この記事は以下の人に向けて書いています。
- スカウトされたが、その事務所を信じていいのかわからない人
- モデルやタレントにスカウトされ、AV出演強要などの契約トラブルになっている人
- 子供が芸能事務所にスカウトされたが、不安に思っているご両親
はじめに
街でスカウトされたりするのは、華やかな芸能界やファッション業界を目指す人にとってあこがれのシチュエーションでしょう。そこからキャリアを積んだ有名人も多いだけに「もしかしたら私も」と期待を抱くのも無理はありません。
しかし、中には悪質な
スカウト詐欺による
金銭トラブルや、
AV(アダルトビデオ)出演の強要などの性的被害も横行しているため、「本当に信じていいの?」という疑問がわいたり、実際に現在進行形でトラブルに巻き込まれていたりする人もいるかもしれません。
「体験談」として注意喚起や不安をあおる情報はあふれていますが、解決するために相談するのはどこがいいのかがわからない人のために、
トラブル事例と相談窓口を紹介していきます。
1.スカウトのトラブル事例って?実際にあったケース4件
まずは実際に公的機関に寄せられたトラブル事案の中から、どのようなものがあるかを見てみましょう。特に多いのが「
性的被害」と「
金銭トラブル」の2つで、被害者の多くは10~30代の女性です。
性的被害は、AV出演の強要などが主なもの。金銭トラブルは「スカウト詐欺」と呼ばれる、レッスン料や物品購入などの名目で何度も金銭を取られた挙句、全くサポートもなくデビューもできなかったりするものです。
「今、私もそうかも」と思う部分に近いものがないかどうか、照らし合わせてみてください。
①AV出演強要など性的被害
契約時には説明をされていなかったAV出演のほか、性的な写真撮影などを強要されてしまうもので、近年社会問題化しているものです。
これは、出演だけが問題ではなく、後日出演した映像や画像を使って「学校や職場にばらす」などと脅迫して金銭を要求したり、撮影以外の性行為を要求されたりする、さらなる二次被害もあります。
- 事例1
「人権に配慮された適正企業」という認証を得たはずのAV制作メーカーが、契約の際に出演者が断っているにも関わらず、複数人で取り囲むなどの妨害をして苦痛を与えた。
このほか「顔や身バレはしない」と公言しているにもかかわらず、配慮のない広告を実施。また、作品内容の「NG行為」(出演者が望まない行為)に関する取り決めも守っていなかったなどの理由で、適格消費者団体が申し入れを行った。
(参考:2018年4月・適格消費者団体・消費者機構日本)
- 事例2
「手や足の撮影モデル」という募集をインターネットで見て業者の面接に行ったところ、AVやアダルト系のサイトの出演を打診された。断ってもしつこく連絡が来る。
(参考:2017年7月・政府広報オンライン)
②金銭強要、レッスン料金、損害賠償
デビューさせるはずの立場の被害者からレッスン料金や物品の購入費などあらゆる名目で金銭をだまし取ろうとして、追及すると連絡がつかなくなったりするものです。
- 事例1
キャッチセールスで「ドラマのエキストラにならないか」と声をかけられ、事務所に行ってタレント養成スクールの高額契約を結んでしまった。よく考えてみると、支払えるか不安になってきた。
(参考:2018年3月・国民生活センター
)
- 事例2
女子高校生がインターネットで探したモデルのオーディションに応募し、母親同伴で参加。不合格だったがレッスンを勧められ、6ヶ月で22万円の費用を支払ったものの、スケジュール内容が不明など不審な点が多く、やめようとしたが連絡がつかなくなった。
(参考:2017年10月・国民生活センター)
2.だまされないために気を付けたい、9つのチェックリスト
それでは、実際に街でスカウトされたときにはどんなことに気を付ければトラブルを未然に防げるのでしょうか。
下記のようなことがあったら要注意です。
①こんなことがあったら要注意!怪しいスカウトの見分け方9件
いくつかの代表的な怪しいスカウトの特徴を挙げてみます。もちろん、これ以外でも自分で「おかしいな」と思ったら、勇気を出して断りましょう。
- 月謝やスタジオ使用料など金銭の支払いや物品の購入を求めてくる
- 名刺や連絡先を渡して来ない
- こちらの連絡先をしつこく聞いてくる
- 契約書の内容の説明が不十分、またはしない、内容に不備がある
- その場で契約書にサインを求めてくる、せかされる、脅される
- 人がいない雑居ビルの部屋などへ連れて行かれる
- 契約に親など家族の同意・同伴を嫌がる
- 他の所属タレントの存在や実績がわからない
- 街中以外にSNSなどインターネット上でのメッセージやリプライによるスカウト
②大手有名事務所を名乗るスカウトだったら?
ところで、有名な大手事務所を名乗るスカウトに声をかけられたとき、本物かどうかを見分けるにはどうしたらいいのでしょうか。
「もしも本物だったら」と思うと断りにくいですし、活躍中の現役タレントからも「騙されたらどうしようかと思っていた」というデビュー体験談はよく聞きます。しかし、偽物はこうした体験談や
スカウトされる側の気持ちを悪用していると思ってください。
大手事務所はスカウトについて、
自社のサイトで連絡先や、どのようにスカウトをしているかを詳しく説明していますので、直接その事務所に連絡をして、そのスカウト担当者が本当にその事務所に所属しているかを確かめてみましょう。
もし、その事務所以外での話し合いを求められたりするなどした場合は、すみやかに断りましょう。
「過去に所属していた」などとして誰もが知っているようなタレントの写真を見せて来たり、パンフレットなどを渡してくることもありますが、それだけでは確認不足です。
もしそのような偽物にあったら、名前を勝手に使われた大手事務所にも連絡を取り、怪しい人物がいたことを知らせておくと、事務所自体が注意を呼びかけたり、法律に基づいた対処をしたりすることもあります。
③どんな勧誘があるの?
スカウトは必ずしも芸能事務所という名目とは限らず、
・エステ
・モデル(カットモデルを含む)
・パーツモデル(手や足などの写真のみを使うモデル)
・テレビ番組の撮影(エキストラなどを含む)
・キャバクラやガールズバー
などの勧誘をうたったものがあるようです。
「パーツモデルと聞いていたのに風俗だった」「モデルと言われていたのに、美容品を購入させられた」といったケースもあり、必ずしも誘われた内容と仕事が一致しているとは限りませんので、十分に話を聞いて判断しましょう。
内閣府が2016年に15~39歳の女性約5000人を対象にした調査では、勧誘の際の声掛けでは、「モデルやタレントへの勧誘」「テレビ番組の撮影なので協力してほしい」「高収入のアルバイトがある」などの誘い文句があったというデータがあります。
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3.トラブルがおきたら?相談したい安心の窓口5つ
どれだけ気を付けていても、実際に声をかけられたら冷静な判断が難しいこともあるでしょう。「当初言われていたことと違う」「こんなはずじゃなかった」といった、スカウトにまつわるトラブルが起こったとき、ひとりで悩みを抱えていませんか。
家族に話しても怒られてしまうのを恐れて話せないこともあるでしょう。もし相談できたとしても、家族内では解決しきれない問題である可能性もあります。実際に、親同伴で契約をしたのにだまされたというケースもありました。
そういうときには、ためらわずに
公的機関や法律の専門家を頼りましょう。決断が早ければ早いほど解決もスムーズになります。ただし未成年の場合は、なるべく信頼できる大人と一緒に相談に行った方がいいでしょう。
「どこに相談したらいいの?」と思っている人は、まず下記の相談窓口を探してみてください。
①まずはここに相談してみよう!信頼できる窓口5つ
- 国民生活センターに相談する
詐欺などの消費トラブルの相談や解決をしてくれる、国の公的機関です。これまでにスカウト詐欺の相談も多く寄せられており、こうしたケースの注意喚起もしています。
ここには「消費者ホットライン」という、相談者の地元など身近な場所にある相談窓口を紹介する電話番号があります。まずはそちらにかけて、地域の消費生活センターを見つけてください。実際の相談は消費生活センターの専門職員が担当します。
・消費者ホットライン電話番号:188(いやや)
※月~金はおおむね9~17時ですが、相談窓口によって異なります。
土日祝は10~16時で、地域のセンター紹介ではなく、国民生活センターが直接相談窓口になります。
・平日に188につながらない場合は「バックアップ相談」:03-3446-1623
※月~金の10~12時、13~16時(土日祝・年末年始を除く) |
国民生活センターの利用方法については、こちらの記事も参照してください。
- 適格消費者団体に相談する
「適格消費者団体」は、不特定多数の消費者が騙されたりするなどの不利益を被った際、消費者に代わって相手の事業者に改善の申し入れや差し止めなどを求めたりすることができる団体で、内閣総理大臣からの認可を受けているものです。
なにかの消費トラブルが起こっても、消費者ひとりでは立場が弱く、企業を相手に法律違反を指摘して被害回復を申し出ることは難しいため、公的機関として団体が企業と交渉をしたりします。
この団体に相談することにより、個人で解決できなかった問題に立ち向かうことができるようになります。
適格消費者団体または、申し入れよりも強い裁判所への訴えを起こせる権限を持つ特定適格消費者団体に、まずは相談をしてみましょう。
適格消費者団体については、こちらの記事でより詳しく紹介しています。
- 警察へ通報または相談をする
悪質なスカウトにあって、性的な写真を撮られたり、行為を強要されたり、脅されたり、金銭を要求されたりしたときは、被害届を出しましょう。
このとき、なるべくスカウトされた場所や被害を受けた場所から近い交番や警察署に行くのが確実です。もしかすると同じ手口の被害届や相談がすでにあり、警察側が事情を把握しているかもしれません。
また、性的被害にあったときは各都道府県警の性犯罪の専門相談窓口につながる番号があります。このほか、「どうも騙されているみたいで困っている」というときは、「通報」ではなく「相談」ができる窓口があります。
・実際に被害にあったとき→通報「110」番
・性犯罪被害報告電話相談→「#8103」(ハートさん)
・具体的な被害にあったわけではないけれど、困っているので相談したい→「#9110」 |
#9110は、身体や生命、財産にかかわる緊急の案件で110番がパンクし、対応が遅れるのを防ぐためのものなので、相談の際は気を付けましょう。もちろん、緊急の被害があったときは、ためらわず早急に通報をしてください。
被害届の出し方は、こちらでも紹介しています。
- 女性の人権ホットラインに相談する
「女性の人権ホットライン」は、法務省が運営する、性的被害など女性の人権侵害に関する相談を受け付けている機関です。法務局または地方法務局の専門職員が相談に乗ります。
・電話番号:0570-070-810
※月~金の8時30分~17時15分、土日祝を除く
・インターネットからの受付はこちら
|
- 弁護士に相談する
警察への相談と同じく、スカウト業者からあなた自身を傷つけるようなことをされたときは、弁護士に相談する手もあります。警察への相談と同時に行っても大丈夫です。
弁護士は法律で解決する問題を扱うプロです。「弁護士に依頼」というと裁判をするイメージが強いかもしれませんが、必ずしも裁判という手段を取るわけではなく、あなたを守る手段を法律の中から見つけ出し、ケースに応じた対処をします。
ただし、弁護士への相談は費用がかかります。実際に解決に動くとなれば、さらに必要な費用が増えることも考えておきましょう。
身近な弁護士事務所がわからないときは、日本弁護士連合会(日弁連)のサイトを参照しましょう。弁護士を探したり、法律相談の予約をしたりすることができます。
相談するときは、トラブルの原因になった証拠を持参しましょう。
あなたの証言があることはもちろんですが、客観的な証拠がないと、当事者ではない弁護士には対処ができません。
もしあれば、下記のものなどを持参しましょう。自分では思っていなかったものが証拠になったりすることがありますので、少しでも関係がありそうなものは全て持っていくようにしてください。使えるかどうかの判断は、弁護士に任せましょう。
・スカウト業者の連絡先
・渡された名刺や契約書
・そのとき撮影された写真や動画
など
スカウト業者はすぐに連絡が取れなくなることがあります。連絡先や訪問した建物などはすぐにメモをしたり、写真を撮ったりして記録しておくといいででしょう。
- 【番外編】同じ被害者と一緒にスカウト先を訴える
もしも同じスカウト先でトラブルにあっている人が他にもいたら、一緒に協力して裁判を起こす「集団訴訟」も考慮してみましょう。
裁判で訴えるのはひとりでもできますが、弁護士に依頼する金額が高くなってしまったり、証拠が十分に揃わなかったりすることがあります。
ですので、2人以上で訴訟ができれば、費用を安く抑えたり、自分にはなかった証拠を他の人が補ってくれることもありますので、手続きがスムーズに進んだりします。
集団訴訟に参加する仲間を呼びかけるサイトもありますので、同じような被害にあった人を募ることができます。
②クーリング・オフの適用
消費者を守るものとして、事業者と契約をした後でも一定期間以内であれば、消費者側から一方的に、理由を問わず契約を解除できる「
クーリング・オフ」という制度があります。
スカウトはクーリング・オフの適用範囲内で、「あなたは選ばれた人です」などと勧誘し、事務所などに呼び出して契約をさせる「
アポイントメントセールス」という禁止事項に当たります。この場合、
契約書を受け取った日を含めて8日以内にクーリング・オフの手続きを取れば、結んだ契約は無効になります。
このほかクーリング・オフでは、
契約の際に脅迫や強要、事実と違うことを告げたり、事実を言わなかったりする行為を禁じています。
内閣府の調査では、スカウトのトラブルにあった人の中で契約書や承諾書を見せられることはあったものの「読んだけど理解できなかった」「たぶん大丈夫だと思った」という回答のほか「急かされた」、また特に「説明されたことと同じだと思った」というものがあります。これがのちに「言われたことと違う」というトラブルにつながるものとみられます。
クーリングオフの詳しいやり方については、こちらも参照してみてください。
4.まとめ
- スカウト2大トラブルは「性的被害」と「金銭トラブル」です。
- 人がいない事務所などで契約を迫ったり、レッスン料などを取るスカウトは断りましょう。
- 困ったときは公的機関や法律の専門家に聞いてみましょう。
おわりに
「自分は悪質なスカウトに騙されない」と考えている人は少なくありませんが、スカウト側が手口を磨いていたり、自分が雰囲気に流されたりしてしまう可能性はゼロではありません。
特に「絶対デビューしたい」と考え、日々スカウトを待っている人にとって、声をかけてもらうことに価値を感じてしまうと、こういった業者につけ込まれてしまうことがあります。
夢を追うことは素敵なこと。でも、あなた自身が大事にされる結果でなければいけないということを忘れないでくださいね。
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