この記事は以下の人に向けて書いています。
- ネットで誹謗中傷にあい、削除してもらいたい人
- 加害者が誰なのか特定し、損害賠償請求を行いたい人
- 弁護士に依頼するまでに必要な行動を知りたい人
はじめに
インターネットの掲示板やSNSに、匿名で自分の悪口が書かれていた……。
そんな際に心強い味方となってくれるのが
弁護士。法的な手段で書き込んだ相手の身元を特定したり、訴訟を起こして損害賠償を請求したりするサポートをしてくれます。
しかし、そこで気になるのは、弁護士に依頼した際の費用でしょう。ネットの誹謗中傷を相談をした場合、どのような作業が発生し、その相場はいくらになるのでしょうか?
この記事では、
弁護士に依頼した際の具体的な費用や、解決していくまでの具体的な流れについてご紹介していきます。
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1.「誹謗中傷された!」弁護士に依頼してできる3つの対応とその費用
インターネット上の誹謗中傷について弁護士に相談した場合、その後の大まかな対応は下記の3つとなります。
①サイトの管理者に書き込みの削除を求める
②投稿者を特定する情報を管理者に請求する
③投稿者に損害賠償請求を行う
それぞれのパターンで弁護士費用となるのは、「
着手金(事前に支払うお金)」と「
報酬金(依頼が成功した際に支払うお金)」の2つ。
各依頼内容ごとの大まかな相場を表にまとめてみます。
①サイトの管理者に書き込みの削除を求める
手続きの方法 |
着手金 |
報酬金 |
サイトとの交渉のみの場合 |
5万~ |
5万~ |
法的な手続きをとった場合 |
20万~ |
15万~ |
②投稿者を特定する情報を管理者に請求する
手続きの方法 |
着手金 |
報酬金 |
サイトとの交渉のみの場合 |
5万~ |
15万~ |
法的な手続きをとった場合 |
20万~ |
20万~ |
③投稿者に損害賠償請求を行う
手続きの方法 |
着手金 |
報酬金 |
当人との交渉のみの場合 |
10万~ |
回収した金額の16%程度 |
訴訟を起こした場合 |
20万~ |
回収した金額の16%程度 |
なお、これらの価格は①②③の手続きを個別に依頼した場合の目安。
実際のところ、ネットの誹謗中傷について弁護士に依頼した場合は①②③を同時並行で行うケースが多いため、すべてまとめて
着手金20万~30万円(報酬金別)というイメージでいるとわかりやすいかと思います。
ただし、これらはあくまで参考金額であり、こまかな金額は弁護士事務所によって変わってきます。より厳密な費用については、弁護士への相談時に見積もりをきちんと依頼しましょう。削除請求のみであれば、
報酬金をゼロ円としている事務所もあります。
以下、それぞれの手続きについて、より詳しい内容を解説していきましょう。
①書き込みの削除を要求する
問題となっている書き込みの削除をサイトの管理者に求めていく手続きです。
- 管理者に削除を依頼する
管理者に直接、問題の書き込みを削除していくよう依頼する方法です。サイトに用意されている問い合わせフォームなどから連絡をし、削除を求めていく形となります。
この作業自体に法的な手続きが特に必要なわけではないため、弁護士に依頼せず、直接自分で削除を要求することも可能。「削除を要求したのに応じてもらえなかった」という事実は、後に弁護士に相談する際にも役立ちます。
その際は単に「削除してほしい」というのではなく、サイトが定めているガイドラインや利用規約に違反していることを具体的に指摘しましょう。
- 裁判所への申請
管理者が削除に応じてくれない場合には裁判所を通じた仮処分命令を目指す形となります。
仮処分とは訴訟中に被害が広まらないように行われる処置のことで、訴訟の結果が出るより先に、一時的な対応を裁判所から命じてもらうことができるというもの。
訴訟で書き込みの削除や損害賠償が認められなかった場合、元に戻ってしまう点には注意が必要ですが、迅速に削除をしてもらうことが可能となっています。
②投稿者を特定する
匿名掲示板やSNSなどでは、投稿者の名前や住所といった情報は書かれていないことが大半。誹謗中傷を行った加害者に対して損害賠償などを行うためには、相手の素性を明らかにしなければなりません。
そのための手続きとして、相手の身元の特定を行っていく形となります。
- サイト管理者に投稿者の情報提供を求める
削除請求の場合と同じく、まずはサイトの運営者に対し、誹謗中傷を書き込んだ人の情報の提供を請求。具体的には書き込んだ人のIPアドレスと呼ばれる情報を提供してもらう形となります。
個人での申し入れのほか、弁護士を通じて弁護士会照会制度と呼ばれる調査のための仕組みを利用する必要がありますが、相手が応じない場合は、削除請求の場合と同様に裁判所を通じた仮処分の手続きを行わなければなりません。
- 投稿者が契約しているプロバイダに情報開示を求める
IPアドレスを取得できると、投稿者がインターネットを使う際に契約している「プロバイダ」と呼ばれる企業を知ることが可能に。
その企業に対し、IPアドレスの契約者に関する情報を問い合わせることによって、誹謗中傷を書き込んだ本人の特定が可能となります。
プロバイダ企業にとって契約者の情報は顧客の個人情報にあたるため、相手に開示を請求した場合えも必ず応じてもらえるとは限りません。その時は訴訟によって争うことになります。
③損害賠償請求を行う
投稿者の特定ができている場合、誹謗中傷を行った相手に対し、
損害賠償を求めていくこともできます。
相手に請求できる金額はケースバイケースですが、たとえば誹謗中傷をネットに書かれたことによって売上が激減したような場合や、プライベートな写真をSNSなどに流出させられたような場合は、請求額が高額になる傾向があります。
補足:そのほかにかかる費用
これまで説明してきた内容以外にも、
以下の費用が追加でかかる場合があります。
費用の種類 |
補足 |
相談料 |
誹謗中傷された事実を聞いてもらうなど、着手する前にかかる費用 |
手数料 |
仮処分の申請など事務的な手続きをしてもらうときにかかる費用 |
実費 |
裁判所に納める印紙代や書類を送るときの切手代、交通費など |
日当 |
裁判所や交渉の場など、事務所以外で1日対応したときにかかる費用 |
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2.相談前の準備は?弁護士の探し方は?依頼前に知っておきたい3つのこと
前章からわかるとおり、
解決の時間が長引くほどに弁護士費用はかさんでいきます。
ここで依頼する前に必要な準備や適切な弁護士の探し方、どうしてもお金がないときの相談先をご紹介するので、
少しでも出費を抑えるための参考としてください。
①「とりあえずスクショ」では不十分!証拠を集めるときのコツ
事前に必要な準備は、何よりも証拠集め。これが揃っていれば弁護士もスムーズに対応することができます。
真っ先に思いつくのが投稿画面をスクリーンショット(画面保存)する方法ですが、
場合によっては証拠として不十分となる場合もあります。
以下の4点がきちんと情報として入っているかどうかを確かめましょう。
問題の投稿内容 |
問題の投稿があるサイトのURL |
投稿された日時 |
スクリーンショットを撮影した日時 |
これらを含めたスクリーンショット画像を印刷し、弁護士に渡せるようにしてください。
- SNSの投稿を証拠にする場合
SNSの投稿を証拠にする場合は、直接的な誹謗中傷が書かれたものだけでなく、その投稿がされた流れがわかるものもスクリーンショットしておきます。
例えば、一回目の投稿で自分を示すような表現があり、二回目で中傷する言葉が書かれていた場合、どちらの投稿も画像保存しておく必要があります。
- 印刷できる環境にない場合
画像の印刷が難しい場合は、PCやスマホの画面をカメラで撮影してもOKです。
日時が改ざんできない使い捨てカメラを使うとより信ぴょう性が高まりますが、デジタルカメラを使うほか、公共機関の時計や、テレビの時報などで表示される時刻などを並べて撮影するのもよいでしょう。
②弁護士選びのときに気を付けるポイント
次に弁護士を選ぶときに気を付けたいポイントをご紹介します。
- ネットに関する知識全般を持っている
ネットへの投稿物は、どのくらいの人に広まっているのか表面上の数字ではわかりづらいもの。例えフォロワーが10人でも、それ以上に多くの人たちが見ている場合がほとんどです。基本的な知識を持っている弁護士であれば、被害の大きさを正しく理解し、真摯に対応してくれます。
- ネットの誹謗中傷事案を担当した経験が豊富
経験が豊富であれば、スムーズに相手と交渉できたり適切なアドバイスをもらうこともできます。
- 通いやすい場所に事務所がある
弁護士とは依頼後も何度か打ち合わせすることになるので欠かせない条件です。
- 弁護士と性格的な相性が合う
相性が合わないと意思の疎通がうまくいかず、満足のいく解決を目指すことが難しくなります。
- 事務所のHPコンテンツが充実している
所属している弁護士の人柄がわかるページや、過去の事例を紹介しているページがあるかなどをチェックしてみてください。ホームページはほとんどの利用者が見るので、安心できるようなコンテンツが充実していれば、親身になって相談に乗ってくれる弁護士が多いと言えます。
③弁護士費用が払えない!そんな時は法テラスへ
証拠集めや適切な弁護士の選択は費用を抑える有効な方法です。
しかし大きな節約はできないため、経済的に余裕がないとどうしても支払いが難しくなるかもしれません。
そうしたときは、法律に関するトラブルを解決する総合案内所の法テラスを利用してみましょう。
弁護士費用を立て替えてもらえる
民事法律扶助業務や、
無料相談といった制度を利用することができます。
- 民事法律扶助業務
民事法律扶助業務とは、弁護士の費用を立て替えてくれる法テラスの制度です。
利用するためには条件は次のとおりです。
条件 |
補足 |
月収が一定額以下 |
単身者:182,000円以下(大都市圏は200,200円以下)
2人家族:251,000円以下(同276,100円以下)
3人家族:272,000円以下(同299,200円以下)
4人家族:299,000円以下(同328,900円以下)
5人家族以上は、1人つき30,000円(同33,000)増 |
預金や自宅を除く不動産などの保有資産が一定額以下 |
単身者:180万円以下
2人家族:250万円以下
3人家族:270万円以下
4人家族:300万円以下 |
勝訴の可能性がある |
和解・調停・示談成立などでトラブルが解決する可能性が高いものも含まれます。 |
訴訟理由が民事法律扶助の趣旨に反していない |
投稿した人を懲らしめたいといったものは認められません。 |
ただし、この制度はあくまで「立替え」であり、月々の分割払いで返済しなければならない点に注意してください。
- 無料の法律相談を受けることも可能
法テラスには、弁護士に無料で相談できる制度も用意されています。一回の相談時間は30分、ひとつのトラブルにつき3回まで可能です。
利用するためには「月収が一定額以下」「保有資産が一定額以下」「民事法律扶助の趣旨に反していない」という3つの条件を満たしていなければいけません。なお、具体的な設定金額は立て替えてくれるときと同じです。
3.まとめ
- 弁護士に依頼するときは、着手金や報酬金をはじめさまざまなお金が必要。
- スムーズに手続きをするために、事前にきちんと証拠を集めておこう。
- お金に困った場合は、法テラスなどの利用も検討を。
おわりに
誹謗中傷の投稿を巡るトラブルは自分でできる解決方法もありますが、やはり弁護士に相談するのが一番。
きちんと証拠を集め、最寄の専門家に相談しましょう。
また、たとえば悪質なウェブメディアなどによって多くの人が中傷されている場合、被害者どうしでメディア側に集団訴訟を行うことができる場合もあります。
自分の受けた被害を登録し、仲間を募ることが可能。多くの被害者が集まった場合、弁護士費用を全員で分担できる可能性もありますので、検討してみてください。