この記事は以下の人に向けて書いています。
- 詐欺の被害にあい、お金を取り戻したい人
- 詐欺被害の傾向と対策について知りたい人
- 詐欺返金業者に依頼すべきかどうか迷っている人
はじめに
誰にとっても身近なものとなりつつある詐欺被害。
警視庁が発表した「
平成30年11月の特殊詐欺認知・検挙状況等について」によれば、
2018年1月~11月の特殊詐欺の認知件数は約15,000件で、被害額は約320億円となっています。
もし、自分や身近な人が被害を受けてしまったら、どうすればよいのでしょうか?
この記事では、詐欺被害にあった場合の対処法について紹介をしていきます。
代表的な詐欺の手口や、詐欺被害者を狙う悪質業者の見抜き方なども紹介しているので参考にしてください。
1.ケース別!詐欺の被害にあったらすぐ行いたい対策3選
この章では、騙されて取られてしまったお金を取り戻す手段について、被害のケースに分けてご紹介します。自分に当てはまるケースを見て、参考としてみてください。
①相手の口座にお金を振り込んでしまった!
犯人の口座にお金を振り込んでしまった場合、
振り込め詐欺救済法という制度を使うことで、お金を取り戻せる可能性があります。
振り込め詐欺救済法は、被害者からの申請によって加害者の口座を凍結し、残高を被害者に分配する制度のこと。具体的な利用法について紹介していきましょう。
- まずは振り込み先金融機関へ連絡を!
まず犯人の口座を管理している金融機関に連絡し、詐欺被害にあったことを伝えてください。
銀行の場合は全国銀行協会のウェブサイトに記載されている各銀行の詐欺被害者専用ホットライン、そのほかの金融機関の場合は各ウェブサイトの相談窓口に連絡します。
金融機関に連絡したあとは、警察庁のウェブサイトから最寄りの相談窓口に連絡をし、警察署に被害届を提出してください。
そのとき必要になるのが、加害者の口座番号や電話の録音内容などです。
詐欺によっては詳細な情報が必要になる場合があるので、事前に何が必要なのか確認しておくとよいでしょう。
被害届の出し方については、下記記事も参考にしてください。
- 口座凍結から返金までの流れ
金融機関は、被害者から伝えられた口座が犯罪に使われた可能性が高いと判断すると、その口座を凍結し、現金の引き出しをできなくします。
その後、口座の名義人が持つ権利を消滅させる手続きを経て、返金手続きが開始されます。
手続きの開始は金融機関からの連絡のほか、預金保険機構のウェブサイトにも掲載されます。
電話での連絡は詐欺である可能性もありますので、万が一に備えてウェブサイトも必ずチェックするようにしてください。
返金の開始が通知されてから90日の間に、支払いの申請・審査を経て、返金の手続きが行われます。
- お金が戻ってこない場合もあるので注意
振り込め詐欺救済法では、口座の残高を超えた金額を申請することはできません。犯人が凍結される前に預金を引き出した場合は、全額が戻ってこない可能性があります。
また同じ被害を受けた人が返金の申請をしていた場合、被害額に応じて口座残高が分配されるため、戻ってくるお金は実際の被害額より少なくなります。ので留意しましょう。
さらに、口座残高が1,000円未満の場合や、返金の申請をしそびれてしまった場合は、お金が返ってきません。
振り込め詐欺救済法は下記でも紹介しているので参考にしてください。
②銀行のキャッシュカードや通帳を手渡してしまった!
振り込め詐欺救済法が適用されるのは口座振込型の詐欺のみで、これ以外の方法で騙し取られた場合は利用できません。
近年ではこの弱点をつくように、
銀行のキャッシュカードなどを直接騙し取る詐欺が急増。
警察庁によれば、2018年1~9月の認知件数は2017年の約1.6倍、4,152件となっています。
- 危険!すぐに金融機関へ通報!
警察官や銀行職員になりすました犯人は、キャッシュカードや通帳を受け取ると預金口座を引き出します。
口座に預金がなくとも、油断は禁物。別の詐欺の振込先口座に使われる恐れがあります。
決してそのままにせず、すぐに金融機関に口座を止めてもらうように連絡してください。
- 銀行によっては保険が下りることも
一部の銀行では、もし口座を止めてもらう前に犯人によって不正にお金が引き出されてしまっても補償してくれることがあります。
保険を利用する場合は、口座を止めた上で警察へ被害届を提出し、指定の方法に従って連絡してください。
主な金融機関の問い合わせ先については以下の通りです。
問い合わせ先 |
電話番号と受付時間 |
三菱UFJ銀行
(振り込め詐欺救済法照会ダイヤル) |
0120-860-413
平日9:00~17:00 |
三井住友銀行
(不正出金ホットライン) |
0120-322-775
平日9:00~17:00 |
みずほ銀行
(セキュリティサポートセンター) |
0120-868-715
平日9:00~17:00 |
ゆうちょ銀行
(ゆうちょコールセンター) |
0120-108-420
平日8:30~21:00
土日祝9:00~17:00 |
そのほかの銀行の場合は、各金融機関の窓口に問い合わせてみてください。
ただし、銀行によって補償額に上限が決められていたり、他人にキャッシュカードを渡す、暗証番号を教えるといった行為は過失とみなされ、満額の補償はされなかったりと、こちらも必ずしも100%被害が戻ってくるわけではないことに注意してください。
③お金を郵送してしまった!
詐欺によっては、現金を封筒などに入れて送付させる手口があります。
しかし現金書留という方式以外でお金を郵送することは、
そもそも違法です。
現金を送ってしまった場合の対処法は以下になります。
- 「取戻し請求」で郵送をストップしよう
配達前の郵便物であれば、郵便局に「取戻し請求」を行うことで配達を取りやめることができます。
ウェブサイトから最寄りの郵便局を探し、電話で郵送を止めたい旨を伝えてください。もしポストから投函した場合は、ポストの受け取り口などに書かれている担当郵便局に連絡しましょう。
電話で伝える際には、自分の氏名や送り先住所、送った封筒の形や色などを正確に伝えるようにしてください。
自分の送った封筒が見つかったら郵便局から連絡が来ますので、送った郵便物の引き渡しを求める取戻し請求を行います。こちらは連絡先の郵便局などの窓口で直接行う形となります。
差出人であることを証明する身分証明書、ゆうパックやレターパックなどで送った場合は送付時に受け取った領収書や控えを持参し、窓口にある所定の取戻し請求書に記入すれば、送った郵便物を受け取ることができます。
ただし、請求では、たとえ荷物が戻ってきたとしても送付料金は戻ってきません。
また、もし発送準備が終わっていたり、届け先住所付近の郵便局が荷物を受けとっていた場合は、別途料金(配達郵便局に請求するときは410円・そのほかの郵便局は570円)が必要となります。
- 間に合わなかった場合はすぐ警察へ
もしすでに届け先に配達されていた場合は、すぐに警察へ向かいましょう。送り先住所がわかる領収書などと一緒に被害届を提出してください。
大抵の場合、受け取りには私書箱などが利用されています。警察に早めに申し出れば、加害者がポストから出してしまう前に取り返せる可能性はゼロではありません。
- お金が相手に渡ったら取り戻すのは困難
もしすでに相手にお金が渡っていた場合、残念ながら取り返すのは困難となってきます。警察に被害届を出し、連絡を待ちましょう。
2.詐欺被害の傾向は?データでチェックする最新の手口
この章では、警察庁の発表「平成30年11月の特殊詐欺認知・検挙状況等について」(警視庁「
特殊詐欺認知・検挙状況等について」)を元に被害の傾向を見ていきます。
①被害額トップ3!代表的な手口
名前 |
件数 |
被害額 |
オレオレ詐欺 |
8337件 |
およそ166億円 |
架空請求 |
4457件 |
およそ120億円 |
還付金詐欺 |
1755件 |
およそ20億円 |
(出典:警察庁「
特殊詐欺認知・検挙状況等について」)
他にも好条件の融資をチラつかせて保証金などの名目でお金を騙し取る融資保証金詐欺、ほとんど価値がない未公開株などを購入させる詐欺、まったく根拠のないギャンブル必勝法を教えるといって情報料などを請求する詐欺などがあります。
②オレオレ詐欺の特徴
- 特徴
オレオレ詐欺は、身内になりすましてお金を騙し取ることで有名な詐欺です。2018年1月~11月の被害件数は8,337件。うち「横領の示談」が833件、「借金返済」が442件と比較的多い結果となっています。
また現在は、親族以外に警察官や銀行職員、デパートの職員などになりすますパターンが急増。
警察官になりすました犯人が「クレジットカードが不正に使われた可能性がある。口座を調べるためにカードを取りに行く」と言って、自宅まで訪問してキャッシュカードを騙し取り、さらに暗証番号も聞き出す手法などが多発しています。
- 対策
家族になりすました犯人を見破るために、家族にしかわからない合言葉を決めておきましょう。「携帯の番号が変わった」などと言われても、もともと控えている番号に必ず連絡するようにしてください。
警察署などの公的機関や企業に所属している人物から連絡があった場合は、本物かどうか確かめるのが有効。警察と名乗るのであれば警察相談専用電話(#9110)に、企業であれば電話番号案内(104)に連絡してみましょう。
③架空請求詐欺の特徴
- 特徴
「延滞料金があり、相手側から訴訟されようとしている」
「財産の差し押さえを避けたかったら、電話連絡してほしい」
このような文言が入ったハガキやメールを送りつけ、連絡してきた相手から相談料や手続費用の名目でお金を騙し取るのが架空請求詐欺です。
平成30年1~11月の件数は4,457件で平成29年の5,753件に比べて少ないものの、訴訟関係費用が名目に使われている手口は461件から859件と急増しています。
これは各地で多発した「訴訟目的の差詐欺ハガキ」の結果です。詐欺ハガキについては、下記でも詳しく紹介しているので参照してください。
また有料サイト利用料金などを名目にした手口は、3,497件から1,984件と減少したものの、依然として一番割合を占めている状況は変わりません。
- 対策
無視をするのが最も有効です。
「無視をするのはちょっと……」という場合は、国民生活センターなどの窓口に相談するのも手。いずれにしても、ハガキやメールに記載されている電話番号には絶対にかけないようにしてください。
④還付金詐欺
- 特徴
還付金が受け取れると言ってATMを操作させ、預金を騙し取る還付金詐欺。公的機関を装いながら、「払いすぎた医療費が戻ってくる」「税金が還付される」など、もっともらしい名目がよく使われます。
下記で他の名目やよく使われる言葉を紹介しているので参考にしてください。
- 対策
まずは、還付金はATM操作で絶対に戻ってこないことを覚えておきましょう。どうしても判断がつかない場合は、年金であれば日本年金機構に連絡するなどして確認してください。
万が一のときに備え、口座の振込限度額をあらかじめ下げておくのも有効です。
3.二次被害に注意!詐欺被害者を狙う悪質業者
昨今では、詐欺被害者に「救済します」と言いながら近づき、お金を騙し取ろうとする悪質な業者も現れています。
ここでは業者がよく使う手口と、悪質業者かを見極めるチェックリストをご紹介します。
①「詐欺被害を取り戻す」とうたいお金を騙し取る
主な手口は次の通りです。
・「詐欺の被害を取り戻しませんか?」とSNSで宣伝し、連絡をしてきた人を言葉巧みに信じ込ませて契約。調査の解約を依頼すると、法外な中途解約料を請求する
・契約をする前にも関わらず区役所や犯人の家などに勝手に行き、かかった交通費や人件費を要求
・犯人から詐欺が成功したという情報を入手してから、「失ったお金を取り戻したくはありませんか?」と被害者に電話して契約を迫る
②頼む前にここをチェック!怪しい業者かを見極めるチェックリスト
・ウェブサイトやブログに注意喚起情報がやたら掲載されている
・依頼すればさも被害金が取り戻せるようにアピールしてくる
(探偵事務所等は、法律により不当請求を解決するための法的権限を有していません)
・探偵業者とうたいながら、探偵業届出番号がホームページに記載されていない
・料金が不透明。無料相談を受け付けているかどうかもわからない
・いざ連絡をすると契約内容が「企業調査」などとなっていて、詐欺被害についての返金にはまったく触れられていない
③もしトラブルになったら……電話での相談窓口
- 消費者ホットライン
商品やサービスなど消費生活全般に関する相談を受け付けている、消費者庁の窓口です。専門の相談員によるアドバイスや、トラブル解決のためのあっせんなどをしてくれます。
※消費者ホットラインがつながらない場合
国民生活センター 平日バックアップ相談
電話番号 |
03-3446-1623 |
受付時間 |
平日10時~12時 13時~16時 |
どんなことをしてくれるかについては、下記でも詳しく紹介しています。
- 警察相談専用電話
生活の安全に関する不安や悩みを相談窓口です。専門の相談員が対応してアドバイスをしたり、場合によっては最適な相談機関を紹介してくれます。詐欺業者か判断できないときでも、気軽に相談できるのがメリットです。
電話番号 |
#9110 |
受付時間 |
平日8時30分~17時15分
時間外は当直または音声案内で対応 |
4.まとめ
- 詐欺被害では、振込型・手渡し型・送付型で対応策が変わる。
- 最新の手口と対策を把握して、犯人の思い通りにならないようにしよう。
- 詐欺被害者をねらう悪質な業者から二次被害を受けないように、依頼するときは十分にチェックする。
おわりに
詐欺被害にあってしまった場合は、とにかく警察に被害届を出すことが大事。
ですが「お金を取り戻したい」という心理につけ込んでくる業者もいるので、警察や専門の相談員の話を聞いて、落ち着いて行動を取りましょう。