管理会社を訴えることはできる?ありがちな4つの事例別に方法を解説

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投稿日時 2019年03月22日 19時25分
更新日時 2019年09月17日 17時15分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 賃貸住宅で様々なトラブルに悩まされている人

  • 管理会社の対応が悪く、訴訟を考えている人

  • 実際に訴えた事例を参考にしてみたいという人

はじめに

他の住民による騒音や敷金返還など、賃貸住宅に住んでいることで起きる様々なトラブル。クレームの窓口となる管理会社の対応も様々であるため、不満を抱くこともあるかもしれません。

そんなとき、不誠実な管理会社を訴えることはできるのでしょうか?

この記事では様々なトラブルのケースごとに「誰を」「どうやって」訴えることができるのか、詳しく解説をしていきます。

またもし、「訴訟まではちょっと……」という人には、下記の記事でトラブル別の相談窓口を紹介しています。こちらも参考としてみてください。



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1.このケースは訴えられる?4つのよくある事例を解説



管理会社との賃貸トラブルでありがちなトラブルとして、

①「敷金返還」
②「騒音トラブル」
③「事前説明にない不備」
④「設備修理をしてもらえない」

の4つがあげられます。

それぞれのケースごとに、訴える場合の請求先について解説をしていきましょう。

①敷金返還

退去時に起こりがちな敷金トラブル。

本来返還されるべき敷金が、納得できない理由で返還されないという場合、訴訟を行う相手は管理会社ではなく、大家となります。

管理会社はあくまで大家と住人の仲立ちをしているだけであり、敷金のやりとりを直接住人とやり取りをしているわけではないからです。

大家の代わりに敷金を管理している管理会社もありますが、その場合もあくまで敷金を大家から一時的に預かっているという形となるため、訴える先は変わりません。

ただし、例外もあります。

それは、大家が管理会社に物件を貸し、管理会社が住人に貸すという形の契約(いわゆるサブリース契約)の場合。このような場合は、管理会社が住民と直接敷金をやりとりする形となるため、トラブルの際は管理会社に請求する必要があります。

②騒音トラブル

騒音トラブルが起きた場合、訴える先として考えられるのは

・大家
・騒音を起こした住民

の2つ。このケースもまた、管理会社はあくまで大家と住人の連絡窓口にすぎず、騒音に関する責任を問うことはできません。

また、騒音に関して訴訟を起こす際には、「受忍限度」という指標がポイントとなってきます。

これは「日常生活で一般人が耐えられる限度」を示す指標ですが、人によって騒音と感じる定義が違うため、明確な線引きについてはケース・バイ・ケース。

・騒音の内容
・騒音の大きさ
・騒音の時間帯
・騒音がどのくらい続くのか
・どんな健康被害があるか

といった要素を加味して、総合的に判断される形となります。

もし騒音被害が認められた場合、大家に対しては、住人が快適に過ごせる環境整備を怠ったとして、トラブルで生じた健康被害の治療費や引っ越し費用を、騒音を起こした住人には、トラブルで生じた健康被害の治療費や慰謝料などを請求できる可能性があります。

③事前説明にない不備

部屋の問題や修理費用の負担など、事前に説明を受けていない不備があった場合、契約の解除を求めていくことになります。

例えば、入居当日に給湯器が破損しており、大家から修理費用の負担を求められるケースなどがこれにあたるでしょう。

給湯器が使えない旨を事前に説明されなかったのであれば、契約の解除や貸主負担による修理を求められるのです

請求先となりうるのは、大家か不動産の仲介業者。

賃貸契約の前に、大家か不動産の仲介業者は、器物の破損などの重要事項について、必ず説明しなければなりません。これを怠っていたのであれば、修理費用などの請求、または契約解除を求められます。

契約を解除した場合は当然、大家は入居にあたり支払った費用を返金しなければなりません。また契約解除と同時に引っ越しが必要となるため、場合によっては引っ越し費用も請求できる可能性もあります。

④設備修理をしてもらえない

設備の修理には、大家負担と住人負担のものがあります。例えば、備え付けのエアコンの修理費用は大家負担となります。ここで問題となるのが、修理を先延ばしにされることです。

夏はエアコンが使えなければ生活できない場合もあるため、できるだけ早く修理してほしいところですが、何かと理由をつけて対応してもらえないケースがあります。

その他、雨漏りなども生活できなくなる原因となります。このように設備修理してもらえないことで生活できなくなった場合は、大家を訴えましょう。

トラブルによって訴えるている間も生活に支障がでる場合は、自分で修理して費用を大家に請求することもできます。大家には、部屋の使用に必要な修繕を行うことと、修繕費の返還が義務づけられているため、住人は一切の費用を負担する必要はありません。

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2.訴えるときはどうすればいいの?必要な手続き3つ




大家や不動産の仲介業者を訴える際には、段階を踏んで適切に手続きをする必要があります。実際に訴える場合のステップを詳しくみていきましょう。

①必要な証拠を集めておく

トラブルが起きたことや、大家や不動産の仲介業者の不備や過失によって損害を受けている証拠を集めましょう。次のような証拠を集めてください。

・原状回復見積書
・契約書
・室内の写真
・被害の様子がわかるもの(騒音ならdbで図ったデータなど)
・室温がわかるもの(夏のエアコン修繕のケース)
・重要事項説明の音声データ
・再三改善要求をしたことがわかるもの(メールや録音データ)
・トラブルについてまとめた時系列表

その他、相談した窓口や弁護士から証拠を求められた場合は、適宜用意しましょう。

②訴えるときの手続き・やり方

訴える場合は、「弁護士に依頼する」、「個人で訴訟を起こす」、「集団訴訟を起こす」のいずれかを選ぶことになります。それぞれ、手続きや方法を詳しくみていきましょう。

  • 弁護士への依頼

    証拠を弁護士に提出し、大家や不動産の仲介業者と交渉してもらいましょう。

    弁護士への依頼にかかる費用には、相談料や着手金、日当、実費、成功報酬などがあります。費用は弁護士によって異なるため、相談時に確認しておきましょう。

    弁護士費用がかかるため、十分に検討することが大切です。また、経済的な問題で支払いが困難な場合は、法テラスの利用を検討しましょう。要件を満たせば、無料で相談できます。


  • 個人での訴訟

    弁護士に依頼して勝訴しても、結果的に赤字になる場合は、個人で少額訴訟を検討しましょう。請求額が60万円以下の場合に利用できます。

    訴状と証拠書類を裁判所に提出したのち、原則1回の審理で双方の言い分や証拠などを踏まえ判決が下されます。双方の話し合いによって和解することも可能です。

    費用は、請求金額に応じた印紙代1,000~6,000円、郵便切手代4,000円前後、強制執行の費用としての印紙代4,000円と郵便切手代3,000~4,000円のみです。


  • 集団訴訟

    自分だけではなく、マンションやアパート全体で同じトラブルが起きている場合は、集団で訴訟を起こすことも可能です。被害者が多ければ弁護士費用を折半し経済的な負担を抑えられる可能性があります。また、証拠が多少不足していても、他の住人が持つ証拠で補え、裁判を有利に進められる場合も。

    ただし、住人で足並みが揃える必要性があるほか、訴訟自体は長期化する傾向にありますので、その点は注意してください。

③迷ったときの相談窓口

費用などの事情で訴訟を起こすことが難しい、仲介してもらいたい、訴訟を起こしたところで勝訴の可能性があるか専門家に聞きたいなど、訴訟を起こすかどうか迷ったときは、公的機関の窓口に相談しましょう。次のような相談先があります。

  • 都道府県にある相談窓口

    各都道府県には、生活でトラブルが起きたときに相談できる窓口が設置されています。東京都の場合は、都庁にある都市整備局不動産業課の窓口で相談できます。入居中の管理に関するトラブルは賃貸ホットライン(TEL:03-5320-4958)、契約の説明内容に関するトラブルは指導相談担当(TEL:03-5320-5071)に相談しましょう。


  • 不動産取引特別相談室

    弁護士に、賃貸トラブルの法律相談ができます。相談日の1週間前から電話予約して、面談で相談します。弁護士に相談できることで、訴訟を起こすかどうか判断しやすくなるでしょう。(TEL:03-5320-5015)


  • 消費者生活総合センター

    賃貸トラブルを含め、生活の様々な問題を相談できる窓口です。次に取るべき行動や専門家の紹介などのサポートを受けられます。各都道府県に設置されており、一部地域、年末年始を除き、365日相談できます。(TEL:188)

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3.賃貸トラブルで泣き寝入りしない!実際の事例4つ



賃貸トラブルで訴訟を起こしても、必ず勝訴するとは限りません。過去の判例の概要や結果、判決のポイントをまとめましたので、訴訟を起こすかどうかの参考としてください。

敷金返還

  • 概要

    自然摩耗による修繕費が敷金から差し引かれたため、敷金の返還を求めて訴訟を起こした。賃貸契約開始時の状態へ完全に修復させることの義務までは課していないと判断し、自然摩耗までの賃借人負担を認めなかった。


  • 結果

    通常での使用では起こり得ない汚れや損耗については賃借人が負担し、それ以外は貸主が負担することとなった。


  • ポイント

    自然摩耗などは貸主の負担、故意や過失による損耗や汚れは賃借人の負担という一般的な考え方を踏まえ、このような判決となりました。

騒音トラブル

  • 概要

    マンションの上の階に住む子供の騒音によって精神的苦痛を受けたとして、子供の父親を相手取り、240万円と年5%の遅延損害金を含めた損害賠償を請求した。原告およびマンションの管理組合が注意したにもかかわらず、騒音が改善されなかった。


  • 結果

    原告やマンションの管理組合が再三に渡り注意したが改善されなかったこと、50~65db程度もの騒音が午後7時以降、または深夜にも起きていたことなどから、36万円の支払いを命じた。


  • ポイント

    再三の注意をしたにもかかわらず改善がみられず、要求を乱暴な口調で突っぱねるなど対応が問題となりました。騒音も健康被害が及ぶほどのものが起きていたことが認められたため、このような判決となりました。

事前説明にない不備・説明不足

  • 概要

    カラオケ教室の講師がスピーカーやマイクを用いた発声練習ができる部屋を探していたが、賃貸人がそれを承諾していない部屋を契約させられたとして、不動産仲介業者を相手取り118万68円と年5%の遅延損害金を含めた損害賠償を請求した。


  • 結果

    カラオケ教室を行う条件を満たしていない部屋が紹介されたわけではないとして、原告の訴えが棄却された。


  • ポイント

    発声練習の時間帯やスピーカーの音量などに配慮すれば、カラオケ教室の運営に支障をきたすことはなく、賃借人が求めていた「発声練習ができる部屋」が紹介されていたため、敗訴となりました。

設備の修理をしてもらえない

  • 概要

    雨漏りがあり、修繕を求めたにもかかわらず対応されなかった。損害によって使用できないスペース30%を差し引いた賃料の減額相当分と損害金を含め、541万2,000円の損害賠償を請求した。


  • 結果

    損害を受けているものの、541万2,000円もの損害賠償は認められず、合計45万円の支払いが命じられた。


  • ポイント

    雨漏りが修繕されていなくても賃貸契約を更新して住み続けていたため、賃料の一部の返還は認められませんでした。また、補修義務違反をしているものの、示談書を交わしたことで、一部の問題は解決済みとしました。そのため、45万円という請求額より著しく少額の支払い命令となりました。


4.まとめ

  • 管理会社は大家の業務をサポートしているだけであるため、基本的に訴訟相手は大家や不動産の仲介業者となる。

  • 訴訟を起こす際に弁護士に依頼すると高額になるため、少額訴訟や集団訴訟も視野に入れる。

  • 賃貸トラブルは、訴訟を起こしても請求が全て認められるとは限らないため、十分に検討して今後の対応を決めることが大切。

おわりに

管理会社は大家と住人を繋ぐ役割を果たすため、賃貸トラブルが起きたときには管理会社を訴えようとしてしまいがちです。実際には、大家が全ての権限を持っているため、大家に請求することになります。また、不動産の仲介業者を相手取り、訴訟を起こすケースもあります。いずれにしても、賃貸トラブルの証拠を集め、専門機関に相談のうえ、訴訟を検討することが大切です。


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