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【特集 ”名ばかり事業主” の私たち #1】 コンビニオーナーは「労働者」か? 

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投稿日時 2019年04月22日 10時43分
更新日時 2019年04月22日 10時43分
普段の生活の中では何かと便利なコンビニエンスストアの24時間営業。コンビニエンスストア各店舗のオーナーからは、昨今の人手不足などから、24時間営業が維持するのが困難だ、と悲鳴の声が上がっています。夜間に利用者の少ない地域では、営業時間を短縮したほうが合理的ともいえるかもしれませんが、現状では、各店舗のオーナーの判断では営業時間を決めることができません。

各店舗のオーナーは、本部との加盟店(フランチャイズ、FC)契約を結んでおり、その規定にしたがって営業しなくてはならないことになっています。人手不足や傷病などでやむを得ず営業時間を短縮するオーナーに対し、莫大な違約金を請求するケースもあります。

コンビニオーナーはどうすれば、営業時間を決められるのか。労働問題などについて無料相談に応じている NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんにお聞きしました。

ーコンビニの24時間営業の是非が議論になっています。コンビニオーナーは、その中でどのような立場なのでしょう。

「労働者」には、労働組合を通じて雇う側と労働条件などを交渉し、約束を交わすことができる「団体交渉権」などの労働組合法上の権利があります。また、労働時間や賃金の支払い、休日など、労働条件の最低基準を定めた「労働基準法」などが適用されます。

しかし、コンビニオーナーが結んでいるのは労働契約ではなく、FC契約。そのため本部との交渉にあたっては、オーナーが法律上の「労働者」に該当するのかどうかが焦点となっています。

ーコンビニオーナーが「労働者かどうか」という点について、法的な判断がされたケースはありますか?

「労働者かどうか」の判断を、法律の用語では「労働者性」の有無といい、重要なポイントとなります。

2015年4月、ファミリーマートとフランチャイズ契約を結んだ加盟店のオーナーについて、東京都労働委員会※1が「労働組合法上の労働者に当たる」と判断しました。その理由として、

・会社がフランチャイズ契約の内容を一方的・定型的に決定していること
・オーナーの得る金銭的利益は、労務の供給に対する対価としての性格を有すること
・実態上、会社からの業務の依頼に対してこれに応ずべき関係にあること


などがあげられています。

しかし、セブンーイレブン・ジャパン、ファミリーマートのオーナーらが、営業時間の短縮を求める団体交渉を申し入れた際には、各会社本部がそれに応じませんでした。

さらに「コンビニ加盟店ユニオン」が、「会社側が団体交渉に応じなかったことは不当労働行為だ」として中央労働員会※2に救済を申し立ててた際には「労働者性」が認められず、はオーナーらの申し立てを棄却する命令が出されています。

ーなぜ労働者に当たると判断されなかったのでしょうか。

中央労働委員会は棄却命令の中で、

・加盟者(オーナー)は、独立した小売事業者であって、労働契約に類する契約によって労務を供給しているとはいえない
・加盟者は、会社から労働供給の対価として報酬を受け取っているということはできず、加盟者の事業者性は顕著である

ため、加盟者は労働組合法上の労働者に当たると評価することはできないと判断しています。

ーファミリーマートが実験的に営業時間の短縮をはじめました。上記の流れの中で、どのような意味を持ちますか?

人手不足を理由に24時間営業は続行不可能だとして、営業時間を午前6時から午前1時までとする、店舗も現れだしました。本部の指示に反するような動きが出た場合、これまではオーナー側が違約金を支払うか、違約金なしで閉店するかを迫られるケースが多かったのですが、本部に公然と反旗を飜すようなケースが表面化するなど、潮目はこれまでとは明らかに変化しつつあります。

そんな中で、実験的な営業時間の短縮は、オーナー側の主張を後押しする材料となりえるかもしれません。ただし、実験される店舗が本当に必要な店舗になるかや、「実験」の評価をどのようにするのかなど、新たな論点が浮上してきます。

今後もこの動向に注目していきたいと思います。

(聞き手:牧野 佐千子))

※1 東京都労働委員会‥労働組合と使用者との間で生じた紛争を、公正・中立の立場から解決するため設置された準司法的機能をもつ行政委員会

※2 中央労働委員会‥労使間関係の調整をつかさどる日本の中央省庁の一つであり、厚生労働省の外局

今野晴貴
NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
労働・福祉運動家/社会学者。NPO法人POSSE(http://www.npoposse.jp/)代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。年間2500件以上の若年労働相談に関わる。著書に『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)、『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』(星海社新書)など多数。2013年に「ブラック企業」で流行語大賞トップ10、大佛次郎論壇賞などを受賞。共同通信社・「現論」連載中。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。
無料労働相談受付:soudan@npoposse.jp、03-6699-9359

【特集】”名ばかり事業主” の私たち
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「名ばかり事業主」のさまざまなケースを取り上げ、問題提起を行っていきます。

#名ばかり事業主 #enjin #集団訴訟

<過去のコラム>
#1 コンビニオーナーは「労働者」か?
コンビニ各店舗のオーナーは、本部との加盟店(フランチャイズ、FC)契約を結んでおり、人手不足や傷病などでやむを得ず営業時間を短縮するオーナーに対し、莫大な違約金を請求するケースも。

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