この記事は以下の人に向けて書いています。
- セクハラ被害を相談できる人がおらず困っている人
- セクハラの相談窓口を利用する際に準備するものが必要かどうか知りたい人
- こんなことで相談してもいいのだろうか?と不安に思っている人
はじめに
職場で起きるセクハラ問題。女性だけでなく男性がターゲットになることもあり、社会人全員が被害にあう可能性がある悪質な行為です。
本来であれば、被害者が「これはセクハラだ」と主張するような行為があった場合、会社側はその調査・対応をする義務があると法律で定められています。
ですが、実際には被害者が会社に訴え出るのはとても勇気がいること。専門の相談窓口があっても、加害者が直属の上司や先輩である場合など、相談しづらい場合もあります。
さらに悪質なケースになると、「会社に相談したけど、特に対応してもらえなかった」ということも……。
そんなときに心強い味方となるのが、会社外の窓口。この記事では、セクハラ被害の相談窓口を目的別に紹介するとともに、相談前の準備についても解説していきます。
集団訴訟プラットフォームのenjinで被害を取り戻そう
証拠や費用をみんなでシェア。
無料登録する
1.〇〇したいときはどうすればいい?目的別・相談窓口6選
会社外部のセクハラの相談窓口を、目的別に以下の6つにまとめました。
それぞれの機関の具体的な特徴を、以下くわしく紹介していきます。
<悩みを聞いてもらいたい>
①こころの耳
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が行っている職場のメンタルヘルス全般の相談窓口です。精神的な不安・負担をとにかく誰かに話したい、吐き出したい、というときは相談してみましょう。
②みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)
虐待やパワハラなど、人権問題全般の相談にのってくれる電話相談窓口です。法務省が管轄しており、最寄りの法務局や地方法務局につながります。
セクハラだけでなく、パワハラやいじめも一緒に行われたり、男性がセクハラ被害にあっている場合はこちらの相談窓口を利用してみてください。
<具体的なアドバイスや会社への行政指導をしてほしい>
③都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
雇用環境・均等部(室)は、男女雇用機会均等法や育児介護休業法などに関する相談に対応し、トラブル解決に向けて行政指導を行ってくれます。
「会社がセクハラ問題の改善に動いてくれない」など、社内解決が難しいときに、相談してみましょう。
各都道府県の労働局で相談を受け付けています。
④女性の人権ホットライン
女性の人権ホットラインでは、職場でのセクハラや配偶者からのDVなど、女性の関わる人権問題についての電話相談窓口です。
電話は最寄りの法務局・地方法務局につながり、女性の人権問題に詳しい法務局職員や人権擁護委員が相談にのってくれます。
基本的には相談に対しアドバイスをしてくれる窓口ですが、人権侵害が疑われるケースについては、
救済措置として関係機関への紹介や会社への改善勧告などを行ってくれることもあります。
ただし、これはあくまで自主的な改善を会社に促すためのもので、法的な強制力はないので注意してください。
<会社へ申し入れてトラブルを解決したい>
⑤労働基準監督署の総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、労働問題全般を取り扱っている相談窓口です。相談内容に応じてアドバイスや会社への行政指導を行ってくれるほか、
「あっせん」という制度を利用することもできます。
これは会社側と被害者でのトラブル解決を労働基準監督署の紛争調整委員会が仲介するもので、訴訟よりも比較的スピーディに解決できることが特徴。訴訟と違い、会社側に応じる義務がないなどの欠点はあるものの、自分でトラブルを解決したい場合には役に立つでしょう。
⑥職場のトラブル相談ダイヤル
全国社労保険労務士会連合会が運営している相談窓口です。こちらも総合労働相談コーナーと同じく、あっせん制度の利用が可能です。
集団訴訟プラットフォームのenjinで被害を取り戻そう
証拠や費用をみんなでシェア。
無料登録する
2.相談前にとっておきたい行動3つ
これまで相談窓口を紹介してきましたが、窓口の多くはつながりにくく、また相談時間が制限されていることもあります。
特に実際にトラブルを解決したい場合は、事前に情報をまとめておくことで、限られた時間内でスムーズに話を進めることができるはずです。
相談前に準備しておくとよいものをこの章では紹介していきます。
①自分がうけている被害の内容を時系列順にメモをしておく
被害を思い出し、メモをしていくのはつらいことかもしれません。しかし、今後に向けたアドバイスを受けるときには、こうした情報が大切になってきます。
少なくても、下記の内容はメモをとり、時系列順にまとめていきましょう。
- 会社名
- 自分の立場
- 加害者の情報
- いつから、どこで、どんな被害を受けているのか
- 被害を受けている期間
- どんな気持ちで、どんな不安を抱えているのか
単に誰かに悩みを聞いてもらいたい、という場合でも、こうして自分の状況をまとめることは、気持ちの整理をする役に立ちます。
②証拠を集めておく
会社に対して、相談や通報、訴訟などのアクションを起こす場合は、あらかじめ証拠を集めておきましょう。
セクハラの加害者の大半は「そんなつもりはなかった」と主張するといわれています。場合によっては会社側が弁護士を立ててくる場合もあるため、ただ訴えただけでは認められないこともあります。
だからこそ、「これはセクハラだ」と客観的に判断できる証拠を用意することが大切になるのです。
証拠としては、
- メール、電話のやりとり
- もしあれば録音
- 被害にあったときの日記
- 目撃者である同僚の証言
などが挙げられます。
一見、大したものではないような記録でも、数を集めておくことで、状況証拠として認められる可能性が高くなります。少しでも関係していそうなものはすべて保管しておきましょう。
③セクハラで訴えたい場合にとるアクション
そのほか、特に会社側に損害賠償を請求したい場合には、訴訟でセクハラが認められるために以下の行動もとっておくとよいでしょう。
- 相手に拒否の意思を伝える
セクハラ行為を受けた際、明確に拒否する姿勢を見せ、その証拠を残しておくことで、訴訟でもセクハラの事実が認められやすくなります。
この点は最終的な慰謝料の額にもかかわってくるため、重要となります。
被害にあったら、一度はハッキリした言葉で拒否する姿勢を見せましょう。あいまいに笑ってごまかしたり、どちらともとれる態度は禁物です。そ録音などを残しておくとよりベターです。
以降、相手が同じような行為を繰り返した場合、「一度、明確な拒否をしたにも関わらず、性的な行為を続けた」とすることができます。
- 医療機関で診断書を取得する
セクハラは心理的な被害が大きいため、心療内科での診察・治療や体への不調がでて治療が必要になることがあります。
「明確に拒否したが、やめてもらえなかった。このセクハラはいつから続いている」とわかる証拠と一緒に、セクハラ被害を受けて以降の診断書を用意することで、裁判所に因果関係を認めてもらいやすくなります。
慰謝料の金額を決める基準にもなりますので、必ず取得しておきましょう。
精神障害による労災認定をしてもらうときにも診断書が必要になります。
セクハラが原因の精神障害の場合、発病前の約6ヶ月間の業務で強い心理的負荷があったと認められれば、労災として認定され、生活費や治療費を補填してもらうことができるのです。
詳しい基準は、こちらを参考にしてください。
3.セクハラの判断基準は?セクハラ2タイプ別に解説
これまで、セクハラの相談先についてご紹介してきましたが、
そもそも自分のケースがセクハラなのかどうか、不安に思う人もいるかもしれません。
そこでこの章では、セクハラの2タイプをもとに、セクハラとはどのようなものなのか、また、セクハラの判断基準についても紹介していきます。
自分が会社で受けている行為がセクハラかどうかを判断する基準としてください。
①対価型セクハラ
昇進や昇格をほのめかして関係を迫られたり、セクハラを拒否すると解雇や降格、減給などの不利益を受けるタイプのセクハラです。
たとえば、
- 社用車の中で体を触られ、抵抗した結果、減給された
- 契約社員から正社員への昇格をちらつかせ、かわりに関係を迫られた
などが挙げられます。
対価をもとに性的な要求を受けるだけでなく、
相手の要求を断ったことで不利益を受けた場合もセクハラと認定されます。
「要求自体は断ったからセクハラではないのかも」という考え方は間違いです。
②環境型セクハラ
セクハラにより、精神的な苦痛で職務に集中できなかったり、働く意欲が低下するタイプのセクハラです。
たとえば、
- 会社のデスク近くにヌード写真を掲載されていて出社するのが苦痛だ
- 卑猥な噂を社内で流されて、精神的に追い詰められている。ここから逃げ出したい
などが分類されます。
直接的なアプローチをされなくても、わいせつな内容が絡めば、セクハラだと認定されます。
③悪質なセクハラは罪に問われることも
あまりにも悪質なケースは、刑事事件として扱える場合もあります。
具体的な罪状としては、下記のものが考えられます。
- 強制わいせつ罪
暴行や脅迫を行い、嫌がる被害者にわいせつな行為をすること。
- 強制性交等罪
暴行や脅迫を行い、被害者の抵抗を無理やり封じ、性交渉を強要すること。
- 迷惑防止条例違反
都道府県ごとに定めているが、基本的には公共の場で人の身体に触れることなどを規制していることが多い。
そのほか、言われた内容によっては、「名誉毀損罪」「侮辱罪」などに問うこともできます。
もし刑事事件として扱ってもらいたい場合は、警察に被害届や告訴状を提出する必要があります。具体的な方法は下記も参考にしてください。
ただし、刑事告訴や被害届はあくまで相手の罪を問うものであり、慰謝料や損害賠償の請求は、民事訴訟で行う必要があることに注意してください。
4.まとめ
- セクハラ被害にあった場合は、①会社の相談窓口②こころの耳③みんなの人権110番④都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)⑤女性の人権ホットライン⑥労働基準監督署の総合労働相談センター⑦職場のトラブル相談ダイヤルに相談する。
- 相談する前に、①被害にあった時系列の整理する②客観的にわかる証拠を集める③明確に拒否する・医師の診断書の取得する、などの行動をとると相談がスムーズ
- 悪質なセクハラは刑事事件に問えることもあるが、損害賠償や慰謝料の請求をするには民事訴訟が必要となる。
おわりに
自身の立場を利用し、被害者にわいせつな行為を行うセクハラは、本来あってはならない行為ではありますが、残念ながらまだ根絶されてはいません。
できる限り自衛し、被害にあったらすぐに行動を起こしましょう。