この記事は以下の人に向けて書いています。
- 親から土地を相続して、処分に困っている人
- 「土地を購入する」という不審な営業電話がかかってきた人
- 土地を購入したが、事前に聞いた話と違い困っている人
はじめに
「山林の中に土地をもっているが、管理も大変だし売却したい……」
そう考えている土地のオーナーもいるかもしれません。
しかし「あなたの土地を買わせてほしい」という業者が現れた場合、契約書のサインはちょっと待つべきです。
それが“
原野商法”と呼ばれる詐欺かもしれないからです。
「
原野商法」とは、山林など、価値のない不動産を高値で買わせる詐欺のこと。最近になり、土地を買いたいと偽って契約し、気付かないうちに別の土地を買わせるという
原野商法の二次被害が増加しているのです。
この記事で、その手口や対処法などを見ていきましょう。
1.「売る」「買う」「調べる」が危ない!原野商法の手口3パターン
原野商法の手口には、主に
①土地を売るパターン
②土地を買うパターン
③土地を調査するパターン
の3つがあります。
以下、それぞれくわしく説明していきます。
①土地を売るパターン
「将来必ず値上がりする」「道路や駅ができる」などといった嘘の説明で、ほとんど価値のない山林や原野を高額で売りつけるやり方です。
1970年代バブル最盛期のころ、不動産投資がブームとなる時期に広まりました。
手口としては、まずセールスマンが電話や訪問で連絡をとり、「都市開発が予定されている」「ゴルフ場の開設予定地区である」などとして、
将来的に土地が何倍もの価値になるという売り込みを行います。
説得力を出すために、それらしいパンフレットを作ったり、さらに開発予定を取り上げた新聞記事を捏造したものを用意することも。
最近では「太陽光発電の土地」、「民泊利用」、「仮想通貨のデータセンター設置」というような説明をすることもあるようです。
しかし、実際には都市開発などの予定はありません。結果として家も建てられないような不要の土地を所有することになってしまい、
売ろうにも買い手がつかないため困ることになります。
②土地を買うパターン
「
使えない土地を売る」というスタンダードな原野商法に対し、最近被害が急増しているのが、この「
土地を買う」パターンです。
ターゲットとなるのは、「
過去に原野商法で土地を買った人」。買わされた価値のない土地を「
高額で買い取れる」と持ちかけ、さらにお金をだましとる手口です。
詐欺業者は、はじめ「あなたの持っている土地を高額で買い取らせてほしい」といって近づいてきます。その際に、買い取りたい人がいると信じさせるために、
買付証明書という書類を作ってくる場合もあります。しかし、この証明書は
土地を買うことを約束するものではなく、契約したという根拠にもなりません。
こうして土地を売る気にさせたあと、「税金対策などのために、いったん別の土地を買ってほしい。あとで買い戻す」などとして新たな土地の購入を勧め、その後に連絡がとれなくなってしまいます。
あとに残るのは、ふたたび買わされた無用な土地だけです。
③土地を調査するパターン
同じく、すでに土地を持っている人をターゲットにしたパターンに、「
土地を売るために調査や測量が必要」として、その手数料だけをだましとるものもあります。
土地の所有者にくわえて、
両親が購入した土地を相続したが、実際にどこにあるかも把握していないという人を狙うこともあります。
「買い手に紹介するために、調査や測量をさせてほしい」といったうえで費用を請求し、その後連絡が取れなくなるというのがありがちな手口。
他にも「土地の管理をしながら売却先を見つける」と言われ、管理費用や代行費用を請求されるというパターンや、「立て看板などをたてて広告する」として広告費を請求するパターンもあります。
2.怪しい話はこう見抜け!原野商法を見分けるチェックポイント
①「買い取り」のはずが「下取り」になっていないか?
「買い取る」という言葉に乗せられ契約したが、実は新たな土地を買わされているという“下取り型”の契約書になっていないか、確認してください。
「
高額で買い取るためには近隣の土地と合わせて売却する必要がある」などといった言い方をされても、信じてはいけません。
また土地の売却後、「
税金対策としていったんお金を預けてほしい」と言われ、その通りにすると後日なぜか
別の土地を購入したことになっているというケースもあります。
土地の売却の際に交わした契約書に、実は別の土地を購入するという内容が書かれており、気づかずに契約してしまった形です。
契約書をよくよくチェックし、口頭で聞いた内容が本当に書かれているかどうかを確かめましょう。また契約書を見せようとしなかったり、「
はやく契約しないと買い手がいなくなる」と急かす場合には、詐欺を疑ったほうがよいでしょう。
②「将来値上がりする」という言葉には警戒を!
本来の原野商法とは、価値のない雑竹林などを「のちのち高値がつく!」と言って本来の価格よりも高く購入させる手口です。
新幹線の開通予定計画書や、有名人のお墨付きなどと書かれたパンフレットなどを鵜呑みにせず、本当に今後価格が高騰する可能性があるのか、自分に必要な土地となるのかを冷静に判断しましょう。
国土交通省のサイトで近隣地区の売買取引を調べることで、本当に開発のために土地が買われているのかどうかなどを調べたり、
法務局の登記情報提供サービスを使うことで、付近の土地の売買履歴を調べたりするのも参考になります。
しかし、もっとも確実なのは、
「今は安いが、将来値上がりする」という言葉自体をそもそも信じないことです。
③クーリング・オフの説明があるかをチェック
クーリング・オフとは、特定の取引について、契約から一定期間であれば無条件で取引を取り消すことができる制度のこと。
土地の売買であっても、相手業者の事務所以外での売買契約をした場合はクーリング・オフが可能です。
参考記事:
クーリング・オフとは?詳しい内容や期間、手続きの方法を徹底解説!
また、契約を交わすまえに、業者はこうしたクーリング・オフができるかどうかについての内容を契約書に書き、事前に説明をしなければなりません。
そのため、「クーリング・オフが可能かどうか」を事前に聞いてみるのもひとつの手です。「できない」と言われた場合、悪徳業者の可能性が高いでしょう。
ただし、「クーリング・オフ可能」といっておきながら無視をする、返金に応じないというパターンもありえますので、100%安心してはいけません。あくまで目安にするくらいでいてください。
④相手がきちんとした業者かどうかを確認する
取引業者がきちんとした会社であるかどうかを調べる方法もあります。
- 宅建業者等企業情報検索システム
こちらに所在地や会社名を入力することで、その業者が国や都道府県から免許を交付された業者であるかどうかを調べることができます。
原野商法の対象になりがちな土地は「山林」などと呼ばれ、売買に必ず免許が必要というわけではありません。しかし、業者として免許を持っているかどうかは信頼できる業者かどうかの目安にはなります。
- ネガティブ情報等検索システム
同様に、こちらのサイトを使うことで、特定の業者が過去に行政処分を受けたかどうかを調べることができます。
会社名などを変えている可能性もありますので、こちらも100%信頼できるというわけではありませんが、やはり目安にはなります。
3.もし原野商法の被害にあったら…返金のための3つの手段
①営業保証金/弁済業務保証金からの弁済
会社が土地の売買などを行うためには、業務を開始する前に、保証協会や法務局にお金を預ける義務があります。
これを
営業保証金、または弁済業務保証金といいます。
万が一原野商法の被害にあった場合、これらのお金から、被害額を返してもらえる可能性があります。
そのためにはまず、お金を業者から預かっている
保証協会か
供託所のいずれかに、書類による申立をする必要があります。請求が認められれば、必要に応じて支払いがなされます。
しかし、この制度が受けられるのは、相手が本当にきちんとした免許を持っていた場合のみです。
こうした制度が利用できない場合、ほかの方法で解決をはかっていくしかありません。
②クーリング・オフの主張
購入の契約をしてからまだ日がたっていなければ、クーリングオフできるかを確かめましょう。
クーリングオフとは
一定の期間内であれば契約を一方的に解除できるという制度です。
一定の書式にもとづき、契約を解除することを書面で通知することで解約が可能です。
クーリングオフに関する詳しい記事は、こちらを確認してください。
③困ったときはどこに相談すればよい?
これまでに紹介したやり方がわからない場合や、どれも利用できそうにない場合は、各種窓口に相談してみましょう。
相談前には業者とのやり取りを残した記録やメール・電話履歴、実際に結んだ契約書を手もとに用意しておくとスムーズに話を進めることが出来ます。
- 国民生活センター(消費者ホットライン)
消費に関するトラブルに対応してもらえる消費者相談の窓口です。
国民生活センターに関する詳しいまとめは下記の記事も参考にしてください。
受付時間:地域・窓口によって異なる
電話番号:188
- 一般社団法人 日本不動産仲裁機構
不動産取引(売買契約・賃貸借契約の締結など)に関する無料の電話相談窓口を設けているほか、裁判外でトラブルの調停・和解をめざすADRという制度も実施しています。
受付時間:随時
ウェブサイトの申し込みフォームより連絡
- 弁護士に相談
法律に関することは、弁護士に相談するのが安心です。
また原野商法にあった被害者が業者に対し、集団訴訟を行った事例も実際に起きています。
4.まとめ
- 原野商法には「無用な土地を売りつける」というもの以外に、「土地を購入すると見せかけて別の土地を買わせる」「土地を売るための測量・調査といった名目でお金をだまし取る」といった手口も増加している。
- 「土地を高く買いたい」「将来高く売れる」というワードは信じないこと!土地価格を知っておくことや、相手業者が営業免許を持っているかどうかなども目安にはなるが、過信は禁物。
- 被害に遭った場合は保証協会より弁済を受けられる可能性はあるが、100%ではない。困ったときは各種窓口に相談すること。
おわりに
「買ったはいいが塩漬けになっている土地」を狙ってくる悪質な原野商法。
二次被害に遭わないためにも、少しでも高く売ってしまいたいという思いを抑え、家族や専門家に相談しながら売買を進めていきましょう。