会社を訴える方法は?4つのケース別に必要な事前準備と相談先を紹介

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投稿日時 2018年12月13日 19時12分
更新日時 2019年09月05日 11時50分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 会社からひどい扱いを受け、訴えたいと思っている人

  • 会社を訴えるために必要なものや窓口を知りたい人

  • 現在の職務環境を改善したいと思っている人

はじめに

セクハラ・パワハラ・残業代の未払い……

さまざまな理由で会社を訴えたいと思ったとき、まず何をすればよいのでしょうか。

あなたが受けた被害の内容や目指す結果によって、必要となる準備や手順は変わってきます。

この記事では会社を訴える際に必要な事前準備と、ステップについて、ケース別に解説します。

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1.会社を訴える前の事前準備!被害内容ごとに証拠を集めよう



まず何よりも重要になるのは証拠

起きた出来事の内容や時系列を証明できる記録をなるべく多く用意することで、被害を認めてもらいやすくなります。

具体的にどのような証拠を集めるべきなのか、ケース別に紹介していきましょう。

①長時間労働・未払い残業代











②ハラスメント(セクハラ・パワハラ・モラハラなど)











③労働災害(怪我など)






④不当解雇











2.会社を訴える方法は?トラブルを解決する相談先2つを解説



証拠を集めたら、会社を訴えるための本格的な行動を起こしましょう。

会社とのトラブルを訴える窓口は、大きくわけて総合労働相談コーナー弁護士の2つ。それぞれの機関が行ってくれる対応は、下記の表の通りです。

総合労働相談センター ・行政指導
・都道府県労働局長による助言・指導
・あっせん
弁護士 ・会社との示談交渉
・労働審判
・訴訟

以下、詳しい対応の内容や相談方法を解説していきます。あなたが会社に何を求めたいのか、あなたの目的にあった相談窓口を利用してください。

①総合労働相談コーナー(労働基準監督署)への相談する

総合労働相談コーナーは、労働に関するトラブルの相談を受け付ける窓口で、全国の労働基準監督署や、各都道府県の労働局に設置されています。

これらの施設は、会社が法律を守って雇用を行っているかどうかを監視しており、調査、是正勧告といった改善業務も行っています。

もしあなたが、「会社の環境を改善させたい」と思っているのであれば、こちらの窓口を利用しましょう。

総合労働相談センターは、メール、電話、直接訪問をすることで利用でき、利用料は無料です。

ただし、メールや電話での利用は情報提供として扱われることがほとんどなので、なるべくであれば直接訪問するようにしましょう。

その場合でも、確実に調査をしてくれるわけではありません。重要度が高い案件が優先されるためです。

できるだけ証拠を集め、悪質性をきちんと説明できるようにしておくことで、調査してもらえる可能性を少しでも高めるようにしてください。

メール 労働基準関係情報メール窓口
電話・直接訪問
全国労働基準監督署の所在案内
受付時間:平日 8:30~17:15


以下、相談を受けた労働基準監督署が行ってくれる活動についてご紹介します。

  • 行政指導

    会社を調査した結果、法律違反が認められた場合は、問題点の是正勧告や改善指導を行ってくれます。

    問題解消が確認されれば、指導は終了します。

    一方、あまりにも悪質なケースの場合は、労働基準監督官が逮捕・送検を行うこともあります。

    行政指導の場合、会社には告発者が誰なのか伝えられないため、誰が告発したのかバレることはありません。自分が告発したと知られたくない場合は、行政指導をお願いする方法が無難でしょう。

  • 都道府県労働局長による助言・指導

    総合労働相談コーナーでトラブルを相談・告発すると、都道府県労働局長による助言・指導を提案されることがあります。

    これは、都道府県労働局長が当事者に問題点を指摘しアドバイスすることで、当事者間での話し合いによる自主的な解決を促す方法です。

    個別ケースに対応する方法のため、個人名が会社側に伝わってしまいますが、労働問題の専門機関が間に入って問題を指摘してくれるため、スムーズに問題が解決することもあります。


  • あっせん

    助言・指導で解決しない場合は、あっせんへ移行します。

    あっせんとは、労働問題の専門家である紛争調整委員会が当事者同士の主張を聞き、話し合いによる解決を図る方法です。

    企業と被害者であっせん期日を決めて紛争調整員、企業、被害者の三者で話し合いを行い、当事者どうしが承諾すれば紛争が解決します。

    しかし、あっせんに相手がそもそも参加しない、あっせん案にお互いが納得できない、といった場合は、あっせんは打ち切りとなるため、ほかの手段を改めてとる形となります。

②弁護士に相談する

慰謝料や未払い残業代など、「相手にお金を請求したい」場合は、弁護士に依頼しましょう。

弁護士にできることは、訴訟だけではありません。話し合いや労働審判といった別の方法もあり、訴訟を起こすよりも早く解決ができる場合があります。

一方で、労働基準監督署と異なり、相談料・着手金・報酬金・実費といった費用が発生するため、自身の懐事情も考えて依頼を検討しましょう。

  • 弁護士探しのポイント

    弁護士を探すときは、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

    自宅または職場の最寄りに事務所がある
    性格的に合う相手
    労働問題を扱った経験がある、もしくは労働問題を専門に扱っている

    弁護士への依頼でできることは、以下の通りです。

  • 会社との示談交渉

    法律の専門家である弁護士が入ることで、すぐに問題が解決できることもあります。しかし、会社が労働者側の主張を受けいれなかったり、事実を否定したりして、交渉が決裂した場合は、労働審判へ移行します。

  • 労働審判

    労働審判は、裁判所が間に立って労働者と企業の話し合いを行う制度です。あっせんとよく似ていますが、こちらは企業側が呼び出しに応じる義務があるという点で異なります。

    さらに、労働審判の結果を双方が納得して受け入れた場合、企業側には結果の内容(賠償金の支払いなど)を実行する義務が発生します

    もちろん、相手が納得せず訴訟に持ち込むというケースもありますが、あっせんと比べて解決されやすい方法と言えます。

  • 訴訟

    最終手段は民事訴訟です。会社に対してパワハラ・セクハラなどに対応してくれなかったことに対する賠償金や未払いの残業代を取り戻すための訴訟を起こしましょう。

    特に訴訟で大切なのは、客観的に見て、会社に非があるとわかる証拠が用意できるかということ。

    裁判所はあくまで、客観的かつ公平に、法律的な判断を下します。

    そのため本当に被害を受けていても、第三者(裁判官など)にそれがわからなければ、訴訟に負けてしまうことがあるのです。できる限り、証拠を集めましょう。

③そのほか、頼りになる相談先

これまで紹介した2つ以外にも、相談先はあります。いくつか紹介していきましょう。

  • 職場のトラブル相談ダイヤル

    全国社労保険労務士連合会が運営している相談ダイヤルです。1080円~1万800円であっせんによるサポートを受けることができます。

    電話番号 0570-07-4864
    受付時間 平日:11時~14時

  • みんなの人権110番

    セクハラやパワハラ、プライバシー侵害など、人権問題全般を扱っている相談窓口です。
    悪質な場合は刑事事件として告発してくれることもあります。

    電話番号 0570-003-110
    受付時間 平日:8時30分~17時15分

  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)

    男女雇用機会均等法や育児介護休業法に関係する労働問題を扱っている相談窓口です。

    場合によっては、行政指導も行ってくれます。

    各都道府県の労働局で相談を受け付けています

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3.これってどうなの?気になるポイントQ&A



これまで紹介してきたなかで、様々な疑問が出てきたかと思います。

この章では、気になるポイントについて、疑問を解消していきます。

Q.会社は「長時間労働しても問題ない」と言っているが、本当?

勤務時間に関わらず一定時間を働いたとみなされる裁量労働制など、長時間労働が認められている制度は確かに存在します。

しかし、こうした働き方はごく一部にすぎません。また仮にこうした制度を定めていたとしても、健康を損なうほどの長時間労働をさせた場合は違法とみなされる可能性もあります。

また一部のメディアでは「36協定」と呼ばれる契約を理由に長時間労働が問題ないとしているものもありますが、これも間違いです。

36協定とは、会社と労働者との間で結ぶ労働協定のこと。

協定を結ぶことで労働者に残業をさせることができますが、それにも月45時間以内という上限が定められています。

例外として、残業時間の上限を伸ばす「特別条項」というものがありますが、これも無制限に働かせてよいわけではなく、年6回(6ヶ月)までという制限があります。

より詳しい内容は、こちらの記事を参考にしてください。


Q.労働基準監督署に告発したことがバレてしまうことは?

労働基準監督署への告発は、会社には誰が通報したのか開示されません。そのため、バレることはないのですが、「この内容ならあいつしかいない」という推測でバレることもあるかもしれません。

しかし、会社は労働基準監督署への告発者に不利益を与えてはいけないというきまりがあります。

そのため、もしもバレてしまったとしても、それを理由に減給や左遷を行うことは禁じられています。とはいえ心情的にいづらいという場合は、告発前から転職の準備をしておきましょう。

Q.会社を訴えると、転職の際に不利にはなるのでは?

前の質問のとおり、労働基準監督署への告発は匿名のため、ほかの会社に訴えた事実が残ることはありません。

また訴訟を起こした場合であっても、裁判の内容などを見られるのは弁護士や当事者など、一部のものに限られます。

また、仮に訴えられた側の企業が個人情報を勝手に漏らして悪評を流した場合、名誉棄損となり、会社が罪に問われることにもつながります。

訴訟や告発が転職の不利となる可能性は高くないと言えるでしょう。

Q.弁護士費用が払えない……。どうにかならない?

弁護士費用が不安なときは、法テラスの立て替え制度を確認しましょう。

法テラスが設けている基準に合えば、着手金や実費などの弁護士費用を立て替えてくれます。

基準は収入が一定以下で勝訴の見込みがあり、報復感情や宣伝目的ではないこと。

詳しくは、法テラスのウェブサイトを確認してください。


4.まとめ

  • 会社を訴えたいときは、自分の被害を客観的に証明できる証拠が必要

  • 会社自体の改善をしてほしいときは労働基準監督署に相談する。労働基準監督署は、行政指導、都道府県労働局長による助言・指導、あっせんを行ってくれる。

  • 会社へ何らかの損害賠償請求をしたいときは、弁護士に依頼する。

おわりに

会社を訴えるためには、勇気と行動が必要です。

まずは相談から始めてみましょう。

この記事が、皆さんのお役に立てば幸いです。


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