この記事は以下の人に向けて書いています。
- 賃貸住宅に住み、住居のことでトラブルが起きている人
- 賃貸住宅の契約について、誰かに相談したい人
- 敷金や原状回復でトラブルがあり、法律的なきまりを知りたい人
はじめに
賃貸マンションやアパートに住んでいるときや、賃貸契約を結ぶとき、さらに引っ越しをするときなど、住居に関するトラブルはさまざま。
「誰かに相談したい……アドバイスがほしい……」
そんな人のために、相談窓口をトラブル別にまとめました。
困ったときの参考としてみてください。
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1.入居時・退去時の相談先と準備するもの
賃貸住宅に関するトラブルで、特によく起こりがちなのが、入居時・退去時に関するもの。
それぞれについての主な相談先を下記にまとめました。
以下、
①敷金・原状回復費用などの契約トラブル
②引っ越し業者に関するトラブル
の2つのケースについて、事前準備や各相談先などについて、より詳しく解説をしていきます。
①敷金・原状回復費用などの契約に関するトラブル
入退去時にトラブルになりがちなのが、入居時に大家さんへ支払う
「敷金」と、退去時の修繕、清掃、鍵の交換などにかかる
「原状回復費用」についての問題。
こうした契約時のトラブルについて相談する際は、まずは以下のような情報・証拠を用意しておくようにしましょう。
・賃貸の契約書(賃貸借契約書)
・原状回復トラブルの場合、管理側の提示してきた見積り(現状の写真も一緒に)
・欠陥住宅の場合、欠陥がわかる資料(写真や動画、何かしらの数値データなど)
・そのほか関係する資料
以下、各窓口について具体的に解説していきます。
- 消費者ホットライン
消費生活センターが運営している相談窓口で、消費者の生活関係全般の相談を受け付けています。
先に紹介した敷金や原状回復費用だけでなく、欠陥住宅や管理会社とのトラブルなども相談することが可能。「どうしたらいいのか」と困った場合に、まず連絡してみると適切なアドバイスがもらえるでしょう。
また、弁護士などの専門機関や、業者側との交渉によって解決をめざすあっせんという制度の紹介も行っています。
トラブルになっている金額が大きく、内容が深刻である場合は、利用を申請してみましょう。
消費者ホットラインが混雑していて電話がつながらなかった場合は、国民生活センターの「平日バックアップ相談」を利用することも可能です。
電話番号 |
03-3446-1623 |
受付時間 |
平日10時~12時 13時~16時 |
- 法テラス・サポートダイヤル
法テラスとは、国が運営する法的なトラブル全般を取り扱う相談所です。賃貸契約や欠陥住宅、家賃滞納について相談することができます。
また、相談窓口情報検索で自分が住んでいる都道府県や相談したいトラブルについて入力し検索すると、相談を受け付けている最寄りの窓口を知ることもできます。
- 日本司法書士総合相談センター
日本司法書士会連合会が運営している法律に関する相談窓口です。各都道府県司法書士会に設置されており、賃貸関係では敷金トラブルなどに対応しています。
- 一般財団法人不動産適正取引推進機構
国家資格である宅地建物取引資格試験を運営している不動産関係専門の法人です。不動産に関するトラブル全般の相談を受け付けています。
また、行政や消費生活センターの要望に応じて、不動産取引の専門家や行政経験者、弁護士などで構成する紛争処理委員による調整や仲裁なども行っています。
調整は、紛争処理委員3名が業者側と消費者側の間に立ち、双方の主張などを聞いて解決案(調整案)を出すもので、案に納得すればそこで終了となります。
もし、納得できなかった場合は、仲裁か通常の民事訴訟へ移行することになります。
仲裁は、トラブルの解決を委員にゆだね、委員が出した結論(仲裁裁定)にすべて従うというものです。
ウェブサイトでは、よくある相談について回答や紛争解決への取り組みなどを掲載しているので、確認してみてください。
- 一般財団法人日本消費者協会
1962年から活動している消費者団体です。専門の相談員が、相談されたトラブルに合わせて様々な助言をしてくれるだけでなく、場合によってはあっせんも行ってくれます。
実際、契約上のトラブルで契約金の全額返金を求めた消費者から相談を受けていた協会があっせんを行ったことで、業者側が素直に返金に応じたこともあるようです。
詳しくは、協会のウェブサイトで事例集を公開しているので、チェックしてみてください。
相談事例紹介
- 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会
賃貸住宅のトラブル全般の相談を受け付けている相談窓口です。
敷金の返金についてだけでなく、入居時の事前説明不足や入居後の住宅管理不備などの相談も受け付けており、アドバイスしてくれます。
なお、相談はメール・FAX・郵便で受け付けていますが、返答は電話で行われるので注意してください。
- 一般社団法人日本不動産仲裁機構
弁護士や各分野の専門家によるADR(裁判外紛争解決)手続きを受けることが可能です。
ADRはあっせん、調停、仲裁をまとめた呼び方で、裁判の一歩手前で解決を行うものです。
ADR以外にも、トラブル内容に応じて適切な関係団体を紹介しているので、参考にしてみてください。
②引っ越しな業者に関するトラブル
そのほかにありがちなのが、業者の荷物紛失や料金トラブル、住居の破損といった、引っ越し業者に関するトラブル。
こちらも同じく、外部の相談窓口を利用しましょう。
相談する際は、
・どういう経緯で起きたのかまとめた時系列表
・家または荷物の破損・紛失に関する証拠(写真など)
・そのほか関係する資料
などを用意しておくようにしましょう。
- 公益社団法人全日本トラック協会
トラックを扱う業者が加入している法人です。協会が優良な引っ越し業者を認定する「引越事業者優良認定」制度を設け、認定された業者は「引越安心マーク」というマークを使うことができます。
一般消費者向けの相談窓口を2つ設けているため、目的に応じて使い分けましょう。
輸送サービス相談は、相談に対してアドバイスをしてくれる電話窓口です。
アドバイスだけでなく、解決に動いてもらいたい場合は引越安心相談を利用しましょう。トラブルや苦情について相談を受け付けており、相談者が希望すれば、相談内容を業者側に伝え、調査・報告をしてもらうことが可能です。
ただし、調査を依頼できるのは、引越安心マークのついている認定団体のみ。加盟業者は下記のリストからも確認できますので、依頼した業者が含まれているかどうか事前に確認をしてみてください。
引越安心マーク制度(引越事業者優良認定制度)都道府県別一覧表
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2.そのほかのトラブルでの連絡・相談先
給湯器の故障など、何かしら特定のトラブルが起きた場合の連絡・相談先についてもご紹介します。
①住居設備の故障
エアコンや給湯器など、住居に備え付けの設備に関するトラブルは、管理会社か大家に連絡します。
夏場にエアコンが故障すると、タイムロスを減らすために自分で修理業者を呼びたくなりますが、その後の修理費用の支払いについて管理側ともめる可能性があります。
必ず、最初に管理側へ連絡をしてください。
どちらに連絡すればいいのかは、契約時に渡された書面に書かれていることが多いので、確認してみましょう。
もしわからなければ、直接管理会社に問い合わせてみてください。
②水漏れ
水漏れが起きた場合は、まず管理会社と大家さんに連絡します。水漏れの原因によって、修理費が管理側持ちなのか借主持ちなのかが変わるので、必ず一報入れてください。
その後、
水道業者と
電気会社に連絡します。必ず両方に電話をしましょう。水道に関する修理だけでなく、
水漏れによる漏電についても調べる必要があるからです。
管理会社と大家さんに連絡した際に、修理の手配をしてくれることもあります。
③騒音
賃貸に管理組合があれば管理組合、なければ管理会社に相談しましょう。
・どれぐらいの頻度か
・どのような音なのか
・どこから音がしているのか
・騒音の発生する時間帯
などの情報をあらかじめ整理しておくとスムーズです。
もしも対応してもらえなければ、消費者ホットラインに連絡してその後の対応について相談してみるといいでしょう。
または、証拠をもって各自治体の市区町村公害苦情相談窓口に相談すると、場合によっては騒音の発生源に指導し、改善を促してくれることがあります。
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3.2020年4月以降から適用!敷金・原状回復の新規定
国民生活センターによると、賃貸契約時に支払った
敷金が返金されなかったり、賃貸住宅の退去時にハウスクリーニングなどを行う
原状回復の費用として敷金を上回る費用を請求されたりするトラブルの相談が2017年に1万3199件寄せられています。
これらのトラブルは、「
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に応じて対応されていますが、相談が絶えないのが現状。
それを受けて、
2020年4月から敷金と原状回復について、明確な規定が設けられることになりました。
それぞれ何が変わるのか、どんなことができるようになるのかについて、解説をしていきます。
①敷金の返金が義務化へ!
敷金とは、賃貸住宅への入居時に大家へと支払うお金のことで、一人暮らしのケースだと、一般的に家賃の1~2か月を支払うのが一般的です。
この敷金はあくまで一時的に預かっているもので、退去時に返金される名目になっていますが、
この敷金が返還されないといったトラブルが問題となっています。
よくあるパターンは、以下のようなもの。
・明らかに高額なクリーニング代を敷金から差し引かれた
・原状回復で使った分以外の敷金の返金を求めたが応じてもらえなかった
・借主が負担する原状回復費用はないはずなのに、敷金を全額返金してもらえない |
こうした問題の大きな原因となっているのは、
敷金の扱いがそもそも法律で定義されておらず、昔からの慣習に従って行われている点。
国土交通省がガイドラインを定めているものの、あくまで「基準」にすぎず、法律としての強制力がないのが現状でした。
その基準が2020年4月以降、法律として明確に定義されます。
それは「敷金は、基本的に家賃滞納の際に備えて支払うお金である」とするもの。
よくありがちな
「クリーニング費」「修繕費」などの名目で敷金を差し引くことは原則としてできなくなったのです。
②原状回復義務の基準が明確に
もうひとつ、大きく変わるのが、
原状回復義務です。
これは賃貸契約が終わったときに、借主は部屋を契約前の状態に戻す義務があるとするもので、敷金と同じく、退去時のトラブルの原因となっていました。
よくある例は以下のようなものです。
・家具を置いたところの畳のへこみを理由に、畳すべての張替えを要求された
・タバコにより匂いがついたことを理由に、壁紙の全面張替えを要求された
・立ち合いのときには指摘されていない部分の修繕を後から要求された
・床の張替えを要求された |
こちらも2020年4月以降、一定の基準が定められる形となります。
その内容は「借主に大きな責任のない傷や劣化については、原状回復の義務はない」とするもので、国土交通省がこれまでガイドラインとして定めてきたものが、改めて法律として効力を持つ形となります。
この基準をもとに考えると、よくあるキズとその負担は以下のように振り分けられます。なお、あくまで一般的なケースなので、程度や契約によっては例外となることもあるので注意してください。
借主負担 |
大家負担 |
くぎ穴などの比較的大きな穴 |
画鋲などの小さな穴 |
タバコを室内で吸ったことによる壁紙の汚れ |
日焼けや経年劣化による壁紙の汚れ |
引っ越しや模様替えでできた床のキズ |
家具を置き続けたことによる床のへこみ |
飲食物をこぼしたことによるカビ・シミ |
フローリングのワックスがけ |
(参考:国民生活センター「
原状回復費用とガイドラインの考え方」)
ただし、これらの内容は
あくまで原則。たとえば事前の賃貸契約内容に、敷金や原状回復に関する特別の内容
(特約)が含まれていた場合などは例外となる可能性があります。
事前の契約内容をよくチェックするとともに、明らかにおかしな契約内容であった場合は弁護士に相談するなどの対策をとるようにしてください。
4.まとめ
- 敷金や原状回復、契約関係、引っ越しなどでトラブルが起きた場合は、専門の相談窓口に連絡し、アドバイスを受ける
- エアコン故障や水漏れなどの場合は、真っ先に管理会社と大家に連絡する必要がある。どちらを優先すべきかは、賃貸借契約書などに書かれているので確認すること。
- 敷金・原状回復のトラブルをうけ、民法が改正。2020年4月から敷金や原状回復に一定のルールが定められるようになる。
おわりに
ふだんの暮らしでも直面しがちな、賃貸住宅でのトラブル。
適切な相談窓口を利用し、解決に向けて行動しましょう。