書き手:enjin編集部
関連キーワード:投資詐欺,大学生,投資,誘い,勧誘
この記事でわかること
- 大学生がどういう手口で狙われるか、そのリスク回避方法
- なぜ大学生が投資詐欺に狙われるか、その理由
- いざというときどこに相談すべきか、返金させる方法
はじめに
「USBメモリ1本に49万円」を投資させたり(※1)、「LINEでの架空投資話に125万円」を振り込ませたりする投資詐欺(※2)が、近年、大学生の間で横行するようになりました。
これらの投資や情報商材詐欺に勧誘するのは、同じ大学生仲間や高校時代の同級生など。
新入生が増えるシーズンに事情を知らない若者を狙って被害が多発すると言われていますが、通年で被害は発生しています。
なぜ、大学生が投資詐欺の被害者になりやすいのでしょうか。
この記事では、
「詐欺の実態と断り方」「被害にあった場合に頼れる、金融庁などの公的機関」を紹介します。
(※1・出典:
2015年6月21日・産経新聞『中大生、LINEで詐欺か 「架空投資」女子学生ら被害』)
(※2・出典:
2019年4月22日・PRESIDENT Online『"USB1本"を49万円で買った大学生の後悔 20歳以上の大学生が狙われるワケ』)
1.大学生を騙す投資詐欺その手口と実態は?
「必ず儲かる」。そんな言葉にだまされないために、
まずは投資詐欺の実態を知っておきましょう。
この章では大学生が狙われる理由や、よくあるな手口の流れについて紹介してきましょう。
①なぜ大学生が狙われる?ありがちな5つの理由
そもそも、なぜ大学生が狙われてしまうのでしょうか。
その理由を以下にまとめてみます。
あまり詐欺について詳しくないから
大学生はこれまで、詐欺にあって大金を失うという経験がなかったり、身近に被害者がいなかったりするケースが多く、実感がわきにくいと言えるでしょう。
世間のニュースでは多く報道されていても、その内容を注意喚起として受け取れていない可能性もあります。
よって、狙われる機会が多く、強引に言いくるめられやすくなってしまうのです。
はじめての一人暮らしで親の目を離れるから
大学生になると、親元を離れて初めて一人暮らしをするという人も多いはず。いざというときに「怪しい」と止める人がいないことが、詐欺師につけこむ隙を与えてしまいます。
成年となり、ローンやクレジットカードを一人で作れるようになるから
大学生のほとんどは在学中に成人を迎えます。その結果、親の同意なしで金融機関でローンを組んだり、クレジットカードをひとりで作れるようになったりするため、お金を騙し取りやすいのです。
特に2022年4月以降は、
成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる予定となっているため、大学入学直後からこうした被害によりあいやすくなるおそれがあるでしょう。
「夢のため」といった言葉に惹かれやすいから
大学生は、就職を含めた今後の人生について意識し始める時期。
自分の夢や、今後の人生の目標のため、
短期間で稼げるという詐欺の言葉に惹かれやすくなります。
将来に不安がある学生が多いから
「夢」と「不安」は表裏一体。
「このまま普通に就職できなかったらどうしよう」「いまの時代に安定した収入を得られるだろうか……」などと、不安を覚えている人もまた、詐欺師の言葉に騙されやすいといえます。
総括すると
「大金を自分の判断で動かしやすくなる」にもかかわらず、
「社会経験が少なく、知識が不足している」というアンバランスさにつけこむのが、大学生を狙った詐欺の特徴と言えるかもしれません。
②「情報商材」に「〇〇投資」……詐欺に使われやすい名目は?
投資詐欺と一口に言っても、さまざまな名目があります。
ここでは、ありがちな6種類をご紹介しましょう。
投資名目 |
内容 |
情報商材
|
投資用教材DVDなど。特定の情報や教育プログラムを購入させる |
仮想通貨
|
代理購入やICOなど。存在しない仮想通貨や嘘のICOに投資させる |
株式投資
(未公開株)
|
現物株取引、信用取引、IPO(新規公開株)など。未公開会社の株式を購入させるパターンもあります。 |
HYIP
|
High Yield Investment Programの略。高配当・高利回りを理由に仮想通貨での投資を促す。 |
先物取引
|
ある商品の価格が将来の決められた日に変動していても、あらかじめ決めた金額で売買できる取引。日経平均株価を商品にした日経225先物取引などがある。 |
不動産投資
|
戸建てや分譲マンションなど、特定の物件に投資させる |
もちろん、これらは一例にすぎません。
学生起業をすすめる名目での高額セミナーや情報商材の販売や、
オンラインサロンという形態を利用したものなど、さまざまな名目による詐欺が登場しています。
もしこのような詐欺の被害にあわれていましたら、被害者をへらすためにも情報をお寄せください。希望があれば、弁護士に相談することも可能です。
>>
情報商材詐欺の被害情報提供フォーム
③投資詐欺の手口と流れ
投資詐欺では初めて聞くような商品名を言われることもしばしばあり、判断に迷うときがあるかもしれません。
しかしどのような名目であれ、
手口にはある程度共通の流れがあります。
「怪しいな?」と思ったら、以下の流れに該当していないか確かめてみましょう。
手口①:勧誘
投資詐欺で最もよく見られるパターンが、友人や先輩からの勧誘です。
「投資に興味ない?」「絶対儲かる話があるんだよ」などと声をかけ、「一緒に会ってほしい人がいるんだ」と言ってきます。
その人物こそ、詐欺を働いている張本人です。
最近では、
SNSの広告を使ってセミナーなどに勧誘する、
マッチングアプリを使ってマルチ商法へ勧誘するといった、さまざまな経路から勧誘する手口も急増しています。
手口②:説明
実際にその人物に会うと、はじめは学生生活など他愛のないことを聞いてきたり、自分の失敗談や成功話を語ります。
しかし次第に「サラリーマンのような働き方ではお金に困る」など将来の不安を話しはじめ、解決策として
投資話を持ちかけてきます。
このとき「夢を叶えるため」「絶対に儲かるから」と言って、
情報商材や仮想通貨への法外な額の投資を要求してきたらほぼ間違いなく詐欺。
「先着○人」、「今だけの限定価格」などその場で契約するように急かしてくるのも、考える暇を与えない常套手段です。
手口③:支払
高額な投資に対して「お金がない」などと断っても、強引に学生ローンを組まされたり、金融機関でキャッシングしたりするように求めてきます。
「学生ではなく、居酒屋でアルバイトをしていると言って」など、嘘の経歴を書くようにアドバイスしてくるのも手口のひとつ。
未成年であっても
親のサインを自分で書かせるという悪質なパターンもあります。
契約をしても書類を渡してもらえない、もらったとしても書類に虚偽の内容がある、などもよく見られるケースです。
2.もしも詐欺にあってしまったときの、対処法2つ
投資詐欺は「高額な支払いをしたものの全然儲からない」とあとから気づくことが多いもの。とはいえ「自分で契約をしたのだから仕方がない」と泣き寝入りしてしまうのは、犯人の思うつぼです。
この章では、困ったときの相談先や対処法について解説していきましょう。
①関係機関に相談しアドバイスを受ける
詐欺を含むトラブルに巻き込まれた際、
ひとりで解決しようとするのは禁物。
「周りに知られたくない」「親に知られたくない」という心理を逆手にとった二次被害にあう可能性もあるからです。
まずは家族など、
身近に相談できる相手を頼りましょう。
その他にも、信頼できる相談窓口をご紹介していきます。
大学の相談窓口
大学によっては、詐欺や金銭トラブルなどの相談を受け付けている窓口を設けています。
いきなり公共機関や金融機関に相談するのは気が引ける、というときは利用してみてください。
金融サービス利用者相談室(金融庁)
金融庁が開設している
、金融・保険・投資・証券・仮想通貨サービスなどに関する質問や相談を受け付けている窓口です。必要に応じて相談員が電話で回答しますが、関係他機関の紹介などに留まり、仲介・あっせん・調停はできません。
※回答が必要な場合は、相談者の電話番号が必要です。
金融サービス利用者相談室 |
電話(事前予防) |
0570-016-812(IP電話は03-5251-6812)
平日10時~17時 |
電話(被害後) |
0570-016-811(IP電話は03-5251-6811)
平日10時~17時 |
FAX |
03-3506-6699 |
ウェブサイト |
ウェブサイト受付窓口 |
郵便 |
〒100-8967 東京都千代田区霞が関3-2-1 中央合同庁舎第7号館
金融庁 金融サービス利用者相談室 |
「株や社債をかたった投資詐欺」被害防止コールセンター(日本証券業協会)
日本証券業協会が設置している相談窓口です。未公開株や不動産などの投資話を持ち掛けられたら、こちらに連絡しましょう。
消費者ホットライン(国民生活センター/消費生活センター)
消費者ホットラインは、消費者問題全般のトラブル相談に対応してくれる相談窓口です。
国の公的機関である「国民生活センター」が運営しており、各都道府県に設けられている「消費生活センター」が相談を受け付けています。
消費者ホットラインに連絡すると、最寄りの消費生活センターにつないでくれるので、「困ったときには
188(いやや)に連絡する」と覚えておきましょう。
なお、直接各地の消費生活センターに相談することも可能です。
もしも188等に電話がつながらない場合は、国民生活センターの「平日バックアップ相談」も利用してみてください。
また、国民生活センターでは、事業者と消費者との間に立って積極的にトラブル解決を図る「あっせん」なども提供しています。
国民生活センターの業務や利用方法については、「
国民生活センター完全利用マニュアル!できること&事前準備を全解説」で詳しく解説しています。
②返金のために利用できる制度はこの2つ
とられてしまったお金を取り戻すための制度として、代表的な制度2つをみていきましょう。
振り込め詐欺救済法
振り込め詐欺救済法は、相手の口座にお金を振り込んでしまったときに使える手続きです。
いわゆる
「オレオレ詐欺」「還付金詐欺」といった犯罪被害者に向けた制度ではありますが、それ以外のケースであっても利用は可能です。
利用する際は相手の口座を管轄している金融機関に、「詐欺に使われた可能性がある口座なので凍結をしてほしい」と通報してください。
銀行 |
各銀行の詐欺被害者専用のホットライン
※全国銀行協会のウェブサイトに載っています。 |
そのほかの金融機関 |
各ウェブサイトの相談窓口
手続きには警察への被害届の提出も必要です。いったん連絡をした後に警察にも通報しましょう。 |
手続きの結果、口座が詐欺に使われたと認定された場合、加害者の口座を凍結したあとで返金手続きが行われます。
ただ、
必ずしも全額が戻ってこない、返金に数ヶ月以上かかるなどいくつか注意点があるので、注意しましょう。
民事訴訟
契約書の内容と実態が違うなど、契約上のトラブルに関することについては、民事訴訟によって契約の取り消しや返金・賠償金請求を行っていくこともできます。
ただしその場合は、専門知識を持つ
弁護士に依頼する必要があります。
初期費用として20万円以上が必要となることが多いため、被害額などに応じて検討するようにしましょう。
もし、自分以外にも同じ相手からの被害者が多い場合、
集団訴訟という手続きを利用することで、
ひとりあたりの費用負担を減らせる可能性があります。
3.投資詐欺の被害を予防するには?詐欺の「断り方」と「見分け方」
これまで、投資詐欺にあってしまった場合の返金方法や相談先について解説してきました。
しかし、これらの手段を使ったとしても、
必ずしもお金が戻ってくるとは限りません。
最も大切なのは、被害にあわないよう気を付けること。
ポイントを解説していきます
①こんなときどうする?勧誘されたときの断り方
友人や知人からの勧誘
前章でも紹介したように、投資詐欺では友人や知人の誘いから被害にあうケースが多発しています。
久しぶりに連絡してきた同級生が「直接会いたい」「自分の尊敬する人に会ってほしい」と言ってきたら要注意。「それは勧誘なの?」とはっきり聞くようにしましょう。
特にマルチ商法の場合、「目的を隠して勧誘する行為は
違法」となります。
また直接「投資に興味がある?」と聞かれた場合も、
はっきりNOと言うようにしましょう。
曖昧な返事をすると強引に話を進められ、「やっぱりやめる」と言いづらい雰囲気になってしまいます。
SNSなどからの勧誘
各種SNSを通じて
「投資に興味ありますか?」とメッセージを送ってくるアカウントは、基本的に無視するようにしてください。
しつこいようなら、ブロックをしましょう。
また、直接「投資」と言わなくても、「セミナーに来てほしい」などと言って呼び出し、言葉巧みに投資の契約を迫ってくるケースもあります。
この場合も、断る際には明確に
「必要ありません」ということを忘れないようにしてください。
断ったにも関わらず勧誘を継続したり、脅して契約させようとする行為は多くの場合、違法にあたるはずです。
また近年では、
マッチングアプリを使って勧誘をしてくるパターンも報告されています。会ってみたら勧誘行為だった……という場合もきっぱりと断るようにしましょう。
各種広告
Youtube、ブログ、そのほか各種SNSに掲載されている「副業」「投資」に関する広告。これらも詐欺であるケースが大半です。
基本的にはクリックせず、またクリックした場合も、セミナーや情報商材購入などの勧めは無視するようにしてください。
②こんなタイプに注意!怪しい勧誘にありがちな言動
友人や知人の紹介であった人に投資を進められた……。
そんな際に、怪しいかどうかを見分けるポイントについてまとめてみました。
お金持ちアピール
詐欺師は投資で成功しているとアピールするために、あきらかに高額なスーツや靴、時計などを身につける傾向にあります。SNSでひたすら高級な食事の画像を投稿し続けるタイプの人は警戒したほうがいいかもしれません。
知り合いアピール
投資やビジネスの有名人の名前を出し、「〇〇と知り合い」という言葉をすぐに出してくるのも、怪しい人の特徴です。やたらと顔が広すぎる、という人にも注意するようにしましょう。
おごってくれる
打ち合わせなどで使った喫茶店代などを詐欺師は全部出してくれます。小さな恩を積み重ねることで、契約を断りづらくさせるためです。
断定的な言い方をする
突然の投資の話に、最初は誰もが疑うもの。
詐欺師はそうした心理をよく理解しているので、
「年○%必ず儲かる」「絶対に元が取れるよ」「努力した人はみんな成功している」などと断定的な言い方をよくします。
こうした勧誘はそもそも
違法にあたることが多いため、信用しないほうがよいでしょう。
また「このままでいいの?」とプライドを刺激するような挑発的な発言をしてくることもありますが、真に受けないようにしてください。
4.まとめ
- 大学生はだまされやすいと犯人に思われている。いつどこでターゲットになるかわかりません。
- 友人からの投資話、SNSやYoutubeの誇大広告には近づかないようにしよう。
- もし引っかかってしまったら、ひとりで悩まず大学や専門機関に相談を。
おわりに
大学生を狙った投資詐欺はさまざまな手口と名目があり、今も絶えず発生しています。
「ここでお金を払えば本当に儲かるかも…」と思うようなものはほぼ詐欺ですので、この記事を参考にきっぱり断れるようにしてください。
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