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給料の天引き、金額はいくら?目安表一覧&実は違法な3つのケース

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投稿日時 2019年02月14日 11時22分
更新日時 2019年02月18日 17時00分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 給料の「手取り額」がどの程度となるのか、目安を知りたい人

  • 給料の天引きが多すぎて、おかしいのではないかと思っている人

  • 給料の天引きにはどのような種類があるのか知りたい人

はじめに

「手元に残る給料って、思ったより少ないんだな…」

はじめて就職した人が、一度は思うことではないでしょうか。

手取り給与という言葉があるように、会社が払う給料が手元に渡るまでには、年金、保険料、税金といった、さまざまな名目で天引きが行われます。これらは法律で支払うことが決められているのです。

しかし、それ以外の名目で天引きがあった場合は要注意。法律で認められていない、違法な天引きである可能性があるからです。

この記事では、給料から、どんなお金がいくら天引きされるのか、その仕組みを解説していきます。違法な天引き事例もあわせて紹介していきますので、「なんだか給料ひかれすぎてる気がする…」という人は確認してみましょう。


1.給料から引かれるお金はいくら?基本となる4種とその金額



給料から天引きされるお金は、主に4種類。

①構成年金(国民年金)
②健康保険
③雇用保険
④所得税

です。

それぞれの内容と目安となる金額について、まずは解説していきましょう。

①厚生年金…額面給与の約10%

厚生年金とは、日本政府が労働者を対象に運営する年金制度のこと。

一定期間「年金保険料」を国に払い続けるかわりに、65歳以上になると毎月国からお金がもらえるという仕組みです。

月々支払う保険料の半分は企業が負担することになっているため、残った半額が給料から差し引かれます。

その金額は年によって変わる可能性がありますが、2019年2月時点では、額面給与のおよそ10%。目安となる金額を下記の表のとおりまとめました。

給与額 天引きされる保険料
175,000円~185,000円 16,470円
185,000円~195,000円 17,385円
195,000円~210,000円 18,300円
210,000円~230,000円 20,130円
230,000円~250,000円 21,960円
250,000円~270,000円 23,790円
270,000円~290,000円 25,620円
290,000円~310,000円 27,450円
(参考元:日本年金機構「平成29年9月分からの厚生年金保険料額表」)

また派遣社員や契約社員、パート社員といったいわゆる非正規雇用であっても、一定の条件を満たしている場合、会社は厚生年金に加入しなければなりません。

(1)雇用契約期間が2ヶ月以上
(2)1週間の労働時間が正社員の4分の3を超えている
(3)1ヶ月の労働日数が正社員の4分の3を超えている

ただし、従業員数が501人以上の会社に勤めている場合は「1週間に20時間以上働いている」「給料の月額が88,000円以上」「1年以上の勤務が見込まれている」の3つの条件も満たす必要があります。

  • フリーランス・短期雇用などの場合は国民年金

    厚生年金は、会社に雇用される人たちを対象にしています。そのためフリーランス(自営業)・農業・漁業従事者などは加入できません。

    そんな人たちが加入するのが国民年金。20歳以上の国民全員に加入が義務付けられている制度で、先ほど紹介した厚生年金保険料の一部にも、この保険料が含まれています。

    金額は収入によらず一定で、2019年3月までは月々16,340円。2019年4月以降は16,410円となります。

②健康保険…額面給与の約5%

健康保険は、保険料を協会や組合に納めることで、病気やケガなどで医療を受けた際にかかる医療費を抑えられる仕組みです。協会や組合が保険料の一部を医療機関に支払います。

健康保険料の支払先には、全国健康保険協会、総合健康保険組合、共済組合があります。このうち、最もポピュラーなのは中小企業が加入する全国健康保険協会です。健康保険料も、「厚生年金+国民健康保険」と同じく2分の1を会社が負担し、残りを従業員が支払います。健康保険料は都道府県によって異なりますが、大体給料の約5%です。

東京都の健康保険料の天引き額は、次の表を参考にしてください。

給与額 天引きされる保険料
175,000円~185,000円 8,910円
185,000~195,000円 9,405円
195,000~210,000円 9,900円
210,000~230,000円 10,890円
230,000~250,000円 11,880円
250,000~270,000円 12,870円
270,000~290,000円 13,860円
290,000~310,000円 14,850円
(参考元:全国健康保険協会「平成30年度保険料額表(東京都)」)

新卒社員の場合は、年金保険料と同じく5月の給料から天引きされるため注意しましょう。

③雇用保険…額面給与の0.3%

雇用保険とは、失業時や教育訓練を受けるときなどに給付金を受け取れる制度です。失業者は収入がないため、生活に困窮する恐れがあります。雇用保険に加入していることで、失業時に国から援助を受けられるため、再就職の促進に繋がるのです。

雇用保険料は、会社と従業員の両方が負担し、従業員の負担はおおよそ下記の通りです。

一般事業:給与の0.3%、
農林水産や清酒製造、建設業:給与の0.4%です。

計算のベースとなる給与には、基本給や超過勤務手当、住宅手当、賞与、社会保険料などが含まれますが、災害見舞金や出張旅費、制服、退職金などは含まれません。

④源泉徴収…額面給与から①②③を引いた額の約3%

①②③が天引きされたあと、さらに税金が天引きされます。これを源泉徴収といいます。

細かな計算は複雑となるため省きますが、新卒社員の給料を18万~30万円と仮定した場合、おおよそ2.5~2.8%が天引きされる形となります。

多くの会社では源泉徴収を多めにとっていますが、これらのお金は年末調整という名目で、12月に戻ってきます。

さらに詳しく源泉徴収額を知りたい場合は、国税庁のサイトなども参考にしてみてください。

⑤その他、天引きの可能性があるもの

年金保険料と健康保険料、源泉徴収の他にも次のようなものが天引きされる可能性があります。

  • 企業年金

    企業年金とは、厚生年金や国民年金に加え、セカンドライフを支える重要な福利厚生制度として各企業が独自に取り入れている制度です。厚生年金基金確定拠出年金中小企業退職金共済などがあります。


  • 財形貯蓄

    企業が銀行などと提携し、給与から貯蓄額を天引きする制度です。自分でお金を溜めることが難しい方は利用するといいでしょう。財形貯蓄には、マイホーム購入のための「財形住宅貯蓄」、60歳以降に年金として受け取る「財形年金貯蓄」、教育費などその他の資金を溜める目的の「一般財形貯蓄」があります。


  • 労働組合費

    労働組合は、賃金や労働時間の改善の交渉などをする労働者で構成される団体です。労働組合費は、労働組合の活動に必要な費用のことで、労働組合に加入する場合に支払う必要があります。労働組合が組合員から直接徴収する方法と、会社と協定を結び、給料から天引きする方法があります。


  • 住民税(給与をもらって2年目の6月から)

    住民税は、1月1日の時点で住んでいる都道府県に納める税金です。自ら住民税を納める普通徴収と、給料から天引きされる特別徴収があります。特別徴収では、給料を受け取るようになってから2年目の6月~翌年5月まで、12回に分けて給料から住民税が天引きされます。納める住民税額は、各都道府県で異なります。




2.罰金はNG!法律違反となる3つの天引き



これまで紹介してきた例外を除き、原則として給料からの天引きは違法です。

しかし実際には、さまざま名目でやってはいけない天引きが横行しているのが現状。ここでは具体的な例に触れつつ、違法な天引きパターンについて紹介します。

①「罰金」を天引きするのはNG!

備品を壊したりノルマが達成できなかったりした場合に罰金として給料から天引きされることがありますが、これは違法です。

例外として、会社のルールを違反した社員を減給するというパターンがありますが、それでも1回あたりの上限は日給の半額まで、と定められています。仮に問題を起こした社員が日給1万円だった場合、減給は5000円までしか認められません。

くわえて、ミスによる備品の破損やノルマの未達成は、通常働いていれば誰でも起こす可能性のある失敗です。たとえ会社のルールとして事前に定めていたとしても、不公平な処分とみなされるケースが多いでしょう。

  • 遅刻、欠勤の場合は認められる場合も

    ただし、遅刻、欠勤した場合に、働いていない分の賃金を給料から差し引くのは認められる場合があります。

    これは働いている時間に対して会社が給料を渡す、という原則があるからです。

    ただし、遅刻や欠勤したからといって、働いていない時間・日よりも多くの賃金を差し引くことはやはり法律違反となります。10分の遅刻で数千円の罰金をとるような場合は、違法である可能性が高いでしょう。

②制服代、研修費、駐車場代…どこまで許される?

会社によっては、制服などのさまざまな備品を従業員に購入させることがあります。

そのルールが、労使協定と呼ばれる話し合いを経て決められたものであれば、問題ありませんが、その場合は入社前に渡される雇用条件通知書に天引きのルールを記載する必要があります。

もし天引きのルールが書かれていなかったり、そもそも雇用条件通知書がないような場合は違法となるので注意してください。

また、労使協定に合意したことがわかる書面は、従業員がいつでも見られる場所に保管されていなければなりません。例えば、支社に勤めており、遠く離れた本社に行かなければ確認できないような場合は法律違反となります。

③会社から借金をしている…天引きは仕方ない?

会社からの借金を給料から天引きするのも違法となります。

例外として、どうしても会社から借金しなければならない事情があり、給料からの天引きで借金を返済することを労使協定で合意している場合は認められます。ただし、強制的に合意させる状況に追い詰めるなどした場合はこれも無効です。

また、毎月の天引き額が賃金の4分の3以上であったり、会社から借金をする合理的な理由がなかったりする場合も、給料からの天引きは原則として認められません。


3.悪質な天引きは返してもらうことも可能!証拠と通報窓口



給料から不当に天引きされている場合は、対応次第では返還を求めることができます。

ポイントは、証拠を集めることです。ここでは、悪質な天引きの返還を求めるために必要な証拠と通報先をご紹介します。

①悪質な天引きは、未払い賃金として請求可能!

違法な天引きが行われていた場合、本来支払うべき賃金を会社が払っていなかったとして、その差額分を改めて請求することができます。

注意点は、請求期限が2年と比較的短く定められていることです。不当な天引きに気づかず、2年を過ぎてしまう可能性もあります。

ただし、会社が不当な天引きと自覚していた場合は、請求期限がもっと伸びる可能性もあります。

悪質な天引きは珍しいことではありません。2019年では、保険代理店が従業員の同意なく高額な経費を天引きしていたとして、元従業員が集団訴訟を起こした事例があります。

②用意すべき証拠と、通報&相談窓口

請求する際には、給与から実際に天引きされている事実と、その天引きが不当であることの証明が必要です。

給与明細書、雇用契約書(労働条件通知書)、就業規則、賃金規定などの証拠を用意したうえで、交渉にのぞみましょう。

さらに、頼りになる通報窓口や相談窓口もあわせて紹介します。

  • 労働基準監督署の総合労働相談コーナー

    給料の不当な天引きの他、不当解雇やパワハラなど労働に関することを何でも相談できます。また、労働基準法違反が疑われる場合は、会社に行政指導が行われる他、必要に応じて法テラスや裁判所などの情報提供を受けられます。会社に行政指導が入ることで、不当に天引きされていたお金が返ってくる可能性があります。

    下記から管轄の自治体の連絡先を確認しましょう。

    厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内

  • 厚生労働省の労働条件相談ほっとらいん

    会社への指導はできませんが、電話で気軽に相談できる窓口です。必要に応じて、専門機関の紹介や法律などの情報を提供できます。通話料は無料で、全国どこからでも相談可能です。

    電話番号 0120-811-610
    受付時間 平日:17時~22時 土・日9時~21時
    休業日:12/29~1/3

  • 弁護士

    弁護士は、法律知識を駆使してあらゆる問題解決に取り組む専門家です。初回に限り無料で相談できる弁護士も多いため、近くの弁護士を探してみてください。過去の判例や法律に基づいた様々な情報を得られます。訴訟の際には、代理人として裁判所に出廷したり、依頼主をサポートしたりできます。

③被害者が多い場合は集団訴訟も

不当な天引きが自分以外の従業員にも行われている場合には、集団訴訟も検討しましょう。1人で訴訟を起こすよりも、弁護士費用などの負担を抑えることができます。また、何よりも心強いため、途中で諦めてしまうリスクも減らせるでしょう。

会社が従業員を不当に扱う風潮がある場合、従業員全員に対して不当な天引きをしている可能性があります。他の従業員の話を聞くなど、集団訴訟が可能かどうか調べましょう。


4.まとめ

  • 給料からの天引きが認められているのは、年金保険料・健康保険料・所得税・住民税の他、企業年金や財形貯蓄などのみ。

  • 従業員との合意なしに研修費や制服費などを天引きすることはできないため、雇用条件通知書を確認しておこう。

  • 不当な天引きの請求は2年、または3年~10年。できるだけ早く事実を確認し、必要に応じて弁護士への相談や集団訴訟を検討しよう。

おわりに

給料からは、健康保険料や年金保険料など様々なお金が天引きされます。しかし、正当な天引きに紛れて不当な天引きが行われていることもあるため、給与明細を確認することが大切です。不当な天引きがあった場合は、できるだけ早く会社に請求しましょう。


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