この記事は以下の人に向けて書いています。
- エステを解約したいと思っている人
- エステのローンの支払いが厳しくなった人
- 契約したサロンに不信感がある人
はじめに
エステは、高額なコース料金が設定されているため、ローンを組んで契約する方もいます。
ここで知っておきたいのが、
中途解約時のローンの扱いです。
基本的に、
適切な手続きを踏めば、中途解約した場合はローンの支払いをなくすことができます。
しかし、タイミングによっては、手続きが複雑になったり、支払いを停止できなかったりします。
今回は、
エステを中途解約した場合のローンの扱いや支払いの停止方法などについて、詳しく解説していきます。
1.中途解約を利用するのはどんなとき?カードのローンを解約する方法は?
エステを中途解約する理由としては、「効果を感じられなかった」「担当者との相性が悪かった」「引っ越しなどで通えなくなった」などが挙げられます。
まずは中途解約のルールやローンの扱いについて、詳しくみていきましょう。
①契約から8日を過ぎてしまったら「中途解約」
エステサロンの場合、
法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、クーリング・オフが可能です。
しかし、
8日以上経過している場合は、クーリング・オフではなく、
中途解約を利用することになります。
中途解約とは、
エステを利用できる期間である「役務提供期間」内に、エステの契約を解約する方法です。
ただし、
中途解約は違約金などを支払ったうえで解約するルールなので、クーリング・オフと異なり、全額を返金してもらえるわけではありません。
なお、中途解約時にかかる違約金の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
②クレジットカードでローンを組んでいるときは?
エステ契約を中途解除した時点でまだクレジットカードでローンの支払いが残っている場合、基本的にサロン側がクレジットカード会社に解約を伝えるはずですが、念のため、自分でもカード会社に解約の旨を伝えておくと安心です。
ただし、
サロンが解約を拒んだ場合には、支払停止の抗弁を行い、カード会社に支払いの停止を申請する必要があります。
- 支払停止の抗弁
契約内容やサービスに問題がある場合、クレジットカード会社に連絡し、支払停止の抗弁を行います。
サロンが中途解約を拒むことは、契約内容に問題があることを示すため、支払停止の抗弁が認められる可能性が高いでしょう。
ただし、分割払い手数料を含めた総額が4万円未満の場合には、支払停止の抗弁が認められません。
支払い停止の抗弁を行う方法は、書面による申し込みになります。
書面は、日本クレジット協会のウェブサイトで提供している「支払い停止等の抗弁に関する手続きについて」を、利用してください。
③ローンの支払いを滞納すると、さまざまなデメリットがある
「中途解約できる期間が過ぎてローンだけが残り、ローンを返済できない」
「中途解約前にローンの支払いができず滞納してしまった」
といった場合には、どのような問題が起こるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
- 一括返済請求
カード会社からローンの残債を一括で返済するよう請求されます。
ローンを分割で返済できない状況で一括返済は困難でしょう。
この場合、次のような流れで事が運び、最終的に預金などを差し押さえられます。
基本の流れ |
概要 |
①内容証明郵便で督促状が届く |
確実に郵送したことを証明できる内容証明郵便で、ローンの返済を請求する督促状が届きます。 |
②ブラックリストに掲載される |
カード会社のブラックリストに掲載され、半永久的にカードを利用できなくなります。ただし、ブラックリストの規定はカード会社で異なります。 |
③裁判所に訴訟を提起される |
訴訟を起こされます。支払督促が届き、2週間以内に異議を申し立てなければ財産が差し押さえられます。 |
④強制執行(差し押さえ) |
給料や不動産、動産などの財産が差し押さえられます。 |
- クレジットカードの強制解約
クレジットカード会社から強制的にカードを解約されることもあります。つまり、カードを利用できなくなるのです。
一括払いで生活費などを支払っていた場合、それもカードで支払えなくなります。
すぐに解約されるわけではありませんが、督促を何度も無視をした場合は、強制解約されるでしょう。
このようなことが起きないように、中途解約できる期間中に契約を解除する必要があるのです。
2.契約期間切れで中途解約できない…ローンの「任意整理」で返済
中途解約は、契約期間中でなければ行えません。
例えば、契約期間が1年、分割回数が30回の場合、12ヶ月過ぎた段階で18ヶ月分の支払いが残っています。しかし、契約期間の1年が過ぎてからは中途解約できません。
中途解約ができず、ローンを支払えない場合は、どのように対処すればいいのでしょうか。
対処法としては、
任意整理が挙げられます。
任意整理の他にも、いくつかの対処法があるので、それぞれ詳しくみていきましょう。
①そもそも「任意整理」とは?
任意整理は、
残額を3年(一部例外で5年)で返済できるように、ローンの利息を減らしたり、計算し直したりする制度です。
ローンを組むと、信販会社やカード会社がエステサロンに料金を支払い、契約者は信販会社やカード会社に返済していく形式でお金が動いています。
任意整理を行うときは、基本的に弁護士に依頼して支払先のカード会社等に連絡してもらい、対応をお願いしてもらいましょう。
カード会社側としては、利息を減らしても、できるだけ返済される方がいいため、消費者と事業会社双方にメリットのある制度といえます。
②「任意整理」のメリット・デメリット
次に、任意整理のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきます。
- メリット
・月々の返済額を減らして日常生活への影響を抑えられる
・元金がなかなか減らない状況から抜け出せる
・周りの人に知られる心配がない
・督促が止まるため配偶者に知られずに済む
- デメリット
・弁護士費用が高く、結果的に完済するのと同等にお金がかかる可能性がある
・信用情報機関に情報が登録されて約5年間は新たに借り入れられなくなる
・事業会社との和解の条件が厳しい場合がある
上記のように、
任意整理にはデメリットもあるため、十分に検討することが大切です。
③「任意整理」以外の方法は?
任意整理の他にも、次のような対処法があります。
- 特定調停
将来かかる利息を免除し、3~5年で完済できるよう調整する制度です。
任意整理と似ていますが、こちらは裁判所を介してカード会社やローン会社と話し合います。
弁護士に依頼する必要がないため、任意整理よりも費用は抑えられますが、手続きに手間がかかり、督促状が届かなくなるまでにも時間がかかるため、周囲の人に知られる可能性があるので注意が必要です。
- 個人再生
裁判所を介して行う手続きです。
任意整理と特定調停よりもローンの支払額を減額できますが、再生計画案の提出の際に弁護士への依頼が必須となるため、手続き期間が長く、費用も高くなっています。
- 自己破産
一切の返済が不要になる手続きです。
しかし、収入に見合わない浪費があると、免責を受けられません。エステも浪費とみなされる場合があり、必ず自己破産できるとは限らないのです。
また、エステのローンだけで自己破産することは現実的ではなく、裁判所にも認められにくくなっています。
このように、手続きに長い時間と費用がかかることや、周囲の人にバレてしまいやすいことから、上記の3つの手続きは、エステのローン返済においては行われるケースが少なくなっています。
エステのローンだけであれば、デメリットが比較的少ない任意整理がおすすめです。
3.全額返金も可能?悪質なエステサロンには訴訟も検討しよう
これまでご紹介してきたなかで、できれば全額返金してもらえる「クーリング・オフ」を利用する方法が一番よいことがわかりました。
……
実は、クーリング・オフ期間が過ぎてしまっていても、全額返金してもらえるケースがあります。
それは、
契約書の内容や勧誘の内容に問題があるような悪質なケースです。
悪質なエステサロンに対する対応方法について、詳しくご紹介します。
①契約時に違法行為があれば、全額返金してもらえる可能性あり
契約時に違法行為がある場合、次のような方法で全額返金してもらえる可能性があります。
- クーリング・オフ
先ほどご紹介した通り、エステサロンにおけるクーリング・オフ期間は、法律で定められた契約書類を受け取った日から数えて8日以内。
そのため、契約前にお試し体験などをしていて、契約書類を受け取ったタイミングが遅かった場合、実はまだクーリング・オフの対象期間の可能性があります。
また、渡された契約書に不備があれば、「契約書は発行されていない」という扱いになるため、そもそも期限のカウントダウンが始まっていないと判断されるのです。
さらに、クーリング・オフ期間内に申し入れたにもかかわらず、サロンに「クーリング・オフできない」と言われ期限切れになった場合も、クーリング・オフをすることができます。
クーリング・オフの詳しいルールは、下記の記事を参考にしてください。
- 消費者契約法による取消権
契約時にサロンが重要事項に関して嘘を行ったり、不利な事実を隠したりしていた場合、消費者契約法による取消権を主張しましょう。
これは、法律で禁止されている勧誘行為を業者側が行った場合に利用できる制度で、そもそもの契約を取り消すことができます。
サロンによっては、強引な勧誘を行っているところもあるため、消費者契約法による取消権を主張できる可能性が十分にあります。
②返金に応じてくれないときの最終手段は民事訴訟
サロン側の違法行為をもとに、契約の解約・取り消しを求める場合は、法的根拠を示す必要があります。
こうした法的根拠を整理してくれる専門家としては
「国民生活センター」と
「弁護士」が挙げられるでしょう。
国民生活センターでは、相談へのアドバイスをもらえるだけでなく、専門家が間に入って当事者同士の話し合いによる問題解決を目指す
「ADR」を利用できます。
ただし、これはセンター側に「重大な消費者問題だ」と判断されたときにのみ使用できるルールのため、場合によっては使えないこともあり、注意が必要です。
そのため、
確実にサロンと交渉してもらいたいときは、弁護士へ依頼しましょう。
弁護士にサロンと交渉してもらっても、解約・取り消しに応じてもらえない場合は、
民事訴訟を起こすしかありません。
民事訴訟を起こすときは、別途、訴訟費用や弁護士費用がかかるので、あらかじめ弁護士に詳しく話を聞いておきましょう。
③費用倒れが心配…そんなときは「集団訴訟」を
「訴訟を起こしたい!」と思っていても、弁護士費用が高くつき返金額を割ってしまう「費用倒れ」が懸念される場合は、
集団訴訟を検討しましょう。
集団訴訟の場合、参加者全員で弁護士費用等を分担するため、個人で民事訴訟を起こすよりも少ない金額で訴訟を起こすことができます。
集団訴訟プラットフォーム「enjin」には、返金請求や集団訴訟の「プロジェクト」が豊富。
あなたの被害を報告することで、答えてくれる弁護士がいるかもしれません。
4.まとめ
- エステサロンの中途解約時にカードのローンが残った場合は支払停止の抗弁を行う
- ローンを滞納して返済できる目途が立たない場合は任意整理を検討した方がいい
- 悪質なケースでは期間が過ぎていてもクーリング・オフできたり消費者契約法による取消権を主張できたりする
おわりに
エステサロンを中途解約する際にローンが残った場合は、確実に返済することが大切です。
しかし、返済できない場合は、早めに任意整理を行う方がいいでしょう。
また、エステサロンが悪質な手口で契約を迫ったようなケースでは、全額返金も期待できます。状況に合わせて、ベストな方法で対処しましょう。
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