パートの社会保険は「106万円」or「130万円」から!加入条件まとめ

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投稿日時 2019年03月04日 19時08分
更新日時 2019年03月04日 21時05分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • これからパートをはじめようと思っている人

  • パートする際の保険の仕組みについて詳しく知りたい人

  • 保険に入る/入らない場合のメリットデメリットを知りたい人

はじめに

パートを始めるとき、気になるのは社会保険

年収などの一定の条件を満たすと、配偶者の扶養家族から外れ、厚生年金などへの加入が必要となります。各種保険料は給与から差し引かれる形となるため、加入時の年収次第では、パートの手取り額が大きく減ってしまう場合も……。

さらに、2019年10月からは、この社会保険の加入対象はさらに広がる予定。今は適用対象外となっている一部の人にも加入が義務づけられることになるため、注意が必要です。

この記事では、社会保険への加入条件と必要な手続き、社会保険加入を避けるために年収の調整をするメリットとデメリットを解説します。

パートをこれから始めようという方は参考にしてみてください。


1.社会保険の仕組みを解説!加入の条件となる「2つの年収」



そもそも、社会保険とはどのようなもので、具体的にいくらかかるものなのでしょうか?

この章では社会保険の仕組みと加入基準について解説します。

①社会保険の種類と金額はどのくらい?

社会保険とはそもそも、年金医療といった公共サービス制度のことで、基本的に、20歳以上の日本国民は全員加入しなければなりません。

その際、主に下記3つの保険料を月々の給与から支払うことになります。

  • 厚生年金保険料→給与のおよそ9%

    厚生年金保険とは、日本政府が企業と雇用関係を結んでいる人を対象にした年金制度。毎月保険料を払い続けることで、65歳以上になると国から年金がもらえるようになります。

    保険料の半分は企業が負担することになっており、残った半額であるおよそ9%が給与から差し引かれることになります。


  • 健康保険料→給与のおよそ5%

    健康保険は、月々の保険料を支払うことで病気やケガなどで医療を受けた際にかかる医療費を抑えられる仕組み。厚生年金保険料と同じく、保険料の半分を雇用先の企業が負担し、残ったおよそ5%が差し引かれます。

    また、40歳以上の場合、介護保険料およそ0.8%がさらに上乗せされて差し引かれます。


  • 雇用保険料→給与の0.3~0.4%

    雇用保険とは、失業時や教育訓練を受けるときなどに給付金を受け取れる制度。病気などで予期せず収入がなくなった時に生活に困窮することを防ぎます。保険料は企業と従業員の両者が負担します。


これらを合算すると、額面給与のおよそ14%が保険料として天引きされることになります。

②社会保険加入の基本パターンと2つの年収

では、どういった場合に社会保険への加入義務が発生するのでしょうか。

基本となるのが次の条件。これらを全て満たす場合は社会保険への加入が必要です。

条件 備考
労働時間が週20時間以上 残業時間を除く
賃金が月88000円(年収約106万円)以上 ボーナス・残業代・交通費などを除く
1年以上働く可能性があること 契約更新で1年以上となる場合も含む
学生でないこと 夜間・通信・定時制の学生を除く
従業員501人以上の会社で働いていること 日本年金機構から対象企業を検索可能
従業員500人以下の場合は、社会保険加入について労使の合意があること 働く前に勤務先への確認が必要
(参考:政府広報オンライン

加入義務の大きな分岐点となるのは、パートの年収です。

中でも重要となるのが

「年収106万円」
「年収130万円」


という2つの数字。

それぞれのケースについて、詳しく解説していきましょう。

  • 年収106万円未満の場合

    社会保険料の支払いは必要ありません。


  • 年収106万円以上~130万円未満の場合

    上記表の条件をすべて満たしている場合、社会保険料の支払いが必要となります。

    平成28年(2016年)9月以前は週30時間以上働いていることが社会保険加入の条件でしたが、同年10月1日より上記の通り条件が緩和されています。

    ひとつでも表の条件を満たしていない場合、社会保険料を支払う必要はありません。


  • 年収130万円以上の場合

    年収が130万円以上の場合は、必ず保険料の支払いが必要です。

    ただし、条件によって雇用先の社会保険に加入するか、自分で国民年金保険と国民健康保険に加入するかという点が異なります。

    年収130万円以上で上記表の条件をすべて満たしている場合は、雇用先の社会保険に入ることができます。

    一方で条件を満たしていない場合であっても、1週間あたりの労働時間が正社員の3/4以上(多くの場合、週30時間以上)の場合、社会保険に加入できます。

    一方、年収が130万円以上で、これまでの条件からすべて外れる場合は、個人で国民年金保険および国民健康保険に加入する必要があります。

    保険料の金額については以下の通り。

    国民健康保険料:およそ16,500円/月
    ※年によって異なります。平成30年(2018年)度は16,340円でした。最新の情報は日本年金機構のWebサイト等で確認してください。

    国民健康保険料:住んでいる市区町村によって計算方法や金額が異なります。各自治体の公式サイト等で調べるようにしてください。また、正確な金額が知りたい場合は、各市区町村の担当窓口に問い合わせましょう。

    いずれにせよ、保険料を全額自腹で負担する形となるため、一般的に雇用先の保険に入るよりも負担が大きくなるケースが多いでしょう。


③2019年以降に条件緩和の可能性も…

ただし、これらの条件は2019年10月以降、さらに緩和される可能性があります。

具体的には、

・収入の下限を月収88,000円(年収106万円)から月収68000円(年収約82万円)に引き下げ
・従業員数が500人以下でも条件を満たせば加入を義務化

といったことが検討されています。

もしこの緩和が実施されれば、扶養内でパート等をしている人の多くが社会保険加入の対象になると予測されています。

扶養内に収めるよう勤務時間を調整するか、社会保険に加入してより長く働くか……ライフプランにあわせて、さらに慎重に考える必要があるといえるでしょう。


2.社会保険加入のメリット・デメリット…どんな場合は加入したほうがよい?



これまで、社会保険加入の条件を確認してきました。

「手取りが減る」というイメージが強い社会保険ですが、当然ながら加入することによるメリットもあります。

ここでは社会保険加入時のメリット・デメリットを紹介していきましょう。

年収調整の参考としてみてください。

①デメリット

  • 年収が106万円前後の場合、手取り額が減る

    年収が106万円を少し越える程度である場合、社会保険への加入によって手取り額が減ってしまいます。

    額面給与124万円から社会保険料を差し引いた残りがおよそ106万円。

    つまり、年収が106万円~124万円の場合、社会保険に加入すると手取り額がむしろ減ってしまうのです。


  • 扶養家族の保険料は据え置き

    現在、夫(妻)が支払っている社会保険料は、配偶者が扶養家族から外れたとしても据え置きです。つまり、もともと支払っていた保険料が安くなることはありません。

    新たに追加で保険料を支払う形となるのです。


  • 扶養家族から外れると扶養手当がなくなる場合も

    企業によっては、家族を持っている社員に対し、基本給とは別に扶養手当を支給していることがあります。

    しかし扶養家族を外れてしまうことで、扶養手当(企業によっては「家族手当」と読んでいるところもあります)」の対象外になってしまうことも。

    配偶者の給与が減ってしまう可能性もありますので、事前に確認するようにしましょう。

②メリット

  • 将来もらえる年金額が増える

    厚生年金保険に加入すると、将来もらえる年金額が増えます。

    支給される年金額はこれまで支払った保険料に応じて決まるのですが、厚生年金は通常よりも高い保険料を、企業と分担で支払っているためです。

    増える金額は、厚生年金保険の加入期間と納付金額によって異なりますが、おおむね下記の通りとなります。

    モデルケース(月収88,000円) 保険料 増える年金(目安)
    40年間加入 月額8,000円/年間96,000円 月額19,300円/231,500円×終身
    20年間加入 月額8,000円/年間96,000円 月額9,700円/115,800円×終身
    1年間加入 月額8,000円/年間96,000円 月額500円/5,800円×終身
    (参考:政府広報オンライン


  • 傷病手当や出産手当がもらえる

    医療給付の内容は、各医療保険制度共通で、基本的に本人・家族で差はありません。ただし、健康保険に加入していると、病気やけが、出産などで仕事を休まなければならない場合に賃金の3分の2程度を手当として受け取ることができます。

    手当を受け取れる期間は、傷病手当金で1年6か月間、出産手当金は出産前後合わせて原則98日間。退職後であっても、それまでに1年以上保険料を払っていた場合はこの期間を上限に手当を受け取ることが可能です。

    社会保険ではなく国民健康保険に加入している場合、出産育児一時金(1人あたり42万円)はもらえますが、出産手当はもらえません。そのため、傷病手当や出産手当は社会保険加入のメリットであると言えるでしょう。

③どんな場合に社会保険に加入するべき?

メリット・デメリットを踏まえ、どのような場合には、社会保険に加入した方がいい(社会保険加入対象にならないよう収入を調整しなくてもいい)のでしょうか。最終的にはそれぞれの判断になりますが、少なくとも次の3つに当てはまる場合は、収入額を調整する必要はないでしょう。

  • 年収が130万円を大幅に超える場合

    年収が160万円を超える場合は、税金や保険料の天引きを含めても社会保険に加入したほうが収入が増えます。160万円を超えて稼げる人は、社会保険料を気にせず働くべきだと言えます。

    逆に年収が160万円に届かない場合は、社会保険の加入対象にならない範囲で収入を調整した方が結果的に手取りは多くなります。


  • 同じ職場で長くパートを続ける場合

    厚生年金の受け取り額は、支払い期間に応じて決められます。したがって、同じ職場で長く働く予定があり、かつ目先の手取りより将来の年金受給額を優先したい場合は、社会保険の加入対象となるだけの年収を目指してもよいでしょう。


  • 配偶者がフリーランスや自営業の場合

    配偶者がフリーランスや自営業の場合も、社会保険に加入した方がいいでしょう。

    フリーランスや自営業の人は厚生年金保険の対象ではないので、年収にかかわらず家族全員が国民年金や国民健康保険への加入が必要。そのため、企業が保険料の半分を負担する社会保険に加入したほうが各種制度を利用できるぶん得と言えます。


3.加入時に注意するポイントはここ!



社会保険に加入する場合、注意すべきことがいくつかあります。ここでは、社会保険の加入対象になるだけの収入を得ると決めた人に向けて、注意するポイントを解説します。

①年収の基準は「3か月分の給与」


これからパートを始める人は、勤務開始から3か月間の給与を基準に年収額が算出されます。また、すでに一定期間パートをしている人については、4月〜6月の3か月ぶんの給与が基準になります。

そのため、最初の3か月だけ突出して働いた場合、残りの日の給与が激減しても保険料を多くとられてしまうので注意が必要です。

②申請には配偶者の申請が必要

今まで配偶者の扶養家族であった人が新たに社会保険に加入する場合、現在加入している「配偶者の健康保険」または「国民健康保険」の資格喪失手続きを行う必要があります。

配偶者の健康保険に加入していた場合は、配偶者に勤め先に対して扶養家族を外れる旨を申請し、保険証を返却しなければなりません。

国民健康保険の資格喪失手続きについては、住んでいる市区町村に問い合わせましょう。社会保険加入手続きは、勤め先の企業を通じて行うことになります。

また、万が一勤め先で社会保険に加入できなかった場合、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

勤務先を決める段階で求人票に「社会保険完備」とあるか確認するなど、事前のチェックを怠らないようにしましょう。

③トラブルがあった場合の相談窓口

社会保険は、保険料の半分を企業側が負担する必要があるため、パートやアルバイトの人を加入させたくないと考える経営者も存在します。

しかし、社会保険への加入はこれまで説明してきた条件を満たす場合には義務であり、これを怠ることは違反行為です。勤め先が加入させてくれないなどのトラブルが発生した場合は、各都道府県の労働局(雇用環境・均等部(室))に相談しましょう。

相談受付時間:月~金(祝祭日、年末年始除く)8:30~17:15
※連絡先は都道府県によって異なるので、以下より確認してください。

都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧


4.まとめ

  • 年収106万円または130万円を超えて条件を満たす場合、社会保険への加入が義務付けられる

  • 年収が160万円を下回る場合は社会保険への加入で手取り額が減るため、メリット・デメリットを踏まえて収入額の調整をするかどうかを考える必要がある

  • 加入にあたっては、最初の3ヶ月の収入を基準に年収が計算されるなど知っておくべきことがあるので、事前によく確認する

おわりに

知らずに加入すると手取り額が減ることもある社会保険。一方で将来受け取れる年金が増えるなどのメリットはあります。

仕組みと制度をよく理解し、配偶者とも相談したうえで判断すると良いでしょう。


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