この記事は以下の人に向けて書いています。
- クレジットマスターの手口について知りたい人
- 被害にあったときの対処法を把握しておきたい人
- 未然に被害を防ぐ方法はないのか気になる人
はじめに
クレジットマスターとは、さまざまな方法で他人のクレジットカード番号を割り出すソフトウェアのことで、同時にこれらのツールを使った詐欺全般の呼び名としても使われています。
2018年12月には、スマートフォン決済サービスのPayPayでクレジットマスターを悪用した詐欺の被害が相次いだため、その名前を聞いたことがあるという人もいるでしょう。
多くの人が1枚は持っているクレジットカード。クレジットマスターの被害を受けるリスクを下げるにはどうすればよいのでしょうか?
この記事では、クレジットマスターの詳しい手口を解説するとともに、その被害を最小限に抑えるために日常生活で気を付けるべきポイントを紹介していきます。
1.個人で予防は不可能!?クレジットマスターを使った不正利用の手口
まずは、クレジットマスターがどんな仕組みでカードを不正利用しているのか、詳しくみていきましょう。
①パソコンでカード番号を割り出す「クレジットマスター」
冒頭でも伝えた通り、「クレジットマスター」とは本来、使用可能なクレジットカード番号を見つけ出すコンピュータープログラムのことです。
カード会社によって異なりますが、クレジットカードの番号は14~16桁。ただしその番号は完全にランダムな数字というわけではなく、発行会社や一定の規則などに従って決められています。
クレジットマスターはこうしたルールを逆手にとり、
実在しそうなカード番号を大量に作成。それを通販サイトなどで手あたり次第に利用することで、
本当に使えるカードの番号を突き止めるのです。
ネットショッピングの際にはカードの有効期限なども必要になりますが、こちらもランダムで作成したものを総当たりで試し、有効な数字を割り出すのです。
これはつまり、誰かの使っているクレジットカード番号を、プログラムが自動的に割り出してしまうということ。
仮にあなたがクレジットカード情報を外部にまったく漏らしていなかったとしても、
ソフトウェアがもし偶然あなたのカード番号を割り出してしまったら……不正利用のターゲットとなってしまうのです。
事実、契約してから一度も使っていなかったカードを不正利用されたケースも事例として報告されています。
クレジットカードを一枚でも持っていれば、誰でもクレジットマスターの被害にあうリスクがあるのです。
②クレジットマスターに予防法はない…その理由とは
クレジットマスターのさらにやっかいな点は、
予防がほぼ不可能ということです。
まず、偶然一致した番号を使うため、個人では防ぎようがありません。
一方で、通販サイトや銀行などは
・クレジットカード番号を複数回間違えた場合は取引を停止する
・クレジットカード番号とは別に、特定のパスワードや個人情報を追加で入力させる
・利用ごとに使い捨てのパスワード(ワンタイムパスワード)などを使用する
といったさまざまな対策をとっていますが、
セキュリティチェックの甘い通販サイトが世界中に1つでもあれば、加害者側はそのサイトを使ってカードの不正利用ができてしまいます。
冒頭で触れたPayPayの事例では、クレジットカード番号を何度入力しなおしてもよい仕組みになっていたことが問題となりました。
ランダムで数字を入力し続けさえすれば、どこかのタイミングで必ず他人のカードを使える状態となっていたのです。(※2019年1月時点ではすでに対策済)
さまざまな対策は進んでいるものの、根本的にリスクをゼロにする方法は見つかっていないのが現状です。
2.不正利用を見抜く方法は?日常生活で気をつけたいポイント3つ
これまで説明してきたとおり、クレジットマスターによる不正利用を完全に予防する方法はありません。
そのため、被害にあった際すぐ対応できるよう常に備えておくことが重要となります。不正利用に気づいてすぐ、カード会社や不正利用された通販サイトに連絡すれば、利用を取り消してもらえるからです。
一番怖いのは、不正利用に気づけないパターン。
いきなり高額の請求が来れば不正利用だとすぐ気づけますが、たとえば1回につき1~2万円ほどだった場合はどうでしょう。普段のカード利用に紛れて気づかないまま、お金を騙し取られ続ける……ということにもなりかねません。
自分のカード利用状況を常に把握し、すぐに気づける状態にしておくことが大切です。
普段から気をつけておきたいポイントを、具体的に紹介していきましょう。
①明細をこまめに確認する
不正利用に気が付くための唯一の方法は、
利用明細です。
毎月の引き落とし時だけでなく、こまめに明細を確認し、買った覚えのない商品やサービスがないかどうか、チェックする癖をつけておきましょう。
最近では、利用明細をウェブサイトやアプリで逐一確認できる場合がほとんどです。アプリによってはカード利用したことを通知してくれる機能などもあるため、活用するとより確実でしょう。
②利用目的ごとにカードを使い分ける
1枚のカードですべての料金を支払うのではなく、買い物などに使うカードと、月々の固定費支払い用のカードは分けておくのもよいでしょう。
毎月一定額であるはずの請求が急に増えた場合は不正利用がすぐにわかりますし、用途をわけることでいつ何を買ったのかを把握しやすくなることにもつながります。
③カードを他人と共有しない
Amazonや楽天の通販サイトを利用する際などに、家族でカードを共有している場合もあるかもしれません。
しかし、同じカードを複数人で使用すると、誰が何にお金を使ったのか互いに把握しづらくなり、不審な請求を見抜けなくなるリスクが高まります。
通販サイトに特定のカードを登録している場合など、ついつい共有で使ってしまいがちですが、
必ず個人で利用し、ほかの人とは共有しないようにしましょう。
3.被害にあったら盗難保険を利用しよう!申請手続と注意点
では、もし被害に気付かず、お金が引き落とされてから不正利用に気づいた場合、どうすればよいのでしょうか?
実は、ほとんどの
クレジットカードには「盗難保険」と呼ばれる保険があり、万が一不正利用された際の被害額を補償してくれる仕組みとなっています。
この章では、クレジットカードの盗難保険を利用する方法について、ステップ別に解説していきます。
①本当に不正利用なのかを確認する
まずは落ち着いて、もう一度よく明細を見直しましょう。
不正利用ではなく、ただの思い込みだった……というケースもありえます。下記のポイントに気を付けて、再度よく思い返してみてください。
- 自分が忘れている可能性はあるか?
「こんなものは買ってない!」と思っても、もしかしたら忘れているだけかもしれません。利用明細と利用日を確認し、よく記憶をたどってみましょう。
- 身内が使っている可能性はあるか?
先ほどご紹介したように、自分では身に覚えのない利用でも、家族が買い物をした可能性があります。
家族に「こうした買い物をしていないか」と尋ねてみましょう。
- 買った先とカードの支払先が違うだけではないか?
自分がカードを使った店舗の名前と、利用明細に書かれている会社名が異なっているケースも考えられます。
これは、店舗とクレジットカード会社の間に決済代行会社という仲介業者が入っていると起こる可能性があります。
利用日や利用金額、利用用途などを確認し、そのとき別の場所で購入した商品がないかどうか、調べてみましょう。
②クレジットカード会社の窓口に連絡する
明細を確認してもやはり支払いに覚えがない場合は、不正利用である可能性が高まります。すぐにクレジットカード会社に連絡しましょう。
主要なクレジットカード会社の連絡先は下記の通りです。
③カード会社の調査に協力する
カード会社に連絡すると、まずはカードの利用が停止されたうえで、本当に不正利用が行われたどうかの調査が行われます。
その過程で、警察への被害届の提出や、利用明細のうつしなどを求められる場合もありますので、必要に応じて指定の書類などを提出しましょう。
警察への被害届は、最寄りの警察署で行います。主に下記の情報や書類を用意しておくようにするとよいでしょう。
・自分の名前や職業、住所、年齢
・被害にあった年月日
・被害の概要
・被害金額
・その他、関係するもの
念のため警察署にあらかじめ電話し、ほかにどんなものが必要か確認をとりましょう。
その際、すでにクレジットカード会社に連絡し、カードを停止していること、不正利用の調査で被害届が必要なことなどを合わせて伝えるとよりスムーズです。
警察に被害届を出す際の注意点などは、下記のページでも紹介しています。
④盗難保険を利用する際の注意点
盗難保険を利用する際には、いくつかの注意点があります。
- 保険適用外となる場合もある
カード所有者に明らかな不備があった場合は保険を適用してもらえません。
たとえば、以下のようなケースだと対象外になります。
家族に貸したカードを物理的に盗難された
クレジットカード番号と暗証番号をメモした紙を放置し紛失していた
誕生日などの、バレやすい番号を暗証番号にしていた
違法動画購入などでクレジットカード情報が流出した |
ただし、クレジットマスターの場合、被害者に非がないことがほとんどです。適用外の条件に当てはまる可能性は低いでしょう。
- 適用できる期限に注意
盗難保険は、ほとんどの会社で60日以内に申請しなくてはなりません。
ここで注意が必要なのは、引き落としから60日ではなく、利用日から60日以内であるということ。
たとえば、月末締め翌月末払いのクレジットカードがあったとしましょう。
この場合、2月1日の利用分は3月31日に請求されます。請求が来てはじめて不正利用に気がついた場合、保険適用の期限までもう数日しかなく、すぐに申請しないと期限切れになってしまいます。
余裕をもって申請するためにも、カードの利用状況は必ずこまめに確認するよう心がけましょう。
- クレジットカードの再発行手続きも忘れずに
当然ですが、すでに番号が割り出されてしまったカードを使い続けるのは危険です。現在使っているカードは利用を停止し、再発行の手続きをしてもらってください。
盗難保険適用時にあわせてクレジットカードの再発行も行う形になるとは思いますが、念のため覚えておくようにしましょう。
4.まとめ
- クレジットマスターはクレジットカードを不正利用する手口の1つ。2019年1月現在、有効的な予防方法は存在していない。
- クレジットマスターの場合、不正利用されたことにすぐ気がつく日常にしておくことが大切。カードの利用明細をこまめに確認する、利用目的別にカードを使い分ける、カードを他人と共有しない、などして、すぐに不正利用に気がつくようにしておく。
- もしも、被害にあった場合は、真っ先にクレジットカード会社に連絡し、盗難保険を適用してもらう。盗難保険は、利用日から60日以内に申請する必要があるため、注意。
おわりに
残念ながら、クレジットマスターは被害を防ぐことができない犯罪です。
私たちにできることは、すぐに不正利用を見抜き、クレジットカード会社やネット通販サイトに連絡すること。
「うっかり支払ってしまい、盗難保険の適用期限も過ぎてしまった」ということがないよう、迅速な行動を心がけましょう。