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【弁護士が解説】批判殺到の「破産者マップ」…違法性のポイントは?

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投稿日時 2019年03月25日 11時41分
更新日時 2019年03月25日 16時59分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 破産者マップのニュースを見た人

  • 問題となった官報の転載にどのような違法性があるのか知りたい人

  • 個人情報をネットに掲載された際にどう行動すべきか知りたい人

はじめに

2019年3月中旬ごろ、自己破産した人の氏名や住所をGoogleマップ上に掲載した『破産者マップ』が開設され、ネット上で大きな騒ぎとなりました。

知られたくない情報を誰もが簡単に閲覧できるようにしたことに対し、批判が殺到。それを受け3月19日未明、サイト運営者とみられるアカウントがTwitter上で謝罪を表明し、サイトを閉鎖しました。

しかし、一度掲載されてしまったことで、親しい人に破産していたことを知られてしまうなど、すでに被害を受けてしまった人もいます。

そこで今回は、「破産者マップ」の法的な責任や、損害賠償を求める場合に必要な手続きなどについて、IT分野の法律問題に詳しいコスモポリタン法律事務所の髙橋喜一弁護士に聞きました。

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1 2つの観点から見る破産者マップの「違法性」



――破産者マップの違法性について教えてください。

「おもに『プライバシー権の侵害』『名誉毀損』の2つが考えられます。

まずは『プライバシー権の侵害』

破産者マップは、『官報』と呼ばれる、国の重要な事項を国民に知らせるための冊子に記載された破産者の情報(氏名と住所)をもとに作られていました。

官報は国立印刷局が出しており、インターネット版では直近30日間の内容が無料で公開されているほか、30日以降のものについては図書館などで閲覧が可能です。

そのことを受け、破産者マップの運営者は『国が公にしている情報をウェブ上の地図に移し替えただけ』として違法ではないと主張していましたが、これは大きな間違いです。

官報への掲載は、あくまで債権者に破産したことを知らせ、破産手続きを円滑に進めるためのもの。つまり、本来の破産手続きが終わった後には、公に知られる必要性のない情報だと考えられます。

例えば、登記には個人の住所や借入金の額などが登記されており、法務局で自由に手に入れることができますが、それは一定の目的のためにそういう制度になっているに過ぎません。これをインターネットで公開して損害賠償が認められた裁判例もいくつかあります。

一般に、破産の事実は知られたくないことが多いはず。破産手続き後もなおそれらが公開されてしまうことは、たとえ公的なものを転載した場合であっても『プライバシーの侵害』となりえます。破産者の更生を妨げかねない、という意味でも問題でしょう。

結局のところ、国が公開しているから自分も公開して良いということにはならないのです。

次に『名誉毀損』です。

名誉毀損は、人の社会的評価を損なう行為のことです。破産者マップに掲載された情報の多くが官報にもとづく真実だったとしても、そのことによって掲載された人の社会的な評価が下がった場合は、名誉毀損に問われる可能性があります。

ただ一方で『真実性の抗弁』という考え方もあり、問題とされた事実が、

①真実であり
②公共の利害と関係のある事実で
③かつ公益をはかるために掲載されたこと

であれば、名誉毀損にあたらないとみなされるケースもあります。

しかし破産者マップの場合、誰がどこで破産したかという情報に公共性はなく、またサイト制作者がウェブ広告によって収入を得ようとしていた事実などから、公益のために行われたとも言いがたいでしょう。アフィリエイト広告目的のウェブサイトだったことで、公益性が否定されたという裁判例もあります。

よって破産者マップは、名誉毀損にあたる可能性が高いでしょう。

さらに破産者マップは、個人情報を不特定多数の目により触れやすい形にしている点も問題。個人のプライバシー権の侵害や名誉毀損は、情報の広がりやすい『伝播可能性』が高い状態にあるほど、より悪質な行為とみなされる傾向にあります。

明確な目安があるわけではありませんが、もし損害賠償を請求した場合の請求額は50万円~200万円ほどになると考えられるでしょう」


――自殺者が出たり、事故があったりした物件を載せる「事故物件公示サイト」もあります。似たサービスに思えますが、違法性の違いは何でしょうか。

「事故物件サイトで掲載されている情報は、基本的に『建物』に関することです。『建物』にはプライバシー権はありません。そこに住んでいる人に関して間接的にプライバシー権を侵害する可能性はありますが、破産者マップに掲載された情報は『個人のプライバシーそのもの』なので、情報の質は大きく異なります。

ただ、たとえば『このお店で火事があった』という嘘の情報が記載されているような場合に、お店の名誉毀損となる場合はあります。実際に相談を受けて削除依頼をしたこともありますが、基本的に当該サイト側は問題のある情報については削除に応じてくれているようです。

一方で、起きた火事が真実であった場合、お店の利用者や店舗を借りる人にとっては有益な情報となるため、一定の公共性や公益性があるともみなせるでしょう」

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2 もし損害賠償を求めたい場合、必要となる証拠はどんなもの?



――すでにサイトは削除されましたが、その間に破産者マップに名前が載ったことで苦痛を受けた場合、損害賠償を求めることはできるのでしょうか。

「掲載されていた事実を証明する証拠があるかどうかによります。

たとえば、サイトのスクリーンショットがあるでしょう。ただし、掲載内容だけがあればよいというわけではなく、下記の内容がすべてそろっている必要があります。

①サイトに掲載されていた自分の情報
②掲載されているURL
③掲載された時刻
④スクリーンショットを撮った時刻

不十分な証拠として特にありがちなのが、スクリーンショットの問題個所だけを切り抜きしてしまい、URLなどがわからないケース。また掲載内容のテキストだけを別のファイルに張り付けてしまうのも、後から作った別の証拠となってしまうのでよくありません。

アナログな方法としては、パソコンなどにサイトを表示させて、時計などと一緒に撮影した写真なども、上記の条件を満たすため証拠となりえます」


――すでにサイトが閉鎖されてしまい、こうした証拠を用意できない人もいるかもしれません。その場合はどうすればよいのでしょうか?

「直接の証拠がない場合、『間接証拠』を集めることで掲載の事実を証明していくことになります。

例えば、サイトの閉鎖前に第三者と交わしていたLINEに、『破産者マップに載っているの見たよ』といったやりとりの履歴が残っていれば、それも間接的な証拠とすることができます。

そうしたものもない場合は、第三者に『サイトで載っているのを見た』と言う証言をしてもらう方法も考えられるでしょう」


おわりに

大きな批判を呼んだ「破産者マップ」。サイト自体はすでに閉鎖となりましたが、それですべての問題が解決されたわけではないと髙橋弁護士は指摘します。

「根本的な問題は、プライバシーに関わる情報をそのまま載せている官報の在り方にあると考えています。官報の個人情報をデータベース化・販売している業者の存在も複数確認されており、今後同様の問題が起きないとも限りません。官報の掲載内容や公開方法の見直し、二次利用に関する法整備などが必要なのではないでしょうか」

たとえサイトが閉鎖されたとしても、いちど人に知られてしまった情報をなかったことにすることはできません。

今回の破産者マップのケースに限らず、同様の被害にあった場合は証拠をいち早く保存し、弁護士などの専門家に相談してみてください。

また、もし「弁護士費用が捻出できない」という場合は、法テラスが提供する費用の立替え制度や、集団訴訟なども検討してみましょう。

(取材・執筆=近藤理恵 )
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