この記事は以下の人に向けて書いています。
- 医師のミスによる歯列矯正の失敗例を把握したい人
- 歯列矯正に失敗した場合、どこに相談すればいいのか教えてほしい人
- 歯列矯正で失敗しないための方法が知りたい人
はじめに
抜歯やワイヤーによる固定で、歯並びやかみ合わせをよくしてくれる
歯列矯正。
そんな歯列矯正に失敗してしまった……という場合はどうしたらいいのでしょうか。
この記事ではまず、
医師のミスと考えられる歯列矯正の失敗例をご紹介し、トラブルの原因が医師の不手際によるものなのかを確認していきます。
その上で頼りにしたい
相談先をご紹介しますので、自分の目的に合った機関に連絡してもらえれば幸いです。
1.こんなはずじゃなかった……歯列矯正の失敗例3パターン
最初に医師のミスと考えられる歯列矯正の失敗例を見ていきます。
比較的多く見られるのは、大別すると主に次の3パターンです。
①治療をしたが効果がなかった
②治療前より悪くなった
③医師の説明不足
それぞれについて具体例をあげながら詳しく解説しますので、どちらに当てはまるか確認してみてください。
①治療をしたが効果がなかった
長期間治療を受けていたはずなのに、期待通りの効果が現れなかったパターンです。
「上の歯並びは比較的揃ったものの、下の歯並びは変わっていない」
「歯列は整ったが、かみ合わせがまったく治っていない」
といったケースは医師による判断ミスの可能性が高いでしょう。
中には効果がないことを話したら、医師から
「歯の形が特殊なので仕方がない」「高齢なのでこれ以上の治療は無理」と言われ、
治療終了を告げられてしまったという事例もあります。
②治療前より悪くなった
「無理に非抜歯治療を行ったため、上下の前歯が前に飛び出してしまった」
「奥歯のかみ合わせが悪くなり、物がうまくかめなくなった」
「口元のバランスが崩れてコンプレックスとなった」
など、ずさんな施術で治療前より悪くなってしまったパターンです。
ほかに過度な拡大矯正(あごの骨を拡大させる治療法)で歯を支える歯槽基底から歯が極端にずれ、歯根が露出してしまったケースもあります。
- 詐欺のようなところも……
近年では「歯並びがすぐに治る」「治療費が抑えられる」という理由で、セラミック矯正が流行しています。
セラミック矯正とは健康な歯や神経を極限まで削り、セラミックの歯をかぶせる方法。歯の寿命が縮まったり、虫歯になりやすくなるとされています。
ところがそうしたリスクが伴うことを告げず、ただ魅力的な言葉を並べて誘ってくる詐欺のようなケースがあり、「思ったのと違った」というトラブルにつながっています。
③医師の説明不足
医師がしかるべき説明をしてくれないパターンです。
「治療がどのくらいで終わるのか聞いても、はっきり答えてくれない」
「4年同じ治療法で続けていたら、突然別の方法に変えると言い出した」
といったケースが挙げられます。
医師によっては具体的な説明をしないばかりか、「すぐ終わりますから大丈夫ですよ」「痛くありませんからね」など都合のいいことばかり並べて治療を行い、案の定患者とトラブルになるような人もいるようです。
2.被害にあったらすぐ相談!頼りになる専門機関6つ
「これは医師のミスだったんだ……」
そうわかれば、今すぐにでも
治療費を返してもらいたいところ。
しかし現実は
患者側に原因があるとするような言い逃れをされ、難しい場合がほとんどです。
加えて医師が説明責任を果たしていたか、選択した治療法は本当に適切だったのか、などを指摘しなければならないため、やはり個人で立ち向かうには限界があります。
そこでこの章では、
歯列矯正のトラブルに対応してくれる専門機関をご紹介。相談する前にしておきたいこともあわせて解説するので、順を追って行動するようにしてください。
①相談前にしたいこと
- 状況を整理する
まずは被害を受けた状況を整理しましょう。
ポイントは、医師のミスと自分が受けた被害の因果関係が成り立つとわかるようにすることです。医師の発言や治療のときの様子、症状の変化などを客観的な文章で時系列順に記してください。
また歯列矯正では治療後の定期検診に行かなかったことで失敗したり、矯正できても保定装置を自分で外してしまうと元通りになる(後戻り)場合もあります。
そうしたケースだと患者側に非があるとされてしまう可能性が高いので、治療後に自分がどのような行動を取ったのかも、忘れずに整理しておきましょう。
- 揃えておきたい証拠
以下のような証拠をできるかぎりそろえるようにしてください。
治療費が記載された領収書 |
治療の同意書や契約書 |
カルテの写し |
治療前と治療後の様子がわかる写真 |
医師の発言を録音したデータ |
これ以外にも、治療に関わるものはすべて取っておくようにしましょう。
②歯列矯正のトラブルに対応する専門機関3つ
状況を整理し、証拠をそろえたら下記団体に連絡してみてください。
- 日本臨床矯正歯科医会
こちらは質の高い矯正歯科治療を目的として設立された団体です。
トラブルに対するサポートは行っていませんが、医学的な観点から中立的な情報を提供してもらえます。
問い合わせ方法は相談フォームのみ。約2週間前後で回答してもらえます。
- 医療安全支援センター
歯列矯正をはじめ医療全般の相談を受け付けている窓口です。トラブルに対する助言だけでなく、必要に応じて他団体の紹介などをしてくれます。
- 各自治体の歯科医師会
各自治体には、歯科医師会と呼ばれる団体も設置されています。
医療安全支援センターで対応できなかった場合は、こちらに問い合わせてみてください。
③困ったときは医療に強い弁護士へ
団体によるアドバイスを元に返金を求めても応じてくれないなどの場合は、やはり
弁護士に交渉を依頼するのがベターです。
ただ
医療に強い弁護士を探す必要があるので、以下のような医療問題を専門とする団体に連絡しましょう。
- 医療問題弁護団
医療事故にあった被害者の救済や医療事故の再発防止を目的とする団体です。歯列矯正などのトラブルを相談すると調査活動を行い、状況に応じて示談交渉や提訴などをしてくれます。
連絡先 |
03-6909-7680 |
受付時間 |
平日10~16時 |
依頼にかかる費用は以下のとおりです。
内容 |
費用 |
相談料 |
無料(2回目以降30分5400円) |
調査活動 |
324000円+実費 |
示談交渉・訴訟 |
案件による |
- 医療事故研究会
医療トラブルの救済に取り組む弁護士によって結成された団体です。医療問題弁護団と同じく法律相談で今後どのようにするべきかなどのアドバイス、必要に応じて示談交渉や提訴などを行っています。
連絡先 |
03-5775-1851 |
受付時間 |
火・木・金 13~15時 |
費用は次のとおりになります。
内容 |
費用 |
相談料 |
無料(2回目以降1時間10000円) |
証拠保全
(カルテなどの医療記録を現状のまま記録する手続き) |
300000円+実費 |
示談交渉・訴訟 |
案件による |
- 日本弁護士連合会 医療ADR(裁判外紛争解決機関)
日本弁護士連合会が設置した医療ADRでは、裁判ではなく、患者と医師双方の話し合いによってトラブルの解決を目指しています。
通常のADRと異なり、医療紛争に強い複数の弁護士が仲裁役となってくれるのが特徴です。
訴訟に比べて費用が安く済むこともあるので、合わせて検討するといいでしょう。
なお以上のような団体に相談した場合、医師の出方次第では
交渉から訴訟に切り替える選択肢も出てくるでしょう。
ただ裁判を起こす場合は、費用など注意しなければならないポイントがいくつかあります。
下記で詳しく解説しているので、損害賠償請求となったらチェックしてみてください。
3.トラブルを未然に防ぐ!失敗しない歯列矯正に必要な対策
歯列矯正の失敗で医師の責任を追求しても、言い逃れされてしまうことが大半。
実際、歯並びや歯の大きさで理由で矯正がうまくいかないケースもあり、
専門機関に相談したとしても治療費を取り戻すのが難しいのが現状です。
最後の章では、トラブルに巻き込まれないための対策をご紹介します。
①適切な医師を選ぶ
日本臨床矯正歯科医会に所属している矯正歯科医院には、同医会が認めた経験豊かな歯科医師が所属しています。近くにないか
こちらで検索してみてください。
その中でも
治療のメリットやデメリットをはっきりと話してくれる医師を選ぶとなおいいでしょう。
また歯列矯正は長期に渡る治療なので、話しやすいかどうかも重要なポイントです。
- インターネットやSNSで調べてみる
インターネットなどで調べる場合、評価の高い口コミはサクラの可能性もあるため信用しないほうが無難です。
むしろ見るべきは悪い評判。治療に対する疑問の声や返金トラブルなどが多発している場合は、依頼しないほうがいいでしょう。
こうした医療トラブルに関する情報は、enjinのTwitterでも発信しています。また集団訴訟プロジェクトの一覧で同じ被害を受けた人がいないか調べることもできるので、合わせてチェックしてみてください。
②甘い言葉に誘惑されない
医療行為はほかのサービスに比べて被害が大きいことから、
広告表現が厚生労働省によって厳しく規制されています。
しかし歯列矯正の失敗例で見てきたように、甘い言葉に惹かれて施術をしてもらったら被害を受けた、というケースは後を絶っていません。
治療の広告で、次のような表現が使われていた場合は避けるようにしましょう。
・簡単にできる
・早く終わる(通院回数が少ない)
・絶対に安全
・最高の技術で治療
・最先端機器による施術
・根拠のない数字表現 |
なお、上記のようなことを暗示させる
イラストや
写真なども禁止されています。
(
参照:厚生労働省『医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)』)
4.まとめ
- 歯列矯正の失敗例は大きく分けて「効果なし」「悪化」「医師の説明不足」の3パターンある。
- 治療費の返還を求める場合は医師の責任を問う必要あり。個人では難しいので専門機関を頼ろう。
- インターネットの評判や広告表現に注意して、安心できる医師を選ぶことがトラブル回避の鍵。
おわりに
歯列矯正の失敗は、日常生活の支障だけでなく大きなストレスにもつながってしまうもの。
医療に強い機関に速やかに相談し、頃合いを見て
セカンドオピニオンを探すことも視野に入れましょう。
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