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動物愛護法改正で何が変わる?改正案のポイント3つと通報・相談窓口

投稿日時 2019年04月17日 15時13分
更新日時 2019年04月17日 15時13分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 動物愛護法の改正について知りたい人

  • 現行の動物愛護法の問題点を知りたい人

  • 犬や猫など動物に関心がある人

はじめに

犬や猫などの動物虐待や、悪質なブリーダーによる劣悪な環境下での飼育など、動物に関する悲惨なニュースはあとを絶ちません。

「動物の愛護及び管理に関する法律」、通称「動物愛護法」は、動物の虐待防止などを定めた法律です。しかし、動物愛護団体などからは現行の法律の不十分さが指摘され、2019年の通常国会で、改正される見通しです。

動物愛護法の改正のポイントや、現行の問題点などを紹介します。

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1.動物愛護法が改正されたら?3つのポイントを解説



2019年の通常国会で、動物愛護法の改正が成立するとみられています。

どんな点が改正案に盛り込まれているのでしょうか。

重要な3つのポイントを解説します。

改正前 改正案
生後49日で販売可能 ①生後56日以下の販売禁止
業者の「登録制」 ②業者の「許可制」
飼育施設などの数値規制なし ③数値規制あり

①すぐに親元から離さない!「生後8週以下」での販売禁止

犬や猫は、親やきょうだい達と成長していく中で、噛みつき方の加減などの「社会性」を学びます。あまりに早い段階で親から引き離してしまうと、その後、問題行動を起こしてしまったり、病気にかかりやすくなったりしてしまう可能性が高くなり、問題視されています。

改正案では、「生後8週(56日)以下」の販売を禁じる項目が盛り込まれる予定です。

実は、現在の動物愛護法でも8週以下の販売を禁止していますが、親から引き離す理想的な時期を調査・検討し、法律で定めるまでは、生後「7週(49日)」での販売が認めています。(参考:環境省「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について」)

今回の改正案が法律として定められれば、8週以下の販売禁止が正式にはじまることになるのです。

ペット関連業界は販売開始時期が遅れることについて、「売れ筋の大きさでなくなったら困る」など利益の面から長い間反対してきました。

しかし、販売大手のコジマが2019年、生後8週以降の引き渡しを推奨する声明を出し(参照:2019年1月23日・株式会社コジマ『-【日本初】重篤な遺伝子病の発症リスクがないワンちゃん、ネコちゃんの販売を開始。』)、8週以下の子犬や子猫の販売規制を始め、業界団体にも変化がみられているようです。

②「登録制」から「許可制」へ

現在、ペットショップやブリーダーなど営利目的で動物を販売したり、展示したりする「第1種動物取扱業」を営む場合には、事業所を管轄する自治体へ「登録」が必要です。

悪質な業者については、都道府県知事などが登録・更新の拒否や登録の取り消し、業務停止の命令措置をとることができます。

しかし、行政には強制的な立ち入り権限がありません。

実際、業務停止命令や登録取り消しが行われることもほとんどなく、環境省の報告よると、平成27年度における全国の第1種動物取扱業に対する業務停止命令数は1件、登録取り消し数に至っては0件です。(参考:環境省「動物愛護管理行政の最近の動向について」)

そのため、より行政に権限のある繁殖業者の「許可制」導入が議論になっています。

③飼育施設の「数値規制」

飼育施設や繁殖回数などに関して、科学的根拠に基づいた具体的な「数値」を入れることも検討されています。

  • 個体に適した具体的なケージの大きさ

    せまいケージに押し込まれた犬や猫……。

    現在の動物愛護法では、ケージについて「日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとする」「入れる動物の種類及び数は、ケージなどの構造及び規模に見合ったものとする」と記載されているだけで、飼育施設などに関して具体的な数値がかかれていません。

    動物種や品種によって体の大きさや習性は大きく異なるため、一律の数値基準の設定は難しいと考えられているものの、犬や猫に関しては、体長や体高の「何倍」と行った基準の設定も検討される可能性があります。

    また、温度や湿度、騒音などの飼育環境も数値化の検討課題となっています。


  • 繁殖回数の制限

    無理な繁殖を繰り返すことは動物たちにも大きな負担になります。

    ヨーロッパの国やアメリカなどでは、繁殖が可能な年齢や一生のうちの繁殖回数が決められています。例えばイギリスでは、犬の出産回数は6回までと法律で禁止しています。

    これを参考に、繁殖の回数や、最初と最後の繁殖年齢などの規制も検討課題となっています。


  • 管理者1人あたりに対する最大飼育頭数

    少ない従業員で多数の動物の世話をしていると、十分に世話ができてないこともあります。

    従業員ら1人あたりに対する最大飼育頭数を決めることも、動物の生活環境を保つ上で重要なことです。

現行法では、飼育施設や繁殖回数、最大飼育頭数などに関して、明確な基準がないために、行政は悪質な業者に対しても、処分を出しづらくなってしまっています。

明確な基準を定めることで、行政指導が有効なものになることが期待されています。

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2.悪質な繁殖業者も野放し?現行の動物愛護法の問題点



動物愛護法は1999年に制定され、2005年、2013年に改正されました。

しかし、殺処分や動物虐待ゼロを目指す動物愛護団体からは、現行法の問題点や課題などが議論されてきました。

近年発生した動物虐待などに関する具体的な事例とともに、現行法の問題点を紹介します。

①猫カフェでウイルス感染…5匹が死亡

東京都と神奈川県、埼玉県の計10店舗を営業している「猫カフェMOCHA」の立川店で、2018年7月、パルボウイルスに感染し、計5匹の猫が死亡しました。

パルボウイルスは伝染力が強く、致死率が高い病気で、ワクチンを打っていない仔猫の場合、ほぼ100%の確率で死に至るとされています。

感染した個体の糞や便、食器、フードや毛、人など、あらゆるものが感染経路となりうるという、恐ろしいウイルスです。

当該店では、ケージ数や猫の休憩が十分でなかったこと、パポバウイルスで猫が死亡したにも関わらず、社長が隠蔽して営業を続けていたことなどが元従業員により告発されました。

(参考元:週刊朝日・2018年8月10日「人気の猫カフェで5匹ウイルス感染死のデタラメ告知に東京都が抗議 元スタッフが告発するずさん管理」)

このケースからもわかるように、現行法では飼育施設の数値規制がないため、適切な環境ではない場合でも取り締まりが難しくなっているのです。行政などによる施設への定期的な確認などもないため、問題が発覚しづらいことも挙げられます。

②何十頭も飼育する「アニマルホーダー」

2017年、猫53匹を放置していた40代の女性が神戸地裁から市営住宅の強制退去処分を受けました。市は糞尿による悪臭が迷惑行為を理由に、部屋の明け渡しを求めて提訴していました。

女性は最初、捨て猫数匹を買っていましたが、繁殖の繰り返しで徐々に数が増えたようです。女性の部屋からは大量の糞尿のほか、複数の猫の死骸も見つかりました。

(参考元:産経新聞・2017年11月8日「猫53匹放置の女性に1000万円請求へ 神戸市、市営住宅修繕で異例の全額求める」)

このケースでは、多数の動物を劣悪な環境で飼育し異常に繁殖してしまう「多頭飼育崩壊」に陥っていたとみられています。

2018年9月にも、名古屋市で猫約40匹を劣悪な環境で飼育したとして、40代の姉妹が動物愛護法違反の疑いで書類送検されました。

(参考元:朝日新聞・2018年9月25日「猫の排泄物まみれの部屋で40匹飼育の疑い 姉妹を送検」)

このように、飼育ができない数の動物を集めてしまう人はアニマルホーダーとも呼ばれ、全国でアニマルホーダーによる事件が相次いでいるのです。

現行法では「飼育禁止命令」ができず、多頭飼育など不適切な飼育を続けることができてしまいます。

③まるで「工場」のような飼育環境…悪質な繁殖業者

工場で大量生産するように動物に繁殖させている繁殖業者は「子犬工場」とも呼ばれています。

2018年3月、福井県の繁殖業者が、約400匹の犬や猫を過密状態で飼育し、繁殖させていたとして、動物愛護法違反(虐待)の疑いで刑事告発されました。

従業員も2人しかおらず、不衛生な環境でエサも十分な量を与えていなかったとみられています。2017年末から県が度々立ち入り調査をしていましたが、一向に改善されていませんでした。

しかし同年7月、福井地検は業者や代表者の男性らを不起訴処分としました。

実は、動物愛護法の虐待の定義があいまいなため、法律で明確にされていない行為だと、虐待と認識されないケースが発生しているのです。

もっとも、このケースでは2019年4月、福井検察審査会が「不起訴不当」の判断をだし、検察側に再捜査・再検討を求めています。

(参考元:福井新聞・2019年4月16日「子犬工場、業者の不起訴「不当」福井検察審査会「虐待に当たる」」)

このように、法律で規定されていなくとも、動物に対する悪質な行為は「虐待」だと認められるようになってきてはいるのです。

なお、動物愛護法44条では、虐待を以下のように定義しています。

・みだりに傷つけたり、殺してしまう
・著しく不衛生な環境で飼育したり、餌や水を十分に与えず、愛護動物を不健康な状態にする
・遺棄

繁殖業者は要件だけ満たせば誰でもなれる「登録制」のため、このような悪質な業者が出てきてしまうともいえそうです。

④懲役は2年以下…厳罰化求める声

埼玉県で2017年、元税理士の男性が野良猫に熱湯をかけたり、バーナーであぶったりする虐待を行い、13匹を殺傷するという事件が起きました。

男性は動物愛護法違反の疑いで逮捕され、懲役1年10月・執行猶予4年の有罪判決を受けています。

(参考元:産経ニュース・2017年12月12日「ネコ13匹に熱湯やバーナーで虐待 動画投稿の元税理士、大矢誠被告に猶予判決 東京地裁」)

動物虐待の罰則は「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」です。

初犯であれば執行猶予がつくことも多く、動物愛護団体などからは、厳罰化による虐待の防止を求める声も上がっています。

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3.動物虐待を見かけたらどうすればいい?



近所などで、動物に対する虐待や、不適切な飼育を見つけた時、どのように対処すればよいのでしょうか。

通報・相談窓口を紹介します。

①動物虐待を見つけたら…

殴る、蹴るなどの動物を明確に傷つける行為を見かけたり、SNSなどで動画や画像を見つけた場合は、最寄りの警察への相談または通報しましょう。

インターネット上で虐待の動画や画像を見つけ、虐待している人がわからない場合は、サイバー警察に通報してください。

都道府県警察本部のサイバー犯罪窓口などの一覧はこちら

通報の際は、以下の情報があるとよいでしょう。

・虐待している人の住所
・虐待を受けている動物の種類
・虐待の内容
・インターネット上にあげられた虐待の動画や写真の場合は、URL情報

②エサをあげてないなどのネグレクトを見つけたら…

ネグレクト(飼育放棄)には、以下のような行動が該当します。

・エサや水を与えない
・散歩をさせない
・ケージが狭く、排泄物とエサが混在している
・動物の体がやせ細っていたり、著しく汚れている
・ケージ内が過密な状態
・多頭飼育で飼育環境が不衛生

一般家庭でも業者でも、飼われている動物に対して上記に当てはまる行為を見かけた場合、管轄の保健所や衛生課、動物愛護センターなどに相談してみてください。


4.まとめ

  • 改正案は、生後56日以下の販売禁止、業者の「許可制」、飼育施設などの数値規制の導入などが検討されている

  • 現行法では悪質な繁殖業者による不適切飼育や、動物虐待が起きても罰則は難しいケースも

  • 動物虐待を見かけたら、警察または保健所などに相談をする

おわりに

動物の虐待に関するニュースは後をたちません。

日本は、ヨーロッパ諸国やアメリカに比べて、法律の整備が整っていないことなどから、動物福祉の「後進国」とも言われています。

声をあげられない動物だからこそ、暮らしや命が守られるように、動物愛護法の改正が期待されます。


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