サービス残業の告発方法は?3種の証拠と気になるポイントを解説

2018年10月24日 19:57:00労働問題

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 会社でサービス残業を強要されている人

  • 退職したくはないが、会社の業務体制を変えたい人

  • 労働基準法に通報するとどうなるのか知りたい人

はじめに

「サービス残業がなくならない!どうにかしてほしい」

そのようなときは、労働基準監督署に告発し、会社の調査を依頼することができます。

告発があった場合、労働基準監督官が会社を調査。労働基準法を違反していることがわかると、職場環境の改善指導を行ってくれたり、悪質な場合は事業者への刑事罰が課されることもあります。
その結果、サービス残業がなくなったり、これまでの未払い残業代が返ってくることもあります。

この記事では、告発をする際に必要となる証拠やその方法について説明していきます。

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1.告発前の下準備!まず用意しておきたいもの3つ



労働基準監督署は、告発すれば必ず動いてくれるというわけではありません。その通報が事実であるか、また緊急性の高いものであるかどうかを判断したうえで、調査をするかどうかを決定します。

そのため、まずは事前にきちんとした証拠を用意しておくことが大切。この章では具体的に必要となる3つの証拠について解説していきます。

①労働条件がわかる書類

まず必要になるのは、自分がどんな条件で働いているのかを説明するための書類です。

労働基準法という法律では、会社が労働者を雇う前に、どんな条件で雇うかを必ず書類で通知しなければならないと定められています。

具体的には、以下の内容を伝えなければなりません。

・労働契約の期間、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
・就業の場所・従事する業務の内容
・労働時間(始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間)や休日・休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
・賃金の決定・計算・支払いの方法、
・賃金の締切、支払の時期に関する事項
・退職に関する事項
(参考:求職者・労働者の皆様へ(改正)

これらの内容が記載された書類をまずは探しましょう。

  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 就業規則(従業員10人以上の事業所のみ)

などといった名称の書類に書かれていることが多いかと思います。

これらの書類がいずれも事前に渡されていなかったり、就業規則の場合は社員が閲覧できる状態でなかったりした場合は違法となり、会社は罰金を支払わなければなりません。

②実際の勤務時間がわかるもの

タイムカードやメールの送受信記録、日報など、何時まで会社で仕事をしていたのかわかる証拠を集めておきましょう。

タイムカードのコピーを用意できなかったり、定時で打刻するように強要されている場合は、業務メールを保存する、退社するときに会社の時計を写真で撮る、会社のPCのログイン記録を保存するなどの方法で、その場にいた証拠を自分で作っておくのもひとつの手です。

写真を撮ることさえ難しい場合は、退社した時間を一分単位で手帳にメモしておきましょう。

「21時30分退社」よりも、「21時32分退社」などと書いてあった方が、信ぴょう性が増します。必ず正しい退社時間を毎日記録するようにしてください。

③給与明細

給与明細書には、給料だけでなくその月の残業時間が記載されています。①の就業規則や雇用契約、①の雇用条件、②の残業の証拠と比較することで、サービス残業をしていた事実があるかどうかを確認することができます。

④補足:告発前に……会社のコンプライアンス窓口に相談してみよう

大規模な会社の場合、特定の上司の指示により強制的にサービス残業を強いられていることがあります。

その場合は、会社が設置しているコンプライアンス窓口や人事部などに相談すれば、社内調査が行われ、問題が改善されることも考えられます。

ただし、中小企業の多くではこうした手段はとれません。また、会社自体がサービス残業を強要している場合は、コンプライアンス窓口があっても、相談して改善してもらうことは難しいでしょう。


そうした場合は、労働基準監督署への告発を検討してみてください。


2.実際に告発する手順は?労働基準監督署への連絡方法3つ



実際に集めた証拠をもとに、労働基準監督署に告発(申告)するには、どんな方法があるのでしょうか。

その方法には、以下の3つがあります。

①メールを送る
②電話をする
③直接訪問する

それぞれ解説していきましょう。


①メールを送る

労働基準法などの違反がある会社の情報を 労働基準関係情報メール窓口に伝える方法です。電話をしたり直接訪問するよりも手間が省け、24時間対応しています。

ただその一方で、メールでの連絡は「情報提供」として扱われます。寄せられた情報はあくまで「参考」程度にとどまるため、注意してください。

情報提供をする際には、

  • 職場の正確な住所と名前(ビルの階数や支店名なども正確に書いてください)
  • 問題の背景や具体的な内容
  • 情報提供の通知を職場にしてよいかどうか

の3つを書くよう心がけましょう。
特に最後の項目については、事前に事業所に通知することにより、労働基準監督署が会社にタイムカード以外の資料を請求することができるようになります。

  • 「匿名だが、情報提供内容(メールの内容)を明らかにしてよい」
  • 「匿名だが、情報提供があったこと(メールがあったこと)のみ明らかにしてよい」
  • 「匿名の上、メールがあったことも明かさないでもらいたい」

の三項目から選べますので、必要に応じていずれかを申し出るようにしましょう。

より具体的な内容は、下記の資料を参考にしてみてください。


②電話をする


各地域の労働基準監督署に直接電話で通報をする手段です。

下記のリストから、(職場or自宅)最寄りの労働基準監督署に連絡をしましょう。


受付時間:平日 8:30~17:15

しかし、この手段も、「情報提供」にとどまることがほとんどですので注意してください。

③直接訪問する

労働基準監督署が調査に動いてくれる可能性が一番高い方法が、監督署に直接訪問して告発するやり方です。

集めた証拠をもって、最寄りの労働基準監督署hに、受付時間の平日の8時30分~17時15分の間に訪問しましょう。

また、この方法が一番可能性があるとはいいいますが、すぐに動いてもらえるとは限りません。ほかの重要案件を先に調査するために、調査開始が遅くなることもあります。

そのため、あくまでも「可能性が高い方法」だと思っていてください。

また、直接出向くと、通報したのが自分だとバレるおそれがあるのでは……と心配になる人もいるかもしれません。

基本的に、労働基準監督署が通報者の名前を会社に明かすことはありません。また仮に職場にバレたとしても、正当な理由で通報した労働者に対し、会社が降格や減給をすることは違法となっています。

不安なときは、あらかじめ関係機関の相談窓口で相談してみてもいいでしょう。下記の記事で相談窓口を紹介していますので、参考にしてみてください。



3.これってどうなの?Q&Aで気になる疑問を徹底解説!



①告発をすれば、未払い残業代も帰ってくる?

未払い残業代が返ってくる可能性はありますが、確実ではありません。

労働基準監督署に告発すると、労働基準監督官が会社を調査し、労働環境に問題が発覚すれば是正勧告などをしてくれます。是正勧告とは、労働基準法に違反している部分を指摘し、直すように勧告することで、是正には期限が設けられています。

是正勧告を受けると、会社は指摘された問題を解決するために社内体制の改革を行うことになります。その結果、業務の改善が行われ、サービス残業がなくなったり、残業代がしっかりと支払われるようになるのです。

しかし、労働基準監督署は個人のケースに対応して指導しているわけではありません。

是正により今後の残業代については支払われることになりますが、これまでの未払い残業代がすべて支払われるかは不明瞭なのです。また、一時的に改善されるだけで、少し時間がたてば元の体制に逆戻りすることも考えられます。

未払いの残業代をすべて取り返したい場合は、自分で残業代を請求する方法が一番確実です。

詳しくは、下記の記事で解説しているので、参考にしてみてください。



②匿名でも告発できる?

申告はできますが、調査に動いてもらえる可能性は低くなります。
匿名の場合は、「告発」ではなく情報提供として扱われることがほとんどです。

告発して是正に動いてもらうには、実名で行い、緊急性や悪質性を訴えた方が確実でしょう。

二章で解説したとおり、労働基準監督署に実名で告発したとしても、会社側に告発者の名前が通知されることはありません。


③告発は法律違反にならないの?

なりません。正当な理由による労働基準監督署への告発は、労働基準法で認められた権利です。告発を理由に、解雇などの不利益な扱いをすることは禁止されています。

④転職に不利になったりしない?

告発したのがあなただと元の会社に知られてしまったとしても、次の転職には問題ありません。本人の同意がない状況で、その人の情報を他社に伝えることは、個人情報保護法で禁止されているため、元の会社は情報を漏らすことができないのです。

そもそも告発は、会社が労働基準法に違反していたときに行われます。

「うちの会社は法律違反をしていて労働基準監督署に調査された。その告発をしたのはあいつだ」と他社に伝えても、会社側の非を明らかにしてしまうだけです。


⑤告発したあとの流れは?

告発した後の流れは以下の通りです。

労働基準監督官は、強制的に会社に立ち入り調査(臨検)する権限と、法律違反をしていることが判明すれば、逮捕・送検することができる権限を持っています。

そのため、悪質な事業者を逮捕することができるのです。


(引用: 厚生労働省「労働基準監督官の仕事」

⑥動いてくれなかった場合はどうしたらいいの?

労働基準監督署には様々な会社の情報が寄せられたり、告発を受けているため、あなたの会社の調査が開始されるまで時間がかかったり、情報不十分などの理由で調査をしてくれないこともあります。

労働基準監督署が動いてくれなかった場合は、

  • 自分で会社を訴える
  • 告訴状を労働基準監督署に提出する

という2つの方法があります。

  • 自分で会社を訴える
    「未払い残業代の請求」という方法です。

    請求する方法は、①個人訴訟②少額訴訟③労働審判④労働訴訟の4つです。

    それぞれの違いはこちらで解説しているので、参考にしてください。

  • 告訴状を労働基準監督署に提出する
    確実に調査してもらい、事業者を書類送検してほしい場合は、告訴状を労働基準監督署に提出します。
    告訴状は自分で用意することもできますが、内容が複雑で、適切な法解釈や条文適用をしないと受理してもらえません。

    そのため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して、告訴状を作ってもらったほうが無難でしょう。

⑦費用はかかるの?

労働基準監督署への相談や告発はすべて無料です。


4.まとめ

  • サービス残業を労働基準監督署に告発するときは、証拠として①契約書類や就業規則②実際の業務実態がわかるもの③給与明細を必ず用意する

  • 労働基準監督署への連絡方法は①メール②電話③訪問の3種類。労働基準監督署へ直接訪問し、実名で告発する方法が、一番動いてもらえる可能性が一番高い。

おわりに

いかがでしたか。会社を告発するときは、違法性が客観的にわかるように、しっかりと証拠を保管しましょう。

また、実名での告発は勇気が必要ですが、労働基準監督署に動いてもらいたいときは、実名で告発をしてください。

この記事が皆様のお役に立てば幸いです。


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