「解雇理由証明書」の内容と使い道は?請求手順と3つの注意点も紹介

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投稿日時 2019年02月21日 15時45分
更新日時 2019年09月17日 16時50分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 職場から突然クビを言い渡されたという人

  • 解雇に納得ができず、職場に解雇の取り消しを求めたいという人

  • これから転職・退職を考えているという人

はじめに

「解雇理由証明書」とは、会社がどんな理由で従業員を解雇したのかを証明する書類のこと。解雇することを伝える解雇通知書(解雇予告通知書)とは別の書類となります。

この書類、解雇された本人が請求しなければ、会社は渡さなくてもよいことになっています。そのことを知らず、書類をもらわずに退職した人も多いかもしれません。

しかし、解雇理由証明書は、会社が違法なことをしていないかどうかを確認するための大切な書類。さまざまな場面で必要となってくるのです。

そこでこの記事では、解雇理由証明書の役割や、職場に請求するための方法について詳しく解説をしていきます。

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1.なぜ必要?なにが書かれている?解雇理由証明書の基礎知識



まずは解雇理由証明書がどんなものなのか、基本的な知識について解説していきます。

①解雇理由証明書の内容

解雇理由証明書とは、その名前の通り、会社がどんな理由で従業員を解雇するのかを記載した書類となります。

決まった書式はありませんが、おおむね書かれる内容は以下の通り。

・解雇する人の名前
・解雇を通知した日付
・発行した日の日付
・職場の代表者・責任者の氏名と印鑑
・解雇理由

参考:東京労働局 様式集

では、どんなときにこの書類が必要となるのでしょうか?

②解雇理由証明書が必要となるケース

それは、あなたが納得できない理由で解雇された場合です。

法律上、会社は従業員を理由なくクビにすることはできません。これは正社員だけでなく、パート・アルバイトの場合も同様です。

もし会社が違法な解雇を行っていた場合、会社を訴えてその解雇を取り消したり、慰謝料などの損害賠償を求めたりすることが可能。

その際に、解雇が違法かどうかを確かめる土台となるのが、解雇理由証明書で説明された解雇理由となるのです。

③どんなことがポイントになる?

会社が従業員を解雇するためには、たとえば以下のような条件を満たす必要があります。

・災害などにより会社が業務を続けられない場合
・事業の縮小などにより雇い続けられない場合
・業務命令に対して違反があった場合
・犯罪行為などの大きな問題を起こした場合
・仕事に必要な能力が明らかに足りない場合
・雇用期間が満了していた場合

しかし、これらの条件に当てはまっていても、それらが解雇する必要があるほど重大だったのかどうかという点は、厳しく検証されなければなりません。

たとえば、営業ノルマを達成できなかった、という場合であっても、

会社はきちんと教える努力をしたのか?
上司の指導力の問題ではないのか?
そもそも無理なノルマ設定ではないか?
ほかのノルマ未達成の社員はいないのか?
配置転換などで対応することはできなかったのか? 

……などなど、非常に細かい部分を厳密にみられます。

事業の縮小による解雇(いわゆるリストラ)の場合でさえ、

解雇以外の方法で対応できないのか?
役員報酬を減らすなど、リストラ以外の企業努力を行っているか?
リストラ候補は合理的な基準で選ばれているのか?
従業員に対して十分に説明を行ったのか? 

といった厳しい検証を経てはじめて、合法だとみなされるのです。

従業員にとって「解雇」は最も重い処分。よほどの大きな理由がない限り、軽々しく会社が行うことは許されないのです。

例外として、あらかじめ決めていた雇用期間が満了した場合は解雇が認められがちですが、その場合であっても、

・ほかにも契約が満了した社員がいるのに自分だけ更新されない
・いままで自動的に契約が更新されていたのに、突然更新されなくなった

といった場合は、解雇を無効とできる場合があります。

詳しくは下記の記事を参考にしてみてださい。



このように、一見正しく見える理由でも、法律と照らし合わせると違法だった……という可能性は十分にあります。その検証のためにも、解雇理由証明書が必要なのです。

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2.解雇理由証明書をもらおう!請求ステップと注意点



では、解雇理由証明書の請求には、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

その具体的な手順について紹介していきましょう。

①「クビ」と言われたら…口頭or文書ですぐ請求

解雇理由証明書が請求できるのは、解雇を通知されてから退職するまでの期間です。そのため、会社から解雇を通知されたら、なるべくすぐに請求しましょう。

伝える方法は口頭でかまいません。しかし「そんなこと言われていない」とあとから言われるおそれもあるため、メールや文書など、証拠として残る形で請求をするとなおよいでしょう。

なお法律上、解雇理由証明書の請求を会社は断ることはできません。「そんなものは出せない」などと断るのは違法行為となります。

もし直属の上司などに伝えても無視されるようなら、会社の人事部などに改めて請求するようにしてください。

②もし請求期間を過ぎてしまったら…?

もし、あなたが解雇理由証明書を請求せずに退職してしまっている場合は、どうすればよいのでしょうか?

そんなときは、退職証明書を請求しましょう。

これは退職した元社員に対し会社が発行する証明書で、

・退職前にどんな仕事をしていたのか
・どんな理由で退職をしたのか

といった内容を証明するもの。ここに記載された解雇理由は、解雇理由証明書の場合と同じく、検証のベースとして使うことができます。

退職証明書の請求期間は2年。解雇理由証明書と同じく、請求された会社は、発行を拒否することができません。

口頭や書類などで請求するようにしましょう。

③請求する際の注意点

解雇理由証明書や退職証明書を請求するときには、下記の点に注意が必要です。

  • なるべく具体的な理由を書いてもらうこと

    解雇の理由があいまいだと、訴訟の際にいくらでも後付けができてしまいます。

    いつ・どこで・どんなことがあったのか。それがなぜ解雇の理由となるのか。可能な限り具体的に書いてもらうようにしましょう。


  • 自分から退職しないこと

    解雇を通知されたとき、「なら自分から辞めます」と自分から先に退職してしまうのはNG。自分の意思で退職してしまうと、解雇理由も「自己都合」という一言で済まされてしまうからです。

    会社都合で解雇するのではなく、自主的な退職を促してくるのはよくありがちなケース。しかし、このような退職強要も違法です。

    納得できない場合は自主的な退職には応じず、必ず会社側からの解雇を求めるようにしてください。

  • 退職までの経緯や勤務内容を記録しておくこと

    あとで解雇理由と照らし合わせるために、現在の勤務内容について、客観的に証明できる証拠を集めておくことも大切です。

    就業規則、タイムカード、給与明細書のほか、社内の日報、トラブルがあった場合はその際のやり取り、社内連絡メールといったものをコピーするなどして保存しましょう。

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3.ケース別!トラブルになった場合の相談窓口



「会社が証明書を発行してくれない」

「解雇の理由が事実とぜんぜん違う…」

そんな様々なトラブルにあったときに頼りとなるのが、さまざまな専門機関。

その連絡先や相談時の注意点について、この章ではトラブルのケース別に解説していきます。

①会社が解雇理由証明書を発行してくれないとき

先ほども説明したとおり、会社が解雇理由証明書の請求を無視するのは、れっきとした法律違反。そんなときは、労働基準監督署に相談しましょう。

労働基準監督署とは、会社がきちんと法律にしたがって労働者を雇っているかどうかをチェックする国の機関です。違法性が高いという場合には、直接会社に指導してくれたり、罰金などの刑罰をくだしたりする場合もあります。

こちらのサイトから会社所在地にもっとも近い労働基準監督署を探し、連絡してみてください。

ただし、通報・相談したからといって100%指導してくれるとは限らないことには注意。少しでも動いてもらえる可能性を高めるためにも、事前に証拠をなるべく多く用意しておくようにするとよいでしょう。

②解雇の理由に納得がいかないとき

もらった解雇理由に納得できない、という場合は、解雇の取り消しや慰謝料などの損害賠償を求めていく形となります。

その際の相談先は、主に下記のみっつ。

・労働組合
・労働局
・弁護士

それぞれについて解説していきましょう。

  • 労働組合

    労働組合は、職場の環境改善を経営者に要求するため、従業員によって結成される団体です。もし会社内にこの労働組合がある場合は、相談することで交渉・改善に動いてもらえる可能性があります。

    もし会社内に労働組合がない場合には、社外ユニオンを利用するのも一つの手。

    これは会社外の労働者どうしが合同で作る形の労働組合で、会社に対してさまざまな要求・交渉を行うことが可能です。

    ただし、これらの団体の加入には組合費が必要となったり、ユニオンの活動に参加する必要があったりすることもあります。

    事前に団体についてよく調べ、自分にあっているかどうかを判断しましょう。


  • 都道府県の労働局

    職場のある都道府県の労働局では「あっせん」と呼ばれる制度を利用することができます。

    これは、専門家の仲介を通じて、会社とあなたでトラブルについての話し合いを行うというもの。訴訟を起こすよりも費用が少なく、また短期間での解決が目指せる点が特徴です。

    話し合いはお互いの顔を合わせない形で行われるため、プレッシャーを感じることもありません。

    ただしその一方で、あっせんはあくまで「話し合いの延長」。相手になにかを強制する効力はないことには注意してください。結果を拒否された場合はもちろん、会社によっては話し合いそのものに応じない場合もあります。

    また、あっせんの利用には審査があります。申請前には証拠などを十分にそろえてから臨むようにしましょう。

    各都道府県の労働局の所在地や連絡先は、こちらから調べることができます。


  • 弁護士

    弁護士に依頼することで、さまざまな手続きを代理で行ってもらうことができます。

    と言っても、すぐ訴訟になるわけではありません。

    まずは事前相談でそのケースが本当に不当解雇にあたるかどうかを判断。そのあとに正式な依頼を経て、会社との交渉を行う形となります。

    もし話し合いがうまくいかなかった場合には、労働審判という労働トラブル専門の審判制度や訴訟といった手段を利用。解決を目指していく形となります。

    ただし、弁護士の依頼には費用が必要。特に着手金と呼ばれる前払いのお金は最低でも20万円前後が相場となります。

    ただし、事務所によっては着手金が無料だったりする場合もありますので、まずは労働トラブルに強い弁護士事務所を探すところからはじめてみてください。

③ほかにも解雇者がいる場合は集団訴訟という手段も

もし、あなたのほかにも理不尽な解雇にあった人がいた場合は、集団訴訟という手段を利用できるかもしれません。

これは同じ相手から被害を受けた人どうしで協力して訴訟を起こすというもので、状況によりけりですが、証拠を共有してより説得力を高められる、被害者どうしで費用を分担してひとりあたりのコストをおさえられる、といったメリットがあります。


4.まとめ

  • 「解雇理由証明書」は、会社がなぜその人をクビにしたのかという理由を公的に証明するもので、その解雇が正しいかどうかを検証する際の土台になる

  • 解雇理由証明書の請求を会社は拒むことはできない。もしすでに会社を辞めてしまっている場合は、かわりに「退職証明書」を請求しよう。

  • 請求しても証明書を出してもらえない場合は法律違反。労働基準監督署などに通報・相談を。また、解雇理由に納得できない場合は労働局や弁護士に相談してみよう。

おわりに

法律を守らない「ブラック企業」が横行する今、雇用者側の一方的な理由で解雇されてしまうケースは多くあります。

そんなとき、有力な武器となるのが解雇理由証明書。「おかしいな」と思ったらきちんと請求し、もらうようにしてください。


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