勤めている会社を退職する際に、「辞めたい」意思を伝えることを代行してくれる退職代行サービスが注目を集めています。こうした退職代行サービスの質を高めていこうと、「日本退職代行協会」が今年3月に発足しました。代表理事の水野泰英さんに、協会設立のきっかけなどを伺いました。(取材 / 構成 牧野佐千子)
まず、退職代行とはどんなサービスなのでしょうか?
退職をしたい人の代わりに、その意思を会社に伝えるのが主な仕事です。また、それが会社から了承されたら、一連の退職手続きを確認します。退職者と会社の間に立つ、メッセンジャーの役割です。
どのような方がサービスを利用されるのでしょうか?
大きく2パターンに分かれます。一つ目は、職場の環境に合わない方。大半の方はこちらですね。二つ目は、職場の人間関係などには全く問題がないという方。
後者は、ご自身の体調不良や、ご家族の都合などでの退職で、会社に落ち度がないので切り出しにくい、というパターンです。職場のせいにできず、長年勤めてお世話になったのに…など、自分を責めてしまうまじめなタイプの方が多いです。
なるほど、サービスを利用されるのはまじめな方が多いのですね。たしかに、そうでなければ突然いなくなりますよね。
そうなんです。退職代行を利用される方に対しては、「なぜ自分で言わないの?」など、世間では悪いイメージを持たれていると思いますが、実際は「きちんと筋を通したい」というまじめな方が多いのです。本当にいやだったら”バックレる”でしょと、知人にも言われたのですが、それができない、そうしたくない人です。
退職代行サービスを通しても、引き留められて辞められなかった例はありますか?
私自身、退職代行サービス業務に携わっていたことがありますが、これまでに激しい引き留めにあったことはありませんでした。第三者が入ることで、退職の覚悟が伝わり、引き留めにくくなるのでしょう。
今回、協会を発足させたきっかけはどのようなことでしょう?
2018年の春ごろに、退職代行に特化した業者が現れて、現在は、把握できているだけでも40社くらいだと思います。業者の数が増えてくると、サービスの質の悪い会社、悪質な業者も増える傾向があります。実際に聞かれるのは「料金だけ取られて退職代行を実施してもらえなかった」「退職する理由を聞いてもらえなかった」などです。
悪質な業者が増える一方で、サービスの利用者を保護したり、注意喚起や改善を行うことを目的とした組織がないことに気が付き、まずは利用者を保護することを第一に考えて、業界全体を健全化していくための組織を作りました。
料金だけ取られて代行してもらえなかったというのは、もはや詐欺では?
そういった目に遭われた方は、弁護士さんに相談したりするのですが、被害を訴えようとしても、弁護士費用やそのために割かれる時間を考えると被害額の割に合わず、泣き寝入りするしかないのです。
悪質業者のそうしたやり方は、利用者の「きちんと区切りをつけて前に進みたい」という気持ちをないがしろにしてしまう行為で、本当にいたたまれなくなります。
協会では今後どのような取り組みを行っていく予定ですか?
退職代行サービスを提供する事業者と手を取り合って、利用者により良いサービスを提供できる関係性を創っていきたいと考えています。具体的には、認定制度の導入などです。サービス提供会社からの依頼を受けて、「利用者への対応の仕方」や「会社への報告の仕方」など100個近くある項目を一定の点数クリアすると優良事業者に認定します。
利用者の保護を第一に考えているかどうかが、この業界の健全化の肝です。アルバイト、パート、正社員関わらず、組織で働く人全員が利用者になりうるサービスと考えています。利用される方が、「協会が認めた会社であれば安心」と思ってもらえたら良いですね。
ありがとうございました。
関連リンク
日本退職代行協会 https://jraa.or.jp/