アーティストの逮捕で購入した楽曲が配信停止に…訴訟はできる?

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投稿日時 2019年03月25日 17時14分
更新日時 2019年03月26日 18時46分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 音楽配信サービスや電子書籍などのコンテンツを普段から利用している人

  • 突然、配信サービス停止でコンテンツが利用できなくなったことがある人

  • アーティストや俳優の逮捕でコンテンツが利用できなくなるのはおかしくない? と思っている人

はじめに

さっきまで自分の端末の中に入って聞けていた曲が、突然聞けなくなる。
購入した電子書籍が突然サービスを停止して、消えてしまった。

デジタル配信やダウンロードで買切ったり、サブスクリプション(定額制)で楽しむサービスが台頭し、コンテンツは紙やCDなどのメディアで自分の手元で物理的に管理することがなくなってきました。

しかしその反面、サービスの停止や、アーティストの不祥事による配信元の提供自粛で、消費者側になんの落ち度もないのに、突然購入したコンテンツを利用できなくなることも発生しています。

最近では、音楽グループ『電気グルーヴ』のメンバー、ピエール瀧氏がコカインを使用していたとして逮捕され、多数のファンが「ダウンロード購入した楽曲が聞けなくなった」と声を上げる事態に。この不利益には、損害賠償などを求めて「集団訴訟できないの?」という声も上がりました。

消費者の利益が「配信元に勝手に左右されてしまう」。違法性や、集団訴訟は本当にできるのでしょうか。法律的な観点から解説します。

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1コンテンツ配信サービスで購入したものが消えたら、まずどうすればいい?



デジタルコンテンツで近年指摘されることに、自分で購入した正規版のコンテンツなのに、配信元が突然利用を停止したり、サービスが終了したりするケースがあります。

一方的に不利益を被る消費者にとって、異議を申し立てたり、撤回を求めたりする機会はあまりありません。勝手に配信を止められることは違法なのでしょうか。

①利用規約を確認しよう

突然配信が止められたり、閲覧できなくなってしまったりした場合は、まず利用規約を確認してみましょう。

配信プラットフォームサービスは、提供しているコンテンツがなんらかの理由で変更や中止をするケースについての規定を決めています。中止や変更があったときの対応、それにより消費者側に不利益があった場合はどうすればいいのかが提示されているはずです。

しかし注意したいのが、ほとんどのサービスで「変更・中止・一時停止」などの事態については「事前に通達はしないこと」「独自裁量で行われること」「そこで発生した不利益や損害については、一切責任を負わないこと」が明示されていることです。

利用者はこの条件に同意してからサービスを利用したことになっていますので、正当な取引で購入したデータが扱えなくなってしまっても、異議を申し立てることが難しいのが現状です。

②訴訟はできる?

法律上では、事業者がサービスを提供できなくなったために消費者に不利益が生じた損害を全て免責とすることは、無効とされています。これにより、被害者が多数に上った場合、「集団訴訟はできないのか」といった声があがることもあります。

ただし、サービスによっては、利用規約上で「集団訴訟を放棄すること」を消費者に同意させるものがあります。この場合、「集団でなければ訴訟はできる」または「裁判でなく仲裁であれば受けられる」などという規定が別途定められていることもあります。

またサービスを提供する事業者が日本の企業ではない場合、手続きを行える管轄は、その事業者の本拠地(国)に設定されていることがほとんど。

しかし、民事訴訟を起こす場合、海外の企業であっても、事務所や営業所が日本国内にあったり、日本における業務であれば、訴訟を起こすことは可能であることが法律で定められています。

実際に訴訟が可能かどうかは他に利用規約にどんな内容が含まれるかにもよりますので、気になるときはまず弁護士に相談してみましょう。

③裁判以外の手段で、意見を表明したい

裁判という手段が取れなくても、社会や企業に向けて声を上げる手段はあるのでしょうか。

企業に直接意見を送ることもできるほか、ブログなどで自分で意見を表明する、新聞などの媒体に投書する、などのほか、最近では、インターネットを通じた署名運動で声を上げる方法も登場しています。

署名は法的効力は持たないものの、賛同者が集まれば、それだけでも反対の意思を示すには大きなインパクトを持つことがあるでしょう。ピエール瀧氏に関わる出荷や配信の停止に反対する インターネット署名は、2019年3月に6万人以上の賛同者を集めています。


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2.「容疑者」段階で配信を停止、そのとき考えるべき4つの問題点



報道などのイメージから、それまで一般人だった人が「逮捕」という形を取り、報道で大きく取り上げられてしまうことは、それだけで「犯罪者」というイメージを作り上げてしまいます。

この段階では「一般人」でしかない人の作品の流通を止めるという、ねじれた現象が起こっているのです。

①判決が出るまでは「疑い」の段階

ある事件が発生したとき、「逮捕されたこと」=「なんらかの違法行為があった」と決めつけられる向きがあります。

しかし、逮捕された本人は、この段階はまだ法律上「無罪」として扱われます。

警察に対して「容疑を認める発言をした」という事実があったとしても、捜査を経て無罪になる可能性を残してあるため、呼び名は「容疑者(=疑いがある人)」となるのです。

  • 「有罪」が決まるタイミングは?

    有罪かどうかは、警察の捜査が始まり、検察が証拠をもって刑事裁判を起こし、裁判官が有罪判決を出した時点でようやく決まります。逆に、ここで犯罪の証明ができない場合は無罪確定となることもあるということです。

  • 「法律に違反」しているかどうか

    裁判官は、法律に違反していないことで他人を裁くことができません。 どの法律に違反したのか、その結果として罰金や懲役などはどの程度になるのかは、全て法律が決めることになります。

②成果物に罪はあるか?

有名無名に関わらず、アーティストやタレントに不祥事があった場合は、所属事務所や広告のイメージキャラクターを決めた企業、映像や音楽の権利を持つレコード会社ら、テレビ局などが一斉にその「容疑者」の露出を止めてしまうことも。有名人であればなおさら注目を集めてしまうため、大幅なイメージダウンにもつながります。

しかし、楽曲や映像作品そのものは犯罪行為ではありません。本人以外にも多くの俳優やスタッフが関わることもあり、それらの人たちを楽しみにしているファンもあります。

「自分の支払った金銭が、違法薬物の購入に使用されていたかもしれない」という事実はショックが大きいことですが、成果物自体に問題があるわけではなく、まして消費者がそれを楽しむことにはなんの法的問題も生じません。

それを一方的に止めてしまうこと自体は、企業が不当に消費者の利益を取り上げているという見方もできるでしょう。

③どの段階で「ほとぼりが冷める」のか?

違法薬物の使用やその他の犯罪で逮捕されるアーティストは、今回のピエール瀧氏に限りません。国内外では様々なアーティストが過去に逮捕・有罪判決を受けていますが、その後楽曲が使われなくなったままという人ばかりではありません。

もちろん時代や国の違いはありますが、「違法薬物を使用したから楽曲の流通や配信を止める」という手法は根拠が非常にあいまいで、「どんな場合であれば」「いつまで」停止するのかは明確な規定がなく、過去のアーティストの作品との整合性も取れません。

この点においても、突然かつ無断で消費者に突然の不利益を強いていると取られかねない手法になります。

④配信停止による別の問題点

逮捕の報道が持つ勢いと露出度は、アーティストや配信元が資金を投じて行うプロモーションの比ではありません。悪い意味で多くの耳目を集めてしまいます。

もともとのファンはもちろん、今までそのアーティストを知らなかった人の間でも一時的に知名度が高まってしまうため、よくも悪くも興味を持つ人が増えてしまうといった現象が起こります。

ただ、その段階で配信元が流通や配信を止めてしまっているため、興味を持った人の行き場がなくなってしまうことも。皮肉なことですが、結果的に違法ダウンロードや視聴サービスを利用する人が増えてしまう、法外な転売価格でCDやDVDが取引されるという事態を招いてしまいます。

4.まとめ

  • データで購入したコンテンツの配信が突然止まることに対する不利益。まずは利用規約を確認しよう

  • 裁判で判決が出るまでは「無罪が推定される」状態。この段階で楽曲の流通を止めるのは、一般人の楽曲を理由なく止めることと同じになってしまう

おわりに

第一線での活動期間が長いタレントやミュージシャンの場合、不祥事が起きたときの影響が多岐にわたることがあります。

同じ作品に出演していた俳優やバンド・ユニット仲間はもちろん、本人やそれら周辺のファンも一気に利用できるコンテンツを失うことになり、制作や販売していた企業、CM出演していた企業などにも多大な不利益や損害を被ることになります。

そのこと自体が社会的制裁であり、金銭的な部分やイメージダウンも含めて本人が責任を取るべきだと言われる風潮はあります。青少年への悪影響があるというのももっともでしょう。

その一方で、本人が磨いてきた技能による社会復帰の場を、社会が奪ってしまう懸念もあります。

映像や楽曲の権利を持つ配信・販売元の「自粛」。不祥事そのものが発生しないことはもちろん、常に不利益をもたらされる消費者の声も、そろそろ事業者が考慮してもいいかもしれません。

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