があります。

労働基準監督署が調査が入ることを嫌い、申請を避けるよう促される場合もありますが、鵜呑みにせず相談をするようにしてください。

ここではよく言われがちな拒否理由を紹介していきます。

  • 「アルバイトや非正規雇用は労災が申請できない」

    労災が申請できるのは正社員だけではなく、アルバイトやパート、非正規雇用でも可能です。給付内容にも差はありませんので、泣き寝入りせず申請をしてみましょう。

    これは労災の対象者が労働基準法で定める「労働者」となっているためで、定義にある「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」が対象となるからです。


  • 「会社が労災に加入していない」

    未加入でも労働者が直接、労基署に申請することができます。

    そもそも、労働者をひとりでも雇用している企業には、労働保険への加入が法律で義務付けられています。未加入で労災が発生した場合は、さかのぼって労働保険料が徴収されたり、追徴金が科されたりすることがあります。

    労災かどうかを最終判断するのは労基署なので、企業が「これは労災ではない」とすることはできません。

    これらのケースに遭遇したら、労基署に労災を申請する際、合わせて通報するといいでしょう。

    企業が労災に加入しているかどうかは、厚生労働省のサイトから確認することができます。気になる人はここから勤務先について調べてもよいでしょう。


②損害賠償・慰謝料を会社に請求できる場合も

実は労災とは別に、損害賠償の請求などで勤務先企業を訴えることも可能です。

給付金が出たとしても、不快な思いをしたことへの慰謝料や休職・退職による「逸失利益」(本来の業務を続けていれば得られたはすの利益)に相当する部分は支給されないからです。

この場合は、自身が「いつ」「どのような」被害を受けたのか、勤務との因果関係を含めて立証できることが必要です。訴える理由は、企業の「安全配慮義務違反」「使用者責任」などが挙げられます。

また、訴えを起こすには弁護士に依頼するのが最も確実ですが、費用がかかることは考慮しておきましょう。慰謝料や損害賠償と弁護士への相談料・着手金の額により、持ち出し分の負担の方が大きくなる場合もあります。


  • 集団訴訟も検討しよう

    被害が自分ひとりに限らなかったときは、労働者側が手を組んで、勤務先に対し集団訴訟を起こすこともできます。

    例えば複数の従業員が危険な作業に従事していたのに、勤務先が安全管理義務を怠っていたケースとしてアスベスト(石綿)被害の集団訴訟があります。

    ・事例

    米軍横須賀基地で造船や建築物のメンテナンスに従事していた作業員らが、アスベストを原因とするじん肺や中皮種を発症。これらは米軍の粉じん対策が不十分だったためとして、一部は集団訴訟に発展。国を相手取り損害賠償を起こした。

    ・結果

    国の安全配慮義務違反が認められた上、米軍も損害賠償の一部を負担した。


【番外】労災が認められないことが不服なら、国を相手取って覆すことも可能

明らかな証拠や理由がありながら、企業や労基署が労災を認めないのに不服がある場合、判定を不服として訴訟を起こすという手段もあります

下記は労基署(国)を相手取り訴えを起こした例です。

  • 事例

    職場の同僚による集団いじめで精神障害を発症し、勤務先もなんら措置を取らなかったため退職したとして、労災で療養給付金を申請した女性が、労基署に「いじめはなかったので支給はしない」と認定されたことを不服として国を相手取り、行政訴訟を起こした。

  • 結果

    労基の調査で勤務先や同僚らがいじめを証言しなかったため「いじめはなかった」ことになっていたが、原告(女性側)が証拠を集めて裁判で立証したことにより事実が認められ、不支給の決定が取り消された。


会社を訴えるにはどんな方法があるかは、こちらの記事でも説明しています。


4.まとめ

  • 「業務中」であり「業務が原因」であれば申請可能。通勤途中のけがでもOK。

  • アルバイトやパート、非正規雇用でも労災は申請できる。

  • 労災が不支給と決定しても、正当な理由があれば訴訟を起こして覆すこともできる。

おわりに

労災で心身になんらかの傷病を負ってしまった場合、制度を知らないまま傷病を抱えた上に、なにも手当がもらえないのはつらいものです。

ただでさえ消耗しているときに煩雑な手続きをこなすのは大変ですが、きちんと申請できれば給付金が支給されるので、勤務できないときの助けになるでしょう。

せっかく労働者を守るものとして存在している労災制度。上手く利用して、しっかり療養しましょう。

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