詐欺を訴える方法はある?訴訟の種類、手続き、相談窓口の3つを解説

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投稿日時 2019年02月08日 20時07分
更新日時 2019年09月05日 18時50分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 詐欺にあったため、業者を訴えたい人

  • 訴えるためには今なにをしたら良いかを知りたい人

  • 訴えるための費用や時間、具体的な手続きを知りたい人

はじめに

「だまされた!」

もしうっかりお金を騙し取られてしまった場合、あなたはどうしますか?

振り込め詐欺やワンクリック詐欺、通販サイトを装った詐欺業者…世の中にトラブルの種は尽きませんが、その解決策のひとつに「相手を訴える」という手段があります。

この記事では、詐欺の2つの定義や訴訟の手段、まずは連絡したい相談先など、詐欺で相手を訴える際に役立つさまざまな基本情報を紹介していきます。

1.目的は「逮捕」or「返金」?2種類にわかれる詐欺罪の定義



「詐欺」といっても、その法的な扱いは2種類にわかれます。

それは、刑法上の「詐欺罪」と民法上の「詐欺」

詐欺加害者を訴える際は、このいずれか片方、あるいは両方から訴えていく形となりますが、そのプロセスや目的はそれぞれ大きく異なります。

実際に相手を訴える前に、まずこの2つの「詐欺」にどのような違いがあるのか理解しましょう。この章で詳しく解説していきます。

①刑法は「罰」民法は「賠償」が主な目的

刑法は、犯罪となる行為や、犯罪をした場合の刑罰について定めた法律のこと。この法律をもとにして行われる訴訟は刑事訴訟と呼ばれ、加害者が本当に犯罪をしたのかどうか、そしてどの程度の罰を与えるのか、ということを決めるものとなります。

一方で民法は、普段の生活で行う様々な約束事について定めた法律のことで、財産(お金や物など)に関するルールもこの中に含まれます。この法律などをベースに行われる民事訴訟は、契約の取り消しや、だましとられたお金の返還、あるいは受けた損害の賠償など、さまざまな目的で行われます。

そのほかの違いを簡単にまとめると、以下のようになります。

刑法 民法
目的 犯罪の証明
刑罰の決定
契約の取り消し
損害賠償 など
訴訟を起こす人 検察官 被害者本人
または代理人弁護士
被害者の相談先 警察官
公共機関
弁護士など


また、刑事訴訟、民事訴訟それぞれの場合で、どんな場合に「詐欺」が認められるのか、条件が異なってきます。

それぞれ解説していきましょう。

②刑事裁判の「詐欺」って?

刑事訴訟での「詐欺罪」は、以下のようなステップを満たすかどうかによって判断されます。

  • 人をだましたり、うそをついたりする

    たとえばネット通販で、商品を顧客に送るつもりはないにもかかわらず、ネット上で販売していることは「人をだます」行為にあたります。

  • 騙した被害者に勘違いをさせる

    加害者が人を騙すつもりで仕掛けた行為によって、被害者に勘違いをさせたことも条件になります。

    先ほどのネット通販の例で言えば、偽サイトを見た被害者が「購入すれば商品が自分の手元に届く」と勘違いする状態を作り出すことです。

  • 被害者が財産を渡す

    勘違いした被害者が、金銭や物品などを自分の意思で加害者に渡してしまうことです

    ネット通販の例でいうと、偽サイトを見た被害者が商品の購入を申し込み、加害者の口座に、振り込み手続きをする行為がこれにあたります。

  • 加害者が被害者の財産を受け取る

    加害者が実際に被害者の財産を受け取ることです。

    ネット通販の例でいうと、振り込み手続きが実際に行われ、加害者の口座に実際に料金が振り込まれた場合がこれにあたります。

「詐欺罪」が認められるには、加害者の行為がこれまで説明した上記4つをすべて満たし、それらに因果関係があることを証明する必要があります。

たとえば「だますつもりはなかったが、被害者が勘違いをして代金を支払った」という場合は詐欺とはみなされません。

同様に、騙す行為があっただけで、見る側がそれに引っかからず代金も払わないときも詐欺とはなりません。

③民事訴訟の「詐欺」って?

民事訴訟の場合、相手との契約内容や経緯、代金の請求ステップといったさまざまな要素に問題がなかったかどうか、ルールに照らし合わせながら個別に判断していく形となります。

  • 契約のときに騙されたり、脅されたりしなかったか?
  • 勘違いして契約したものではなかったか?
  • 契約の内容やプロセスに法律違反はなかったか?

…といった内容を、さまざまな角度から検証し、

  • ルールを守っていないので、契約にそもそも効力がない(無効)
  • ルールを守っていないので、契約をなかったことにする(取消)

を主張していくことになります。

また、相手が契約を守らなかったことで自分が損をした場合などは、損害賠償請求を起こし、相手に受けた被害の弁償をさせることもできます。

損害賠償請求については、こちらの記事でも解説しています。


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2.訴訟を起こすには?重要な手続きはこの3つ



では、実際に詐欺被害を訴えるには、どんなことをする必要があるのでしょうか。

①証拠集め
②弁護士に相談
③訴訟を起こす

という3つのステップから解説していきます。

①証拠を集める

民事・刑事、いずれの場合であっても、詐欺の被害に遭ったと確信したら、早急に証拠を確保することが大切です。

  • 購入したサイトのスクリーンショット
  • 購入完了メール
  • 領収書(納品書)
  • 購入した物品(あれば)
  • 宅配伝票
など

詐欺で訴える際に有力な資料になるようなものはすべて確保しておくことをおすすめします。

できるだけ早くに証拠を確保しなければならないのは、加害者が証拠隠滅のためにサイトを消したり連絡先を変えたりする恐れがあるからです。証拠となるようなものはすべて残しておくことが大切です。

②弁護士に相談

証拠がそろったら、依頼する弁護士を探しましょう。この際、詐欺や消費者問題を専門に取り扱う弁護士に相談すると適切なアドバイスが受けやすくなります。

弁護士を探すには日本弁護士連合会(日弁連)https://www.nichibenren.or.jp/のサイトから探す方法があります。

実際の相談の前には、そろえた証拠のほか、事前に詐欺の経緯を説明するためのメモなどを作成しておく方が話をしやすくなります。

弁護士の初回の相談時間はおおむね30分程度であることが多いため、

  • いつ
  • 誰に
  • どのような手口で
  • どんな被害を受けたか

という内容を簡潔にまとめておくといいでしょう。

③訴訟を起こす

  • 刑事訴訟の場合

    刑事訴訟を行えるのは検察官だけで、被害者本人が行うことはできません。そのためまずは警察に通報し、加害者を容疑者として逮捕してもらう必要があります。

    通報の手段は、大きくわけて被害届と刑事告訴の2つ。

    被害届はその名の通り、犯罪の被害にあったことを警察に伝えるための書類のことです。その内容は警察が捜査の参考とするものです。

    いっぽうで刑事告訴は、被害を報告するだけでなく、犯人を捜査して訴訟を起こすよう警察などに要求するもの。被害届と違い、受理されれば確実に警察が動いてくれるのが特徴ですが、相手が有罪となる可能性が極めて高いような場合でなければ受理されません。

    詐欺事件は個人間でのトラブルとみなされがちです。犯罪であることをしっかりと主張するためにも、被害届・刑事告訴は個人ではなく、弁護士と相談して行うようにしたほうが安心でしょう。

  • 民事訴訟の場合

    民事訴訟を行うためには、加害者の住所を管轄する裁判所に、訴えを起こすための書類(訴状)を提出します。被害金額によって提出する裁判所は異なり、140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所です。

    請求内容に応じて収入印紙で指定された金額分の手数料を支払います。訴状が受理されれば被告に対して送付され、約1ヶ月後に第1回目の口頭弁論が行われます。

    口頭弁論は裁判官の前で双方が主張や意見を表明する場で、決まった回数はなく、必要に応じて何度でも行われます。判決が出るまでは、平均して1年ほどかかります。

  • 被害者で力を合わせて詐欺を立証!

    これまで説明してきたとおり、詐欺は証明することが難しい犯罪です。

    加害者側が「だますつもりはなかった」「被害者が勘違いしただけ」と主張した場合、そうでないことを証明するのがどうしても難しいからです。

    しかし、もし被害者が複数いるのであれば、話は変わってくるかもしれません。

    一人の被害者に対して「だますつもりはなかった」という言い訳は成立しやすいですが、同じような手口で何人もの被害者からお金をだましとっていたのなら、「最初からだますつもりだった」と判断しやすくなるからです。

    もし周りに同じ被害にあった人がいたら、お互いに協力してみましょう。

    証拠が集まれば、民事訴訟でも集団訴訟という手段をとれる可能性もあります。



【備考】刑事裁判で加害者が詐欺の有罪に!お金は戻ってくる?

もしも加害者に詐欺の有罪判決が下ったら、支払った代金は戻るのでしょうか?

残念ながらそうではありません。

なぜなら刑事裁判は、刑事罰を決めることだけが目的だからです。加害者に刑罰が下されたとしても、被害者が払った代金が戻ってくるかどうかは問題になりません。

支払ってしまったお金を返してほしいときは、民事訴訟で争います。ただし、ここでも気を付けたいのが、勝訴したとしても必ず返金されるとは限らないということ。

なんとももどかしい話ですが、加害者が返金できるだけの財力を持っていない場合、返金の可能性が下がってしまうのです。確実に返金してもらうには裁判所を通じて強制執行の手続きをしなければなりません。

また注意すべき点として、刑事訴訟・民事訴訟にはそれぞれ時効があります。こちらの記事も参照ください。

3.訴訟ができなかったらどこに相談する?頼りたい窓口3つ



「被害金額が少額で訴訟を起こすほどではない」「相手の住所がわからない」などの理由で訴訟を断念する方は、次にご紹介する相談先を利用しましょう。

目的 団体名
詐欺全般 警察相談ダイヤル
詐欺全般(民事) ②消費者ホットライン
通販でのトラブル ③公益財団法人日本通信販売協会


①警察相談ダイヤル「#9110」

緊急通報の「110番」とは別の、相談に特化した電話窓口です。相談内容に応じて対応できる機関を紹介します。

全国どこからでも、電話を掛けた地域を管轄する都道府県警察本部の警察総合相談室などにつながります。

受付時間:8時30分~17時15分(各都道府県警察本部で異なる)
電話番号:#9110(ダイヤル回線や一部のIP電話からは03-3501-0110

なお、警察に被害届を提出するときのポイントをこちらの記事でまとめています。

②消費者ホットライン(国民生活センター)

消費者ホットラインは、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内し、消費生活相談の最初の一歩をお手伝いします。

受付時間:利用する自治体によって異なる 電話番号局番なし188(いやや)

③公益財団法人日本通信販売協会(JADMA)

消費者からの通信販売に関するご相談を受け付けています。

受付時間:月~金曜日 10時~12時、13時~16時(年末年始・祝日を除く)
電話番号:03-5651-1122
問い合わせフォーム:返答は電話のみ。電話番号記入は必須。こちらから相談できます。

④詐欺の二次被害に要注意

最近では、詐欺の被害にあった被害者をターゲットに「だまし取られたお金を取り戻し、詐欺被害を解決します」と称して多額の調査費用を請求する業者もいるようです。このような二次被害に遭わないよう、十分な注意が必要です。

4.まとめ

  • 相手側が詐欺で逮捕されても払ったお金が戻ってくるわけではない。

  • お金を取り返したいときは民事訴訟をする。

  • 訴訟以外でも、相談窓口を利用して解決手段を探せる。

おわりに

ネット通販による詐欺や振り込め詐欺に限らず、詐欺による被害は後を絶ちません。万が一詐欺の被害に遭ってしまったら、証拠を確保し、各種相談窓口を利用しましょう。 金額が多ければ裁判で返金を求めることができますし、複数の被害者が集団訴訟を起こせばこちらに有利になることもあります。ここで紹介した対処法をぜひ参考にしてみてください。

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